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今週の決算、日立・アドテスト・東エレクで読む日本株相場の分岐点

by 杉山 直樹
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はじめに

4月27日から5月1日にかけての日本株は、決算そのものよりも、どの業種に資金が残り、どの業種で利益確定が出やすいかを見極める一週間になります。週明けの4月27日には日立とアドバンテスト、4月30日には東京エレクトロンと村田製作所が控え、半導体とインフラの両輪で相場の温度感が測れる並びです。

今回は単なる日程一覧ではなく、各社の直前業績と会社側の見通しから、投資家が何を確認しにいく週なのかを整理します。AIサーバー向けの設備投資がまだ加速局面にあるのか、円安が利益をどこまで押し上げるのか、そして日本の大型株の中で景気敏感の主役が半導体に偏りすぎていないかが焦点です。

足元では、4月24日にルネサスエレクトロニクスが2026年1〜6月期の非GAAP売上高見通しを7528億円から7678億円と公表し、前年同期の6334億円を上回るレンジを示しました。これが半導体セクターの地合いを先に温める形になっており、今週の主役銘柄には「期待を上回れるか」だけでなく、「期待の高さに見合う説明ができるか」が問われます。

週前半に集まるインフラと検査装置のシグナル

日立が示すインフラ需要と収益の質

日立の決算は4月27日に予定されています。ここで市場が最も注目しやすいのは、単純な売上高の伸びよりも、電力網、鉄道、デジタルの三本柱で収益の質がさらに上がっているかどうかです。2025年3月期の実績では、売上収益が9兆7833億円、調整後EBITAが1兆1465億円、コアフリーキャッシュフローが7805億円まで伸び、会社側は2026年3月期に売上収益10兆1000億円、調整後EBITA1兆1100億円を見込んでいました。

この時点で重要だったのは、増収基調が単発案件ではなく、デジタル化需要と電力網更新需要の両方に支えられていたことです。2025年3月期の説明資料では、北米と欧州を中心に日立エナジーの送配電案件が伸び、鉄道でも大型案件の寄与が目立ちました。相場の視点で言えば、景気敏感株でありながら受注残高の厚みで収益の先が読みやすい、という評価が付きやすい構造です。

そのうえで、直前の2025年4〜12月期も売上収益は7兆5017億円、調整後営業利益は8257億円、フリーキャッシュフローは9875億円まで積み上がっていました。契約負債も2025年3月末の2兆1961億円から2025年12月末には2兆8683億円へ増えており、大型案件の前受けを伴う事業が効いていることがうかがえます。今週の決算では、この受注の厚みが利益率改善にどこまでつながるか、そして2025年4月に示した「Inspire 2027」の進捗がどこまで具体化するかが分岐点になります。

もうひとつ見逃せないのが、会社側が2025年3月期見通しの時点で米国の相互関税政策による直接リスクを調整後EBITAで300億円、純利益で350億円織り込んでいた点です。つまり日立の見どころは、受注環境の強さだけではありません。コスト増やサプライチェーンの制約を吸収しながら、インフラ株としての安定感を保てるかが重要です。数字が堅くても、ガイダンスが慎重なら市場はインフラの強さより外部リスクを先に織り込みにいく可能性があります。

アドバンテストが映すAI半導体投資の熱量

同じ4月27日には、アドバンテストが15時30分に2025年度通期決算を発表する予定です。今週の日本株で最も値動きが大きくなりやすいのは、おそらくこの銘柄です。理由は単純で、AI関連投資の温度を最も直接に映す検査装置メーカーだからです。

直前の2025年4〜12月期は、売上高8005億円、営業利益3460億円と大幅増益でした。会社側はその背景として、HPC向け高性能SoCやデータセンター向け高性能DRAMなど、AI関連半導体が成長をけん引したと説明しています。テストシステム事業だけでみても売上高は7231億円、セグメント利益は3577億円まで伸びており、ロジックとメモリーの両方で検査需要が強かったことが分かります。

市場が今回確認したいのは、この強さが一過性ではないかという点です。アドバンテストは2026年の半導体産業について、AI関連半導体の複雑化、高性能化、供給網拡張、生産量増加を背景に、テスタ需要の高水準が続くと見ています。実際、2025年度通期の会社計画も、2025年10月時点の売上高9500億円、営業利益3740億円から、2026年1月時点では売上高1兆700億円、営業利益4540億円へ大きく引き上げました。

ただし、ここには相場特有の難しさがあります。需要が強いこと自体はすでに株価にかなり織り込まれている可能性があるからです。会社側は関税の直接影響は大きくないとしつつも、地政学リスクや急激な為替変動で事業環境は予測しにくいと認めています。したがって今回の決算では、通期着地の良し悪し以上に、2026年度の受注環境をどう表現するかが重要です。AI向けが強いという説明だけでは足りず、自動車や産業機器向けの底入れがどこまで見えているかが、半導体株全体の裾野を判断する材料になります。

4月30日に重なる前工程と電子部品の分岐

東京エレクトロンが占う前工程投資の持続性

4月30日に予定される東京エレクトロンの決算は、日本株の半導体シナリオを一段深く確認する場になります。アドバンテストが「検査需要の強さ」を映すのに対し、東京エレクトロンは「前工程の設備投資がどこまで続くか」を示す銘柄です。発表は4月30日に予定されており、同社の数字は日本の半導体主力株全体の評価軸を揺らしやすいです。

直前の2025年4〜12月期は、売上高1兆7317億円、営業利益4192億円、純利益3601億円でした。さらに会社側は2026年3月期通期見通しを売上高2兆4100億円、営業利益5930億円へ引き上げています。四半期ベースでは利益率がやや低下しているものの、設備投資そのものが弱っているわけではなく、顧客投資の時期配分と製品ミックスの変化が表面に出ている局面と読めます。

投資家が特に注目するのは、2月時点で示された装置需要の説明です。東京エレクトロンは、AIサーバー向け需要の拡大を背景に、生成AI向け半導体への設備投資が大きく伸びていると説明していました。さらに下期のSPE新規装置売上高見通しを9000億円へ上方修正しており、ロジックやDRAMを含む前工程投資の強さがまだ崩れていないことを示していました。これは単に「AIが強い」という話ではなく、検査装置だけでなく前工程装置まで資本支出の波が及んでいることを意味します。

さらに同社は2026年3月期下期のSPE新規装置売上高見通しを9000億円へ上方修正し、4Q売上高は前四半期比30%増を見込んでいました。ここまで強い言い方をしていた企業が4月末に何を語るかは、相場にとってかなり重要です。もし会社側が同じ基調を維持すれば、日本株におけるAI関連の主力テーマは延命しやすくなります。逆に、中国向け一巡や納期制約、部材調達、工場クリーンルーム整備の遅れなどを強調するなら、半導体株には高い期待の反動が出やすくなります。

村田製作所に見るスマホ回復とAI周辺需要

同じ4月30日14時には村田製作所の決算も予定されています。半導体装置2社に比べると値動きの派手さでは見劣りしやすいものの、相場全体を見るうえでは非常に重要です。なぜなら、AIの恩恵がサーバー周辺だけにとどまらず、電子部品の需要構造にまで波及しているかを確認できるからです。

村田の2025年3月期実績は、売上高1兆7433億円でした。用途別では通信が6741億円で38.7%、モビリティが4530億円で26.0%、コンピューターが2819億円で16.2%を占めています。特にコンピューター向けは前年比38.8%増と伸びが大きく、サーバー向けMLCCやリチウムイオン二次電池、PC向けRFモジュールが押し上げ要因になりました。通信向けはスマートフォン向けで樹脂多層基板が伸びた一方、SAWフィルターや接続モジュールが弱く、まだ全面高ではありません。

2026年2月の会社修正も示唆的でした。通期売上高見通しは1兆7400億円から1兆8000億円へ引き上げた一方、営業利益見通しは2800億円から2700億円へ引き下げています。会社側は、AIサーバーや周辺機器向けの部品搭載点数増加、スマートフォン生産台数増加、円安を増収要因に挙げる一方、SAWフィルター事業に関するのれん減損が利益を圧迫すると説明しました。

ここから読めるのは、部品株の見方が単純ではないということです。売上が戻っても、事業ポートフォリオの組み換えや採算の悪い分野の整理が進む局面では、利益の伸びが追いつかないことがあります。今週の村田決算では、スマホ回復の広がりとAI周辺需要の強さに加え、収益構造の改善がどこまで進んだかを見極める必要があります。半導体装置株が強くても部品株が鈍いままなら、相場全体としてはテーマの裾野が狭いままという解釈になりやすいです。

注意点・展望

今週の決算を見るうえでよくある誤解は、AI関連という一言で全銘柄を同じ物差しで評価してしまうことです。実際には、日立は受注残とキャッシュ創出力、アドバンテストはテスタ需要の継続性、東京エレクトロンは前工程投資の先行き、村田製作所は電子部品の波及効果と採算改善が主な論点です。同じ半導体連想でも、見ている景色はかなり違います。

もうひとつの注意点は、円安をそのまま増益要因とみなさないことです。ルネサスは2026年1〜6月期見通しを1ドル156円、1ユーロ182円で算定し、村田は第4四半期以降の前提を1ドル150円へ引き上げました。一方でアドバンテストは第4四半期の前提を1ドル140円、1ユーロ155円と置いています。為替前提が違えば、決算数値の見え方だけでなく、来期の安全率も変わります。見出しの増益率だけで横比較すると、かえって判断を誤ります。

今後の展望としては、4月24日に先行して決算を出したルネサスがひとつの地ならし役になります。非GAAPベースの1〜3月売上高は3723億円、営業利益率は33.7%でした。これに続く今週の決算群で、AI向けの強さが検査装置、前工程装置、電子部品、インフラのどこまで広がるかが見えれば、日本株の主導株が連休明けも半導体と大型インフラに残るのか、それとも物色が分散するのかを判断しやすくなります。

まとめ

4月27日から5月1日の決算集中週は、単なる予定表ではありません。日立でインフラ受注の粘り強さを確認し、アドバンテストでAI半導体投資の熱量を測り、東京エレクトロンで前工程投資の持続性を見極め、村田製作所でスマホとAI周辺の裾野を確かめる一週間です。

相場の潮目を読むうえでは、どの会社が増益だったかだけでは不十分です。会社計画の前提為替、受注や設備投資の先行き、利益率の変化を並べて初めて、日本株の主役が続くのか入れ替わるのかが見えてきます。今週は指数の上下より、決算メッセージの中身にこそ次の売買テーマの種があります。

参考資料:

杉山 直樹

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