ホルムズ危機と原油高で再評価される廃プラ再資源化関連株の実力
原油高が再生材を押し上げる市場構造
ホルムズ海峡を巡る緊張は、原油相場だけでなく、石油化学の原料であるナフサ、さらにPEやPPなど汎用樹脂の価格にも波及しています。米APは2026年5月18日、ブレント原油が一時112ドル台に乗せた後、米国とイランの交渉期待で値を消す荒い値動きを伝えました。
この局面で市場が注目するのが、廃プラスチックを再び素材や化学原料に戻す再資源化関連株です。再生材は原油価格の単純な逆相関商品ではありませんが、石油由来原料の調達不安が強まるほど、企業にとって「第二の原料ソース」としての意味が増します。
本稿では、ホルムズ危機をきっかけに浮上する廃プラ再資源化テーマを、短期の材料株物色だけでなく、政策、設備投資、企業の収益化力という三つの軸から整理します。上場企業を見る際は、技術名よりも「廃プラを集める力」「選別する力」「売れる再生材に変える力」を分けて確認することが重要です。
ホルムズ緊迫が樹脂価格へ及ぼす圧力
海峡依存を映す原油とLNGの流量
ホルムズ海峡は、単なる中東ニュースの地名ではありません。米エネルギー情報局(EIA)によると、2024年に同海峡を通過した石油は日量約2000万バレルで、世界の石油液体消費の約20%に相当しました。さらに、同年のホルムズ通過原油・コンデンセートの84%、LNGの83%はアジア向けでした。
国際エネルギー機関(IEA)も、2025年のホルムズ経由の石油輸出を日量約2000万バレル、世界の海上石油貿易の約25%としています。代替パイプライン能力は一定程度あるものの、サウジアラビアとUAEに限られ、すべてを迂回できるわけではありません。
日本は原油の大半を輸入に頼り、化学品、包装材、日用品、自動車部材まで石油化学のサプライチェーンに組み込まれています。海峡の完全閉鎖がなくても、船舶保険料、運賃、在庫積み増し、調達先変更のコストは企業の購買価格に乗りやすい構造です。
このため、投資テーマとしての廃プラ再資源化は「原油が高いからリサイクルが儲かる」という単純な話ではありません。原油高、物流混乱、為替、政策対応が重なり、バージン材への依存を下げたい企業が増える局面で、再生材供給網を持つ企業の交渉力が高まりやすい、という見方が現実的です。
ナフサ高がPE・PP価格へ波及する経路
石油化学の現場では、原油高はナフサ高を通じて樹脂価格に波及します。プライムポリマーは2026年4月21日、ポリエチレンとポリプロピレンについて、5月1日納入分から現行価格比30円/kg以上の追加改定を公表しました。理由として、中東情勢緊迫化によるナフサ価格の上昇が想定を上回り、12万5000円/KLを超える水準で推移する見通しを示しています。
PEやPPは、包装材、物流資材、日用品、建材、自動車部品に広く使われます。値上げが連鎖すれば、素材メーカーだけでなく、成形加工、容器包装、消費財メーカーにもコスト圧力が広がります。価格転嫁が遅い企業ほど、代替原料の確保や設計変更を急ぐ誘因が強まります。
ここで再生プラスチックの役割が変わります。従来は、環境対応やブランド価値向上のために使う「上乗せコスト」の側面が強かった領域です。しかし、バージン材の価格と供給が不安定になれば、再生材は調達リスクを分散する実務的な選択肢になります。
もっとも、すべての廃プラが高品質な再生材になるわけではありません。汚れ、複合素材、黒色材、添加剤、異物混入は、材料リサイクルの歩留まりを下げます。市場が評価すべきなのは、単に「廃プラを扱う会社」ではなく、回収から選別、洗浄、ペレット化、品質保証、用途開発までをどこまで押さえているかです。
石油代替ではなく調達多様化としての再資源化
国内の廃プラ市場は、量だけを見ると大きな余地があります。環境省の令和7年版白書は、2023年の廃プラスチック総排出量を769万トン、有効利用率を約89%としています。一方、プラスチック循環利用協会の2024年度事業報告では、2023年のマテリアルリサイクル量は171万トンで、そのうち国内循環利用量は43万トンにとどまりました。
この差が、投資テーマの核心です。有効利用率は高く見えますが、熱回収や輸出に依存する部分があり、国内で再び原材料として循環する量はまだ厚くありません。政策と企業調達が目指しているのは、単なる廃棄物処理から、国内で使える再生材を安定供給する産業への転換です。
経済産業省は「成長志向型の資源自律経済戦略」で、サーキュラーエコノミー関連の国内市場規模を2020年の50兆円から2030年に80兆円、2050年に120兆円へ拡大する見通しを示しました。GX先行投資支援では、資源循環分野に今後10年間で2兆円以上の投資が掲げられています。
循環経済は脱炭素だけでなく、経済安全保障の文脈でも重要です。ホルムズ危機で原料調達が揺らぐほど、国内にある廃プラを資源として扱う発想は強まります。関連株の見方も、環境テーマから供給網テーマへ広げる必要があります。
廃プラ再資源化で選別したい企業群
静脈インフラを持つ処理・選別企業
廃プラ再資源化の出発点は、技術ではなく回収網です。どれほど優れたリサイクル設備を持っていても、安定した量と品質の廃プラを集められなければ、稼働率は上がりません。静脈インフラを持つ企業は、このテーマの基礎体力を測るうえで外せない存在です。
TREホールディングス(9247)は、廃棄物処理・再資源化、資源リサイクル、再生可能エネルギーを軸にする上場企業です。同社は国内最大級の静脈産業プラットフォームを掲げ、廃プラスチックの再資源化を強化する設備投資を進めています。統合報告書2025では、廃プラスチック高度選別・再商品化事業として、市原ソーティングセンターの建設を2025年4月に開始し、2026年10月ごろの受け入れ開始を目指すと説明しています。
同社グループのリバーは、那須事業所で樹脂選別ラインの高度化を進め、PP・PEの純度向上を狙っています。既存の選別能力600トン/年を1800トン/年へ拡大し、別枠でRPFなど代替燃料向けの選別も見込む計画です。ここでの注目点は、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、代替燃料のどの用途にも応じられる選別機能です。
大栄環境(9336)も、廃棄物の収集運搬、中間処理、再資源化、最終処分までを一体で担う企業です。同社は廃プラスチックから再生ペレットやリサイクルパレットを製造する施設を強化し、RPF製造やPE・PP混合ペレットにも取り組んでいます。さらに、廃プラの回収から再資源化、成形加工、製品化までをつなぐ「iCEP PLASTICS」を展開し、建設現場や自動車部品向けの循環スキームを広げています。
これらの企業を見る際は、売上高の伸びだけでなく、処理単価、再資源化率、最終処分場の残容量、設備稼働率、自治体・大手メーカーとの契約期間を確認したいところです。廃棄物処理は景気変動に比較的強い一方、設備産業でもあります。高評価が続くには、投資した選別ラインが高付加価値材の販売につながる必要があります。
再生材を製品化する素材・容器企業
リファインバースグループ(7375)は、廃プラスチックから再生素材を生み出すメーカー色が強い企業です。使用済みタイルカーペット、廃漁網、廃車エアバッグなどを再生素材に変えるノウハウを持ち、産業廃棄物の収集・運搬や中間処理も自社で担っています。
2026年3月には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン素材を対象にしたリサイクル事業を7月に始めると発表しました。リファインバースイノベーションセンター内に製造ラインを新設し、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの双方に使える原料を目指します。2028年6月期には売上高10億円規模の事業化を掲げています。
小型成長株としての魅力は、特定素材の選別・加工ノウハウが顧客の製品設計に入り込む点です。一方で、業績の振れや設備立ち上げの遅れには注意が必要です。テーマ性で株価が先行しやすい銘柄ほど、四半期ごとの売上計上より、顧客案件の継続性と量産移行の確度を追う姿勢が求められます。
エフピコ(7947)は、食品トレー容器のリサイクルで実績を持つ企業です。店頭回収された使用済み食品トレーを新たな食品トレーに戻す「トレーtoトレー」を進め、エコトレーやエコAPETを展開しています。同社によると、原油から新しく作るトレーに比べ、エコトレーはCO2排出量を33%、エコAPETは30%抑制でき、2025年3月期には20.9万トンのCO2排出抑制効果がありました。
同社の評価ポイントは、回収、再生、製品販売までが既存の事業モデルに組み込まれていることです。廃プラ再資源化テーマでは、技術実証よりも、すでに売り場で使われている循環製品の数量が重要になります。包装材の原料高が続く局面では、再生容器の供給実績が価格交渉力や顧客継続率に効きやすくなります。
ケミカルリサイクルの実装段階
材料リサイクルで扱いにくい混合プラスチックや汚れのある廃プラは、油化などのケミカルリサイクルが選択肢になります。これは、廃プラを化学原料に戻し、石油由来ナフサの一部を置き換える発想です。品質面でバージン材に近い製品を作りやすい一方、設備投資、エネルギーコスト、認証、安定調達のハードルは高くなります。
出光興産(5019)の子会社であるケミカルリサイクル・ジャパンは、千葉県市原市で油化ケミカルリサイクル設備を完工しました。出光の発表では、使用済みプラスチックの処理能力は年間2万トンで、2026年4月の商業運転開始を予定しています。大手石油会社が関与する点は、原料調達と石油化学設備への接続で意味があります。
ただし、出光のような大型株では、廃プラ再資源化は全社業績の一部です。テーマ株としての値動きは、原油相場、精製マージン、燃料販売、株主還元など多くの要因に左右されます。純粋な廃プラ関連株として見るより、石油会社が原料多様化を進める構造変化の代表例として捉えるのが妥当です。
ケミカルリサイクルは、ホルムズ危機のような原料ショック時に注目を集めやすい技術です。しかし商業化初期は、稼働率、歩留まり、回収油の品質、マスバランス認証、顧客の購入条件が利益を左右します。ニュースの派手さより、稼働後にどれだけ継続的な販売契約へつながるかが評価の分岐点になります。
テーマ物色で見落としやすい収益化リスク
廃プラ再資源化関連株には、原油高局面で買われやすい分かりやすさがあります。ただし、再生材価格は原油価格だけで決まりません。電力、燃料、人件費、薬剤、物流、設備保守、廃棄物の品質がコストを押し上げるため、原油高がそのまま利益率改善につながるとは限りません。
また、バージン材価格が急落すると、再生材の価格優位は薄れます。企業が環境目標や再生材使用率を掲げていても、景気後退で需要が弱まれば、コスト削減の圧力が再生材採用を遅らせる可能性があります。政策支援があるテーマでも、最終的には顧客が継続購入する価格と品質が必要です。
技術面では、材料リサイクルとケミカルリサイクルの違いも重要です。材料リサイクルは設備が比較的軽く、実需に近い一方、原料の汚れや色に制約があります。ケミカルリサイクルは用途を広げやすい反面、大型投資と高稼働率が前提です。RPFなどの燃料化は廃棄物削減に役立ちますが、材料として循環する事業とは評価軸が異なります。
株式市場では、テーマ名が先に走ることがあります。短期売買では需給とニュース感応度が重要ですが、中期で見るなら、売上総利益率、営業キャッシュフロー、設備投資額、減価償却負担、自治体・メーカーとの長期契約を確認すべきです。特に小型株は、1案件の遅れが業績予想に与える影響が大きくなります。
個人投資家が確認すべき三つの着眼点
廃プラ再資源化関連株を見るうえで、第一の着眼点は「原料を集める力」です。自治体、建設現場、小売店、メーカー工場から安定して廃プラを回収できる企業は、原料不足で設備が止まるリスクを抑えられます。
第二は「売れる品質に変える力」です。選別、洗浄、異物除去、組成検査、ペレット化、成形までのどこに強みがあるかで、単価と採算が変わります。再生材は量だけでなく、顧客の品質基準を満たすことが収益化の条件です。
第三は「政策テーマを業績に変える時間軸」です。ホルムズ危機は短期の物色材料ですが、循環経済は2030年に向けた設備投資テーマです。株価の初動に飛びつくより、決算資料で稼働率、受注、契約先、利益率を確認し、原油高耐性と成長投資の両方を見極める姿勢が有効です。
ホルムズ海峡の不透明感は、石油由来原料の脆弱さを市場に意識させました。廃プラ再資源化関連株は、その不安を単なる相場材料で終わらせるのではなく、国内資源を使う供給網づくりへ転換できる企業ほど評価されやすくなります。テーマの核心は、環境対応ではなく、調達の強靭化と収益化の同時達成です。
参考資料:
- Oil prices keep swinging, and so do stocks worldwide | AP News
- Trump says he’s called off Iran strike planned for Tuesday | AP News
- Amid regional conflict, the Strait of Hormuz remains critical oil chokepoint | U.S. EIA
- Strait of Hormuz | IEA
- ポリエチレン及びポリプロピレンの価格改定について | プライムポリマー
- 「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました | 経済産業省
- プラスチック資源循環法関連 | 環境省
- 第五次循環型社会形成推進基本計画の閣議決定 | 環境省
- 令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 | 環境省
- マテリアルフロー図 | プラスチック循環利用協会
- 廃プラスチック再生事業の拡大に向け「ポリオレフィンリサイクル事業」を7月に開始 | リファインバースグループ
- 株主・投資家の皆様へ | TREホールディングス
- 廃棄物処理・資源循環 | 大栄環境グループ
- プラスチックの資源循環実現に貢献する油化ケミカルリサイクル設備が完工 | 出光興産
- リサイクル効果 | エフピコ
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