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キオクシア効果で動くNAND関連株、明日の相場物色本命を読む

by 斎藤 裕也
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六万円相場で鮮明化したキオクシア効果

5月18日の東京株式市場は、日経平均株価が前週末比593円34銭安の6万0815円95銭と3日続落しました。前場には下げ幅が1000円を超える場面もあり、金利高と原油高を警戒したリスク回避が続いた形です。

その中で例外的に強さを示したのが、キオクシアホールディングスです。マネックス証券の市況まとめでは、同社株はストップ高水準の5万1450円をつけ、4〜6月期の営業利益予想1兆2980億円が買い材料になったと整理されています。指数が重い日に材料株が買われる典型ですが、今回の焦点はキオクシア本体だけではありません。

「キオクシア・エフェクト」と呼べる波及は、NANDフラッシュの価格上昇、AI推論向けSSD需要、国内工場の稼働率上昇、装置・部材・検査工程の受注期待へ広がります。この記事では、材料株・テーマ株を見る視点で、明日の相場で資金が向かいやすい関連銘柄の条件を整理します。

NAND急回復を支えるAI推論需要

売価上昇が利益率を押し上げた構図

キオクシアの2026年3月期決算は、売上収益が2兆3376億円、営業利益が8703億円、親会社所有者に帰属する当期利益が5544億円でした。売上収益は前期比37.0%増、営業利益は92.7%増、当期利益は103.6%増です。通期で過去最高級の収益水準に達したうえ、2026年4〜6月期には売上収益1兆7500億円、営業利益1兆2980億円、親会社所有者帰属利益8690億円を見込んでいます。

注目すべきは、販売数量だけでなく平均販売単価が利益を押し上げた点です。会社資料では、2026年1〜3月期の売上収益が前四半期比4592億円増の1兆29億円となり、出荷量は減少したものの平均販売単価の大幅上昇が寄与したと説明されています。メモリー事業は固定費の大きい装置産業であり、売価上昇が始まると増収分が利益に流れやすい構造を持ちます。

市場調査側の見方も同じ方向です。Gartnerは2026年の世界半導体売上高が1.3兆ドルを超えると予測し、メモリー売上高が大きく伸びるとしています。さらにNANDフラッシュの年間価格が大幅に上昇し、本格的な価格緩和は2027年後半まで見込みにくいとの見方を示しました。OmdiaもAIが世界的なメモリー逼迫を引き起こしているとして、2026年の半導体市場見通しを大幅に引き上げています。

SSDがGPU投資の隣に来た理由

AI投資ではGPUとHBMが主役として語られます。しかし、実際のデータセンターでは、学習データ、モデルの重み、推論ログ、検索拡張生成で使うベクトルデータを保存し、高速に読み出すストレージが不可欠です。AIの利用が学習中心から推論中心へ移るほど、GPUにデータを供給するSSDの重要性が増します。

キオクシアはこの流れに対し、AI・GPU主導ワークロード向けのSuper High IOPS SSD「KIOXIA GPシリーズ」を発表しています。同社は、GPUが高速フラッシュメモリへ直接アクセスすることで、HBMを補完し、GPUが利用できるメモリ領域を拡張できると説明しています。CM9シリーズでは25.6TBのTLC容量と3 DWPDの耐久性を示し、大規模推論環境を支えるストレージとして位置づけました。

北上工場の第2製造棟も需給面の重要な材料です。キオクシアとサンディスクは2025年9月、岩手県北上市のK2棟が稼働を開始したと発表しました。K2棟はCBA技術を導入した第8世代3次元フラッシュメモリ製品に対応し、2026年前半に本格出荷を始める計画です。需給逼迫の中で新しい生産能力が立ち上がるため、装置、部材、検査工程への波及が意識されやすくなります。

さらに、四日市工場のサンディスクとの合弁契約は2034年まで延長されました。サンディスクは製造サービスと継続的な製品供給に対して11億6500万ドルを支払う内容です。これは単なる契約更新ではなく、生成AI向けに先端3次元フラッシュメモリを安定供給する体制を長期化する材料です。投資家が見るべきは、キオクシアの一時的な好決算ではなく、量産体制の長期固定化です。

波及候補を分ける装置・材料・検査の濃淡

イノテックに集まるテスター連想

キオクシア効果の周辺で、最も材料との距離が近い候補として見られやすいのが検査工程です。NANDは微細化ではなく多層化で容量を増やすため、量産ラインでは歩留まり管理とテスト効率が収益性を左右します。ウェハーテスターやエンジニアリングテスターを持つ企業は、単なる半導体関連ではなく、NANDの生産量と稼働率に近い銘柄として物色されやすくなります。

イノテックは自社開発のウェハーテスター、エンジニアリングテスター「RETSET」シリーズを展開し、同社サイトでは主にNAND型フラッシュメモリーの量産ラインにおけるテストソリューションを提供していると説明しています。英語版のESGページでも、同社のテスターはNANDフラッシュ製品の量産ラインで主に採用され、テスト効率、品質、省電力、設置面積削減に貢献するとされています。

業績面でも反応しやすい土台があります。イノテックの2026年3月期は、売上高467億3700万円、営業利益31億800万円、経常利益29億1200万円、親会社株主に帰属する当期純利益41億1100万円でした。営業利益は前期比64.7%増、純利益は242.6%増です。決算発表後の株価も大きく反応しており、NANDテスターという事業の説明可能性が高いことは、テーマ物色で重要な条件になります。

ただし、テーマ株としての強さは「キオクシア向け」と断定できるかどうかではなく、NANDの量産・世代交代・稼働率上昇と同じ方向に業績が動くかで判断する必要があります。会社開示にある製品用途、セグメントの利益率、受注残、顧客集中のリスクを見ないまま連想だけで追うと、短期資金の回転に振り回されます。

TOTOと装置各社に広がる設備投資期待

装置・部材側では、より広い波及が見込まれます。TOTOは住宅設備の印象が強い企業ですが、成長セグメントとして半導体製造装置向けの高精密セラミック部材を持っています。2026年3月期決算説明資料では、新領域事業のセラミック事業について、静電チャックとAD部材の販売増により売上高674億円、営業利益289億円となったと説明しています。

同資料では、3D NANDメモリー向けの極低温エッチング技術、深堀技術、高耐久な静電チャックの重要性も示されています。NAND向けの新規需要は、メモリメーカーがDRAMを優先投資した影響で鈍化したと説明される一方、高い稼働率に伴う交換需要は大幅に増加したとされています。ここにキオクシアの高稼働が重なれば、部材交換需要という形で波及が見えやすくなります。

KOKUSAI ELECTRICも、NAND投資の見方を確認したい装置株です。2026年3月期決算説明資料では、生成AI向けの高性能ロジックやDRAMを中心に投資が高水準だった一方、NANDは世代交代投資が中心とされています。全社業績は中国DRAM装置の反動で減益でしたが、通期のNAND向け売上は前期比90%増と示されました。2027年3月期はデバイスメーカーの積極投資を背景に増収増益を見込んでいます。

SCREENホールディングスも、洗浄装置の世界シェアを持つ前工程装置メーカーとして候補に入ります。2026年3月期資料では、半導体製造装置事業の2027年3月期売上高を6000億円と見込み、前期の4859億円から伸びる計画を示しました。NAND専業の材料ではありませんが、AIインフラ投資がロジック、DRAM、NANDを同時に押し上げる局面では、装置株全体の見直しにつながりやすい位置にあります。

大型株と中小型株の値動きの違い

東京エレクトロン、SCREEN、KOKUSAI ELECTRICのような装置大型・準大型株は、海外投資家の資金が入りやすい一方、米金利やSOX指数の影響も強く受けます。5月18日のように日米金利上昇が重荷になる日は、個別の好材料よりも指数寄与度やバリュエーション調整が優先される場合があります。

これに対し、イノテックのような中小型の検査・周辺部材株は、材料との距離が明確なときに値幅が出やすくなります。テーマ株としての発掘妙味はありますが、流動性が低い銘柄ほど、寄り付き直後の出来高、前日からの信用買い残、決算発表後の窓開けを確認する必要があります。材料の濃さと株価位置を分けて見ることが、明日の相場では特に重要です。

高値追いを誤らせる三つの需給リスク

第一のリスクは、メモリー価格のピークアウトです。Gartnerは2026年のNAND価格上昇を強く見ていますが、同時に価格高騰が非AI需要を遅らせる可能性にも触れています。PC、スマートフォン、産業機器向けでは、メモリー価格の上昇が最終製品のコストを押し上げます。AI向けが強くても、非AI需要が萎むと市場全体のバランスは崩れます。

第二のリスクは、増産と世代交代の時間差です。北上K2棟の本格出荷、四日市・北上の合弁体制強化、各社の装置投資が同時に進むと、短期では装置・部材株に追い風です。しかし、供給能力が顧客需要を上回る局面に移れば、NAND価格は急に下がります。メモリー株と周辺株は、好況期ほど次の供給過剰を織り込みにくい特徴があります。

第三のリスクは、材料株の連想が広がりすぎることです。NANDに近い検査装置、3D NANDのエッチング部材、洗浄装置、成膜装置はそれぞれ収益ドライバーが違います。キオクシアの好決算だけを理由に、半導体関連を一括りで買うと、実際にはDRAM寄り、ロジック寄り、中国投資寄りの銘柄まで混在します。関連銘柄を選ぶ際は、製品用途と決算説明資料の言葉を確認する作業が欠かせません。

明日の半導体物色で見る三つの確認点

明日の相場で見るべき確認点は三つです。第一に、キオクシア本体がストップ高後も出来高を伴って高値圏を維持できるかです。第二に、イノテック、TOTO、KOKUSAI ELECTRIC、SCREENなど、事業説明にNAND、3D NAND、SSD、検査、静電チャック、成膜、洗浄といった具体語がある銘柄へ資金が広がるかです。第三に、日米金利高で大型半導体株が抑えられる中でも、中小型の材料株に回転資金が残るかです。

キオクシア効果の本質は、AIブームが「計算する半導体」から「記憶する半導体」へ広がったことです。投資家は、キオクシア本体の株価だけでなく、NANDの売価、工場稼働率、世代交代投資、検査工程の負荷を並べて見る必要があります。化ける株を探すなら、名前だけの半導体関連ではなく、キオクシアの利益急増と同じ因果線上にある銘柄を選別する姿勢が求められます。

参考資料:

斎藤 裕也

テーマ株・材料分析

テーマ株・材料株の発掘と分析を得意とする。企業の IR 情報と業界動向を結びつけ、投資家目線で銘柄の「次の一手」を読む。

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