野村総合研究所が海外減損969億円、来期は最高益回復へ
NRI減損969億円と来期最高益予想
野村総合研究所(NRI、東証プライム・4307)が2026年4月24日に発表した2026年3月期の通期決算は、市場に大きなインパクトを与えました。売上収益こそ前期比6.5%増の8147億円と堅調に推移したものの、豪州と北米の海外子会社で合計969億円ものれん減損損失を計上。最終利益は前期比83.7%減の152億円と急落しました。
しかし同時に発表された2027年3月期の見通しでは、最終利益が前期比約7.8倍の1190億円と2期ぶりの最高益更新を予想しています。さらに700億円を上限とする自社株買いと増配も打ち出し、株主還元姿勢を鮮明にしました。一過性の損失で業績が急落する中、なぜNRIは来期に過去最高益を見込めるのか。決算の中身を掘り下げて読み解きます。
2026年3月期決算の全体像と減損の衝撃
売上は成長も利益は大幅減
2026年3月期の連結業績(IFRS)は、売上収益が8147億800万円(前期比6.5%増)、営業利益が582億7300万円(同56.8%減)、最終利益が152億5700万円(同83.7%減)となりました。
売上収益が着実に伸びた背景には、国内企業のDX投資需要の拡大があります。金融機関や製造業、サービス業など幅広いセクターでシステム開発・運用の受注が伸び、国内事業は計画を上回るペースで推移しました。
一方で利益面では、4月23日に事前公表された下方修正が重くのしかかりました。従来予想では最終利益1040億円と増益基調を見込んでいましたが、海外子会社ののれん減損計上により一転して大幅減益着地となったのです。
減損969億円の内訳と背景
減損損失の内訳は、豪州のNRI Australia Limitedで769億円、北米のCore BTS, Inc.で199億円です。いずれもコンサルティングやITサービスの受注低迷を受けて事業計画を見直した結果、のれんを含む資産の回収可能価額が帳簿価額を下回ると判断されました。
NRI Australiaの前身であるASG Groupは、NRIが2016年12月に約274億円で買収した豪州のIT企業です。ERP導入支援やITインフラコンサルティングを手がけ、2023年にはNRIブランドへの統合も完了していました。しかし、コンサルティング事業やマネージドサービスの需要が想定を下回り、業績が悪化していました。
一方のCore BTSは、米Microsoftや米Ciscoとのパートナーシップを軸にクラウドやセキュリティ領域のコンサルティングを展開する企業です。NRIは2021年12月に約523億円で子会社化を完了しましたが、クラウドコンサルティング事業の伸び悩みにより収益計画の見直しを迫られました。
海外M&A戦略のつまずきと構造的課題
積極買収路線の振り返り
NRIはこの10年間、海外事業の拡大を成長戦略の柱として位置づけてきました。2016年のASG Group買収は当時として過去最大規模であり、豪州・ニュージーランド市場への本格参入の布石でした。2021年にはCore BTSを約523億円で取得し、北米のデジタルエンジニアリング市場にも進出しています。
しかし、買収後の統合と成長シナリオは計画通りには進みませんでした。豪州市場ではマネージドサービスや人材派遣型ビジネスの需要が落ち込み、北米ではクラウドコンサルティングの競争激化が業績を圧迫しました。
のれんリスクの顕在化
買収総額が800億円近くに達する2社について、合計969億円もの減損を計上した事実は、のれんの過大計上リスクが顕在化したことを意味します。IFRSではのれんの定期償却を行わない代わりに、毎期の減損テストで回収可能性を検証する必要があります。
今回の減損計上により、海外事業に関連するのれんの多くが一掃される形となります。これは短期的には利益を大幅に押し下げる一方、来期以降の収益構造を見通しやすくする効果もあります。
来期は最終利益1190億円、2期ぶり最高益の根拠
減損の一巡による利益回復
2027年3月期の最終利益予想が前期比約7.8倍の1190億円と急回復する最大の理由は、今期計上した969億円の減損損失が一過性の費用であるためです。この巨額損失がなくなることで、本業の収益力がそのまま最終利益に反映される構造に戻ります。
実際、2026年3月期の売上収益は前期比6.5%増と堅調であり、減損を除いた国内事業の利益水準は高い状態を維持しています。
国内DX需要が収益を下支え
NRIの収益基盤である国内事業は引き続き好調です。2026年3月末時点の受注残は約3800億円と前年同期から302億円増加しており、企業のDX投資需要が衰える兆しは見られません。
NRIはコンサルティングとITソリューションを組み合わせた「コンソリューション」を強みとしており、金融機関向けの基幹システムや、産業界向けのデジタル変革支援で安定した需要を確保しています。証券総合バックオフィスシステム「THE STAR」をはじめとするASP・SaaS型サービスの拡大も、ストック型収益の積み上げに寄与しています。
株主還元策と市場の評価
自社株買い700億円と増配の同時発表
NRIは決算と同時に、発行済株式の3.66%にあたる2100万株・700億円を上限とする自社株買いを決議しました。取得期間は2026年5月15日から8月31日です。
配当面では、2026年3月期の年間配当を従来計画から3円増額しました。さらに2027年3月期は7円の増配を予定しており、年間配当は74円(中間35円・期末39円)を見込んでいます。連結配当性向を段階的に40%まで引き上げる方針の下、着実に株主還元を強化しています。
株価は「構造改革期待」で底堅く推移
大幅減益の発表にもかかわらず、翌4月24日のNRI株は反発しました。市場では、巨額減損の計上によって海外事業の不採算要因が整理され、今後の構造改革が進みやすくなるとの見方が広がりました。来期の最高益予想や大規模な自社株買いも、投資家心理を支えた要因です。
減損損失は現金流出を伴わない会計上の処理であるため、キャッシュフローへの直接的な影響は限定的です。この点も市場が冷静に反応した背景にあります。
海外事業再建と国内DX成長持続性
海外事業の立て直しが中長期の課題
一過性の減損処理が完了しても、海外事業そのものの収益改善はこれからです。豪州と北米で人材派遣型・コンサルティング型ビジネスの競争環境が厳しさを増す中、NRIが国内で培ったDX支援のノウハウを海外でどこまで展開できるかが問われます。
追加の事業計画見直しや構造改革費用が発生する可能性もゼロではなく、海外事業の進捗は引き続き注視が必要です。
国内事業の成長持続性
国内のDX需要は当面堅調と見込まれていますが、景気変動やIT投資の優先順位変化といったリスクは常に存在します。NRIの中期経営計画では売上収益の年平均成長率5.4%、営業利益の年平均成長率9%を目標としており、この水準を持続できるかが中長期の企業価値を左右します。
1190億円回復と700億円還元の焦点
野村総合研究所の2026年3月期決算は、海外子会社の減損969億円という衝撃的な数字が目を引きますが、その内実を分解すれば「国内事業は好調、海外の一過性損失で全体が押し下げられた」という構図が浮かび上がります。来期に最終利益1190億円と2期ぶりの最高益を見込む背景には、減損の一巡と国内DX需要の堅調さがあります。
自社株買い700億円と増配の同時発表は株主還元への強い意志を示しており、市場もこれを好感しています。投資家にとっては、海外事業の構造改革の進捗と国内受注の持続性を定点観測していくことが、今後の投資判断の鍵となるでしょう。
参考資料:
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