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物価高で強さ増すリユース関連株、月次好調と政策追い風を徹底解説

by 斎藤 裕也
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はじめに

物価高が長引く局面では、節約関連のテーマ株が短期的に物色されがちです。ただ、足元のリユース関連株は、単なる生活防衛テーマで片づけるには少し状況が違います。消費者の中古品への心理的な抵抗感が薄れ、市場規模が政策目標としても明示され、上場各社の月次や決算にも成長の跡がはっきり出ているためです。

環境省は2026年3月に「リユース等の促進に関するロードマップ」を策定し、2024年時点で3兆4,986億円の国内リユース市場を2030年に4兆6,000億円へ広げる目標を打ち出しました。市場はすでに拡大局面にありますが、株式市場が評価するのは市場全体の大きさだけではありません。どの企業が需要を取り込み、どの企業が利益に変えられるのかが問われます。この記事では、物価高、政策、月次、決算の4本線をつなぎながら、リユース関連株の見どころを整理します。

リユース需要拡大の構図

物価高と生活防衛意識の定着

リユース需要を押し上げる第一の要因は、やはり家計の防衛意識です。第一生命経済研究所が2026年4月24日に公表したレポートによると、総務省が同日に発表した2026年3月の全国コアCPIは前年同月比1.8%上昇でした。2月の1.6%から伸びが拡大し、ガソリンは前月比11.2%、灯油は同10.0%と大きく上昇しています。食料品の伸びは鈍化方向でも、生活者が「価格を見て買う」姿勢を強めやすい地合いに変わりはありません。

ただし、今のリユース需要は単なる「安いから買う」だけでは説明しきれません。BuySell Technologiesが2026年4月22日に公表した調査では、商品購入時に中古品を検討する人は66.6%に達し、「中古品を持つのは恥ずかしい」という見方を76.9%が否定しました。直近1年の購入経験は42.3%でしたが、検討層はそれを大きく上回っています。価格メリットが入口になりつつも、中古品はすでに合理的な選択肢として定着し始めているわけです。

この変化は上場企業の業績にとって重要です。中古品需要が一部の節約志向層だけに偏る段階では、景気や気温、キャンペーンで売上が振れやすくなります。しかし検討層が広がると、衣料、家電、ホビー、ブランド品、スマホなどカテゴリーごとに需要の裾野が厚くなります。リユース企業は単価を抑えた販売だけでなく、回転率改善、買取量増加、販路多様化によって利益を伸ばしやすくなります。

環境省のロードマップも同じ方向を示しています。同省は、リユース品の購入や販売によって生活者の可処分所得が増えるため、リユース市場の拡大は物価高対策にも資すると整理しました。リユースが「景気が悪い時だけ使う代替手段」ではなく、「家計の選択肢を増やす社会インフラ」に近づいている点が、今回の相場の土台です。

政策支援と市場拡大の加速

市場拡大を後押しする第二の要因は、官主導で数値目標が明確になったことです。環境省ロードマップでは、2030年までの目標として、リユース市場規模を4兆6,000億円、リユース業者等と協働取組を行う自治体数を約600、生活者のリユース実施率を50%に引き上げる方針が示されました。いずれも2024年時点の現状値から大きく上積みする内容で、事業者にとっては市場拡大を前提に投資しやすい環境になっています。

競争環境の広がりも数字に表れています。警察庁によると、2024年末の古物商等の許可件数は57万3,024件で、前年から4万3,033件増えました。古物競りあっせん業の届出件数も163件まで増えています。参入の増加自体は市場の広がりを示す好材料ですが、上場企業の視点では単純な追い風ではありません。買取チャネル、査定品質、在庫回転、顧客接点で優位に立てない企業は、競争の激化でむしろ採算が悪化しやすいからです。

この点で見落としやすいのが、政策テーマとしての評価と実益相場としての評価の違いです。政策テーマ株は目標発表だけでも買われますが、実益相場は月次の継続性と利益率の改善がなければ長続きしません。リユース関連株も、ここからは「市場が伸びるから全部上がる」段階より、「誰が伸びる市場を収益化できるか」を見極める段階に入りつつあります。

企業業績に表れる勝ち筋

月次が示す店舗型リユースの強さ

まず注目したいのは、店舗型リユースの月次の強さです。ハードオフコーポレーションの2026年3月度サマリーでは、国内直営店ベースの全店売上高が前年同月比125.6%、既存店売上高が同103.2%でした。既存店が前年を上回ったのは9カ月連続です。中古家電やホビー、衣料など、日常消費に近いジャンルを幅広く扱う企業のため、物価高局面での需要の受け皿になりやすい構図が見て取れます。

もっとも、ハードオフの全店売上高25.6%増をそのまま実力値と受け取るのは危険です。同社の英語サマリーには、全店売上高が本体に加えエコプラスとエコノスを合算した数字であること、さらに2025年10月にエコノス子会社化に伴って多数の店舗がFCから直営へ移管されたことが明記されています。つまり、3月の大幅伸長には連結範囲や店舗区分変更の影響が含まれます。一方、既存店が3.2%増を維持している点は、オーガニックな需要の底堅さを示す材料として評価しやすい部分です。

決算面でも、ハードオフは売上成長を確認できます。2026年3月期第3四半期の売上高は281億9,800万円で前年同期比13.7%増でした。営業利益は24億2,000万円で同4.5%減、経常利益は25億3,100万円で同6.1%減でしたが、これは新規出店や子会社化に伴う先行費用を含む局面と読むべきです。直営店540、FC加盟店531の計1,071店舗まで広がった規模感は、将来の仕入力と在庫供給力の厚みにつながります。

トレジャー・ファクトリーも、月次と通期の両方で強さが目立ちます。IR公式noteによると、2026年3月度の全店売上高は前年同月比111.3%、既存店売上高は101.6%で、55カ月連続の既存店プラスを達成しました。しかも3月は前年より休日数が1日少なく、既存店前年比に1.2ポイント程度のマイナス影響があったと試算しています。その条件で既存店がプラスを維持している点は、月次の質としてかなり強い部類です。

通期でも同社は売上高485億円、営業利益47億円といずれも前期比15%超の成長で過去最高を更新しました。既存店売上高は54カ月連続で前年同月超え、32店舗を新規出店し、EC比率も15.7%まで上昇しています。さらに決算説明会書き起こしでは、単体既存店の売上総利益率が64.3%と前期比0.4ポイント改善し、在庫効率も高水準と説明しています。市場が好感しやすいのは、売上成長だけでなく「回転率と利益率が伴う成長」です。トレファクはまさにその条件を満たしやすい企業像です。

M&Aと販路拡張で伸びる総合型

リユース関連株の裾野は、店舗型の中小型だけではありません。ゲオホールディングスは2026年3月期第3四半期に売上高3,556億300万円、営業利益116億5,500万円と、それぞれ前年同期比12.5%増、18.7%増でした。経常利益は125億2,700万円で同14.0%増です。特に注目すべきはリユース系リユース商材の売上高で、1,539億4,200万円と同9.7%増でした。

同社は決算短信の中で、物価高騰に伴う生活防衛意識の定着を背景に、「価値あるものを賢く消費する」スタイルが浸透し、新品より割安なリユース品への需要が旺盛だと説明しています。加えて、2nd STREETを中心に国内外で積極出店を進めており、2025年12月末時点で国内2nd STREETが927店舗、米国52店舗、台湾50店舗、マレーシア30店舗、タイ8店舗まで拡大しました。ゲオは新品販売も持つため純粋なリユース専業ではありませんが、リユースの成長を大規模に取り込める企業として評価対象に入りやすい存在です。

一方、より高い成長率で注目を集めやすいのがBuySell Technologiesです。2025年12月期第1四半期の売上高は234億300万円で前年同期比93.1%増、営業利益は24億2,300万円で同251.8%増、経常利益は23億3,500万円で同288.8%増でした。通期予想も売上高1,000億円、営業利益75億円へ上方修正しています。短期的な市場インパクトの強さでは、こうした上方修正銘柄がテーマ全体の人気を押し上げやすい局面です。

BuySellの特色は、出張訪問買取、店舗買取、オークション、toC販売を一体運営し、M&Aで規模を広げている点です。決算短信では、2025年3月末時点でグループ店舗数425店、うち「Reuse Shop WAKABA」のFCが242店としています。さらにデータドリブン経営とPMIを軸にしたM&A戦略を掲げ、2024年10月に完全子会社化したレクストホールディングスとの統合効果も前面に出しています。リユース関連株の中でも、BuySellは「仕入れチャネルの拡張力」で評価されやすい企業です。

ここから分かるのは、同じリユースでも勝ち筋が複数あることです。ハードオフはカテゴリーの広さと全国網、トレジャー・ファクトリーは既存店の強さと粗利改善、ゲオは2nd STREETの規模と海外展開、BuySellはM&Aと高付加価値商材で違いを出しています。テーマ株として一括りに見える局面ほど、実際はそれぞれ異なる成長ドライバーを持っています。

リユース関連株を選ぶ視点

仕入れ力と在庫回転の差

リユース企業を分析するうえで最も重要なのは、売上高より先に「何をどれだけ安定して仕入れられるか」です。新品小売と違い、リユースでは仕入れそのものが原材料の確保に当たります。買取件数が伸びない、査定精度が低い、回転の遅い在庫が積み上がる、といった問題が起きると、売上が伸びても利益がついてきません。

その意味で、月次を見る際は全店売上高だけでなく、既存店、仕入れ、在庫効率まで意識する必要があります。ハードオフは全店の見栄えが強い一方、既存店で読むべき部分と連結範囲変更で膨らんだ部分を切り分ける必要があります。トレジャー・ファクトリーは既存店の継続成長に加え、売上総利益率と在庫効率の改善を示しており、業績の質が高い印象です。ゲオはリユース商材売上の伸びを確認しつつも、新品商材の寄与を含む複合企業としてみるべきです。

BuySellのような高成長銘柄では、M&A後の統合進捗も要点になります。売上高の急拡大は魅力ですが、のれん償却やPMIコスト、商材ミックスの変化が利益率に影響しやすいためです。短期資金は増収率に飛びつきやすい一方、中期投資では営業利益率とキャッシュ創出力の確認が欠かせません。テーマ株の勢いだけで追うより、仕入れから販売までの循環がどこまで磨かれているかを見た方が、失敗は減ります。

政策テーマから実益相場への移行

もう一つの視点は、リユース関連株が政策テーマ相場から実益相場へ移る可能性です。環境省ロードマップは、中長期の市場拡大期待を支える強い材料です。ただし、数値目標があること自体では利益は増えません。自治体との回収連携、安心して売買できる仕組みづくり、真贋やクリーニング、販路整備までを事業者が実装できて初めて、政策は売上と利益に転化します。

実際、BuySellの調査でも、中古品利用拡大の条件として「実物の確認」「プロによるクリーニング」「アフターサポート」が上位に挙がりました。価格だけでなく信頼性が問われているということです。これは上場企業にとって追い風で、真贋、査定、メンテナンス、保証を標準化できる企業ほど、個人間取引との差別化がしやすくなります。政策が市場を広げ、信頼構築能力が上場企業に利益を集める構図です。

また、古物商等の許可件数が57万件を超えたことは、市場が広がっている半面、仕入れ競争が厳しくなるサインでもあります。今後は「市場が大きいから伸びる」ではなく、「競争が増えても仕入れ優位を守れるか」が株価の差になります。テーマ株の初動で資金が一斉に流れても、最終的に残るのは、月次の継続性と利益率で説明できる銘柄です。

注意点・展望

リユース関連株を見る際の典型的な誤りは三つあります。第一に、全店売上高の高成長をそのまま既存店の強さと誤認することです。ハードオフのように連結範囲変更が効くケースでは、既存店の数字を別に追わないと実態を読み違えます。第二に、リユース専業と複合小売を同じ基準で比較することです。ゲオのように新品比率が高い企業は、景気や商材サイクルの影響も大きく受けます。第三に、売上成長だけで在庫回転や粗利率を見ないことです。

先行きはなお明るい一方、株価は想像以上に変動しやすいとみるべきです。月次開示のたびに短期資金が入りやすく、上方修正や下方修正への反応も大きくなります。加えて、エネルギー価格や補助金の動向次第では家計の節約意識がさらに強まる可能性もあれば、逆に一時的に和らぐ可能性もあります。需要の大勢は拡大でも、個別銘柄の評価は毎月の数字で細かく選別される局面が続きそうです。

中長期では、環境省が2030年までの市場目標を明示した意義は大きいと考えられます。自治体連携や適正なリユース市場の整備が進めば、信頼性を備えた大手・準大手の優位性はむしろ高まりやすいからです。テーマとしての寿命は短くなく、むしろここからは企業ごとの差が拡大するフェーズと見た方が実態に近いでしょう。

まとめ

リユース関連株に資金が向かう理由は、物価高による節約需要だけではありません。2024年時点で3兆4,986億円の市場を2030年に4兆6,000億円へ拡大させる政策目標、57万3,024件まで増えた古物商等許可件数、そしてハードオフ、トレジャー・ファクトリー、ゲオ、BuySellに表れた月次・決算の強さが、複合的に市場の期待を支えています。

そのうえで、投資判断は「リユース関連株だから買い」では粗すぎます。既存店の伸び、連結範囲変更の有無、在庫回転、粗利率、仕入れチャネル、M&Aの統合進捗まで見て初めて、銘柄ごとの強弱が分かります。物価高時代のリユース相場は、政策テーマ株の初動を過ぎ、数字で選ぶ段階に入りつつあります。次に見るべきは、月次の勢いが四半期利益にどうつながるかです。

参考資料:

斎藤 裕也

テーマ株・材料分析

テーマ株・材料株の発掘と分析を得意とする。企業の IR 情報と業界動向を結びつけ、投資家目線で銘柄の「次の一手」を読む。

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