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ダウ平均が上下動、イラン原油リスクと米金利が映す今週の市場心理

by 柴田 慎一
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イラン原油リスクが動かす米株の現在地

5月18日の米国株は、指数ごとに温度差が出る一日でした。APの主要指数集計によると、ダウ工業株30種平均は159.95ドル高の4万9686.12ドルで終了しました。一方、S&P500は0.1%安、ナスダック総合は0.5%安です。表面上は小動きでも、日中の値動きは原油価格、米国債利回り、イラン情勢をめぐる見出しに細かく反応しました。

今回の相場を読むうえで重要なのは、イラン関連ニュースを単なる地政学リスクとして処理しないことです。ホルムズ海峡の機能低下は、原油価格、インフレ期待、FRBの政策見通し、AI関連株のバリュエーションまで同時に動かします。ダウ平均の上昇は安心感の表れというより、投資家が高PER成長株から一部の景気敏感株や金融株へ資金を移した結果とみるべきです。

ダウを支えた景気敏感株と金利低下

主要指数に表れた防御的な買い

18日の終値は、米国株全体の強さを示すものではありません。ロンドン証券取引所が配信したReuters記事でも、ダウ平均は0.32%高の4万9686.12ドル、S&P500は0.07%安の7403.05、ナスダック総合は0.51%安の2万6090.73と報じられています。ダウがプラスを維持した一方、ハイテク比率の高いナスダックが下げた構図です。

この差は、指数の性格を反映しています。ダウ平均は30銘柄で構成される価格加重指数で、ナスダックほど大型テクノロジー株の比重に偏っていません。エネルギー価格が乱高下し、金利の高止まりが意識される局面では、将来利益への期待で買われてきた成長株ほど割引率上昇の影響を受けやすくなります。ダウの上昇は、相場全体のリスク選好が強まったというより、下げにくい銘柄への避難と循環物色が重なった動きです。

米10年債利回りが決める株価の割引率

Reuters系の記事によると、米10年債利回りは18日の早い時間帯に4.631%まで上昇し、2025年2月以来の高水準を付けた後、4.573%まで低下しました。別のReuters配信では、長期金利が夜間取引で4.659%まで上げた後、4.591%近辺に戻したとされています。数値に幅があるのは時点差によるものですが、共通しているのは4.5%台半ばの金利水準が株価の重石になっている点です。

成長株の価格は、将来の利益を現在価値に割り引いて評価されます。米10年債利回りが上がると、その割引率が上昇し、遠い将来に利益が集中するAI関連株や半導体株ほど評価が厳しくなります。Reutersが引用したDakota WealthのRobert Pavlik氏も、AI関連を含む成長株は将来利益で値付けされるため、利回り上昇がバリュエーションを下げる要因になるとの見方を示しました。

セクター循環を促した原油と決算待ち

セクター別には、時間帯によってリーダーが入れ替わりました。朝方のReuters配信では、S&P500の中で消費者サービスと金融が上昇を主導し、情報技術とエネルギーが弱いとされました。その後のグローバルマーケット記事では、原油価格の反発を受けてエネルギーが上昇し、情報技術は1%安、半導体指数は2.5%安となっています。

この動きは、投資家が一つのシナリオに賭けていないことを示します。原油が下がればインフレ圧力の後退として株式にプラスですが、原油が上がればエネルギー株には追い風です。一方で、原油高が長引けば消費者の購買力や企業マージンを圧迫します。今週はNVIDIAやWalmartの決算も予定され、AI投資の持続力と米消費の耐性が同時に試される局面です。

市場はすでに好材料を相当程度織り込んでいます。Investing.comが配信したReuters記事では、S&P500は直近で7週連続高となり、ナスダックも過去最高値圏にあったと説明されています。TruistのKeith Lerner氏は、S&P500が約18%、テクノロジー株が約36%上昇した後だけに、短期的には消化局面に入りやすいとの見方を示しました。ダウの小幅高は、この高値警戒のなかで資金の逃げ場が変化した結果といえます。

制裁免除と強硬姿勢が生む情報のねじれ

一時的な制裁免除報道と未確認情報

18日の市場が上下動した最大の理由は、イランをめぐる交渉や制裁の情報が同時に複数流れたことです。Reuters配信の記事では、米国がイラン産原油制裁の一時免除を提案したとの報道を受け、ブレント原油が一時2%近く下落したとされています。ただし、同じ記事はイラン当局が直ちにコメントしなかったとも伝えています。

さらにInvesting.comの関連記事では、イラン側メディアのTasnimが、米国がイランの石油制裁免除に同意したと報じた一方、CNBCは米当局者の話としてその主張は誤りだと伝えた、とされています。つまり、18日の株式市場は「制裁緩和があるかもしれない」という期待と、「公式確認はまだない」という不確実性の間で揺れました。

この点で重要なのは、観測と公的文書を分けて見ることです。5月18日にOFACのページで確認できる新規文書は、イラン産原油ではなくロシア産原油に関するGeneral License 134Cです。同文書は、2026年4月17日午前0時1分までに船積みされたロシア連邦原産の原油・石油製品について、一定の販売、配送、荷降ろし関連取引を6月17日午前0時1分まで認める内容です。情報が錯そうした場面ほど、トレーダーは見出しではなく文書番号と対象物を確認する必要があります。

過去のイラン産原油免除が残す市場記憶

市場が制裁免除の観測に敏感だった背景には、3月の前例があります。Reutersは3月20日、米政権が海上に滞留しているイラン産原油の購入に対する制裁を30日間免除し、約1億4000万バレルを市場に出す狙いだったと報じました。Bessent米財務長官は、その供給が10日から14日程度の価格抑制に役立つとの趣旨を示したとされています。

ただし、その後は強硬姿勢も目立ちました。4月15日のReuters配信では、米国がイラン産原油の買い手に二次制裁を科す可能性を警告し、3月20日に出した免除は4月19日で失効し、更新されない見通しだと報じられました。APも4月24日、Bessent氏がイラン産原油の一回限りの免除更新は「完全に対象外」と述べたと伝えています。こうした発言の蓄積があるため、5月18日の新たな免除観測は、市場にとって大きな材料になりました。

ホルムズ海峡が金融政策に接続する経路

原油市場の緊張は、ホルムズ海峡の機能低下に集中しています。EIAの5月Short-Term Energy Outlookは、2月28日に始まった軍事行動以前、ホルムズ海峡を通じて世界の原油供給の約20%が流れていたと説明しています。同レポートは、同海峡が事実上閉鎖されたことで世界の石油市場が高い不確実性に置かれていると分析しました。

EIAはまた、ブレント原油のスポット価格が4月に1バレル117ドル平均となり、2月平均を46ドル上回ったとしています。中東での生産停止は4月平均で日量1050万バレル、5月にはほぼ日量1080万バレルに達する見込みです。2四半期の世界在庫は日量850万バレルペースで減少し、5月と6月のブレント平均は約106ドル、4四半期には89ドル平均へ低下するとの前提も示されました。

この数字が株式市場に与える意味は明確です。原油高が長期化すれば、ガソリンや輸送費を通じてインフレ圧力が再燃します。Reuters配信では、CMEのFedWatchに基づき、1月にFRBが利上げする確率が38.8%超に達したとも伝えられました。インフレ再燃は利下げ期待を後退させるだけでなく、利上げ再開リスクまで市場に意識させます。ダウ平均の上下動は、外交ニュースよりも金融政策期待の揺れとして理解する方が実務的です。

強硬制裁と価格抑制の二重目標

米国の政策対応には、明確な二重目標があります。一方では、イランの石油収入や関連金融網を締め上げるため、OFACは4月15日にイランの違法な石油輸送網に関わる個人、企業、船舶を二十数件以上制裁対象に加えました。財務省は、NSPM-2以降、1000を超える人物、船舶、航空機を制裁対象にしたとも説明しています。

他方で、原油価格の急騰は米国経済と同盟国にも跳ね返ります。財務省は4月28日、中国の独立系「ティーポット」製油所がイラン産原油の輸入・精製で重要な役割を担うと警告し、中国がイランの石油輸出のおよそ90%を購入していると説明しました。強硬制裁を徹底すれば供給不安が増し、価格抑制を優先すれば制裁網に抜け穴が生じます。このねじれこそ、18日の米国株を落ち着かなくさせた根本要因です。

原油高長期化で増す三つの市場圧力

第一の圧力は、インフレと金利です。原油高はエネルギー企業の利益にはプラスですが、航空、物流、小売、化学、消費財など幅広い産業のコストを押し上げます。米10年債利回りが4.5%台半ばで高止まりすれば、株式のリスクプレミアムは薄くなり、特に高PER銘柄の調整余地が広がります。

第二の圧力は、AI関連株への期待の集中です。NVIDIA決算を控え、半導体指数が2.5%下落したことは、投資家がAI投資の物語を疑い始めたというより、高値圏で悪材料に反応しやすくなったことを示します。台湾情勢や米中関係への懸念も重なれば、半導体サプライチェーンは原油とは別の地政学リスクを抱えます。

第三の圧力は、世界の債券市場への波及です。Reutersは、日本の10年債利回りが1996年以来の水準に達した場面にも触れています。日本株にとって米国の原油高と金利上昇は、円相場、輸入コスト、海外投資家のリスク許容度を通じて影響します。米国株の上下動は、翌日の東京市場でグロース株、商社、エネルギー関連、航空・陸運の相対パフォーマンスに表れやすい局面です。

注意すべきは、原油価格の一時下落をそのまま株高材料とみなせない点です。18日のように、朝方は制裁免除観測で原油が下げても、引けにかけて供給不安が再燃すればWTIは108.66ドル、ブレントは112.10ドルで決着することがあります。株式市場が必要としているのは、短期的な価格低下ではなく、ホルムズ海峡の通航、制裁の対象範囲、停戦交渉の実効性が同時に確認できる状態です。

投資家が今週確認すべき米株の焦点

今週の米国株では、三つの確認が必要です。第一に、OFACや財務省の文書で実際に発効した制裁免除の対象を確認することです。イラン産なのか、ロシア産なのか、海上在庫だけなのかで市場への意味は大きく異なります。

第二に、ブレント原油と米10年債利回りを同時に見ることです。原油高でも金利が落ち着けば株式は持ちこたえやすく、原油高と金利高が重なればナスダック主導で調整圧力が強まります。第三に、NVIDIAや小売決算で、AI投資と消費の両輪が高金利・高エネルギー価格に耐えられるかを確認することです。

ダウ平均の小幅高は、危機が後退した証拠ではありません。むしろ、政策観測、原油需給、金利、セクター循環が短時間で入れ替わる相場の耐性を示した動きです。個人投資家は指数の前日比だけで判断せず、公式文書、原油、米金利、半導体株の四点をそろえて確認する局面です。

参考資料:

柴田 慎一

海外市場・米国株

米国株・欧州株を中心に海外市場の動向を分析。グローバルな資金フローと各国の金融政策が日本市場に与える影響を追う。

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