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HBMで再燃する半導体メモリー株、東京市場で試される持続力とは

by 杉山 直樹
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はじめに

東京株式市場では2026年4月23日、日経平均株価が取引時間中に6万0013円98銭まで上昇し、節目を初めて上抜けました。ただし終値は5万9140円23銭と反落しており、勢いの強さと脆さが同じ日に表面化しています。4月24日朝も日経平均は5万9407円44銭で反発して始まり、半導体関連が底堅いと報じられました。

この値動きを単に「AI相場の継続」と受け取るだけでは、翌営業日に何を見るべきかがぼやけます。いま市場で起きているのは、GPUだけが強い局面ではなく、HBMを起点にDRAM、NAND、パッケージ基板、検査装置へと需給の逼迫が連鎖し、その連想が日本株の物色対象を広げている局面です。

本稿では、米国や韓国、台湾の半導体企業の業績とメモリー価格見通しを確認したうえで、それがなぜ東京市場のメモリー関連株に波及しているのかを整理します。そのうえで、4月24日現在で次の国内取引日となる4月27日に向け、どの指標と銘柄群を見ればよいかを読み解きます。

メモリー相場再燃の構図

HBMが引き上げる需給逼迫

まず確認すべきは、AI投資の主役がGPU単体ではなく、その周辺の高性能メモリーまで広がっている点です。NVIDIAの2026年度第4四半期決算では、四半期売上高が681億2700万ドル、データセンター売上高が623億1400万ドルに達しました。会社側は、企業顧客がAIコンピュート投資を急いでいると説明しており、計算能力の増強が一過性ではないことを示しています。

この需要は、ファウンドリーの稼働状況にも表れています。TSMCの2026年第1四半期売上高は359億ドルで前年同期比40.6%増、同社の7ナノ以下の先端プロセスは売上構成比74%でした。さらに第2四半期売上高は390億〜402億ドルを見込んでいます。AI向けアクセラレーターの増産が続くなら、同時に必要になるHBMや高性能DRAMの需要も高止まりしやすくなります。

HBMはGPUの周辺部材ではなく、AIサーバーの性能を左右する中核部品です。演算能力だけを積み増しても、メモリー帯域が追いつかなければ推論処理は詰まります。いわゆる「メモリーウォール」の制約が強まるほど、AI向けサーバー市場では高密度・高帯域のDRAMが必要になります。そのため、ロジック半導体の好調がそのままメモリー需給の引き締まりへつながる構図になっています。

韓国勢と米国勢の決算もこの見立てを補強しています。ロイターは4月23日、SK hynixの第1四半期営業利益が5倍超に増え、先端品と汎用品の双方で旺盛なメモリー需要が見られたと報じました。Micronも3月18日の2026年度第2四半期決算で、売上高238億6000万ドルを計上し、クラウド向けメモリー事業の売上高は77億4900万ドルまで拡大しました。メモリーはもはやロジック景気の従属変数ではなく、AI設備投資を支える独立した収益源として評価され始めています。

汎用品まで波及する価格上昇

重要なのは、上昇がHBMだけにとどまっていないことです。TrendForceは2月時点で、2025年第4四半期のDRAM業界売上高が535億8000万ドルと前四半期比29.4%増になったと推計しました。需要の中心はHBM3eや高容量RDIMMですが、調達の裾野が広がることで通常DRAMまで価格交渉力が移っています。

さらに3月31日の見通しでは、2026年第2四半期の通常DRAM契約価格は前四半期比58〜63%上昇、NANDフラッシュ契約価格も70〜75%上昇する可能性があるとされています。背景には、DRAMメーカーが生産能力をHBMやサーバー向けへ振り向け、NANDでもAIデータセンター向けの企業向けSSDが優先されている事情があります。高付加価値品へのシフトが、結果として汎用品の供給不足も深めているわけです。

この波及は、メモリーメーカー各社の開示にもにじみます。Samsung Electronicsは4月7日に第1四半期の業績見通しとして売上高約133兆ウォン、営業利益約57.2兆ウォンを示しました。さらに1月公表の2025年10〜12月期決算では、メモリー事業がHBMなど高付加価値品の拡販で過去最高の四半期売上高・営業利益を更新したと説明しています。トップ企業が高付加価値メモリーを軸に収益構造を改善していることが確認できます。

つまり、いまのメモリー相場は「HBMだけが高い」という単純な物語ではありません。AIサーバーの増設が続くことで、HBMが生産キャパシティを吸い上げ、余波として通常DRAMやNANDまで値上がり圧力が波及する構図です。投資家がメモリー関連株を再評価しているのは、利益成長の起点が特定製品ではなく、需給構造そのものに移っているからです。

東京市場へ波及する銘柄連鎖

直接銘柄から装置・基板への拡散

東京市場で注目されているのは、メモリーメーカーそのものだけではありません。4月23日のロイター記事では、指数寄与度の大きいソフトバンクグループが堅調だったほか、キオクシアホールディングスも買われたと伝えられました。4月24日朝も、東京市場では指数寄与度の大きい半導体関連が底堅く推移したと報じられています。市場は「メモリーそのもの」と「メモリーを作るための周辺設備・部材」の両方を見始めています。

その象徴がアドバンテストです。同社の2025年度第3四半期累計売上高は8005億円で前年同期比46.3%増、営業利益は3460億円で同110.8%増でした。会社側は、HPCやAI関連半導体向けテスター需要の拡大に加え、高性能DRAM向けメモリーテストシステムの販売も堅調だったと説明しています。HBMや高性能DRAMの増産局面では、前工程だけでなく検査工程の能力増強も必要になるため、テスター需要が伸びやすいのです。

パッケージ基板でも同様の動きが見られます。Ibidenは2月3日、高性能ICパッケージ基板の生産能力拡大に向け、2026年度から2028年度までの3年間で約5000億円を投資する計画を公表しました。第1段階として約2200億円を投じ、2027年度から順次量産を始める予定です。目的にはAIサーバー向け、高性能サーバー向け需要への対応が明記されています。HBMの需要拡大は、チップ単体の話ではなく、先端パッケージや基板供給網の増強まで伴う投資テーマだと分かります。

この観点でみると、「メモリー関連株」は以前より広い概念になっています。キオクシアのようなNANDの直接プレーヤーだけでなく、テスターのアドバンテスト、前工程装置の東京エレクトロン、基板のIbidenまで、AIメモリー供給網に接続する企業群が同じテーマで買われやすくなっています。相場の裾野が広がるほど、局所的なテーマ株物色ではなく、サプライチェーン全体の設備投資サイクルとして評価されやすくなります。

指数構造が増幅する値動き

もっとも、東京市場の上昇をそのまま日本株全体の強さと見るのは危険です。日経平均の4月23日データを見ると、技術株の比率は54.71%に達し、アドバンテストだけで11.39%、ソフトバンクグループが7.94%、東京エレクトロンが7.73%を占めています。値がさのハイテク株に資金が集まると、相場全体の広がりが弱くても指数は大きく動きます。

実際、4月22日のロイター記事では、日経平均が5万9585円86銭まで上昇した一方で、プライム市場では8割超の銘柄が値下がりしたと報じられました。4月23日終値ベースでも、日経平均は5万9140円23銭、TOPIXは3716.38ポイントで、プライム市場の値下がり銘柄は7割超でした。AI・半導体株が強いことは事実ですが、その裏側では相場の広がりが極めて限定的です。

この構造は短期的には追い風ですが、同時にボラティリティも高めます。日経平均は4月23日に一時6万円へ乗せた後、利益確定売りでマイナス転換しました。指数を支える銘柄数が少ないほど、主役株の一角に売りが出たときの下押しも速くなります。メモリー関連株が主導株であり続けるには、個別業績の上方修正や受注拡大が継続的に確認される必要があります。

その点で、同じ半導体でも温度差はあります。東京エレクトロンの2026年3月期会社計画は、売上高2兆4100億円で前期比0.9%減、営業利益5930億円で同15.0%減です。AI向け投資が強くても、装置業界全体が一様に増益になるわけではありません。製品構成や顧客の投資タイミングで差が出るため、「半導体だから全部買い」という見方は危ういと言えます。

注意点・展望

4月24日現在で次の東京市場の取引日は4月27日です。そこへ向けた観点では、第一に米国のAI関連企業の決算と設備投資ガイダンスが続くかどうかが重要です。NVIDIAやMicron、TSMCの数字が示したのは、AI投資がなお前倒しで進んでいる現実ですが、この流れが主要クラウド企業の支出計画で裏づけられなければ、メモリー関連株には利益確定売りが出やすくなります。

第二に、価格上昇の恩恵と副作用を切り分ける必要があります。TrendForce自身も、需要の弱い最終市場には下振れリスクがあると指摘しています。メモリー価格が急騰し続ければ、スマートフォンやPCなど価格転嫁の難しい分野では需要を傷める可能性があります。相場が強いときほど「値上がりはすべて好材料」と見なされがちですが、行き過ぎた価格上昇は次の調整要因にもなります。

第三に、指数と物色の広がりを分けて見ることです。日経平均が再び高値を試しても、TOPIXや騰落数がついてこなければ、主役株に資金が集中したままの相場だと判断すべきです。その場合、4月23日に見られたような節目到達後の反動安が再現されやすくなります。逆に、メモリー関連株の強さが機械、化学、電子部品など周辺業種にまで自然に波及すれば、相場の持続性は高まります。

要するに、次の注目点は「メモリー関連株が強いかどうか」だけではありません。HBM主導の需給逼迫が、日本企業の受注、設備投資、業績見通しへどこまで転写されるかが本当の分岐点です。相場の勢いを見るなら株価、持続力を見るなら数量と設備投資を見る必要があります。

まとめ

東京市場でメモリー関連株が再び物色されている背景には、HBMを起点とした世界的な需給逼迫があります。NVIDIAとTSMCの好調がAIサーバー投資の強さを示し、SK hynix、Micron、Samsungの業績や見通しがメモリーの収益力改善を裏づけました。そこへTrendForceの価格見通しが重なり、投資家はメモリーメーカーだけでなく、テスター、装置、基板まで含めた供給網全体を買い始めています。

ただし、日経平均の上昇は指数構造によって増幅されやすく、相場の広がりはなお限定的です。4月27日に向けては、米国のAI投資継続、国内半導体サプライチェーンの受注確認、TOPIXや騰落数の改善がそろうかが焦点になります。メモリー株の復権が本物かどうかは、テーマ性ではなく、設備投資と利益成長の持続で判断する局面です。

参考資料:

杉山 直樹

市況・テクニカル分析

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