相場不安に備える秋の高配当株6銘柄、好進捗と割安性を徹底検証
政策金利一%時代に見直す配当株
日銀は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%へ引き上げました。7月の消費者物価指数も、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比1.8%上昇しており、金利と物価を巡る不透明感は残っています。次回会合を9月17~18日に控え、成長株の将来利益だけに依存しない投資先として高配当株を見直す意味は小さくありません。
ただし、表示された利回りだけで選ぶのは危険です。本稿では第1四半期の利益進捗、PERとPBR、配当方針を照合し、科研製薬、コスモエネルギーホールディングス、ホンダ、東京インキ、大紀アルミニウム工業所、インフロニア・ホールディングスの6社を独自に検証します。
通期計画を先行する利益進捗三銘柄
今回の選定では、予想配当利回りがおおむね3.5%以上で、利益進捗や前年同期比の改善が確認できる企業を抽出しました。割安性については、予想PERが17倍以下、またはPBRが1.1倍以下のいずれかを目安としています。
株価と指標は2026年9月10日終値時点です。進捗率には各社が経常的な業績指標として重視する営業利益、経常利益または事業利益を使用しました。
| 銘柄 | 終値 | 予想配当利回り | 予想PER | 実績PBR | 第1四半期利益進捗 |
|---|---|---|---|---|---|
| 科研製薬 | 3,835円 | 4.95% | 22.34倍 | 0.95倍 | 138.0% |
| コスモエネルギーHD | 4,562円 | 3.62% | 16.46倍 | 1.07倍 | 115.7% |
| ホンダ | 1,634.5円 | 4.28% | 15.91倍 | 0.51倍 | 81.6% |
| 東京インキ | 2,093円 | 4.54% | 9.87倍 | 0.83倍 | 28.6% |
| 大紀アルミ | 1,768円 | 5.09% | 5.76倍 | 0.89倍 | 21.3% |
| インフロニアHD | 2,766円 | 4.77% | 8.15倍 | ― | 17.0% |
進捗率が100%を超える企業でも、通期業績の上方修正に直結するとは限りません。反対に25%を下回っていても、下期偏重の事業構造や、期中から加わる買収先の利益を考慮する必要があります。
科研製薬を押し上げた契約一時金
科研製薬の第1四半期決算は、売上高301億5,400万円、営業利益109億200万円でした。通期営業利益予想79億円を第1四半期だけで超え、純利益も通期予想65億円に対して84億3,900万円へ達しています。
急増益の中心は、Johnson & Johnsonとのライセンス契約に伴うマイルストン収入です。継続的な医薬品販売による利益とは性質が異なり、第2四半期以降には研究開発費などの負担が先行するとみられます。国内ではクレナフィン群の第1四半期売上高が前年同期比47.2%減少しており、既存品の採算改善も課題です。
年間配当予想は190円で、9月10日時点の利回りは4.95%です。一方、会社予想EPS171.65円に対する配当性向は単純計算で約111%となります。自己資本比率は81.6%、現金及び現金同等物は507億円と財務余力がありますが、配当維持には新薬、海外事業、ライセンス収入の継続が欠かせません。
コスモの超過進捗を生んだ精製時差
コスモエネルギーHDの第1四半期決算は、経常利益1,330億円、純利益840億円でした。通期計画はそれぞれ1,150億円、440億円であり、表面的にはすでに年間予想を上回っています。
在庫影響を除く経常利益も1,221億円と高水準です。中東情勢の緊迫化後に原油の調達から受け入れまでの期間が延び、油価高騰前に仕入れた原油が収益化されたことや、海外石油製品市況の上昇が寄与しました。
ただし会社は、第2四半期以降に高値で調達した原油が到着し、負のタイムラグが発生すると想定しています。このため通期計画は据え置かれました。年間配当165円と利回り3.62%には魅力があるものの、足元の進捗率を4倍して年間利益を推定する手法は通用しません。
ホンダを支える二輪収益と円安効果
ホンダの第1四半期営業利益は5,307億円と、四半期として過去最高でした。通期予想6,500億円に対する進捗率は81.6%です。会社は為替前提を1ドル145円から155円へ変更し、通期営業利益を従来の5,000億円から上方修正しました。
二輪事業はインドやブラジルを中心に販売を伸ばし、営業利益2,339億円、利益率20.5%を記録しました。四輪事業も前年同期の調整後営業利益923億円から1,921億円へ改善しています。為替影響が908億円の増益要因となった点は、円高反転時の感応度として意識すべきです。
年間配当は70円、利回りは4.28%で、PBRは0.51倍にとどまります。ただし通期には電動化戦略見直しに伴う5,200億円の損失を織り込みます。第1四半期にはこの損失が発生していないため、単純な進捗率より、EV関連損失を除いた調整後営業利益1兆1,700億円の達成度を追う方が実態に近いでしょう。
増配と低評価を兼ね備える三銘柄
東京インキの価格転嫁と増配余力
東京インキの第1四半期決算は、売上高133億4,700万円、営業利益7億7,200万円でした。前年同期比ではそれぞれ11.0%、36.2%増加しています。原材料価格上昇に対する販売価格改定、高付加価値製品への移行、土木・農業資材の販売増が収益を押し上げました。
会社は通期営業利益予想を18億円から27億円へ50%引き上げ、年間配当も65円から95円へ増額しました。配当方針は連結配当性向40%以上またはDOE1%以上で、12億円を上限とする自己株式取得も打ち出しています。
予想PER9.87倍、PBR0.83倍、配当利回り4.54%という組み合わせは、今回の6社でも均衡が取れています。ただし主力のインキ事業は、価格転嫁の遅れからセグメント利益が前年同期比4.3%減りました。原材料高を吸収しながら通期営業利益率を引き上げられるかが、中間決算の焦点です。
大紀アルミの低PERと市況循環性
大紀アルミの第1四半期決算は、売上高976億900万円、営業利益37億3,900万円でした。営業利益は前年同期比146.1%増、純利益は257.6%増です。インドとタイで製品販売価格と原料価格のスプレッドが拡大したほか、自動車・二輪向け合金の販売も伸びました。
通期予想は営業利益175億5,000万円、純利益121億5,000万円で、年間配当を前期の55円から90円へ増やす計画です。予想PER5.76倍、PBR0.89倍、配当利回り5.09%は、数値上の割安感が最も強い組み合わせとなっています。
一方、第1四半期の営業利益進捗率は21.3%にとどまります。アルミ相場上昇で棚卸資産が前期末比約145億円増え、短期借入金も約126億円増加しました。利益成長だけでなく、運転資金の膨張と営業キャッシュフローを併せて確認する必要があります。
インフロニアの増配を支える評価益
インフロニアHDは、第1四半期に保有金融資産の公正価値上昇による金融収益975億円を計上しました。純利益は761億3,500万円に達し、修正後の通期予想855億円に対して89.0%まで進んでいます。
ところが、本業を測る事業利益は147億7,000万円で、通期予想867億円に対する進捗率は17.0%です。会社自身も、金融資産を構成する市場価格が第1四半期末後に下落し、期末の金融収益は第1四半期実績を下回ると見込んでいます。
7月から水ingを連結化する効果などを踏まえ、通期売上高を790億円、事業利益を67億円引き上げました。年間配当も100円から132円へ増額され、利回りは4.77%です。配当性向40%以上、下限配当90円という方針は支えになりますが、132円の維持可能性は本業利益と評価益の着地を分けて判断すべきでしょう。
一過性利益と権利落ち後の下振れ余地
6社はいずれも高利回りですが、利益の再現性には大きな差があります。科研製薬は契約一時金、コスモは原油調達のタイムラグ、インフロニアは金融資産の評価益が進捗率を押し上げました。ホンダも、第1四半期には未計上だったEV関連損失を通期計画に含んでいます。
| 銘柄 | 利益の持続性を測る確認項目 |
|---|---|
| 科研製薬 | マイルストン収入を除く営業損益と研究開発費 |
| コスモエネルギーHD | 在庫影響除き利益と原油受け入れ時差 |
| ホンダ | EV関連損失、二輪利益率、為替前提 |
| 東京インキ | インキ事業の価格転嫁率と営業利益率 |
| 大紀アルミ | 製品と原料のスプレッド、棚卸資産、借入金 |
| インフロニアHD | 事業利益、金融資産評価、水ingの統合効果 |
テクニカル面では、9月末の権利取りを意識した上昇局面で直近高値を追いかけると、権利落ち後の値下がりが受取配当を上回ることがあります。株価が上昇するほど配当利回りも低下します。短期間で出来高を伴って急伸した銘柄は一括購入を避け、移動平均線との乖離縮小や中間決算後の押し目を待つ方法が有効です。
九月末までに確認したい三つの投資軸
第一の軸は、進捗率ではなく利益の中身です。契約一時金、在庫影響、評価益を除き、製品販売や価格転嫁から生じた利益が前年同期を上回っているかを確認します。第二は配当性向とDOE、第三はPER・PBRと株価トレンドの組み合わせです。
本業の改善と増配を重視するなら東京インキ、景気敏感株の低PERを許容するなら大紀アルミ、財務力と事業分散を重視するならホンダが比較しやすい候補です。科研製薬、コスモ、インフロニアは高進捗の背景に特殊要因が大きく、半年先の数字まで確認したうえで投資額を抑える視点が欠かせません。
高配当株は相場急変時のクッションになり得ますが、利回りそのものが株価の下限を保証するわけではありません。6社を同じ尺度で順位付けせず、利益の質と配当原資に応じて分散することが、秋相場を乗り切る現実的な戦略です。
参考資料:
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