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日経平均最高値更新、AI相場から循環物色へ進む条件を読み解く

by 杉山 直樹
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6万5000円台乗せが示す相場の温度差

5月25日の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比1,819円12銭高の65,158円19銭で取引を終えました。取引時間中の高値は65,408円87銭に達し、初めて65,000円台に乗せました。TOPIXも3,942.57ポイントまで上昇し、2月の高値を上回っています。

ただし、指数の最高値更新をそのまま「市場全体の全面高」と読むのは早計です。東証プライム市場では値下がり銘柄の比率が値上がり銘柄を上回り、体感温度には大きな差がありました。半導体、AI、電線、電子部品といった成長テーマに資金が集中する一方、内需ディフェンシブや原油関連の一角には売りも出ています。

本稿では、日経平均の強さを支える指数構造と業績期待を分解し、AI関連以外に物色が広がる条件を確認します。短期テクニカルでは65,000円台の定着、中期ではTOPIX主導の上昇に移れるかが焦点です。投資家に必要なのは、指数の迫力に流されず、騰落銘柄数、売買代金、金利、セクター循環を同時に見る姿勢です。

AI主導高を支える指数構造と業績期待

大型グロース株に傾く日経平均の性格

今回の上昇局面でまず確認すべき点は、日経平均とTOPIXの性格の違いです。日経平均は225銘柄で構成され、日経平均プロフィルのファクトシートでは技術セクターのウエートが54.15%と示されています。生成AI、半導体製造装置、電子部品、通信インフラの上昇が指数に反映されやすい構造です。

実際、5月25日の大引け時点では、日経平均構成銘柄の値上がりが141銘柄、値下がりが83銘柄、変わらずが1銘柄でした。さらにソフトバンクグループと東京エレクトロンの2銘柄だけで、日経平均を約488円押し上げたとされています。指数が1,800円超上げた日の内訳としては、主力大型株の寄与が非常に大きい相場でした。

TOPIXは浮動株時価総額加重型で、日本株市場を広く網羅するベンチマークです。TOPIXが最高値を更新したことは、日経平均だけの特殊な上昇ではないという意味を持ちます。一方で、東証プライム市場全体では値下がり銘柄が54.4%、値上がり銘柄が43.7%にとどまりました。指数の高値更新と個別株の選別色が同時に進んだ点が、今回の相場の特徴です。

AI投資が日本株の利益期待を押し上げる構図

AI関連株が買われる背景には、単なるテーマ人気だけでなく、米国のAI投資が実際の売上に転化している事実があります。NVIDIAは2027年度第1四半期に売上高816億ドルを記録し、前年同期比で85%増となりました。データセンター売上高は752億ドルで、前年同期比92%増です。

AMDも2026年第1四半期に売上高103億ドルを計上し、データセンター部門の売上高は58億ドル、前年同期比57%増となりました。Microsoftは2026年度第3四半期に、AI事業の年間売上高ランレートが370億ドルを超えたと説明しています。クラウド企業、GPUメーカー、サーバー部材メーカーの数字がそろって伸びているため、日本の半導体製造装置、検査装置、電線、電子部品にも評価が波及しやすい環境です。

ただし、ここで注意すべきなのは「AI関連」という言葉の幅です。初期局面では半導体製造装置やGPU周辺が中心でしたが、足元ではデータセンター建設、電力設備、光ケーブル、MLCC、工作機械、空調、素材にまで投資テーマが広がっています。つまり、相場はAI一本足打法ではなく、AIインフラのサプライチェーン全体を再評価する段階に入りつつあります。

予想利益とバリュエーションの綱引き

日経平均ファクトシートでは、PERが25.20倍、PBRが2.62倍、ROEが10.39%とされています。過去の日本株に比べれば低PERとは言いにくく、AI関連の業績伸長をどこまで先取りしているかが問われる水準です。最高値更新の持続には、株価上昇の速度に利益予想の上方修正が追いつく必要があります。

この点で、5月25日の相場は「期待」と「確認」が混在していました。NVIDIAやAMDの決算はAI投資の実需を示しましたが、日本企業の個別決算では、原材料調達、為替前提、設備投資負担によって濃淡が出ます。AI需要のすそ野が広がるほど、投資家はテーマ名ではなく、受注、価格転嫁、利益率の改善を個社ごとに見る必要があります。

循環物色を見極める三つの確認軸

騰落銘柄数が映す指数高と実感の分断

AI関連以外に物色が広がるかを判断する最初の軸は、騰落銘柄数です。5月25日の東証プライム市場は売買代金が10兆536億円と高水準でした。JPXが公表した2026年4月の東証プライム市場の1日平均売買代金は8兆9,031億円ですから、資金量そのものは十分に厚い相場です。

問題は、その資金がどこに向かったかです。非鉄金属、電気機器、空運などが上昇した一方、鉱業、小売、倉庫・運輸関連には下落が目立ちました。東証プライム全体で値下がり銘柄が多かった事実は、買いの勢いがまだ一部の強い業種に偏っていることを示します。

テクニカル面では、日経平均が65,000円を終値で維持できるかに加え、TOPIXが日経平均に追随するだけでなく主導権を握るかが重要です。さらに、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回る日が連続するか、グロース250や中小型株指数が遅れて上昇するかも確認点になります。指数の上昇率よりも、上昇銘柄の広がりを見る方が、相場の基礎体力を測りやすい局面です。

機械と電子部品に広がるAIインフラ需要

物色拡大の第2の軸は、AIインフラ需要が半導体製造装置から機械、電子部品、素材へ広がるかです。日本工作機械工業会が発表した2026年4月の工作機械受注速報では、受注総額が前年同月比45.1%増の1,889億7,100万円となりました。内需は43.4%増、外需は45.7%増で、外需の強さが目立ちます。

SEISANZAI Japanは、4月の工作機械受注総額と外需が過去2番目の高水準だったと伝えています。AIサーバー、電力設備、通信機器、半導体関連の投資が増えるほど、加工装置や部品供給の底上げにつながります。これは日経平均の主力半導体株だけでなく、機械株やFA関連株に循環物色が及ぶための重要な材料です。

電子部品でも同じ構図が見えます。5月25日は太陽誘電が16.5%高となり、AIサーバー向けMLCC需要への期待が買い材料になりました。AIサーバーはGPUだけで動くわけではなく、高性能基板、コンデンサー、電源、冷却、光通信が一体で必要です。したがって、物色の広がりは「AI関連から離れる」ことではなく、AIを支える周辺部材に評価が回る形で起こりやすいと考えられます。

銀行と資本効率改革銘柄の持続力

第3の軸は、AI以外の独立した買い材料です。候補になるのは銀行株と資本効率改革銘柄です。銀行株は国内金利の上昇が利ざや改善期待につながるため、AI関連に偏った相場で別のけん引役になり得ます。ただし、金利上昇が景気改善を伴う「良い金利上昇」なのか、インフレや財政不安を背景にした「悪い金利上昇」なのかで評価は変わります。

資本効率改革も引き続き重要です。東京証券取引所は2023年3月から、プライム市場とスタンダード市場の上場会社に対して、資本コストや株価を意識した経営を要請しています。2026年4月には、経営資源の適切な配分を中心に、投資家の期待や取り組みのポイントを整理する形で要請をアップデートしました。

この流れは、AIテーマと違って短期のニュースに左右されにくい点が特徴です。自社株買い、増配、低採算事業の見直し、研究開発や人的資本への投資が一体で示される企業は、相場の物色範囲が広がる局面で評価されやすくなります。循環物色が本物になるには、AI周辺株の上昇に加え、銀行、商社、機械、素材、内需優良株の中から、資本効率改善を伴う銘柄が買われる必要があります。

金利上昇と過熱感が生む反転リスク

高値更新相場で最も警戒すべきリスクは、上昇そのものの速さです。5月25日の日経平均は一時65,408円87銭まで上げた後、終値は65,158円19銭でした。上値で利益確定売りが出た形であり、65,000円台を明確に保てるかはまだ確認が必要です。

金利も無視できません。5月18日の東京債券市場では、新発10年物国債利回りが一時2.800%に上昇し、1997年5月以来の高水準となりました。その日は円安と株安が同時に進み、日経平均も下落しています。金利上昇が銀行株には追い風でも、不動産、REIT、高PERグロース株には逆風になりやすい点は押さえるべきです。

AI関連にも固有のリスクがあります。NVIDIAは次四半期売上高を910億ドル前後と見込み、強い需要を示しましたが、中国向けデータセンター計算売上を見込まない前提も明らかにしています。AMDも輸出規制、関税、部材供給、顧客集中などをリスクとして挙げています。AI投資の成長率が鈍った場合、最初に売られやすいのは期待が最も織り込まれた銘柄です。

短期的には、米国市場が休場明けにどのように反応するかも重要です。日本株は海外投資家の資金流入に支えられやすい一方、先物主導で上昇した場面では利益確定も速くなります。65,000円台を維持しながら騰落銘柄数が改善するなら強気継続ですが、指数だけが伸びて値下がり銘柄が増えるなら、いったん過熱調整を警戒する局面です。

投資家が今週注視すべき市場シグナル

日経平均の最高値更新は、日本株に対する海外勢の評価、AIインフラ投資の実需、東証改革による資本効率改善期待が重なった結果です。一方で、東証プライムの騰落状況を見る限り、相場はまだ「強い銘柄がさらに買われる段階」にあります。

今週の確認点は三つです。第一に、日経平均が65,000円台を終値で維持し、TOPIXが主導する日が増えるか。第二に、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回り、機械、電子部品、銀行、資本効率改革銘柄へ買いが広がるか。第三に、10年国債利回りと為替が株式の許容範囲に収まるかです。

投資判断では、AIという大きなテーマを否定する必要はありません。ただし、指数上昇に遅れて飛び乗るよりも、受注、利益率、株主還元、金利耐性を確認しながら、上昇の第2陣を探す方が現実的です。65,000円台は到達点ではなく、物色の質が試される新しい分岐点です。

参考資料:

杉山 直樹

市況・テクニカル分析

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