連続最高益の中小型株、個人投資家が今期活躍候補を実例から選ぶ視点
最高益更新が中小型株に集まる背景
2026年3月期決算の発表が一巡し、日本株市場では「過去最高益」の文字が再び目立っています。時事通信がSMBC日興証券の集計として報じたところでは、TOPIX採用の3月期決算企業1116社の純利益は前期比9.0%増の54兆7132億円となり、5年連続で過去最高を更新しました。会社予想などを基にした2027年3月期の純利益予想も、前期比8.3%増の63兆3280億円とされています。
大型株ではAI、半導体、銀行などの寄与が大きい一方、時価総額2000億円未満の中小型株では、より個別性の強い成長要因が株価を動かします。大規模案件の単価上昇、SaaS型の継続収益、データセンターや防衛関連の受注残、ニッチ製品の高い粗利率などです。連続最高益銘柄を探す際に重要なのは、単に増益率の高い会社を拾うことではなく、その利益が翌期以降も再現できる構造かどうかを見極めることです。
連続最高益を支える三つの収益構造
粗利率を押し上げる単価と付加価値
連続最高益を達成する企業には、売上高の増加だけでなく、利益率を守る仕組みがあります。特に中小型株では、規模の拡大よりも「単価を上げられる理由」が重要です。人件費、外注費、物流費が上がる環境では、売上だけが増えても営業利益率が下がれば株式市場の評価は長続きしません。
ヴィスは、ワークデザインを軸にしたオフィス構築やブランディングを手掛ける企業です。同社は2026年3月期に売上高164億8900万円、営業利益19億4200万円となり、売上高と各段階利益で過去最高を更新しました。注目したいのは、大型案件へのシフトです。会社発表では、第4四半期のプロジェクト平均単価が4291万円に達し、通期受注高は178億円、1億円以上の大型案件の構成比は42%まで拡大したと説明されています。
このタイプの最高益は、単なる案件数の増加ではなく、提案力とブランドの上昇によって単価が上がる点に意味があります。IPO企業や新興企業を見るときも、顧客数だけではなく、平均単価、粗利率、受注残の質を確認する必要があります。小型株では一つの大型案件が業績を押し上げることがありますが、営業体制や顧客基盤が広がっていれば、その一過性リスクは下がります。
受注残と継続収益が生む予想の確度
最高益予想の信頼度を測るうえで、受注残と継続収益は欠かせません。建設、設備、防衛関連のように受注から売上計上まで時間差がある業種では、受注残が翌期売上の見通しを支えます。一方、クラウドサービスや月額課金型の事業では、既存顧客からの継続収益が利益の下支えになります。
東京計器は、2026年3月期の決算説明資料で期末受注残高が598億7500万円となり、過去最高を更新したと示しました。同社は2027年3月期について、売上高683億円、営業利益64億円を計画し、営業利益は3期連続の過去最高更新を目指すとしています。防衛・通信機器の需要動向には年度配分の影響が出るものの、受注残が厚い企業は、短期の受注高だけを見て判断すると実態を見誤ります。
設備工事の朝日工業社も同じ視点で見ることができます。同社の説明会書き起こしでは、2026年3月期の受注高が1164億9600万円、次期繰越高が1011億1400万円と説明されています。工場やデータセンターを含む生産環境施設の需要が背景にあり、売上高は1048億2300万円となりました。工事進行基準の会社では、受注時の採算性と工事終盤の原価見通しが利益率を左右するため、受注残の量だけでなく、採算改善が伴っているかが重要です。
会社計画から読む候補銘柄の実例
ワークデザインと中小企業DXの利益率
中小型の連続最高益株を探す際は、事業テーマの流行語よりも、会社計画の中身を分解する必要があります。ヴィスの場合、人的資本経営への関心やオフィス投資需要が追い風です。ただし、同社は2027年3月期に売上高183億9700万円、営業利益19億5100万円を見込む一方、利益の伸びは売上ほど大きくありません。成長投資をしながら増益を続ける局面では、利益率が一時的に横ばいになることもあります。
このような会社を見るときは、営業利益率の短期的な伸びだけで判断せず、受注単価の上昇が続いているか、採用や拠点投資が将来の案件獲得に結び付くかを確認します。新興市場やIPO周辺の企業では、上場後に人員を増やした結果、1年から2年は利益率が伸びにくくなることがあります。しかし、その投資が営業生産性の改善につながれば、数年後の利益成長の土台になります。
スターティアホールディングスは、中小企業向けのITインフラ、デジタルマーケティング、クラウドサービスを展開する企業です。IRTVと決算短信によると、2026年3月期は売上高237億9000万円、営業利益32億4200万円、親会社株主に帰属する当期純利益23億1800万円で着地しました。2027年3月期は売上高260億円、営業利益35億5000万円を見込み、売上高と各段階利益で過去最高更新を目指す計画です。
同社で注目されるのは、既存顧客へのクロスセルと新卒社員の早期戦力化です。中小企業向けDXは景気変動を受けやすい面がありますが、顧客基盤に複数商材を販売できる会社は、顧客獲得コストを抑えながら売上総利益を積み上げやすくなります。2027年3月期の年間配当予想は145円で、DOE13%と累進配当を意識した還元方針も示されています。小型成長株で株主還元が強まると、成長投資と配当の両立をどう評価するかが焦点になります。
SMS、設備工事、防衛関連に見る需要の厚み
ファブリカホールディングスは、法人向けSMS配信や中古車販売店向け業務支援クラウドなどを手掛けています。同社の2026年3月期決算短信では、2027年3月期の業績予想として売上高116億3000万円、営業利益14億円、親会社株主に帰属する当期純利益9億円を掲げ、全指標で過去最高更新を計画すると説明されています。投資フェーズから収益化フェーズへ移るという会社側の表現は、成長株を見るうえで重要です。
投資フェーズの企業は、広告宣伝費、人件費、開発費が先行しやすく、利益が出ても一時的に見えます。しかし、顧客基盤が広がった後に追加コストの伸びが鈍れば、売上の増加が営業利益に反映されやすくなります。ファブリカHDの場合、ビジネスコミュニケーション事業の売上高は2027年3月期に75億3000万円、オートモーティブプラットフォーム事業は20億円を見込んでいます。セグメント別に伸びる事業と利益改善する事業を分けて読むことが、単純な増収増益よりも大切です。
東京計器は、防衛・通信機器のイメージが強いものの、船舶港湾機器、油空圧機器、流体機器も持つ複合的な計測機器メーカーです。2026年3月期の営業利益は2期連続で過去最高を更新し、2027年3月期も売上高と営業利益で過去最高を目指す計画です。防衛関連銘柄はテーマ性だけで買われる場面がありますが、実際の投資判断では受注残、納期、利益率、部材調達リスクを確認する必要があります。
朝日工業社のような設備工事会社では、データセンターや半導体関連投資が追い風になります。とはいえ、建設需要が強くても、技能者不足や資材価格上昇が利益を圧迫する可能性があります。会社説明では、受注時採算性や工事利益率の改善が利益を押し上げたとされています。投資家は、売上高の伸びだけでなく、工事採算が改善しているかを決算説明資料から確認すべきです。
もう一つの型は、ニッチ製品で高い利益率を維持する企業です。エヌエスツールは2026年3月期決算概要で、AI関連需要が活況だったことやアジア向け販売の好調を説明し、売上総利益率55.4%、営業利益率20.6%を示しました。売上高の伸びは0.7%にとどまった一方、営業利益は10.9%増えています。数量成長が小さくても、製品ミックスや原価低減で利益が伸びる企業は、景気敏感株の中でも選別余地があります。
売上最高でも利益が伸びにくい局面
連続最高益候補を見る際には、売上高と営業利益の伸び方がずれる企業にも注意が必要です。FLECTは2026年3月期決算説明資料で、2026年3月期の売上高と営業利益が過去最高になり、2027年3月期も売上高104億円、営業利益12億4700万円と過去最高を計画しています。ただし、資料では不採算案件による売上総利益率の低下も示されています。
これは成長株にとって典型的な論点です。クラウド、AI、システム開発などの企業は需要が強くても、案件管理を誤ると粗利率が下がります。売上が伸びる局面ほど、人員の採用、外注管理、プロジェクト品質が問われます。最高益予想を評価する場合、受注単価や案件規模だけでなく、納品リスクと利益率の振れ幅も確認する必要があります。
サンワテクノスのような技術商社も、業績予想の前提が重要です。同社は2027年3月期の業績予想で、売上高1730億円、営業利益60億円、当期純利益42億円を掲げています。半導体や産業機器の回復局面では商社の業績が大きく伸びることがありますが、為替、在庫調整、顧客の設備投資サイクルに左右されます。会社資料では米ドル平均レートを148円と置いており、為替前提が変われば利益計画の見え方も変わります。
増益予想だけでは見落とす株価リスク
連続最高益銘柄は、決算短信の見た目がよいほど買われやすい一方、株価にはすでに期待が織り込まれていることがあります。特に時価総額2000億円未満の銘柄は流動性が大型株より低く、好決算後に短期資金が集中すると、数日でバリュエーションが大きく変わります。東京計器のように決算発表後の株価と時価総額が短期間で動いた例を見ると、業績の良さと買い場は同じではないことが分かります。
リスクの第一は、会社計画の前提が強すぎるケースです。受注残が豊富でも、部材不足や人員制約があれば売上計上が遅れる可能性があります。第二は、最高益の中身に一時要因が含まれるケースです。固定資産売却益や補助金、為替差益で純利益が伸びている場合、本業の営業利益とは分けて評価する必要があります。第三は、成長投資の負担です。採用、広告、研究開発、拠点投資が先行すると、売上成長が続いても営業利益率は短期的に下がります。
また、株主還元の強化は好材料ですが、配当性向の高さだけで判断するのは危険です。スターティアHDのように累進配当やDOEを掲げる企業は、資本政策の分かりやすさが評価されやすくなります。ただし、成長投資を続ける企業では、配当と内部留保のバランスが事業競争力を左右します。増配の継続性を見るには、営業キャッシュフロー、自己資本比率、投資計画を同時に確認することが必要です。
決算後に個人投資家が確認すべき指標
連続最高益銘柄を選ぶ実務では、まず営業利益の過去最高更新が本業の改善によるものかを確認します。次に、翌期の会社計画で売上高、営業利益、純利益のどれが最高益を更新するのかを分けて見ます。売上高だけが最高で利益が伸びない会社と、売上の伸びは小さくても粗利率改善で利益が伸びる会社では、評価軸が異なります。
チェックすべき数字は、受注高、受注残、売上総利益率、営業利益率、セグメント別利益、営業キャッシュフロー、配当方針です。新興市場やIPO後の企業では、顧客数、解約率、平均単価、広告宣伝費の回収期間も重要になります。株価指標ではPERだけでなく、利益成長率に対して時価総額が過大になっていないかを見る必要があります。
今期活躍が期待される中小型株は、テーマ株としてではなく、会社計画の確度を比べる対象として見るべきです。最高益更新が続く企業には、需要の強さ、価格決定力、受注残、継続収益、人材投資の回収という共通点があります。決算発表直後の見出しに飛びつくのではなく、公開資料の数字を一つずつ確認することが、連続最高益銘柄を長く保有できるかどうかを分けます。
参考資料:
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