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サムコ今期経常23%増へ、光通信需要が支える連続最高益の更新力

by 前田 千尋
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光通信需要で読み直すサムコ決算

半導体製造装置メーカーのサムコが2026年9月14日に発表した2026年7月期決算は、単なる増収増益ではなく、受注構造の変化を伴う内容でした。売上高は108.0億円、経常利益は31.1億円となり、前期比でそれぞれ15.6%増、31.0%増です。

注目点は、2027年7月期の会社計画です。売上高145.0億円、経常利益38.4億円を見込み、経常利益は前期比23.5%増の計画です。達成すれば、経常利益は8期連続の過去最高益更新が視野に入ります。本稿では、化合物半導体、光通信関連、受注残、財務体質の4点から、増益計画の確度と注意点を整理します。

過去最高益を押し上げた用途別ミックス

化合物半導体と電子部品の伸長

2026年7月期の売上高108.0億円のうち、最大の用途分野は化合物半導体分野です。同分野の売上高は44.7億円、構成比は41.4%、前期比は45.9%増でした。サムコは決算短信で、AIデータセンター向け光通信関連を中心に、化合物半導体分野の設備投資需要が旺盛だったと説明しています。

化合物半導体は、GaN、GaAs、InP、SiCなどを材料に使うデバイス群です。サムコの開示では、半導体レーザー、LED、パワーデバイス、高周波デバイスなどが用途として挙げられています。今回の決算で重要なのは、AIサーバー本体のGPU需要だけでなく、データセンター内外の通信量増加に対応する光デバイス向け投資が、同社の装置需要に波及している点です。

電子部品分野も大きく伸びました。売上高は31.9億円、構成比は29.6%、前期比は59.2%増です。主な対象はMEMS、高周波フィルター、各種センサーなどです。スマートフォンや通信機器の回復だけでなく、AIインフラの高度化で高周波部品や精密加工部品の需要が厚みを増していることが、同社の受注・売上に効いているとみられます。

一方で、シリコン半導体分野は7.9億円、前期比52.7%減でした。ヘルスケア関連分野も0.8億円、前期比55.2%減です。全体では増収ですが、すべての用途が一様に伸びたわけではありません。化合物半導体と電子部品の好調が、弱い分野を吸収した構図です。

エッチング装置に寄った収益構造

品目別に見ると、成長の主役はドライエッチング装置です。2026年7月期のエッチング装置売上高は70.0億円、構成比64.9%、前期比27.3%増となりました。サムコは、半導体レーザー、高周波フィルター、シリコンウェハー欠陥解析などの加工用途で販売があったと説明しています。

エッチング装置は、プラズマを使って基板表面を微細加工する装置です。サムコの製品説明では、高密度プラズマを安定生成するICPエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、高速シリコンディープエッチング装置などが紹介されています。AI向け半導体や光デバイスの高性能化が進むほど、加工精度や歩留まりの要求は厳しくなります。この点で、同社の中核技術が需要増と結びつきやすい局面です。

CVD装置は14.4億円で、前期比20.0%減でした。CVD装置は絶縁膜やパッシベーション膜の形成に使われ、ALD装置やプラズマCVD装置などを含みます。成膜装置は将来の成長余地を持つ一方、2026年7月期だけを見るとエッチング装置ほどの伸びは出ていません。

洗浄装置は8.3億円、前期比21.4%増でした。部品・メンテナンスは15.2億円、前期比12.5%増です。生産用装置の販売拡大に伴って保守需要が増える構造は、装置メーカーにとって収益の安定化要因です。新規装置販売が先行し、その後に部品・メンテナンスが積み上がる循環が続くかどうかは、来期以降の利益率を見るうえで重要です。

受注残が示す翌期売上の視界

最も強い先行指標は受注残です。2026年7月期末の受注残高は114.5億円で、前期比123.6%増でした。売上高108.0億円を上回る水準まで受注残が積み上がっており、2027年7月期の売上高145.0億円計画に一定の裏付けを与えています。

品目別では、エッチング装置の受注残が70.9億円と最大です。CVD装置は26.3億円、洗浄装置は8.1億円、部品・メンテナンスは9.0億円でした。売上計上前の案件がエッチング装置に厚く積み上がっているため、来期も収益構造はエッチング中心になる可能性が高いです。

ただし、受注残は売上計上の時期と利益率まで保証するものではありません。装置ビジネスでは、顧客の設備投資スケジュール、検収時期、部材調達、据え付け作業の進捗が業績を左右します。受注残が大きいほど、納期管理と生産能力の重要性も増します。

増収率34%計画を支える市場環境

AI投資と装置市場の追い風

サムコの2027年7月期計画は、売上高145.0億円、営業利益38.8億円、経常利益38.4億円、当期純利益27.4億円です。売上高の前期比は34.3%増、営業利益は29.1%増、経常利益は23.5%増です。売上の伸びが利益の伸びをやや上回るため、増収局面での費用増や製品構成の変化も織り込んだ計画と読めます。

外部環境は強い追い風です。SEMIは2026年の世界半導体製造装置販売について、AIインフラ、先端ロジック、先端メモリー、後工程投資を背景に過去最高水準を見込んでいます。ウェーハファブ装置も2026年に大きく伸びる見通しで、AIアクセラレーターやHBM関連投資が装置需要を押し上げています。

Gartnerも、2026年の世界半導体売上高が1.3兆ドルを超えるとの見通しを示しています。AI処理、データセンター向けネットワーク、電力関連、メモリー価格上昇が主因とされ、AI半導体が半導体売上の大きな部分を占めるとされています。サムコは巨大な先端ロジック装置メーカーではありませんが、AIインフラ拡大の周辺で必要になる光通信、パワーデバイス、高周波部品の製造工程に接点を持ちます。

光通信関連がつなぐ成長テーマ

サムコの決算で繰り返し意識したいのは、AIデータセンターと光通信の接続です。AIモデルの大規模化で、データセンター内ではGPU同士、サーバー同士、ラック間を結ぶ通信量が急増します。計算能力だけでなく、データを低遅延・低消費電力で動かす技術が制約になりやすい環境です。

TrendForceは、AI向け光トランシーバー市場が2026年に260億ドルへ拡大し、前年比で大きく伸びると予測しています。800G以上の高速光トランシーバー需要や、北米ハイパースケーラーのAIサーバー投資が背景です。光通信部品には半導体レーザーやフォトニクス関連デバイスが使われ、サムコの化合物半導体向け装置とテーマが重なります。

サムコの開示でも、化合物半導体分野の説明には半導体レーザー、光通信、パワーデバイスが並びます。第3四半期決算説明資料では、半導体レーザーの材料例としてGaAs、InGaAsP、InPが挙げられ、最終用途に光通信が示されています。AIブームの中心はGPUやHBMですが、サムコにとっては「通信を支える部品」が収益機会になっている点が独自性です。

海外比率上昇と中期課題

地域面では、輸出販売高の伸びも目立ちます。2026年7月期の輸出販売高は64.5億円で、売上高に占める割合は59.8%でした。前期の輸出販売高35.8億円、比率38.4%から大きく上昇しています。特に中国、北米、台湾などの設備投資動向が、業績に与える影響を増していると考えられます。

会社概要では、サムコは京都に本社を置き、米国、中国、韓国、シンガポール、マレーシアなどに拠点を持つとされています。中間報告書でも、SEMICON India、SEMICON Taiwan、SEMICON West、SEMICON Europa、SEMICON Japanへの出展が紹介され、海外事業拡大が重点課題として示されています。

中期経営計画では、新しいプロセスと新規装置の開発、生産機販売強化、海外販売拡大、生産体制拡充、人材育成、サステナビリティへの取り組みが掲げられています。今回の決算は、このうち生産機販売と海外販売が数字に表れ始めた局面です。研究開発機中心の会社から、生産用途をより厚く取りにいく会社へ変わる過程にあります。

高成長計画に潜む為替と受注変動リスク

2027年7月期計画の前提為替レートは1米ドル155円です。輸出比率が59.8%まで高まったことで、円高が進む場合は売上換算や採算に影響が出やすくなります。逆に円安が続く場合でも、海外調達や部材価格の上昇が利益率を押し下げる可能性があります。

また、2026年7月期の営業利益率は27.8%と高水準でした。前期の25.1%から改善しており、価格規律や稼働率の向上が寄与したとみられます。ただし、2027年7月期計画の営業利益率は約26.8%です。高採算を維持しながら34.3%増収を実現するには、受注残の消化だけでなく、納期、品質、部材調達を安定させる必要があります。

需要面では、AIデータセンター投資への依存度が高まる点にも注意が必要です。AI投資は現在の装置市場をけん引していますが、クラウド大手の投資計画、メモリー需給、米中摩擦、輸出規制、電力制約によって変動します。サムコ自身も、サプライチェーン混乱や貿易の分断化を経済リスクとして挙げています。

財務面は健全です。2026年7月期末の自己資本比率は72.6%、現金及び現金同等物の期末残高は82.0億円でした。営業キャッシュフローは38.0億円のプラスです。成長投資を進める余力はありますが、受注が急増する局面では運転資金や仕掛品の増加も起きます。現金の厚さを、どの程度まで生産能力と開発力の強化に振り向けるかが焦点です。

投資家が確認したい受注と利益率

サムコの決算は、AI関連需要が化合物半導体や光通信部品の製造装置に波及していることを示しました。2027年7月期の経常利益38.4億円計画は強気に見えますが、114.5億円の受注残と輸出販売の拡大を踏まえると、単なる期待先行ではありません。

投資家が次に確認すべき指標は3つです。第一に、受注残が計画通り売上へ転換するかです。第二に、エッチング装置中心の高利益率が維持されるかです。第三に、海外売上拡大のなかで為替と地政学リスクを吸収できるかです。配当は2026年7月期、2027年7月期予想とも75円で、利益成長を内部留保と成長投資にどう配分するかも見どころになります。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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