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三井ハイテクとサムコ、FEASY好決算で探る半導体株の選別軸

by 前田 千尋
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半導体好決算が示す資金回帰の焦点

6月12日の引け後に発表された決算群では、三井ハイテックとサムコの数字が目立ちました。両社に共通するのは、半導体や電動車といった成長テーマに属しながら、単なるテーマ人気ではなく、売上、利益、受注、配当のいずれかで実績を伴っている点です。

投資家が見るべき焦点は、「好決算だったか」だけではありません。どの利益が伸びたのか、為替や一過性要因を除いても稼ぐ力が強まったのか、受注残が次の四半期に続くのかが重要です。本稿では、FEASYを含む好決算銘柄を短期材料として見るのではなく、確認できる公式資料をもとに、翌週以降の選別軸を整理します。

三井ハイテック上方修正の収益構造

第1四半期で見えた増益の中身

三井ハイテックの2027年1月期第1四半期は、売上高が618億8600万円、営業利益が44億3300万円、経常利益が58億9100万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が45億8400万円でした。前年同期比では売上高が13.2%増、営業利益が27.8%増、経常利益が297.9%増、純利益が373.2%増です。

経常利益の伸びが特に大きい理由は、営業段階の改善に加え、営業外収益として為替差益15億800万円を計上したためです。会社側は、この差益について、外貨建て資産負債の評価替えが主因であり、今後の為替相場で変動すると説明しています。つまり、経常利益の急拡大をそのまま基礎収益力の伸びとして読むのは危険です。

一方で、営業利益も前年同期比で増えており、本業の改善がなかったわけではありません。通期業績予想では、売上高を従来の2330億円から2540億円へ、営業利益を110億円から145億円へ、経常利益を100億円から145億円へ、純利益を70億円から100億円へ引き上げました。売上高の上方修正率は9.0%、営業利益は31.8%、経常利益は45.0%です。

この修正幅を見ると、増収効果が利益を押し上げる構図が見えます。会社側は、旺盛な需要と為替影響で売上高が従来予想を上回り、増収に伴う増益要因が中東情勢悪化に伴う資材価格上昇などの減益要因を上回ると説明しています。原材料や物流費の不確実性を抱えながらも、売価、数量、操業度の改善が先に立っている点が評価材料です。

モーターコアと電子部品の二本柱

セグメント別では、三井ハイテックの収益構造がよく分かります。金型・工作機械事業は売上高30億6700万円で19.2%増でしたが、営業利益は700万円にとどまり、原材料価格高騰の影響で70.5%減でした。ここは技術基盤を支える領域である一方、短期の利益貢献は限定的です。

対照的に、電子部品事業は売上高179億1200万円、営業利益16億7000万円でした。売上高は26.6%増、営業利益は86.5%増で、車載・民生向け製品の需要増加と円安が寄与しています。リードフレームは半導体チップと外部回路をつなぐ部材で、車載ECU、パワー半導体、通信基地局向けRFデバイスなど、信頼性が求められる用途と相性があります。

最大の柱である電機部品事業は、売上高431億1400万円、営業利益35億6400万円でした。売上高は8.7%増、営業利益は22.0%増です。駆動・発電用モーターコアが堅調に推移したことが背景にあります。三井ハイテックは、車載用モーターコアで世界シェア首位と説明しており、金型設計からスタンピングによる量産までを一貫して担える点を強みとしています。

ここで重要なのは、電動車市場の見方です。会社側は、BEV市場の成長には地域差がある一方、HEVとPHEVの需要は堅調だったとしています。これは投資家にとって安心材料です。完全なEVシフトだけに賭ける企業より、ハイブリッドを含む電動化全般の需要を取り込める企業の方が、政策変更や消費者需要の揺れに対して耐性を持ちやすいからです。

英国では2030年に向けたEV販売目標を緩和し、ハイブリッドをより大きく認める案が報じられています。世界全体では電動車販売の拡大が続く一方、国・地域ごとにBEV、PHEV、HEVのバランスは変わります。三井ハイテックの決算は、この「電動化は続くが、一本調子ではない」という現実に合った内容といえます。

サムコ増配を支えた受注残と海外売上

受注高と受注残が示す先行指標

サムコの2026年7月期第3四半期累計は、売上高74億1400万円、営業利益18億6300万円、経常利益19億6500万円、四半期純利益13億7600万円でした。前年同期比では売上高が18.8%増、営業利益が33.7%増、経常利益が43.4%増、純利益が42.1%増です。

利益の伸びだけでなく、受注の増加が強い点も見逃せません。決算説明資料によると、受注高は128億5400万円で前年同期比95.5%増、受注残高は105億6300万円で85.4%増でした。装置メーカーの場合、受注は将来売上の先行指標です。売上計上の時期には検収や納入条件が絡みますが、受注残の厚みは次の数四半期の売上を読むうえで重要です。

会社側は通期予想も引き上げました。売上高は102億円から107億8500万円へ、営業利益は24億6000万円から26億3100万円へ、経常利益は24億4000万円から27億2200万円へ、当期純利益は17億2000万円から19億1900万円へ修正しています。営業利益率は通期予想で24.4%と高水準です。

同時に、期末配当予想を60円から75円へ引き上げました。15円増配は、単に株主還元姿勢を示すだけでなく、会社側が今期利益の達成確度を一定程度高く見ているサインでもあります。もちろん、配当性向や来期投資余力とのバランスは確認が必要ですが、利益成長と増配が同時に出た点は、個人投資家に分かりやすい評価材料です。

化合物半導体と電子部品分野の伸長

用途別では、サムコの成長ドライバーがより明確です。化合物半導体分野の売上高は24億8700万円で52.9%増、電子部品分野は26億4500万円で151.6%増でした。一方、シリコン半導体分野は5億980万円で65.2%減です。全体の好調は、一般的な半導体装置需要というより、特定用途の強い伸びに支えられています。

会社側は、生成AIの普及拡大を背景にデータセンター向け需要が増え、先端ロジック半導体や高性能メモリを中心に市場が拡大したと説明しています。さらに、光デバイスなどデータセンター内通信に関連するデバイスメーカーからの引き合いが堅調だったとしています。サムコの装置は、化合物半導体や電子部品の微細加工に関わるため、AIサーバーそのものではなく、周辺の光通信・電源・高周波部材の設備投資を取り込む位置にあります。

製品面では、ICPエッチング装置、RIE装置、高速シリコンディープエッチング装置、CVD装置などを展開しています。ICPエッチング装置は高密度プラズマを安定して生成し、高精度加工を可能にする装置です。化合物半導体向けの省スペース装置や真空カセット装置もラインナップに含まれます。

地域別の変化も大きいです。第3四半期累計の海外売上高は39億4600万円で、前年同期比86.6%増となりました。海外売上比率は53.2%で、前年同期の33.9%から大きく上昇しています。特にアジア向けは29億3900万円で103.6%増、北米向けは7億900万円で49.5%増でした。

この海外比率の上昇は、成長余地とリスクの両方を意味します。海外顧客の投資サイクルに乗れば受注は大きく伸びますが、納期、検収、為替、輸出規制、地政学リスクの影響も受けやすくなります。サムコの好決算を評価するなら、受注残高の増加だけでなく、その地域・用途・顧客集中度を次回以降も追う必要があります。

為替益と設備投資需要に潜む評価リスク

好決算銘柄を買う際に最も避けたいのは、決算発表直後の数字だけで持続力を過大評価することです。三井ハイテックの場合、経常利益の急増には為替差益が大きく効いています。営業利益の改善は本物ですが、為替差益は期末時点の外貨建て資産負債の評価替えによるため、円高に振れれば逆方向に出る可能性があります。

また、三井ハイテックの金型・工作機械事業は増収ながら大幅減益でした。原材料価格の高騰が続く局面では、技術力の高い企業でも、価格転嫁や生産性改善が遅れれば利益率を圧迫されます。電機部品と電子部品が伸びている間は全体で吸収できますが、設備投資負担や在庫増加も合わせて確認すべきです。

サムコについては、受注残が厚いことが強みですが、装置メーカー特有の振れもあります。大型装置は顧客の投資判断、工場建設、検収タイミングに左右されます。第3四半期までの受注が強くても、来期以降に同じ伸び率が続くとは限りません。営業利益率が高い企業ほど、売上計上が遅れた際の固定費負担が株価材料になりやすい点にも注意が必要です。

FEASYのように好決算リストに並ぶ銘柄を見る場合も、同じ手順が有効です。まず決算短信で売上と営業利益の伸びを確認し、次に業績修正の理由を読み、最後に配当や受注、顧客構成の変化を照合します。公式資料で確認できない数値を材料視するより、開示資料で説明可能な利益成長かどうかを優先した方が、短期の値動きに振り回されにくくなります。

半導体市場の外部環境は追い風です。2026年第1四半期の世界半導体売上高は2985億ドルに達し、2026年の年間売上が1兆ドルに近づくとの見方もあります。半導体製造装置市場についても、AI需要を背景に2026年、2027年へ拡大が見込まれています。ただし、こうした大きな市場予測は、個別企業の利益に自動的につながるわけではありません。

好決算を持続力に変えられる企業は、需要増を売上だけでなく、利益率、受注残、価格支配力、投資回収に結びつけられる企業です。三井ハイテックとサムコは、その条件の一部を示しましたが、次の四半期で同じ方向性を確認できるかが本当の分岐点になります。

決算翌週に個人投資家が見る確認項目

今回の決算で、三井ハイテックはモーターコアと電子部品の需要、サムコは化合物半導体・電子部品向け装置と海外受注の強さを示しました。どちらも半導体関連株として一括りにできますが、利益の出方は異なります。前者は電動車と半導体部材、後者は装置受注と高利益率が焦点です。

決算翌週に見るべきなのは、初日の株価反応だけではありません。上方修正後の通期予想に対する進捗率、営業利益率の改善幅、為替感応度、受注残の質、増配後の配当余力を順番に確認する必要があります。特に、好決算銘柄が複数並ぶ局面では、テーマ性よりも「次の四半期で再現できる数字か」を重視すべきです。

FEASYを含むリスト銘柄を比較する際も、同じ物差しを使えば判断はぶれにくくなります。営業利益で伸びた企業、一過性収益で経常利益が膨らんだ企業、受注残で先行きが読める企業、配当で株主還元を示した企業を分けて考えることが、好決算後の銘柄選別では最も実践的です。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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