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NISA成長投資枠で選ぶNTTとキオクシア、フジクラの実力検証

by 大野 真由
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成長投資枠で個別株を見る前提

新NISAの成長投資枠で個別株を選ぶ場合、最初に確認したいのは「値上がりしそうか」だけではありません。非課税期間が無期限になり、成長投資枠だけで年間240万円、生涯では1,200万円まで使える制度だからこそ、長く保有できる事業の質と、途中で売却して枠を再利用する判断のしやすさが重要になります。

金融庁は、通常なら株式や投資信託の売却益、配当や分配金に約20%の税金がかかる一方、NISA口座ではこれらが非課税になると説明しています。これは高配当株にも成長株にも有利ですが、損失が出た場合に損益通算できない弱点もあります。したがって、NTTのような安定配当株と、キオクシア、フジクラのようなAI関連テーマ株は、同じ成長投資枠でも役割を分けて見る必要があります。

NTTを中核候補に押し上げる配当力

25分割後の低単価と連続増配

NTTが成長投資枠の候補として挙がりやすい理由は、値動きの派手さではなく、制度との相性です。2023年7月に1株を25株に分割したことで最低投資金額が下がり、毎月の余裕資金で買い増しやすくなりました。NISAは一括投資にも使えますが、個人の資産形成では「何度かに分けて買えること」が心理的な継続性を支えます。

株主還元も分かりやすい材料です。NTTは2027年3月期の年間配当予想を1株5.4円とし、前期比0.1円の増配、16期連続増配の計画を示しています。さらに2026年5月には、2027年3月末までに上限2,000億円の自己株式取得を行う方針も公表しました。配当と自社株買いは株価を必ず押し上げるものではありませんが、長期保有者に対する資本配分の姿勢を示す材料になります。

業績面でも、NTTは「守り一辺倒」の銘柄ではありません。2026年3月期の連結営業収益は14兆4,091億円、営業利益は1兆7,062億円、NTT帰属利益は1兆370億円でした。前期比では営業収益が5.1%増、営業利益が3.4%増、帰属利益が3.7%増です。2027年3月期会社予想では営業収益15兆600億円、営業利益1兆7,100億円を見込んでいます。

ただし、NTTの魅力は「急成長株」ではなく「中核株」として評価すべきです。通信の既存事業には成熟感があり、地域通信ではレガシー収入の減少や設備更新負担もあります。NISAで長く持つなら、配当利回りだけでなく、営業利益率、フリーキャッシュフロー、自己株式取得の継続性を毎年確認する姿勢が必要です。

データセンターとIOWNの再評価余地

NTTを単なる通信株と見ない視点も欠かせません。会社側は生成AIの普及で、ネットワークとデータセンター需要が伸びていると説明しています。2026年3月期のグローバルソリューション事業では、売上高が5兆46億円、営業利益が4,882億円となり、営業利益は前期比で大きく伸びました。データセンター、クラウド、セキュリティ、AIソリューションが成長領域です。

同社はグループ全体のデータセンター受電容量を約2,000メガワットとし、2,700メガワット超への拡大計画、さらに2030年度に3,000メガワットを目指す方針を示しています。AI向けの計算資源は、半導体だけでなく、電力、光ネットワーク、冷却、運用ノウハウを必要とします。NTTはその複数を持つため、AI相場の周辺銘柄として再評価される余地があります。

IOWNも長期の評価軸です。NTTは光技術を使った低消費電力、大容量、低遅延のネットワーク構想を進めています。短期業績への寄与は段階的ですが、AIデータセンターの電力制約が強まるほど、省電力ネットワークの価値は意識されやすくなります。NISAの中核候補としては、配当、低単価、通信インフラ、AIインフラの4点をまとめて評価するのが現実的です。

キオクシアとフジクラに届くAI需要

NAND需給を映すキオクシアの振れ幅

キオクシアはNTTとは性格が大きく異なります。東京証券取引所プライム市場に上場するフラッシュメモリー大手で、証券コードは285Aです。事業の中心はNAND型フラッシュメモリーとSSDであり、生成AIブームによって「記憶する半導体」の重要性が高まる局面では注目されやすい企業です。

AIサーバーではGPUやHBMが話題の中心になりがちですが、実際の推論基盤では巨大なデータセット、長い文脈、キャッシュ、ログ、モデル周辺データを処理するため、高速ストレージも重要です。キオクシアは2026年3月、NVIDIAのStorage-Next構想に対応する高IOPS SSDを発表しました。GPUがフラッシュメモリーに直接近い形でアクセスし、HBMの補助的な階層として使う発想です。

同社発表では、KIOXIA GP Seriesの評価サンプルは2026年末までに一部顧客へ提供予定です。また、CM9 Series PCIe 5.0 E3.S SSDは25.6テラバイト、3 DWPDの耐久性を備え、大規模推論環境を支える製品として位置づけられています。これは、キオクシアが単なる汎用メモリー市況株ではなく、AIインフラの設計変化に直接関わる企業になりつつあることを示します。

一方で、NISA向けには慎重な見方も必要です。NANDは過去に需給悪化で価格が急落し、メーカーの損益が大きく振れた歴史があります。2026年時点ではAI需要で供給が引き締まっているとの報道があり、キオクシア幹部が2026年分の生産能力が売り切れ、逼迫が2027年まで続く可能性に触れたとも報じられています。ただし、強い需給は永続しません。設備投資、競合の増産、スマートフォンやPC需要の変化で利益率は大きく変わります。

株主構成も見ておきたい点です。キオクシアのIR資料では、2025年9月末時点の大株主として東芝、ベイン関連ファンドなどが並びます。上場後の需給では、大株主の売却可能性やロックアップ後の株式需給が株価に影響することがあります。成長投資枠で保有するなら、AIストレージ需要の成長性と、メモリー市況株としての循環性を同時に引き受ける銘柄だと位置づけるべきです。

光配線不足が映すフジクラの追い風

フジクラは、AIインフラのなかでも「つなぐ」部分に強みを持つ銘柄です。光ファイバー、光ケーブル、光部品、電子部品、自動車部品などを手掛け、データセンター向けの通信容量拡大と相性があります。会社サイトでも、データセンター、光ファイバー、光スプリッタ、光接続部品などの製品群が確認できます。

AIデータセンターでは、サーバー同士、ラック同士、施設同士を高速に結ぶ配線がボトルネックになりやすくなっています。業界報道では、AI向けデータセンターは通常サーバー構成に比べて光ファイバー需要が大幅に増え、データセンター向けファイバー需要は2025年に前年比で大きく伸びたとされています。さらに2027年にはAI関連インフラが世界のファイバー需要の大きな割合を占めるとの見方もあります。

この流れは、米国の大型契約にも表れています。Amazonは2026年6月、Corningと複数年、複数十億ドル規模の光ファイバー関連契約を結んだと報じられました。これはフジクラそのものの受注ではありませんが、AIデータセンターが半導体だけでなく光配線、接続、施工人材まで奪い合う段階に入ったことを示す材料です。フジクラの評価では、光部品や配線関連の利益率、増産余地、海外顧客比率が焦点になります。

公表済みのフジクラ資料を見ると、2024年8月時点の2025年3月期第1四半期は、売上高2,183億円、営業利益244億円でした。通期予想は売上高8,700億円、営業利益890億円、年間配当65円です。2023年度の財務ハイライトでは売上高7,998億円、営業利益695億円、年間配当55円でした。AIインフラ需要が光関連事業にどこまで利益として残るかが、株価の説明力を左右します。

フジクラの注意点は、期待がすでに株価へ織り込まれやすいことです。光ファイバー不足やデータセンター需要は分かりやすいテーマであり、市場が先に買い進めると、好決算でも材料出尽くしになり得ます。NISAでは非課税メリットがある一方、損失を他の利益と相殺できません。高値づかみを避けるため、業績上方修正後に追いかけるのではなく、受注、在庫、価格転嫁、営業利益率を確認しながら分散して入る姿勢が向いています。

テーマ株をNISAで抱える価格変動リスク

NTT、キオクシア、フジクラを同列に比べると判断を誤ります。NTTは配当と通信インフラを土台にした中核候補、キオクシアはNAND市況とAIストレージ需要に連動する循環成長株、フジクラは光配線不足とデータセンター投資を映す設備投資関連株です。期待リターンの源泉が違うため、NISAでの持ち方も分けるべきです。

成長投資枠の落とし穴は、非課税メリットを意識するほど売りにくくなることです。利益が出ている時は税金がかからない強みがありますが、含み損が出た時は損益通算できず、枠の再利用も売却翌年以降です。テーマ株を大きく買いすぎると、株価下落時に「枠を使ったから売れない」という心理的な固定化が起こります。

実務的には、NTTのような中核株を資産形成の土台に置き、キオクシアやフジクラはテーマ枠として割合を抑える考え方が扱いやすいです。たとえば個別株全体を一つのかごにせず、投資信託、国内高配当株、AI関連株、現金余力に分けると、相場急変時の判断が明確になります。NISAは長期制度ですが、個別株の業績変化は毎年点検する必要があります。

成長枠で分ける中核株とテーマ株の役割

成長投資枠で最も避けたいのは、話題性だけで同じ性格の銘柄を重ねることです。NTTは分散購入しやすい価格帯、連続増配、データセンター投資を持つ中核候補です。キオクシアはAIストレージとNAND需給の伸びを取りに行く銘柄で、フジクラは光配線とデータセンター建設の不足感を映す銘柄です。

長期資産形成では、期待銘柄を「全部買う」よりも、各銘柄に求める役割を決める方が失敗を減らせます。NTTで配当と安定性を確保し、キオクシアとフジクラは決算と受注環境を見ながら小さく追加する。成長投資枠の非課税メリットは、そのように時間をかけて事業の変化を追える投資家ほど活かしやすい制度です。

参考資料:

大野 真由

投資信託・資産運用

投資信託・ETF・NISA を中心に、個人の資産形成に役立つ情報を発信。難解な金融商品をわかりやすく解説する。

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