東証グロースからスタンダードへ市場変更が加速中
ネットイヤーと駅探の市場変更相次ぐ背景
2026年3月30日から4月3日にかけて、東京証券取引所(東証)でグロース市場からスタンダード市場への市場区分変更が相次いで発表されました。3月31日にはネットイヤーグループ(3622)と駅探(3646)がスタンダード市場への変更承認を受け、いずれも4月7日付で新市場へ移行します。
こうした動きの背景には、2022年4月の東証市場再編で設けられた経過措置が2025年3月に終了し、上場維持基準が厳格に適用されるようになったことがあります。本記事では、今回の市場変更銘柄の詳細と、市場変更が加速する構造的な背景、投資家が押さえるべきポイントを解説します。
今週の市場変更銘柄の詳細
ネットイヤーグループ(3622):グロースからスタンダードへ
ネットイヤーグループは、NTTデータグループに属するデジタルマーケティング支援企業です。2019年にNTTデータによるTOB(株式公開買付け)を経て連結子会社となり、企業のデジタル戦略策定やUX設計、Web構築、データ分析などを手がけています。
同社は2026年3月31日、東証スタンダード市場への市場区分変更承認と、「上場維持基準の適合に向けた計画」の撤回を同時に発表しました。グロース市場での上場維持基準のうち時価総額の要件を満たすことが困難であったため、スタンダード市場への移行を選択した形です。
もともと同社は株価低迷による時価総額の基準未達を課題として認識しており、2025年6月には改善期間に入ったことを開示していました。業容拡大や株主還元、IR活動の強化などで基準適合を目指していましたが、最終的にスタンダード市場への移行が現実的な選択肢となりました。
駅探(3646):グロースからスタンダードへ
駅探は、乗換案内サービス「駅探」を運営するインターネットサービス企業です。月間利用者数は多く、交通情報の提供を軸に、広告配信プラットフォーム事業やM&A・インキュベーション事業にも展開しています。
同社は2026年3月2日に東証スタンダード市場への変更申請を開示し、3月31日に承認を受けました。2025年3月31日時点でグロース市場の上場維持基準である時価総額40億円に達しておらず、スタンダード市場への移行準備を進めていました。
駅探の業績は厳しい状況にあります。2026年3月期は営業赤字が見込まれており、乗換案内サービスの成熟化に伴い、新たな収益源の確保が課題となっています。戦略転換としてM&Aも視野に入れた事業再構築を進めています。
市場変更が急増する構造的背景
経過措置の終了が転機に
2022年4月、東証はそれまでの市場第一部・第二部・マザーズ・JASDAQの4市場を、プライム・スタンダード・グロースの3市場に再編しました。しかし、再編時点では上場維持基準を満たさない企業にも経過措置を適用し、猶予を与えていました。
この経過措置は2025年3月1日以降に到来する基準判定日から終了し、本来の上場維持基準が厳格に適用されるようになりました。基準未達の企業には原則として1年間の改善期間が設けられますが、その間に基準を満たせなければ監理銘柄、さらには整理銘柄に指定され、最終的に上場廃止となります。
過去最多の市場変更ペース
日本経済新聞の報道によると、2025年にスタンダード市場への変更を行った企業は35社に上り、前年の4倍超で過去最多を記録しました。このうち、プライムとグロースからの移行が約7割を占めています。2026年に入ってもこの流れは続いており、今回のネットイヤーグループや駅探のように、グロース市場の時価総額基準を満たせない企業がスタンダード市場を選ぶケースが目立ちます。
グロース市場の厳しい現実
グロース市場に上場する約600社のうち、時価総額100億円以上の企業は全体の約3割にとどまるとされています。現行の上場維持基準では「上場10年経過後に時価総額40億円以上」が求められますが、将来的にはさらに厳格化される見通しです。2030年以降には「上場5年経過後に時価総額100億円以上」への引き上げが検討されており、中小型のグロース銘柄にとって一段と厳しい環境になることが予想されます。
投資家が押さえるべき注意点と今後の展望
市場変更が株価に与える影響
市場区分の変更自体が直ちに企業価値を変えるわけではありません。しかし、グロース市場の指数連動型ファンドからの除外や、スタンダード市場への組み入れに伴う需給変動が株価に影響を与える可能性はあります。
また、スタンダード市場ではコーポレートガバナンス・コードの全原則が適用されるため、企業統治の面ではグロース市場より高い水準が求められます。これは中長期的にはポジティブな要素ともいえます。
上場廃止リスクへの目配り
改善期間入りした銘柄のうち、期間内に基準を満たせなければ上場廃止の可能性があります。特にグロース市場では、時価総額40億円以上の基準に適合できていない企業が多数存在するとされており、今後もスタンダードへの移行や、場合によっては上場廃止に至るケースが出てくることが想定されます。
東京プロマーケットという選択肢
上場維持が困難な企業には、東京プロマーケット(TPM)への移行も選択肢として浮上しています。TPMは機関投資家やプロ投資家向けの市場で、上場基準が比較的緩やかです。近年はTPMへの新規上場数が増加傾向にあり、東証グロース市場の新規上場数を上回る場面も出てきています。
経過措置終了後の市場選びと投資家の確認事項
今週発表されたネットイヤーグループと駅探のスタンダード市場への移行は、2022年の東証市場再編に端を発する構造変化の一断面です。経過措置の終了と上場維持基準の厳格適用により、自社の成長段階や経営実態に見合った市場を選び直す動きが加速しています。
投資家としては、保有銘柄が改善期間に入っていないか、市場変更の予定がないかを定期的に確認することが重要です。市場区分の変更は、企業が自らの立ち位置を見つめ直す機会でもあり、移行後の経営戦略にも注目が集まります。
参考資料:
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