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生成AIデータセンター冷却需要で浮上する国内有力設備関連株6選

by 斎藤 裕也
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生成AIが押し上げる冷却投資の必然性

生成AIの普及で、データセンター投資の焦点はサーバー調達だけではなくなりました。GPUの発熱をどう逃がすか、同じ床面積でどれだけ高密度に計算資源を置けるかが、クラウド事業者の採算を左右する局面に入っています。

IEAは、世界のデータセンター電力消費量が2024年に415TWh、世界の電力消費の約1.5%を占めたと整理しています。さらに2030年には約945TWhへ倍増し、現在の日本全体の電力消費をやや上回る規模になるとの見通しです。電力を食う設備ほど、冷却効率の改善余地は投資テーマになります。

NVIDIAのGB200 NVL72は、36基のGrace CPUと72基のBlackwell GPUを接続するラックスケールの液冷設計です。AI計算の性能競争がラック単位に移るほど、冷却は周辺機器ではなく、AIインフラの中核設備になります。この記事では、公式資料で事業接点を確認できる国内6銘柄を、投資家目線で読み解きます。

空冷から液冷へ広がる冷却バリューチェーン

GPUラック高密度化が変える設備投資

従来のデータセンター冷却は、空調機、チラー、冷却塔、床下送風、コールドアイルとホットアイルの制御が中心でした。通常のITラックなら、空気の流れを管理し、室内全体の温度を一定に保つ方式で対応できました。しかし、生成AI向けGPUラックは発熱密度が高く、空気だけで熱を運ぶには限界が近づいています。

ここで広がっているのが、チップやサーバーの近くまで冷却水や冷媒を通す液冷です。冷却の対象は、チラーからサーバールーム全体へ、さらにラック内のコールドプレート、CDU、ポンプ、配管、熱交換器へ細分化しています。液冷は「水を流せば終わり」ではなく、漏れ対策、冗長化、保守性、既存空調との併用設計まで含むシステム商材です。

Uptime Instituteの2025年冷却システム調査は、1,033件の回答を基に、直接液冷の採用状況を重点的に扱っています。これは、業界の論点が単なるPUE改善から、高密度AIラックを安定運用する設備設計へ移ったことを示します。液冷が進んでも空調が不要になるわけではありません。液体でチップから熱を取り出した後、その熱を建物の外へ逃がす熱源設備やポンプ制御は引き続き必要です。

電力制約が省エネ冷却を優先課題に

日本でも、データセンターの電力制約は株式市場で無視できない材料です。資源エネルギー庁は、DXやGXの進展により、データセンターや半導体工場の新増設が電力需要を押し上げると説明しています。国内立地を促しながら電源確保と省エネを両立する必要があり、2026年度提出分から省エネ関連の報告項目にデータセンター項目が追加されています。

民間投資の動きも大きいです。NTTドコモビジネスは2026年4月、印西・白井エリア全体でIT電力容量合計約250MWへの拡張を予定し、液冷方式にも対応する高効率な電源・空調インフラを採用すると発表しました。CBREは2026年のアジア太平洋データセンター市場について、日本の成長が続く一方、グリッド電力へのアクセスが制約になると指摘しています。

つまり、冷却関連株を見る際は、AIブームの華やかさだけでなく、電力制約を緩和できるか、既存施設の更新需要を取り込めるか、液冷と空冷の混在運用に対応できるかが重要です。ここに、テーマ株としての「妙味」と、単なる連想買いを分ける線があります。

冷却テーマで注目したい国内上場6銘柄

ダイキン工業とニデックの液冷装置軸

ダイキン工業は、空調世界大手としてデータセンター冷却の本命候補です。欧州サイトでは、データセンター向けに冷水熱交換器、ECファン、圧力非依存制御弁、アクティブ高調波フィルターなどを組み合わせた高効率冷却を提示しています。従来型空調からチラー、制御、保守までを束ねられる点が強みです。

注目すべきは、同社が液冷領域を買収で補っていることです。2025年11月には米チルダインの買収により、ハイパースケールおよびAIデータセンター向けの液冷エコシステムを拡充すると発表しました。同年8月に買収したDDC Solutionsの高密度冷却キャビネットと、チルダインの液体冷却システムを組み合わせる戦略です。

投資判断では、ダイキンの冷却材料がどれほど全社業績に効くかを冷静に見る必要があります。空調事業の規模が大きいため、データセンター向けだけで株価を説明するのは難しいです。一方で、冷媒、チラー、液冷、施工パートナーのネットワークを横断できる企業は限られます。長期テーマとしての安定感は高い銘柄です。

ニデックは、AIデータセンター向けCDUで存在感を出しています。同社は2025年4月、In Rowタイプの大型CDUを同年5月からタイ工場で量産開始すると発表しました。最大2.0MWの冷却能力を持ち、条件次第でNVIDIAのGB200 GPU搭載サーバーシステムNVL72を最大12台まとめて冷却可能としています。

CDUは、ラック側の冷却水と建物側の冷水系統をつなぐ要所です。ポンプ、流量制御、冗長化、漏れ検知などが求められ、モーター技術や制御技術を持つメーカーに商機があります。ニデックはIn RackタイプとIn Rowタイプの両構成を持つため、データセンターの規模や設計思想に応じた提案が可能です。受注先、量産歩留まり、価格競争の推移が株価材料になりやすい銘柄です。

古河電工と荏原の部材・ポンプ軸

古河電気工業は、今回の冷却テーマで最も数字が見えやすい企業の一つです。同社は2024年7月、データセンター向け水冷モジュールの製造工場を新設すると発表しました。従来は空冷ヒートシンクが主流だったものの、今後はコールドプレート内部に冷却水を流して熱を回収する水冷方式の適用が増えると見ています。

さらに2026年3月には、データセンター向け水冷モジュールと空冷ヒートシンクの生産能力増強で約550億円の設備投資を決定しました。水冷モジュール向けが約510億円、空冷ヒートシンク向けが約40億円です。既存の増産投資を含めた水冷モジュールの投資総額は約740億円で、同社は水冷モジュール売上を2027年度に1,000億円以上、2030年度に4,000億円と計画しています。

この規模の投資計画は、テーマ株としての説得力を高めます。一方で、設備投資が先行するため、量産開始時期、主要顧客の需要変動、GPU世代交代に伴う仕様変更がリスクです。水冷モジュールは成長余地が大きい半面、顧客集中や価格改定の影響も受けやすいと考えるべきです。

荏原は、表舞台では目立ちにくいポンプ関連の有力候補です。同社の米国子会社は2020年、空調機器メーカーとの提携を通じ、データセンター向けチラー用の特殊仕様ポンプを開発したと発表しました。当時の資料では、データセンター施設建設の増加に伴い、チラーなど付帯設備の需要が拡大し、セットメーカー向けポンプ販売が過去3年で5倍に成長したと説明しています。

2025年のIR Day資料では、データセンター冷却市場がAI利用拡大を背景に2022年度から2030年度まで年平均約16%で成長すると見込み、空冷から液冷・液浸冷却への移行で求められるポンプの種類が変わると整理しています。小型で高効率なポンプは、電力コスト削減と省スペース化の両方に効く部品です。

荏原の魅力は、冷却テーマの中でも「水を動かす」機能に焦点が当たる点です。液冷が進めば、ポンプ、バルブ、熱交換器、制御機器の信頼性が重要になります。ただし、同社はポンプ、コンプレッサ、精密機械など事業領域が広いため、データセンター向けの売上寄与を継続的に確認する必要があります。

高砂熱学工業と新晃工業の施工・空調軸

高砂熱学工業は、データセンター空調工事の実務に近い銘柄です。同社はデータセンターで24時間稼働に対応する安定した温度・湿度管理が重要だとし、コールドアイルの整流機構やホットアイルのキャッピングなど、省エネルギーにつながる提案を掲げています。AIラックの液冷化が進んでも、建物全体の空調、熱源、配管、運用保守は残ります。

同社の投資妙味は、国内データセンター新設だけでなく、既存施設の改修需要にあります。液冷ラックを一部導入する場合、従来の空冷エリアと高密度エリアが混在します。ここでは、熱だまりの解消、冗長系の設計、施工中の稼働維持、保守動線の確保が問われます。空調施工会社の経験値が差別化要因になります。

ただし、建設・設備工事株は受注残が積み上がっても、資材価格、人件費、工期遅延で採算がぶれます。データセンター向け受注が伸びる局面ほど、利益率を守れる契約条件かどうかが重要です。単純な受注額ではなく、採算と施工余力を見たい銘柄です。

新晃工業は、データセンター空調機を手掛ける機器メーカーとして注目できます。同社のサーバーエアハンシリーズは、24時間365日稼働するデータセンター向けの空調機です。神奈川工場内の総合実験棟「SINKO AIR DEVELOPMENT LAB」には、風量65,000CMH、冷房能力250kW対応の能力試験装置があり、実際の運用を想定した温度条件や緊急時の制御挙動を確認できるとしています。

データセンター空調機は大型で、搬入・設置の工数が収益性や工期に影響します。同社は60,000CMHタイプを一般車両で一体搬入できる設計としており、現場工数の削減を訴求しています。液冷時代でも、すべてのラックが一斉に液冷化するわけではありません。空冷と液冷の併存期間が長いほど、信頼性の高い空調機には需要が残ります。

新晃工業は時価総額や流動性の面で、大型株より値動きが軽くなりやすい銘柄です。データセンター向けの受注比率、工場稼働率、製品ミックスの変化が確認できれば、テーマ株として評価が上がる余地があります。一方で、個別案件の偏りや納期遅延には注意が必要です。

過熱テーマ株に潜む受注時期と採算の壁

データセンター冷却は成長テーマですが、株価が先に織り込むリスクがあります。特に液冷関連は、NVIDIAなどGPU供給側の設計変更、クラウド事業者の投資タイミング、電力・土地の確保状況で需要時期がずれます。冷却部材の発注はデータセンター建設の終盤だけでなく設計段階から関わりますが、売上計上には時間差があります。

もう一つのリスクは、液冷が万能ではないことです。既存データセンターでは配管スペース、漏水対策、保守人員の訓練が必要です。水冷のコールドプレート、CDU、ポンプ、チラーをどの会社が主導するかも案件ごとに異なります。サーバーベンダー、施設設計会社、冷却装置メーカーの力関係で、国内企業の取り分は変わります。

採算面も見逃せません。古河電工のように巨額投資を伴う企業は、需要拡大期には利益成長が大きく見えますが、稼働率が想定を下回ると固定費負担が重くなります。施工会社は人手不足と資材価格上昇、機器メーカーは部材調達と価格競争、ポンプ・チラー企業は海外競合との仕様競争が課題です。

投資家は「AI関連」というラベルだけで判断せず、公式資料にデータセンター向け製品、量産時期、投資額、売上計画、実機試験設備、具体的な施工技術があるかを確認する必要があります。連想買いが増えるほど、実需の確認が銘柄選別の差になります。

投資家が確認すべき冷却株の選別軸

データセンター冷却は、空調機、チラー、CDU、ポンプ、放熱部材、施工、制御、保守にまたがる広いテーマです。今回の6銘柄では、ダイキン工業とニデックが液冷装置、古河電工と荏原が部材・ポンプ、高砂熱学工業と新晃工業が施工・空調機の軸を担います。

短期では、GPU投資ニュースや大型データセンター計画で関連株が動きやすいです。中期では、各社の受注残、量産開始、設備投資の進捗、利益率の改善が確認ポイントになります。特に古河電工の水冷モジュール、ニデックのCDU、ダイキンの液冷買収効果は、数値化されるたびに評価が変わる可能性があります。

冷却はAIインフラの裏方ですが、電力制約が厳しくなるほど価値が表に出ます。投資家は、テーマの大きさよりも、どの工程で、どの企業が、どの時期に利益を得るのかを分解して見るべきです。そこに、過熱したAI相場の中でも比較的実需に近い銘柄を選ぶ手掛かりがあります。

参考資料:

斎藤 裕也

テーマ株・材料分析

テーマ株・材料株の発掘と分析を得意とする。企業の IR 情報と業界動向を結びつけ、投資家目線で銘柄の「次の一手」を読む。

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