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4月後半決算の焦点、中外製薬・ディスコ・キーエンスを読み解く

by 前田 千尋
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はじめに

4月20日週の日本株は、単に「決算が始まる週」ではありません。3月期企業の本決算が本格化する直前に、投資家が今期の利益水準と来期の見通しをどう織り込むかを試す週です。今週は4月22日にディスコ、4月24日に中外製薬が公式IRカレンダー上で決算発表を予定しています。キーエンスについては、公式IRページでは直近の3Q資料が中心ですが、市場データサービスのYahoo!ファイナンスでは4月24日が決算発表予定日と表示されています。

この3社が注目されるのは、業種がばらばらだからです。ディスコは半導体製造装置と精密加工ツール、キーエンスはFAとセンサーを中心とする製造業の自動化需要、中外製薬は高収益な新薬群とロシュ連携を軸にした医薬品需要を映します。つまり、今週の決算を見ると、日本株のなかでも半導体、設備投資、ディフェンシブ成長という三つの温度差をまとめて確認できます。この記事では、元記事に頼らず公開情報だけを使って、今週の見どころを整理します。

決算シーズン序盤の分水嶺

3月期本決算と12月期1Qの交差

今週の特徴は、3月期企業の本決算と12月期企業の第1四半期が同じ週に並ぶことです。JPXは決算発表予定日ページで、3月期・9月期企業の決算予定を毎営業日午後5時ごろ更新すると案内しています。公開資料には、その後の変更で実際の日程がずれる可能性があるとも明記されています。決算日程を扱うときは、一覧記事の印象よりも、会社のIRカレンダーや更新日を確認する姿勢が重要です。

そのうえで今週を見ると、ディスコは4月22日16時に2025年度決算発表、翌23日に決算説明会を予定しています。中外製薬は4月24日17時に2026年12月期第1四半期決算発表、18時に説明会を予定しています。ディスコは3月期企業としてフルイヤーの着地と来期の受注感が焦点になり、中外製薬は年初に示した年間方針に対して四半期の進捗をどう見せるかが焦点になります。キーエンスが24日に並ぶなら、この日は日本株の中でも特に「景気敏感成長株」と「高収益ディフェンシブ成長株」が同時に試される一日になります。

日程確認と織り込みの注意点

序盤戦で重要なのは、決算そのもの以上に「何がすでに織り込まれているか」です。ディスコは4月6日に第4四半期の個別売上高と出荷額の速報値をすでに公表しており、通期の個別売上高は3,538億円、個別出荷額は3,588億円でした。第4四半期の出荷額は981億円で前年同期比28.2%増、前四半期比9.0%増となり、四半期最高額を更新しています。しかも会社は、2025年度通期の出荷額が6期連続で過去最高になったと説明しています。つまり、22日の本決算では「良かったか悪かったか」という一次評価より、速報で見えていた強さが連結利益や来期見通しにどうつながるかが勝負になります。

一方で、中外製薬は四半期の先行開示が厚くないぶん、24日の情報量が多くなりやすい銘柄です。キーエンスも同様で、事前の月次や速報で大きく先回りしにくい分、決算発表日の一発勝負になりやすい性格があります。今週の3社はすべて有力銘柄ですが、ディスコは「先に出た数字の精査」、中外製薬とキーエンスは「当日開示の質」がより重要という違いがあります。

ディスコとキーエンスに映る設備投資

半導体需要の先行指標

ディスコを見るうえで重要なのは、売上高より出荷額のほうが市場の温度を早く映しやすい点です。会社は4月6日の速報で、機械製品は検収時に売上計上するため、売上高は市場の動きと乖離する傾向があり、より市場との連動性が高い参考情報として出荷額を開示していると説明しました。実際に第4四半期は、売上高が1,049億円で前年同期比2.3%増にとどまる一方、出荷額は981億円で同28.2%増でした。ここには、需要の強さと売上認識のタイムラグが同時に表れています。

この背景を裏づける外部環境も悪くありません。TSMCの2026年1-3月期決算では、売上高が1兆1,341億台湾ドル、前年同期比35.1%増、粗利益率は66.2%でした。3ナノ、5ナノ、7ナノを合わせた先端プロセスの売上構成比は74%に達しています。生成AI向け需要の強さがなお継続していることが確認できる内容で、ディスコが速報で示した「生成AI向けを中心に装置・ツールともに出荷が伸長」という説明とも整合的です。半導体関連では、単なる在庫調整局面ではなく、先端投資が続くなかで後工程・精密加工の需要も高水準にあると読むほうが自然です。

ただし、強気一辺倒でもありません。ディスコの2026年3月期第3四半期累計の連結売上高は3,038億円で前年同期比11.5%増、営業利益は1,262億円で同9.7%増でしたが、1月時点の通期業績予想は売上高4,190億円、営業利益1,721億円、純利益1,264億円でした。速報値から逆算すると、4Qの売上と出荷は伸びた一方で、最終的にどこまで利益へ落とし込めたか、そして2026年度の需要前提をどこまで強気に置くかが次の焦点です。株価が高い評価を受けている銘柄ほど、好決算そのものより「来期も続くのか」で値動きが決まります。

FA需要の地域差

キーエンスは、半導体単独ではなく世界の製造業全体の設備投資を測る銘柄です。2025年3月期の連結売上高は1兆591億円、営業利益は5,498億円、営業利益率は51.9%でした。直近の2026年3月期第3四半期累計では、売上高8,346億円で前年同期比7.7%増、営業利益4,163億円で同4.9%増、純利益3,111億円で同6.6%増でした。依然として圧倒的な高収益ですが、利益率の改善よりも売上成長の質が問われる段階に入っています。

見どころは地域差です。キーエンスの3Q説明資料では、2025年度3Qの地域別売上成長率が日本0.3%、海外13.3%、米州15.0%、アジア18.9%、欧州ほか2.2%と示されています。累計でもアジア16.5%、米州14.3%が目立つ一方、欧州は横ばい圏です。これは、グローバル製造業が一様に強いわけではなく、投資の重心が北米とアジアに偏っていることを意味します。もし24日の決算でこの構図が続くなら、キーエンスは日本景気の銘柄というより、北米・アジアの製造業投資を取り込むグローバル銘柄として再評価されやすいでしょう。

国内マクロも一定の追い風です。内閣府の機械受注統計では、船舶・電力を除く民需が2月に前月比13.6%増となり、3か月移動平均も前月比7.5%増でした。ただし、大型案件に押し上げられているため基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置かれています。日銀短観でも2026年3月調査の大企業製造業DIは17と前回12月の16から改善し、生産用機械は26、電気機械は22でした。景況感は底堅いものの、全面的な強気ではなく、案件の偏りや地域差を伴う回復です。キーエンス決算でも、売上の絶対額以上に、どの地域・どの顧客層の投資が継続しているかが読みどころになります。

中外製薬に映る医薬品収益の質

2025年実績と主力品の伸び

中外製薬は、景気敏感株とは異なる意味で今週の重要銘柄です。2025年12月期の連結売上収益は1兆2,579億円で前年同期比7.5%増、営業利益は5,988億円で同10.5%増、当期利益は4,340億円で同12.1%増でした。医薬品セクターのなかでも収益性が非常に高く、単なる防御的銘柄ではなく、継続成長を期待される大型株です。

内容を見ると、主力品の厚みが際立っています。決算短信では、スペシャリティ領域の売上高が2,258億円で前年同期比5.8%増となり、バビースモ、エンスプリング、ヘムライブラが堅調だったことに加え、新製品ピアスカイが好調に市場浸透したと説明しています。補足資料では、ヘムライブラの売上高が666億円で前年同期比6.2%増、アクテムラが462億円で同8.5%減と示されており、主力群のなかでも伸びる薬と反動が出る薬の差がはっきりしています。さらに決算短信では、海外製商品売上高が6,054億円で前年同期比12.8%増となり、ロシュ向け輸出でヘムライブラやアクテムラが前年を上回ったと説明しています。

この構造は重要です。中外製薬の強さは、国内新薬の販売だけでなく、ロシュ向け輸出やロイヤルティを含むグローバル連携にあります。したがって24日の第1四半期では、国内薬価や後発品の影響だけを見ても不十分です。国内製商品、海外製商品、ロシュ関連収入のどこが伸び、どこに一時要因があったのかを分けて読む必要があります。

Q1で見極めたい変数

今期序盤の論点は三つあります。第一に、2025年に売上を押し上げた主力品が高い比較ベースを超えられるかです。ヘムライブラ、バビースモ、エンスプリング、ピアスカイの伸びが続けば、薬価改定や後発品浸透の影響を吸収しやすくなります。反対に、主力品の伸びが鈍ると、中外製薬の高い利益期待はやや剥落しやすくなります。

第二に、収益の質です。営業利益が高くても、一時的な費用減少や為替だけで押し上げられているのか、主力品の構成改善で押し上げられているのかで評価は変わります。中外製薬は研究開発型企業であり、四半期ごとの利益にはR&D投資や提携関連費用の振れが出ます。第1四半期では、単純な前年同期比だけでなく、研究開発費や販売管理費の出方、そして説明会でのパイプライン言及の濃さも見ておく必要があります。

第三に、セクター内での相対評価です。半導体やFA関連株は景気の加速で買われやすい半面、変動も大きいです。中外製薬はその対極に位置しやすい銘柄ですが、だからこそ市場は「景気に左右されにくい成長」が本当に維持されるかを厳しく見ます。24日にキーエンスと同日で注目が集まるなら、投資家は中外製薬を単独で見るというより、景気敏感成長株との比較で資金の逃避先か、並立できる成長株かを判断するはずです。

注意点・展望

今週の決算で避けたい誤解は、「数字が良ければ株価も上がる」という単純な見方です。ディスコは速報値で強さがある程度織り込まれており、本決算では来期見通しと利益率が本番です。キーエンスは高収益企業だけに、増収でも地域別の勢いが鈍れば物足りなさが出ます。中外製薬は増益だけでなく、その源泉が主力品の持続成長なのか、ロシュ関連収入なのか、費用要因なのかで受け止めが変わります。

もう一つの注意点は、日程情報の扱いです。JPX自身が注意喚起している通り、決算予定日は変更されることがあります。今週のなかではディスコと中外製薬は公式IRカレンダーで確認できますが、キーエンスについては執筆時点で公式ページより市場データサービスの予定表示のほうが確認しやすい状態でした。実際に売買判断や速報対応をする読者は、当日の会社IRサイトも合わせて確認したほうが安全です。

今後の見通しとしては、ディスコがAI投資の持続性、キーエンスが製造業投資の広がり、中外製薬が新薬主導の利益成長をそれぞれ示せるかで、日本株の物色の幅が変わります。もし3社ともに前向きな材料を出すなら、日本株は「半導体だけ」「ディフェンシブだけ」ではなく、複数の成長軸が並立していることを示せます。反対に、どこか一つでも想定より慎重なメッセージが出れば、今期序盤の相場はかなり選別色を強めるはずです。

まとめ

4月20日週の決算は、日本株の方向感を一気に決める数ではなく、どの成長テーマがまだ機能しているかを確かめるイベントです。ディスコはAI主導の半導体設備投資、キーエンスは北米・アジア中心の製造業投資、中外製薬は主力新薬とロシュ連携を軸にした高収益成長を映します。業種は違っても、いずれも「今の市場が何を評価しているか」を映す鏡です。

今週の決算を見る際は、売上高や営業利益の増減だけでなく、ディスコなら出荷額、キーエンスなら地域別売上、中外製薬なら主力品と海外収益の内訳まで確認することが重要です。決算シーズンの序盤ほど、表面的なサプライズより、次の四半期にも続く構造があるかどうかが株価を左右します。今週は、その構造を見抜くための格好の観察週です。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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