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AMD決算が市場予想超え、データセンター事業が成長加速

by 前田 千尋
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データセンター58億ドルが示すAMD好決算

米半導体大手AMD(Advanced Micro Devices)が2026年5月5日に発表した2026年1-3月期(第1四半期)決算は、売上高・利益ともに市場予想を上回る好決算となりました。特にデータセンター部門の売上高は前年同期比57%増の58億ドルと過去最高を更新し、AI関連需要の力強さを改めて印象づけています。

決算発表を受けて、AMDの株価は時間外取引で約15%上昇しました。リサ・スーCEOはサーバーCPUの市場規模(TAM)予測を従来の約2倍となる1200億ドル超に引き上げるなど、強気の見通しを示しています。本記事では、セグメント別の業績を分析しながら、AMDの成長戦略と今後の展望を読み解きます。

全体業績:売上高103億ドル、市場予想を約4%上回る

主要指標はすべて上振れ

AMDの2026年第1四半期の売上高は103億ドルとなり、前年同期比で38%の増収を達成しました。市場コンセンサスの約98.5億〜98.9億ドルを約4%上回る結果です。

利益面では、GAAPベースの希薄化後EPSが0.84ドル(前年同期比91%増)、非GAAPベースの希薄化後EPSが1.37ドル(同43%増)となりました。非GAAPベースのEPSは市場予想の1.29ドルを上回っています。GAAPベースの粗利益率は53%で、収益性の改善も進んでいます。

セグメント別に見る収益構造の変化

AMDの事業は大きく4つのセグメントに分かれます。第1四半期の内訳を見ると、データセンター部門が全売上高の56%を占めるまでに成長しており、同社の収益構造がAI・サーバー向けに大きくシフトしていることが分かります。

クライアント部門は29億ドル(前年同期比26%増)と堅調で、Ryzenプロセッサーの市場シェア拡大が寄与しました。ゲーミング部門は7.2億ドルでウォール街の予想6.68億ドルを超え、組み込み部門は8.73億ドル(同6%増)と回復基調にあります。

データセンター部門:AI需要で前年同期比57%増の過去最高

EPYC CPUとInstinct GPUの両輪で成長

データセンター部門の売上高58億ドルは、前年同期の36.7億ドルから57%の大幅増収です。この成長はサーバー向けCPU「EPYC」とAIアクセラレーター「Instinct」GPUの両方が牽引しています。

EPYCプロセッサーは、クラウド大手やエンタープライズ顧客からの需要が引き続き強く、サーバーCPU市場におけるAMDのシェアは着実に拡大しています。業界データによれば、AMDのサーバーCPUシェアは40%近くまで上昇しており、2017年にほぼゼロだったことを考えると、劇的な変化です。

サーバーCPU市場規模予測を1200億ドル超に倍増

決算説明会で最も注目を集めたのは、リサ・スーCEOによるサーバーCPUのTAM(市場規模)予測の大幅な上方修正です。AMDは2030年までのサーバーCPU市場規模を1200億ドル超と予測しており、これは2025年11月時点の見通しからほぼ倍増に当たります。年間成長率の見通しも従来の18%から35%超に引き上げられました。

この大幅な上方修正の背景には、エージェンティックAIや推論ワークロードの急拡大による構造的なCPU需要の増加があるとされています。AIワークロードではGPUが注目されがちですが、実際にはCPUも大量に必要となるため、AI需要の拡大はCPU市場全体の成長にもつながっています。

強気のガイダンス:第2四半期も成長加速の見通し

売上高112億ドル、前年同期比46%成長を予想

AMDは2026年第2四半期の売上高ガイダンスとして約112億ドル(±3億ドル)を提示しました。これは前年同期比で約46%の成長、前四半期比でも約9%の成長を意味し、市場コンセンサスを上回る水準です。非GAAPベースの粗利益率は約56%を見込んでおり、第1四半期の53%から改善する見通しとなっています。

特に注目すべきは、サーバーCPU売上高が第2四半期に前年同期比で70%超の成長を見込んでいるという点です。次世代EPYCプロセッサーの出荷が本格化するに伴い、2026年後半から2027年にかけても力強い成長が続くとAMDは見ています。

サプライチェーン増強で供給体制を整備

急増する需要に応えるため、AMDはサプライチェーンパートナーとの連携を強化し、ウエハーおよび後工程の生産能力を大幅に引き上げる取り組みを進めています。需要は強いものの供給がボトルネックになるリスクを事前に解消しようとする姿勢がうかがえます。

AI GPU競争:MI350投入とMI400の展望

現行のInstinct MI350シリーズ

AMDは現在、第4世代CDNAアーキテクチャを採用した「Instinct MI350」シリーズを展開しています。MI350は288GBのHBM3eメモリと8TB/秒の帯域幅を備え、前世代比で最大4倍のAIコンピューティング性能と最大35倍の推論性能向上を実現しているとされています。

次世代MI400シリーズ:2026年後半に投入予定

2026年後半にはさらに高性能な「Instinct MI400」シリーズの投入が予定されています。MI400はCDNA 5アーキテクチャを採用し、432GBのHBM4メモリ(MI350比で50%増)と19.6TB/秒のメモリ帯域幅(同145%向上)を実現する見通しです。

TSMCの2nmプロセスノードで製造される12個のコンピュートチップレットと3nmプロセスの追加チップレットを組み合わせ、最上位モデルのMI455Xは3200億トランジスタという規模になるとされています。NVIDIAの次世代「Vera Rubin」アクセラレーターに対抗する製品として位置づけられており、メモリ容量で1.5倍、スケールアウト帯域幅で優位性を持つとAMDは主張しています。

AMDに残るCUDAの壁と410ドル超株価

ソフトウェアエコシステムの課題は依然として残る

AMDのハードウェア性能は急速に向上していますが、AI GPU市場においてはNVIDIAのCUDAプラットフォームが圧倒的な存在感を持っています。15年以上の開発実績と数百万人の開発者コミュニティを擁するCUDAの「スイッチングコスト」は、スペック上の優位性だけでは覆しにくいのが現実です。AMDのROCmソフトウェアスタックがどこまで浸透できるかが、今後の市場シェア拡大の鍵を握ります。

株価は期待を織り込んだ水準に

AMDの株価は年初来で約59%上昇しており、過去1年では約255%の上昇を記録しています。決算後の時間外取引でさらに約15%上昇し、410ドルを突破したとの報道もあります。Morgan Stanleyは目標株価を255ドルから360ドルに引き上げましたが、現在の株価はすでにこの水準を超えているため、高い成長期待がすでに織り込まれている点には留意が必要です。

MI400とIntelシェア争いの焦点

AMDの2026年第1四半期決算は、データセンター部門を中心に全セグメントで力強い成長を示しました。売上高103億ドル(前年同期比38%増)、データセンター売上高58億ドル(同57%増)はいずれも過去最高を更新しています。第2四半期のガイダンスも市場予想を上回り、サーバーCPU売上高が70%超の成長を見込むなど、AI需要を追い風にした成長加速が鮮明です。

投資家が今後注目すべきポイントは、MI400シリーズの投入時期と市場の反応、ソフトウェアエコシステムの拡充状況、そしてサーバーCPU市場でのIntelとのシェア争いの行方です。AI需要の構造的拡大が続く限り、AMDの成長ストーリーは維持される可能性が高いですが、すでに高い期待が株価に織り込まれている点は、決算数値と合わせて冷静に評価する必要があります。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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