三菱重工が25年度3Qで2ケタ増益、受注残12兆円超の好調続く
三菱重工3Q増益とGTCC・防衛の牽引
三菱重工業(7011)が2026年2月4日に発表した2025年度第3四半期(2025年4月〜12月)連結決算は、売上収益・事業利益ともに前年同期比で大幅な伸びを記録しました。特に受注高の急拡大が目覚ましく、これを背景に通期の利益予想も上方修正されています。
同社の好調を支えるのは、世界的な電力需要の拡大に伴うガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)事業と、地政学リスクの高まりを受けた防衛・宇宙事業です。本記事では、決算内容の詳細と成長ドライバー、今後の見通しについて解説します。
第3四半期決算の主要数値
売上収益と利益の推移
2025年度第3四半期累計の連結業績は、売上収益が前年同期比9.2%増の3兆3,269億円、事業利益が同25.5%増の3,012億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同22.6%増の2,109億円となりました。売上・利益ともに2ケタ近い成長率を達成しており、収益力の向上が鮮明です。
事業利益率も改善傾向にあり、エナジーセグメントを中心に採算性の高い案件が増加していることが背景にあります。特にGTCC関連の大型案件が利益率を押し上げている点が注目されます。
受注高・受注残高が過去最高水準
決算でもっとも注目を集めたのが受注関連の数値です。受注残高は前年度末から約2兆111億円増加し、12兆2,474億円に到達しました。これは過去最高の水準であり、今後数年にわたる安定的な収益基盤を形成しています。
受注高の増加はエナジーセグメントが大きく貢献しており、大型ガスタービンの受注が堅調に推移しています。加えて、航空・防衛・宇宙セグメントでも高水準の受注を確保していることが全体を押し上げました。
通期予想の上方修正と成長ドライバー
上方修正の内容
好調な第3四半期実績を踏まえ、三菱重工業は2025年度通期の業績予想を上方修正しました。事業利益は前回予想から200億円増の4,100億円(前期比約15.5%増)へ引き上げられ、親会社の所有者に帰属する当期利益も300億円増の2,600億円が見込まれています。
受注高の通期予想も6,000億円の大幅増額で6兆7,000億円に修正されました。一方、売上収益は4兆8,000億円(前期比10.1%増)に据え置かれており、受注から売上への転換には一定のリードタイムがあることを示しています。
GTCC事業が牽引するエナジーセグメント
成長の最大のドライバーは、GTCC事業を中心とするエナジーセグメントです。世界的なデータセンター需要の増加や新興国での電力インフラ整備を背景に、大型ガスタービンの受注が急増しています。
三菱重工業は大型ガスタービン市場で世界トップクラスのシェアを有しており、2024年度には25台の大型ガスタービンを受注して過去最高を記録しました。脱炭素の流れの中でも、再生可能エネルギーの変動を補完する電源としてGTCCの需要は根強く、中長期的な成長が期待されています。
防衛・宇宙事業の拡大
もう一つの成長柱が防衛・宇宙事業です。日本政府は防衛費をGDP比2%に引き上げる方針を掲げており、防衛装備品の調達が本格化しています。三菱重工業は戦闘機やミサイル、艦艇など幅広い防衛装備品を手がけており、防衛予算拡大の恩恵を直接的に受ける立場にあります。
航空・防衛・宇宙セグメントは増収増益を達成しており、中期経営計画においても「伸長事業」の一つに位置づけられています。世界的な地政学リスクの高まりを受け、防衛関連銘柄として市場での注目度も一段と上がっています。
中期経営計画「2024事業計画」との整合
目標達成に向けた進捗
三菱重工業は2024年5月に発表した中期経営計画「2024事業計画(FY2024〜2026)」で、2026年度の業績目標として売上高5.7兆円、事業利益4,500億円、ROE12%を掲げています。
2024年度は受注残高が10兆円を突破し、GTCC・原子力・防衛の「伸長事業」が計画通りの成長を見せました。2025年度第3四半期時点の実績を踏まえると、最終年度の目標達成に向けた進捗は順調といえます。
投資戦略の転換
中期経営計画では3年間の投資額として、伸長事業と成長領域に6,500億円を配分しています。これは収益力の回復・強化を優先した前期の計画から一転して、成長投資を重視する姿勢を示しています。水素・アンモニアやCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)といった成長領域への投資も本格化しており、次の収益の柱を育てる取り組みが進んでいます。
受注残12兆円超に潜む納期・政策リスク
三菱重工業の業績好調は明確ですが、いくつかのリスク要因にも目を向ける必要があります。まず、受注残高の大幅な積み上がりは将来の売上を保証する一方、納期遅延やコスト上昇のリスクも内包しています。大型プロジェクトの長期化による収益変動には注意が必要です。
また、防衛事業は政府予算に依存する側面が強く、政権交代や安全保障政策の変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。GTCC事業についても、再生可能エネルギーへの移行加速により、長期的には需要構造の変化に対応する必要があります。
株価面では、2026年4月時点で時価総額が約15兆9,000億円に達しており、好業績はすでに株価に一定程度織り込まれているとの見方もあります。今後は中期経営計画の最終年度となる2026年度に向けて、目標の達成度合いが株価の方向性を左右する重要な指標となるでしょう。
2ケタ増益と2026年度目標達成への焦点
三菱重工業の2025年度第3四半期決算は、GTCC事業と防衛・宇宙事業の成長に支えられ、2ケタ増益を達成しました。受注残高は12兆円を超えて過去最高を更新し、通期の利益予想も上方修正されています。
中期経営計画「2024事業計画」の目標達成に向けた進捗も順調であり、エネルギー・防衛分野での需要拡大を追い風に、同社の成長ストーリーは着実に進展しているといえます。今後の注目ポイントは、2026年度の最終目標の達成可否と、水素・CCUSなど次世代成長領域への展開の具体化です。
参考資料:
関連記事
三菱重工1Q純利益97%増、GTCC好調と受注残が示す成長余地
三菱重工業の2027年3月期1Qは受注高2兆224億円、親会社帰属利益1,346億円と97.4%増。GTCC、原子力、防衛の受注残拡大に加え、営業CF2,845億円、フリーCF3,915億円へ改善した背景を整理し、通期計画据え置きの意味、政策需要、為替・大型案件リスク、株価評価の焦点を投資家目線で解説。
主要通期上方修正銘柄一覧、今週浮上した利益改善の裏側と投資視点
8月31日から9月4日に通期業績を上方修正したトライアイズ、ナトコ、マクアケ、総合商研、泉州電業、きんえいを横断分析。不動産売却、塗料・蒸留需要、家電ガジェット案件、電線需要、映画興行など修正理由の違いを分解し、経常利益の増額率だけでは見落としやすい継続性と株価材料の見極め方、次回決算の確認点を解説。
泉州電業が上方修正、最高益予想と増配余地の持続力を詳しく検証
泉州電業は2026年10月期の経常利益予想を130億円へ上方修正し、年間配当も170円へ増額しました。第3四半期累計は売上高1215億円、経常利益98.7億円と大きく伸長。半導体製造装置・工作機械向け需要、銅価格、在庫と売上債権の増加を確認し、最高益更新の質と期末に向けた投資判断の焦点を詳しく読み解く。
通期上方修正8銘柄を総点検、経常利益の伸び率と成長持続力を読む
8月24〜28日に通期業績を上方修正した日本一ソフト、タムラ製作所、ストライクG、DyDo、ギフトHD、Jリート3銘柄を会社発表で確認。経常利益の修正率、AIデータセンター需要、M&A大型案件、国内飲料の収益改善、物流不動産の売却益を比較し、利益の質と株価評価への影響、次回決算で確認すべき指標を読み解く。
利益倍増39社を読む、半導体商社と内需株の上方修正余地を点検
26年4-6月期に経常利益が2倍超となった中型株39社を分析。科研薬、レスター、トーメンデバイス、日本信号、Joshin、IDECなどを手掛かりに、AIデータセンター、医薬ライセンス、証券市況、内需回復が業績を押し上げた構造と、通期進捗や一過性要因、株価織り込みを踏まえた投資判断の注意点を読み解く。
最新ニュース
相場不安に備える秋の高配当株6銘柄、好進捗と割安性を徹底検証
科研製薬、コスモエネルギーHD、ホンダ、東京インキ、大紀アルミ、インフロニアHDの高配当6銘柄を独自選定。9月10日時点の配当利回り、PER、PBRと第1四半期の利益進捗を比較し、マイルストン収入、在庫影響、公正価値評価益を除いた本業の強さと、権利取り前に注意したい減配リスクまで、金利上昇下の投資判断軸を読み解く。
AI時代の成長株、デジタルマーケティング精鋭7銘柄を徹底分析
日本のインターネット広告費は2025年に4兆459億円となり、総広告費の50.2%へ拡大した。AI検索、動画、EC、データ活用を追い風に、フィードフォースグループやエフ・コード、オロなど注目7社の最新決算、成長モデル、株価復調の条件、M&A・顧客集中・先行投資のリスクを比較し、次の決算で見るべき指標を解説。
高配当株ベスト30、利回り15%首位の裏側と割安性を徹底検証
2026年9月9日終値と会社予想を基に、東証上場株から高配当30銘柄を独自抽出。首位ネクソンの15.25%は415円の特別配当込みで、東計電算やフジコピアンにも資産売却など一時要因があります。DOE、配当性向、権利落ち後の株価、残存配当を照合し、見かけの利回りと継続可能な割安株を見分ける方法を解説。
長期金利3%時代の不動産株、賃料上昇で見極める投資戦略の要諦
長期金利が一時3%を超え、不動産株には資産価値の下押しと利払い増が意識されています。一方、東京都心5区のオフィス空室率は1.87%、平均募集賃料は前年同月比12.46%上昇。日銀の追加利上げ観測を踏まえ、固定金利比率、借入期間、賃料改定力、含み資産、開発負担から有望株を選ぶ実践的な視点を解説します。
上方修正を先回り、9月中間期の業績上振れ小型株候補を徹底精査
2027年3月期第1四半期決算から、時価総額800億円未満を軸に9月中間期の上方修正候補を独自抽出。佐藤食品工業、アオイ電子、東邦化学工業、北川鉄工所の計画進捗に加え、内海造船、小倉クラッチ、ジーダットの利益の質を検証し、会計変更や一過性損益、原材料高など先回り投資の落とし穴まで財務面から読み解く。