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北海道電力、経常益53%上方修正で託送料金と配当持続力が焦点

by 前田 千尋
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経常益53%上方修正が示す利益底上げ

北海道電力(9509)は2026年9月25日、2027年3月期通期の連結業績予想を上方修正しました。経常利益は従来の300億円から460億円へ、160億円の増額です。増減率は53.3%と大きく、純利益も220億円から330億円へ50.0%引き上げられました。

ただし、今回の修正は「一気に増益局面へ転じた」という単純な話ではありません。前期の経常利益613億円と比べると、修正後でも25.0%の減益見通しです。市場が見るべき焦点は、減益幅が縮まった理由と、その利益が翌期以降も残る性格のものかどうかにあります。

託送料金見直しが押し上げる収益構造

予想数値に表れた修正幅

今回の修正後予想は、売上高が9,700億円から1兆250億円へ、営業利益が480億円から610億円へ、経常利益が300億円から460億円へ、親会社株主に帰属する当期純利益が220億円から330億円へ引き上げられました。1株当たり当期純利益も100.27円から153.83円へ上がっています。

売上高の増額幅は550億円です。会社側は、燃料価格上昇に伴う燃料費等調整額、他社販売電力料の増加、北海道電力ネットワークにおける託送料金の見直しを理由に挙げています。経常利益の増額理由では、とくに託送料金見直しの寄与が明記されています。

重要なのは、利益修正の中心が「燃料価格の上振れそのもの」ではない点です。燃料価格の上昇は売上高を膨らませますが、費用も増えます。電力会社の収益を見る際は、売上高の拡大よりも、燃料費調整の期ずれ、託送料金、販売電力量の構成が利益にどう残るかを切り分ける必要があります。

料金反映を支える託送制度

託送料金は、送電線や配電線などの送配電網を利用するための料金です。北海道エリアでは北海道電力ネットワークが一般送配電事業者として担い、小売電気事業者を通じて最終的な電気料金に反映されます。今回の見直しは、物価や金利の上昇を反映するため、2026年11月1日から適用される予定です。

北海道電力は同日から、低圧、規制料金、高圧、特別高圧の料金に託送料金の変動分を反映するとしています。モデルケースでは、従量電灯B、契約電流30A、月230kWhの家庭で、月額が11,115円から11,596円へ上がり、影響額は481円、見直し率は4.3%です。

この仕組みは、短期的な卸電力取引の損益よりも継続性を読みやすい材料です。一方で、電気料金の上昇は家計や企業の負担に直結します。収益改善が制度に支えられるほど、投資家は制度変更、行政審査、消費者負担への批判という非財務リスクも同時に見る必要があります。

他社販売と燃料費調整に潜む利益変動

販売電力量の内訳変化

2026年度の小売・他社販売電力量は379億kWh程度の見通しです。小売販売電力量は219億kWh程度で、前年度比1.0%減の想定が据え置かれました。一方、他社販売電力量は160億kWh程度で、前年度比33.1%増が見込まれています。

ここには、北海道電力の事業環境の二面性が出ています。小売は競争環境が厳しく、販売量の大幅な回復は見込みにくい状況です。一方で、相対販売などを含む他社販売は伸びており、2026年度第1四半期でも地帯間・他社販売電力料が前年同期比で増加しました。

ただし、他社販売の増加は利益の質を丁寧に見る必要があります。販売量が増えても、調達価格、卸電力市場価格、相対契約の条件によって採算は変わります。数量の上振れが売上高を押し上げる局面では、次の決算で電気事業営業費用や購入電力料の動きまで確認することが欠かせません。

期ずれ影響と燃料前提の読み方

北海道電力の第1四半期は、売上高が前年同期比119億円増の2,144億円となった一方、経常利益は228億円減の187億円でした。主因は、燃料費等調整制度の期ずれ影響が差益から差損に転じたことです。今回の上方修正を読むうえでも、この期ずれは中心論点です。

9月25日の修正資料では、通期の為替レートは160円程度、原油CIF価格は110.0ドル程度とされました。7月公表時の原油CIF価格85.0ドル程度から大きく上がっています。燃料価格の前提が上がると、売上高には燃料費等調整額として反映されやすい一方、調整の時間差が利益を振らせます。

したがって、今回の経常利益460億円は、燃料価格上昇で売上が伸びたから単純に利益が増える、という構図ではありません。むしろ、燃料前提が厳しくなる中でも託送料金の見直しが利益を支える、という読み方が自然です。ここが、表面的な上方修正率以上に重要な点です。

配当据え置きと泊発電所工程の評価軸

普通株式の年間配当予想は33円で、前回予想から変更されませんでした。中間16.5円、期末16.5円の内訳も据え置きです。会社はDOEを意識した安定配当を掲げており、今回の増益修正をそのまま増配に振り向ける判断はしませんでした。

修正後の1株利益153.83円に対して年33円配当を単純計算すると、配当性向は約21%です。余力が増したように見えますが、北海道電力は大型投資と財務基盤の回復を同時に進める局面にあります。2026年3月期末の自己資本比率は18.5%で、電力インフラ企業としては財務の厚みも引き続き注視点です。

泊発電所については、防潮堤設置工事の完了時期が2027年8月とされています。新たな防潮堤は海抜19.0m、延長約1,200m、工事費は1,067億円と公表されています。再稼働は燃料費や電源構成に大きく関わる可能性がありますが、工程、規制対応、地域との関係はなお不確実です。

北海道では半導体工場やデータセンターなどGX産業立地が進み、電力需要が中長期で反転増加する見通しも示されています。需要増は追い風ですが、送配電網投資、安定供給、料金負担のバランスを取る必要があります。配当の安定性は、この投資負担を吸収しながら利益を残せるかで決まります。

投資家が次回決算で確認すべき指標

次の確認点は、10月下旬に予定される中間決算です。11月からの託送料金見直しがどの程度下期収益に効くか、他社販売電力量の増加が利益を伴っているか、燃料費等調整制度の期ずれ差損が拡大していないかを順に見る必要があります。

外部データでは、9月25日時点の会社予想経常利益46,000百万円に対し、コンセンサス経常利益は39,050百万円と表示されています。会社予想が市場予想を上回る形になったため、株価は発表後に修正幅の持続性を織り込み直す局面です。

投資判断では、経常利益460億円という数字だけでなく、営業利益、支払利息、購入電力料、託送収益、普通配当33円の維持余地を並べて見ることが大切です。北海道電力の今回の上方修正は好材料ですが、真価は制度収益と需要増を安定したキャッシュ創出に変えられるかにあります。

参考資料:

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前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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