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7〜9月期の増収増益株を検証、AI需要で伸びる有望6社を徹底分析

by 斎藤 裕也
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10月29日決算に映る成長企業の輪郭

2026年10月29日に開示された決算は132社に上り、売上高と営業利益の双方が前年同期を上回った企業は機械判定で69社でした。ただし、上期累計の増加率だけでは、直近3カ月の勢いや一過性利益の影響を見分けられません。

そこで本稿では、決算短信の上期累計から第1四半期を差し引き、7〜9月に相当する単独業績を独自に算出しました。キーエンス、ルネサスエレクトロニクス、アンリツ、第一工業製薬、ニッポン高度紙工業、塩野義製薬の6社について、数字を押し上げた材料と持続性を検証します。

AI投資を利益へ変えた電機・半導体企業

四半期単独値による6社比較

主要6社の7〜9月期相当の業績は次の通りです。3月期企業は中間期累計から第1四半期を差し引き、12月期のルネサスは会社公表の第3四半期単独値を用いています。

企業売上高前年同期比営業利益前年同期比
キーエンス3,887.8億円36.8%増2,211.9億円54.8%増
ルネサス4,352億円30.2%増1,505億円45.8%増
アンリツ367.3億円30.8%増52.8億円42.8%増
第一工業製薬263.3億円41.8%増35.3億円64.8%増
ニッポン高度紙工業64.4億円36.9%増20.5億円120.8%増
塩野義製薬1,870.7億円65.3%増483.3億円21.8%増

ルネサスは恒常的な収益力を比較するためNon-GAAP値を使用しています。キーエンスの会計期間は6月21日から9月20日までで、厳密な暦年の7〜9月とは異なります。各社の決算期と会計基準も違うため、絶対額の順位より、増収率と利益率の変化を見ることが重要です。

6社すべてで営業利益の伸びが売上高を上回りました。固定費の吸収、高付加価値品の構成比上昇、生産効率の改善が重なり、増収がより大きな利益増加につながる「営業レバレッジ」が働いた形です。

キーエンスとルネサスの高収益構造

キーエンスの7〜9月期相当の営業利益率は56.9%となり、前年同期の50.3%から大きく上昇しました。北中南米の幅広い業界に加え、アジアでは半導体・電気精密分野の設備投資が成長を支えています。

同社は中間期の売上高が7,353億9,900万円、営業利益が4,082億6,200万円となりました。売上高が前年同期比34.9%増だったのに対し、営業利益は50.0%増です。販売数量だけでなく、製品構成と営業効率を伴った増収であることが分かります。

短信には通期業績予想が掲載されていないため、投資家は会社計画に対する進捗率を利用できません。次回決算では、半導体関連だけでなく、欧米の一般製造業へ成長が広がっているかを地域別の説明から確認する必要があります。

ルネサスの7〜9月期は、Non-GAAP売上収益が4,352億円、営業利益が1,505億円でした。営業利益率は前年同期の30.9%から34.6%へ改善しています。売上高の回復と粗利益率の上昇が同時に進み、調整後利益でも明確な増収増益です。

一方、IFRSベースの営業利益は5,653億円、利益率は129.7%という異例の水準です。これにはタイミング事業の譲渡益など、その他の非経常的な調整項目4,457億円が含まれます。見かけの大幅増益をそのまま成長率として評価せず、Non-GAAP営業利益や売上総利益率を併用すべき事例です。

アンリツの受注残が示す需要の厚み

アンリツの7〜9月期は売上収益367億2,900万円、営業利益52億7,500万円となりました。生成AIの普及でデータ通信量が増え、800GE光トランシーバーの量産や1.6TE製品の開発が進んだことが、計測器需要を押し上げています。

上期の計測事業は売上収益421億1,500万円、営業利益86億9,300万円で、それぞれ前年同期比36.1%増、120.2%増でした。前年に米国の通商政策を巡る不透明感から延期された顧客投資が再開した効果もあります。

9月末の全社受注残は612億3,800万円と、7〜9月期の売上収益を大きく上回ります。この受注残が納期遅延やキャンセルを伴わず売上へ転換すれば、下期にも成長が続く可能性があります。

会社は通期予想を売上収益1,450億円、営業利益220億円へ引き上げました。期末配当予想も1株25円から38円へ増額し、年間63円を計画しています。業績修正と株主還元が同時に示された点は、成長への経営側の確信を測る材料です。

素材と医薬に広がる高成長の源泉

低誘電材料とセパレータの供給優位

第一工業製薬は、ハイエンドサーバー向け低誘電樹脂材料が成長をけん引しました。上期の売上高は538億3,500万円、営業利益は86億5,100万円となり、それぞれ前年同期比43.1%増、123.7%増です。

電子・情報部門は売上高211億3,500万円、営業利益47億6,700万円でした。環境・エネルギー部門も、太陽電池向け導電性ペーストやリチウムイオン電池向け材料が伸び、売上高167億7,000万円、営業利益26億1,700万円を確保しています。

AIサーバーの高速化では、基板上の信号損失を抑える低誘電材料の重要性が高まります。同社の増益は単なる価格改定だけでなく、付加価値の高い電子材料の販売増によるものです。建設仮勘定の増加からも、生産能力拡張に向けた投資が進んでいることが読み取れます。

ただし、通期の営業利益予想125億円は据え置かれました。上期時点の進捗率は69.2%に達しており、計画には一定の余裕があるように見えます。一方で、増産費用や顧客の発注時期を織り込んだ可能性もあり、単純な上方修正期待だけで判断するのは早計です。

ニッポン高度紙工業では、アルミ電解コンデンサ用セパレータと電気二重層キャパシタ用セパレータが伸びました。上期売上高は124億9,000万円、営業利益は38億2,600万円で、営業利益率は30.6%に達しています。

AIサーバーとデータセンターでは、大電力を安定して供給するため多数のコンデンサが使われます。同社はAI関連に加え、車載・産業機器向けの需要回復も取り込みました。販売増による稼働率上昇と生産効率の改善により、7〜9月期の営業利益は前年同期の約2.2倍です。

通期予想は売上高260億円、営業利益75億円へ修正され、年間配当予想も160円となりました。もっとも、特定用途の設備投資が一巡すれば、稼働率上昇による利益効果は反対方向にも働きます。顧客在庫と生産能力の増強ペースを継続的に確認する必要があります。

ロイヤリティーと事業承継による医薬成長

塩野義製薬の増収要因はAI関連とは異なります。上期売上収益は3,503億7,700万円、営業利益は1,152億4,400万円でした。7〜9月期単独でも売上収益が前年同期比65.3%増、営業利益が21.8%増となっています。

HIVフランチャイズのロイヤリティー収入に加え、鳥居薬品関連製品、不眠症治療薬クービビック、承継したRADICAVA事業が売上高を押し上げました。国内医療用医薬品、海外事業、ロイヤリティーという複数の収益源が同時に伸びた点が特徴です。

会社は通期予想を売上収益7,200億円、営業利益2,300億円へ上方修正し、年間配当予想も86円としました。一方、買収したIntraBio社に関する無形資産償却費や、新薬開発に伴う研究開発費は今後の利益を左右します。

製薬会社では、ロイヤリティー収入の成長率だけでなく、特許期間、提携先の販売動向、パイプラインの進捗を合わせて評価する必要があります。塩野義製薬は今回の6社の中で、半導体設備投資とは異なる成長要因を持つ分散候補として位置付けられます。

設備投資計画が支える需要の裾野

日本銀行の9月短観では、ソフトウェア・研究開発を含む大企業の2026年度設備投資計画が全産業で前年度比11.0%増、製造業で7.7%増でした。全規模合計でも9.3%増となっており、企業の投資意欲は底堅い状況です。

日本銀行は、Amazon、Microsoft、Alphabet、Meta、Oracleの5社による2026年の設備投資が約0.8兆ドル、約130兆円に達するとの見方も紹介しています。AI投資の恩恵はGPUだけでなく、基板材料、電源部品、光通信計測器、工場自動化機器へ広がっています。

イビデンも2026年度から2028年度までの3年間に、電子事業へ約5,000億円を投じる方針です。生成AIサーバー向け需要に対応する供給能力の増強が進む一方、複数社の増産が同時に立ち上がる局面では、将来の供給過剰にも目を配る必要があります。

高成長株を選別する三つの落とし穴

会計利益と実力値の大きな隔たり

第一の注意点は、一過性利益です。ルネサスのIFRS営業利益には事業譲渡益が含まれ、通常の製品販売から得た利益を大きく上回っています。営業利益の増加率だけでなく、売上総利益、Non-GAAP利益、調整項目を確認しなければなりません。

第二は、比較対象の低さです。前年に在庫調整や投資延期があった企業は、需要が平常化するだけでも大幅増益になります。アンリツでは延期されていた投資の回復、ニッポン高度紙工業では稼働率改善が増益率を押し上げました。

第三は、増収と現金収支の差です。アンリツの上期フリーキャッシュフローは65億4,700万円と黒字を維持したものの、前年同期の71億2,800万円を下回りました。売上債権や棚卸資産の増加を伴う成長では、利益が直ちに現金へ変わるとは限りません。

通期据え置きに潜む保守性と失速懸念

業績予想の据え置きは、必ずしも追加の上振れを意味しません。第一工業製薬のように上期進捗が高くても、増産投資、原材料価格、為替、顧客の発注調整を考慮し、会社が下期減速を見込んでいる場合があります。

一方、ニッポン高度紙工業、アンリツ、塩野義製薬は通期予想を引き上げました。上方修正後の計画に対しても受注残や利益率が伸び続けるかが、次の焦点です。修正発表そのものより、修正後の予想を再び超えられる根拠を確認することが大切です。

AI関連企業には高い成長期待が織り込まれやすく、好決算でも株価が下落することがあります。決算発表直後の値動きだけで成長の質を判断せず、受注、稼働率、利益率、キャッシュフローの方向を優先すべきです。

次回決算まで追うべき先行指標

今回の6社では、AIサーバー、光通信、電子材料、電源安定化部品が共通の成長軸となりました。一方、塩野義製薬のように、ロイヤリティーや事業承継を原動力とする非AI企業にも高成長が広がっています。

次回決算では、四半期単独の売上高と営業利益率、受注高と受注残、通期予想の修正、営業キャッシュフローの4点を確認したいところです。増収率の高さだけでなく、利益率と現金創出力が同時に改善する企業を選別することが、持続的な成長株を見極める近道です。

短期的なテーマ性よりも、高付加価値品の競争力、供給能力、顧客基盤という再現可能な要因を追う必要があります。今回の好業績が一巡後も続くかどうかは、次の四半期における受注と利益率の組み合わせが示します。

参考資料:

斎
斎藤 裕也

テーマ株・材料分析

テーマ株・材料株の発掘と分析を得意とする。企業の IR 情報と業界動向を結びつけ、投資家目線で銘柄の「次の一手」を読む。

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