野村HD上期21%増益、ウェルス主導の収益力と下期の注目点を分析
21%増益でも問われる利益の持続性
野村ホールディングスが2026年10月28日に発表した2027年3月期上期決算は、税引き前利益が前年同期比21.1%増の3595億円となりました。7〜9月期だけを見ても同8%増益であり、前年との比較では好調な決算です。
ただし、4〜6月期との比較では7〜9月期の税引き前利益が30%減っています。今回の決算で重要なのは増益率の大きさだけではなく、相場環境に左右されにくい収益がどこまで育ったかです。ウェルス・マネジメントの安定収益、買収で拡大した運用事業、変動の大きいホールセールを分けて検証すると、野村の収益構造が変わりつつある一方、下期に残る課題も見えてきます。
上期3595億円を支えた四部門の実力
連結利益とROEの改善度
上期の金融費用控除後の収益は1兆2942億円と、前年同期から24.6%増加しました。税引き前利益は3595億円、野村ホールディングス株主に帰属する純利益は2493億円となり、それぞれ21.1%、26.8%の増益です。年換算ROEも前年同期の11.3%から13.3%へ上昇しました。
税引き前利益の伸びが収益の伸びを下回った点には注意が必要です。非金利費用が26.0%増の9347億円となり、収益とほぼ同じペースで拡大したためです。買収した運用会社の費用や成長分野への投資を含むとはいえ、増収を利益へ変える効率が一段と高まったわけではありません。
一方、ウェルス・マネジメント、インベストメント・マネジメント、ホールセール、バンキングの主要4部門に限ると、税引き前利益は3564億円と前年同期比50%増でした。連結全体より伸び率が高く、本業の利益基盤が強くなったことは明確です。会社が重視する安定収益も前年同期のおよそ1.6倍に拡大しました。
上期ROEの13.3%は、野村が掲げる2030年目標の「10〜12%以上」を上回ります。ただし、4〜6月期のROEが15.4%だったのに対し、7〜9月期は10.9%です。目標圏を維持しているものの、上期の高い数値には好調だった第1四半期の寄与も大きいと判断できます。
ウェルスが生んだ安定収益
ウェルス・マネジメント部門の上期収益は2869億円と前年同期比29.1%増え、税引き前利益は1367億円と62.1%増加しました。主要4部門の中でも、利益の増加率が最も高い部門です。
従来の証券営業は、株式や投資信託を売買した際の手数料に収益が偏りやすい構造でした。野村は顧客資産全体への助言を軸に、投資信託、投資一任、保険、ローンなどから継続収入を得るモデルへの転換を進めています。上期の結果は、この転換が費用増を上回る利益成長につながったことを示しています。
運用事業の規模拡大と統合負担
インベストメント・マネジメント部門の上期収益は1831億円と64.4%増え、税引き前利益は724億円と38.5%増加しました。収益の伸びが大きい背景には、2025年12月に完了したマッコーリーの米欧公募資産運用事業の買収があります。
野村は18億ドルで同事業を取得し、買収完了時点で約1660億ドルの顧客資産を取り込みました。海外の販売網と運用商品を獲得した効果は大きいものの、上期は統合関連費用も発生しています。収益の増加率に対して利益の伸びが緩やかな点は、規模拡大と統合コストが同時進行しているためです。
ホールセールとバンキングの寄与
ホールセール部門の上期収益は6780億円と25.5%増え、税引き前利益は1394億円と46.6%増加しました。エクイティと投資銀行業務が伸び、上期全体ではウェルスと並ぶ利益の柱です。ただし、利益の多くを好調だった4〜6月期に稼いでおり、四半期ごとの変動は依然として大きい部門です。
バンキング部門の上期収益は316億円、税引き前利益は80億円となり、それぞれ23.1%、17.7%増えました。グループ全体に占める規模は小さいものの、貸出残高や投資信託の受託残高を積み上げ、ウェルス部門との連携から安定収益を得る役割を担っています。
前年比増益と前四半期比減益の二面性
比較軸で変わる第2四半期の評価
7〜9月期の収益は6075億円で前年同期比18%増、税引き前利益は1480億円で8%増、純利益は1037億円で13%増でした。前年同期との比較なら、主要4部門の増収による堅調な決算です。
一方、過去最高水準だった4〜6月期との比較では、収益が12%、税引き前利益が30%、純利益が29%減少しました。純利益は市場予想平均の1091億円にも小幅に届いていません。前年同期比の増益だけで「成長が加速した」と判断するのは早く、第1四半期の高水準からどこまで利益を維持できたかという視点が必要です。
ウェルスの高い利益率と資金流入
ウェルス・マネジメント部門の7〜9月期収益は1415億円で前年同期比22%増、税引き前利益は656億円で44%増でした。前四半期比ではそれぞれ3%、8%減ったものの、主要4部門の税引き前利益の46%を同部門が稼いでいます。
継続的な手数料につながるストック資産の純増額は7554億円と過去最高を更新しました。ストック収入も667億円と過去最高で、同収入による費用カバー率は79%まで上昇しています。相場が停滞して売買手数料が減っても、部門費用の約8割を継続収入で賄える計算です。
この比率の上昇は、単なる増益以上に重要です。市場の売買高に依存する収益から、顧客資産残高に応じて積み上がる収益へ移行できれば、グループ全体の利益変動を抑えられます。ただし、ストック資産には市場価格の上昇によって残高が膨らむ側面もあるため、資金の純流入が続くかを併せて確認する必要があります。
運用残高152.8兆円の収益化
インベストメント・マネジメント部門の7〜9月期収益は848億円と前年同期比39%増えましたが、税引き前利益は274億円と11%減りました。前四半期比では収益が14%、税引き前利益が39%減少しています。
9月末の運用資産残高は152.8兆円と高水準で、四半期中の資金純流入も4780億円を確保しました。運用報酬を生む資産基盤は拡大しているものの、投資損益の減少や買収事業の統合費用が利益を圧迫しています。
今後は運用残高の大きさだけでなく、買収した海外事業から得られる運用報酬と追加費用の差が重要です。運用資産が増えても、人件費やシステム費用が同じように増えれば利益率は改善しません。統合後の資金流出を抑え、海外商品を日本の顧客へ販売する相乗効果を示せるかが焦点です。
金利上昇で明暗が分かれた二部門
ホールセール部門の7〜9月期収益は3089億円と前年同期比11%増えましたが、税引き前利益は461億円と13%減りました。前四半期比では利益が51%減り、主要部門で最も大きく落ち込んでいます。
世界的な金利上昇と債券スプレッドの拡大を受け、顧客が金利関連商品の取引に慎重になったことが逆風となりました。グローバル・マーケッツ収益は2542億円でしたが、好調だった第1四半期から減速しています。一方、投資銀行業務の収益は547億円となり、アドバイザリーやファイナンスの伸びで前年同期を26%上回りました。
同部門の経費率は85%と、会社が目安とする80%を超えています。海外での人材採用など成長投資を進める局面とはいえ、収益が鈍化した際の費用負担は重くなります。投資銀行の案件パイプラインを実際の収益へつなげ、固定費を吸収できるかが下期の課題です。
バンキング部門は収益164億円、税引き前利益44億円となり、前年同期比でそれぞれ27%、37%増えました。市場金利の上昇はホールセールの債券取引には逆風でしたが、貸出や預金を扱うバンキングには追い風です。金利変動が部門ごとに異なる影響を及ぼす点は、野村の事業分散を評価するうえで重要です。
金利・費用・資本が左右する下期利益
最大のリスクは、金利上昇と地政学的不安によって顧客取引が細ることです。会社側は10月のホールセール事業について、第2四半期よりやや鈍いスタートとの認識を示しました。金利関連商品の低迷が続けば、先行投資を進めたホールセールの経費率がさらに上昇する可能性があります。
運用事業では、152.8兆円の運用残高を安定的な手数料収入へ変えられるかが焦点です。相場下落や為替変動による残高減少に加え、買収した事業の顧客流出、統合費用の長期化にも注意が必要です。ウェルス部門についても、過去最高となった資金流入を一時的な成果で終わらせないことが求められます。
資本面では、9月末のCET1比率が12.6%となり、6月末の13.2%から低下しました。中間配当は前年同期の27円から35円へ増え、総額は1023億円、上期利益に対する配当性向は約41%です。還元姿勢は明確ですが、海外事業への投資と財務余力を両立できるかも確認する必要があります。
野村は市場環境の不確実性を理由に通期業績予想と期末配当予想を開示していません。中間配当の増額をそのまま年間配当の増加へ置き換えず、下期利益、規制資本、追加の成長投資を見極める姿勢が重要です。
投資家が次の四半期で確認すべき指標
今回の決算は、ウェルスを中心とする安定収益の拡大という点で前向きです。上期ROE13.3%と主要4部門の50%増益は、事業構造改革が利益に表れ始めたことを示します。一方、7〜9月期の前四半期比30%減益は、相場依存度がまだ高いことの裏返しです。
次の決算では、ウェルスのストック収入費用カバー率、運用事業の資金純流入と統合費用、ホールセールの経費率、CET1比率の4点を確認すべきです。これらが改善しながらROE10%以上を維持できれば、上期増益を一時的な市場追い風ではなく、持続的な収益力として評価しやすくなります。
参考資料:
- 野村ホールディングスの決算|2027年3月期第2四半期・上半期業績と中間配当
- Nomura September-quarter profit falls 28.7% from June
- Nomura raises half-year dividend to 35 yen per share
- 野村HD、7ー9月期純利益は13%増の1037億円
- 金利上昇で債券事業逆風-野村の部門利益半減
- Nomura Q2 profit rises 13% on wealth management strength
- Earnings call transcript: Nomura Holdings posts strong H1 profit
- Nomura Holdings FY2027 First Quarter Highlights
- Nomura Holdings Annual Report 2026
- Nomura Completes Acquisition of Macquarie’s Public Asset Management Business
- Nomura Announces Acquisition of Macquarie’s Public Asset Management Business
- Nomura Holdings Notice of Convocation of the 122nd Annual General Meeting
- Nomura Financial Summary - Six months ended September 30, 2026
- 2027年3月期第2四半期決算短信の開示情報
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