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日本株は停戦期待で戻るか、中東交渉と原油急落の読み筋

by 野村 康平
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はじめに

日本株の朝の地合いを読むうえで、2026年4月前半の中東情勢は避けて通れない材料になりました。焦点は、トランプ米大統領がイランに突きつけた停戦とホルムズ海峡再開の期限です。期限前は原油が1バレル=110ドル前後まで上がり、為替ではドル高・円安圧力が強まり、株式市場では積極的に買いを増やしにくい状態が続きました。

その後、米国とイランが2週間の停戦で合意すると、市場は一気に巻き戻しに動きました。原油は急落し、アジア株は大幅高となりました。ただし、ここで重要なのは「全面的な強気相場への転換」と「過度な悲観の解消」は同じではないことです。この記事では、独立ソースをもとに、なぜ日本株が強気一辺倒ではなく、ニュートラルに近づく動きとして受け止められやすいのかを整理します。

相場を左右した停戦期限と原油ショック

二項対立になった期限前の市場心理

4月7日のアジア時間、ロイターは市場がトランプ氏の期限を前に様子見姿勢を強めていると報じました。記事では、ブレント原油先物が110.19ドル、WTIが113.31ドルまで上昇し、投資家は「待つしかない」状態に置かれていたと伝えています。ホルムズ海峡は世界の石油取引における最重要の海上チョークポイントであり、米エネルギー情報局(EIA)によれば、世界で取引される石油のほぼ2割がここを通過します。つまり、停戦交渉の進展がそのままインフレ懸念、金利観測、株価水準に波及しやすい構造だったということです。

同じくロイターは、期限がワシントン時間の4月7日午後8時に設定されていたと伝えています。こうした「期限付きの地政学イベント」は、相場参加者にとって典型的な二項対立の材料です。交渉進展なら原油安と株高、決裂なら原油高と株安という見えやすい図式になるため、会合前後は新規に大きく賭けるより、ポジションを軽くして結果を待つ動きが出やすくなります。日本株で言えば、強気にも弱気にも振り切らず、いったんニュートラルに寄せる発想が合理的になりやすい局面でした。

停戦合意後の急反転

実際、停戦合意が伝わると反応は急でした。4月8日のロイター報道では、ブレント原油は94.27ドル、WTIは95.55ドルまで下落し、欧州株は約4%上昇、米株先物も2.5%から3.2%の上昇を示しました。AP通信も同日、日経平均株価が5.4%高の56,308.42で取引を終え、WTIは96.48ドル、ブレントは95.48ドルまで下がったと伝えています。

ただし、ロイターは同じ記事で、停戦は2週間の暫定措置にすぎず、原油価格も開戦前の水準をまだ上回っていると伝えました。ここが重要です。相場は最悪シナリオを外したことで急反発したものの、恒久和平が見えたわけではありません。各ソースを踏まえると、この上昇は新しい強気トレンドの起点というより、直前まで積み上がっていたリスク回避ポジションの巻き戻しとして理解するほうが自然です。

日本株がニュートラルに向かいやすい理由

中東依存度の高さと日本固有の脆弱性

日本株がこの問題に敏感なのは、日本経済が中東産油国への依存度で主要国の中でも際立っているためです。資源エネルギー庁の「エネルギー動向(2025年6月版)」によれば、2023年度の日本の原油輸入に占める中東依存度は94.7%でした。米国の9.3%、欧州OECDの16.5%と比べても突出しています。原油高は日本にとって、単なる資源株の材料ではなく、輸入コスト、企業収益、家計負担、そして円相場に広く波及するマクロ要因です。

さらに日本政府は、今回の事態を市場心理の問題だけではなく、実需の問題として扱っていました。経済産業省は3月24日、中東情勢を受けてホルムズ海峡を原油タンカーが事実上通れない状況が続き、中東から日本への原油輸入が大幅に減少しているとして、国家備蓄原油を約850万キロリットル、約5,400億円分放出すると決定しました。3月27日には、影響を受ける事業者の資金繰りに支障が生じないよう、官民金融機関に金融の円滑化を要請しています。つまり、政府自身が供給面と資金繰り面の両方を警戒していたわけです。

もっとも、日本には緩衝材もあります。資源エネルギー庁によれば、日本の石油備蓄は2024年8月時点で203日分あり、IEA加盟国への90日分以上という勧告を大きく上回っています。このため、停戦協議が揺れたとしても、直ちに国内供給が止まるという見方は行き過ぎです。日本株にとって本当に重いのは、物理的な欠乏よりも、原油高の長期化が企業利益と物価、為替に与える圧力です。

強気一辺倒になりにくいポジション調整

では、なぜ停戦合意後でも「一気に強気」ではなく「ニュートラル回帰」と表現したほうが実態に近いのでしょうか。第一に、停戦は2週間という短い猶予にとどまっているからです。APは、投資家心理を「慎重な楽観」と表現し、市場はホルムズ海峡の航行正常化と、暫定停戦がより長い合意に発展するかを見極める必要があると報じました。ロイターも、持続的な平和でなければ本格的なリスクテイクにはつながりにくいという市場関係者の見方を伝えています。

第二に、為替と金利の連鎖がまだ落ち着き切っていないからです。APによると、停戦合意後のドル円は159.52円から158.35円へドル安・円高方向に振れました。一方、期限前のロイター報道では、ドル円は160円近辺にあり、東京市場では為替介入観測まで意識されていました。日本株にとって円安の修正は輸入コストの面では追い風ですが、輸出採算には逆風にもなります。原油、為替、金利が同時に動く局面では、指数全体は戻っても、投資家がセクター横断で強気に傾くとは限りません。

第三に、米国株の反応が「安心し切った相場」ではなかったためです。ロイターによれば、4月7日の米国市場はダウが85.42ドル安だった一方、S&P500は5.02ポイント高、ナスダック総合指数は21.51ポイント高で、全体としてはほぼ横ばい圏でした。期限前夜の米市場が全面高ではなく、様子見を残したまま終えていたことは、日本の朝方投資家にも「楽観に賭け切るのはまだ早い」というサインになります。各ソースを総合すると、日本株の戻りは悲観の修正が主導しやすく、強気ポジションの積み増しは一段慎重になりやすいといえます。

注意点・展望

今後の焦点は三つあります。第一は、ホルムズ海峡の再開が形式的な宣言で終わらず、実際の航行や保険、積み出しに反映されるかです。第二は、原油価格が95ドル前後で落ち着くのか、それとも再び100ドル台へ戻るのかです。第三は、ドル円が160円接近の緊張からどこまで離れるかです。日本株にとって最も好ましいのは、原油安と急激でない円高が同時に進む組み合わせですが、それが続く保証はまだありません。

注意したいのは、停戦が続けば即座に日本株が一本調子で上がると考えることです。政府が備蓄放出や金融支援要請に動いた事実は、今回の衝撃が単なるヘッドライン相場ではなく、実体経済に踏み込みうるリスクだったことを示します。逆にいえば、停戦が延長され、原油と為替が落ち着けば、日本株にかかっていた大きな割引要因が一つ外れる可能性もあります。現時点では、強気か弱気かより、極端な見方をいったん削る局面と捉えるのが妥当です。

まとめ

今回の日本株を動かした主因は、企業業績そのものよりも、中東情勢を起点とする原油、為替、金利の連鎖でした。期限前には原油が110ドル前後まで上がり、投資家は結果待ちで身動きが取りづらくなりました。停戦合意後は原油が急落し、日経平均は5.4%高まで反発しましたが、それは恒久和平を織り込んだというより、最悪シナリオの後退を受けたポジション修正の色合いが濃い動きです。

日本は原油の94.7%を中東に依存しており、政府が備蓄放出に踏み切るほど影響を受けやすい国です。この前提に立つと、足元の日本株を見るうえで重要なのは、停戦の継続性、ホルムズ海峡の実際の再開、そして原油とドル円の落ち着きです。短期の反発を追うより、相場がニュートラルへ戻る条件が本当に満たされるのかを見極めることが、次の一手につながります。

参考資料:

野村 康平

マクロ経済・為替・債券

為替・債券・コモディティ市場を横断的にウォッチし、マクロ経済の変動が株式市場に与えるインパクトを分析する。

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