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9月25日サプライズ決算速報、加賀電子と地銀増配の本質を分析

by 前田 千尋
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9月25日決算を動かした上方修正の連鎖

2026年9月25日の日本株決算・業績修正は、単なる「上方修正の多い日」ではありませんでした。加賀電子の買収効果、阿波銀行など地銀の資金利益改善、北海道電力の託送料金要因、テイツーの中古商材好調が並ぶ一方で、ダイイチの減損や小売各社の利益圧迫も目立ちました。

投資家が見るべき論点は、発表された利益の大きさだけではありません。本業の数量・価格・採算が改善したのか、一過性の特別利益なのか、あるいは会計処理で純利益だけが動いたのかを分解する必要があります。9月25日の開示は、その読み分けが株価反応を左右する典型例です。

加賀電子と地銀に集まった増額修正の質

負ののれんを含む加賀電子の再上方修正

最も目立ったのは加賀電子です。2027年3月期通期の連結業績予想を再び引き上げ、売上高は前回予想比1000億円増の7600億円、営業利益と経常利益はいずれも320億円、親会社株主に帰属する当期純利益は290億円としました。新光商事の連結子会社化に伴う見通しを反映し、特別利益として60億円の負ののれん発生益を見込む点が特徴です。

ただし、この修正は二層構造です。売上高の増額は買収した新光商事の業績取り込みが大きく、純利益の押し上げには負ののれん発生益という一過性要因が含まれます。一方で、営業利益と経常利益も増額されているため、会計上の特別利益だけでなく、事業規模拡大による本業利益の上積みも一定程度あります。

配当面では年間配当を160円へ増配する方針が示されました。普通配当に特別配当を組み合わせる形で、負ののれんを除いた実質ベースの利益修正を還元に反映する構図です。投資家にとっては、買収効果が来期以降も営業利益率を維持しながら積み上がるかが、次の確認点になります。

阿波銀行に見る地銀上方修正の背景

銀行株では阿波銀行の修正が目を引きます。2027年3月期通期の連結経常収益は1176億円から1348億円へ、経常利益は260億円から296億円へ、親会社株主に帰属する当期純利益は176億円から200億円へ引き上げられました。修正率は経常収益で14.6%、経常利益で13.8%です。

背景は、資金利益が想定を上回る見込みであることに加え、政策保有株式を含む株式売却益の計上です。低金利環境からの転換局面では、銀行の貸出金利や有価証券利回りが収益に効きやすくなります。ただし、株式売却益は毎期繰り返せる利益ではないため、基礎的な資金利益の増加と有価証券ポートフォリオの入れ替え益を分けて評価する必要があります。

阿波銀行は期末配当予想も18円から22円へ増額しました。株式分割後基準での増配で、株主還元方針として配当性向40%以上を掲げています。三十三フィナンシャルグループも同日に業績予想と配当予想の増配修正を公表しており、地銀セクターでは「金利上昇の恩恵」と「政策株売却による資本効率改善」が同時に意識される日となりました。

北海道電力の上振れと料金制度要因

北海道電力も通期連結業績予想を引き上げました。売上高は9700億円から1兆250億円、営業利益は480億円から610億円、経常利益は300億円から460億円、純利益は220億円から330億円です。経常利益の増額率は53.3%と大きく、見た目のインパクトは強い開示です。

もっとも、要因は販売電力量の大幅な上振れではありません。燃料価格上昇に伴う燃料費等調整額、他社販売電力料、北海道電力ネットワークの託送料金見直しが主な背景です。会社側は小売・他社販売電力量を379億kWh程度、為替を1ドル160円程度、原油CIF価格を1バレル110ドル程度と見込んでいます。

このため、北海道電力の修正は「需要急増で稼ぐ」というより、制度・価格前提の変化を反映した性格が濃いものです。配当予想は普通株式で年間33円を据え置いており、業績上振れをすぐ増配に結びつける局面ではありませんでした。

小売と素材に表れた採算改善と減損の分岐

テイツーとサイプレスの本業上振れ

小売関連では、テイツーの上方修正がわかりやすい本業改善型です。2027年2月期通期の売上高を425億円から435億円へ、営業利益を16億円から20億円へ、経常利益を16億円から20億円へ、純利益を8億円から10億円へ引き上げました。各利益の増額率は25.0%です。

会社側は、トレーディングカード関連商材の販売が想定を上回り、中古商材も好調に推移したと説明しています。中古品は新品販売より粗利率を確保しやすい局面があり、在庫回転と目利きが利益に直結します。テイツーの場合、売上高の増額率2.4%に対して利益の増額率が25.0%と大きく、ミックス改善の効果が表れています。

サイプレス・ホールディングスも上方修正を発表しました。2026年8月期の売上高は128億7800万円、営業利益は8億7500万円、税引前利益は7億6300万円、当期利益は7億8500万円の見通しです。従来予想では売上高123億円、営業利益8億5000万円、税引前利益7億4500万円、当期利益5億2000万円でした。

サイプレスの特徴は、店舗の客数・客単価、人時生産性の改善に加え、繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額が最終利益を押し上げた点です。営業利益の増額幅は限定的ですが、当期利益は大きく増えています。ここでも、営業段階の改善と税効果会計による純利益押し上げを分けて見る必要があります。

ホクシンの価格改定効果と建材需要

素材・建材ではホクシンの中間期修正が印象的です。2027年3月期第2四半期累計の売上高は53億円から54億円へ、営業利益は1億円の赤字予想から1億7000万円の黒字予想へ転換しました。経常利益も1億1000万円の赤字から1億7000万円の黒字、中間純利益も1億2000万円の赤字から1億1000万円の黒字に修正しています。

要因は販売価格改定の進展です。建材用途やフロアー基材用途の販売が堅調で、価格改定前の駆け込み需要もありました。中東情勢の影響によるエネルギー費、原材料価格、労務費の上昇は残るものの、価格転嫁で吸収できた形です。

ただし、通期予想は据え置かれました。会社側は原材料、エネルギー、物流費の不透明感を理由にしています。これは、上期の黒字化をそのまま通期の楽観につなげるには早いという経営判断です。価格改定が定着するか、需要の前倒しが反動減を生まないかが焦点になります。

ダイイチの減損に映る地域成長期待の時間差

一方、ダイイチは下方修正です。2026年9月期通期の売上高予想は615億円で据え置きましたが、営業利益は16億8000万円から15億6000万円へ、経常利益は16億3000万円から15億3000万円へ、当期純利益は12億円から2億円へ引き下げました。

最大の要因は、千歳店に係る13億2600万円の減損損失です。会社側は、ラピダス進出等に伴う市場拡大が当初想定ほど進んでいないこと、競合他社の出店・改装で競争が激化したことを挙げています。売上高は2桁を超える伸びを示しているものの、営業利益は計画を大きく下回っていると説明しています。

重要なのは、これは地域の成長期待が消えたというより、投資回収の時間軸が会社計画より後ろにずれた可能性です。減損は会計上の損失でキャッシュフローへの直接影響はないものの、店舗別採算の見通しが変わったことを意味します。成長テーマ銘柄ほど、需要の立ち上がり速度と競争環境の読み違いが損益に表れやすい局面です。

決算短信4社に見えた増収でも伸び悩む利益

9月25日に公表された決算短信では、ニイタカ、パレモ・HD、ハローズ、あさひの4社が確認できます。ニイタカは2027年5月期第1四半期で売上高63億3400万円、営業利益5億8500万円でした。売上高は5.5%増、営業利益は0.5%増と増収を確保しましたが、経常利益と純利益は小幅減でした。

同社はケミカル事業で洗剤、固形燃料、感染対策製品が堅調でした。一方で、ヘルスケア事業は売上高が前年同期比51.2%減、営業利益が90.8%減となり、全体の利益伸びを抑えました。通期予想は売上高275億円、営業利益18億円で据え置いています。

ハローズは2027年2月期中間期で売上高1190億2300万円、営業利益57億800万円、経常利益57億5400万円、最終利益41億3500万円でした。売上高は6.7%増えましたが、営業利益と経常利益はそれぞれ2.6%減です。食品スーパーは増収でも、人件費、物流費、電気代、販促費が利益率を圧迫しやすい環境にあります。

あさひも同じ構図です。売上高は462億3000万円と0.7%増でしたが、営業利益は32億3100万円で14.0%減、経常利益は33億2700万円で15.2%減、最終利益は21億9300万円で16.6%減でした。パレモ・HDは売上高68億3800万円で4.7%減、営業利益7100万円で60.3%減、最終利益1500万円で86.2%減と、消費関連の厳しさがより強く出ています。

この4社の決算短信が示すのは、売上高だけでは業績の良し悪しを判断しにくいという点です。増収であっても粗利率、販管費、部門ミックスが悪化すれば利益は伸びません。9月25日のサプライズは上方修正銘柄に目が向きますが、通常決算の中には「増収減益」という警戒信号も含まれていました。

一過性利益と本業利益を分ける投資家視点

9月25日の開示群を読み解くうえで、最も大事なのは利益の質です。加賀電子の負ののれん、モリテックスチールの投資有価証券売却益、阿波銀行の株式売却益は、純利益を押し上げる一方で継続性には限界があります。これらは配当余力や自己資本を厚くする材料ですが、翌期も同じ形で再現できるとは限りません。

一方、テイツーの中古商材好調、ホクシンの価格改定、サイプレスの客数・客単価改善は、本業の採算に関わる材料です。ただし、ホクシンは通期を据え置き、サイプレスは税効果による最終利益増も大きく、すべてを持続的な利益成長とみなすのは早計です。

下方修正側では、ダイイチの減損が象徴的です。減損は非資金費用ですが、投資時の事業計画に対する見直しを意味します。とくに成長期待の高い地域やテーマでは、需要の立ち上がり、競合の行動、初期投資の重さが数値に表れるまで時間差があります。

短期的には、増配や上方修正が株価の初動を作ります。しかし、決算分析では「営業利益が増えたのか」「純利益だけが動いたのか」「配当の原資は継続利益か一過性利益か」を並べて確認することが重要です。

9月末相場で確認したい修正後の持続力

9月25日のサプライズ決算は、強い銘柄と弱い銘柄を同時に浮かび上がらせました。加賀電子や地銀の上方修正、テイツーの本業改善は明るい材料です。一方で、小売の増収減益、ダイイチの減損、電力の制度要因による上振れは、数字の表面だけでは読めない注意点です。

投資家は次の決算で、修正後予想に対する進捗率、営業利益率、増配後の配当性向、特別利益を除いた実質利益を確認したいところです。9月末から10月の決算シーズンでは、サプライズの大きさよりも、修正された利益が来期につながるかどうかが評価の分かれ目になります。

参考資料:

前
前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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