RSI20%以下の低PER低PBR株、反騰条件と選別軸を分析
はじめに
5月1日の東京株式市場では、日経平均株価が3日ぶりに反発しました。終値は5万9513円12銭と前日比228円20銭高となり、TOPIXも3728.73ポイントで小幅に上昇しました。ただし、東証プライム市場では値上がり670銘柄に対し、値下がり844銘柄でした。指数の上昇だけでは、市場全体の強さを測り切れない一日だったといえます。
こうした局面で注目されるのが、RSI20以下、低PER、低PBRを組み合わせた売られ過ぎ銘柄のスクリーニングです。43社が抽出されるという結果は、反騰候補が残っていることを示す一方で、下落トレンドが続く銘柄も同じ網にかかることを意味します。本稿では、テクニカルとバリュエーションを分けて整理し、買い急ぐ前に確認すべき条件を読み解きます。
RSI20以下が示す売られ過ぎの実態
反転の合図ではなく過熱冷却の尺度
RSIは、一定期間の値上がり幅と値下がり幅のバランスから、価格変動の勢いを測るオシレーターです。一般的には0から100の範囲で表示され、70を超えると買われ過ぎ、30を下回ると売られ過ぎと解釈されます。20以下は、その30よりもさらに厳しい売られ過ぎ水準です。
ただし、RSI20以下は「すぐ上がる」という意味ではありません。Fidelityの解説でも、RSIは強いトレンドの中で過熱圏や売られ過ぎ圏にとどまることがあると説明されています。下落が続く銘柄では、RSIが20を割れても、その後さらに安値を更新するケースがあります。
重要なのは、RSIの低さを反転の断定材料にしないことです。RSIが20以下に沈んだ後、価格が安値を更新しているのにRSIが下げ渋る場合は、売り圧力の鈍化を示すことがあります。逆に、株価もRSIも同時に下へ走る局面では、単なる投げ売りの途中である可能性が残ります。
テクニカル面では、まず終値が直近の下落トレンドラインを上回るか、前日高値を明確に抜けるかを確認したいところです。さらに、反発日に出来高が増えているかも大切です。出来高を伴わない小反発は、短期筋の買い戻しだけで終わることがあります。
5月1日の指数反発と広がりの弱さ
5月1日の相場は、日経平均だけを見れば堅調でした。OANDAに掲載された市場概況では、前日の米国株高を受けて上昇スタートとなり、東京エレクトロンが指数を押し上げたことが説明されています。Yahoo!ファイナンスのトレーダーズ・ウェブ配信記事でも、東京エレクトロンは4万7450円、前日比3060円高と大きく上昇したことが確認できます。
一方で、IRBANKの市況データでは、東証プライムの出来高は23億1279万株、売買代金は7兆6841億円でした。売買代金は大きいものの、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回っています。つまり、指数寄与度の大きい銘柄や決算好感銘柄に資金が偏り、市場全体が一斉に買われたわけではありません。
このような日には、RSI20以下の銘柄が反騰しやすい銘柄と、なお売られ続ける銘柄に分かれます。指数反発を見て「売られ過ぎはすべて買い」と判断すると、相場の広がりを見落とします。テクニカル特集の使いどころは、抽出された銘柄をそのまま買うことではなく、反転の兆しがある銘柄を絞り込むことにあります。
特に大型連休を控えた時期は、ポジション調整の売りや決算発表前の手控えが出やすくなります。需給が薄い銘柄では、少額の売りでRSIが急低下することもあります。RSI20以下という数値は入口として有効ですが、日足の形、出来高、決算日程、信用需給を重ねて見る必要があります。
低PER・低PBRを併用する意味
PERで見る利益期待の低さ
PERは、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示す指標です。日本証券業協会の金融・証券用語集では、PERが低いほど利益に比べて株価が割安とされる一方、過去の水準や同業他社との比較が必要だと説明されています。単独の絶対値だけで割安と決めるのは危険です。
低PER銘柄が売られている場合、市場は二つの可能性を織り込んでいます。一つは、利益水準の割に株価が過度に下がっている可能性です。もう一つは、今後の利益が減ると見込まれているため、見かけ上のPERが低くなっている可能性です。前者は反騰候補になり得ますが、後者は業績下方修正でさらに売られる余地があります。
決算期の低PER株では、会社予想の前提が保守的か、過度に楽観的かを確認することが欠かせません。受注産業、素材、海運、商社、半導体関連などは、利益が市況や為替で大きく振れます。直近のPERが低くても、次期予想が大幅減益なら、株価は割安ではなく利益ピークアウトを織り込んでいるだけかもしれません。
低PERを評価する際は、営業利益率、受注残、価格転嫁、為替感応度、在庫評価損の有無を確認したいところです。純利益だけが一時的な特別利益で押し上げられている銘柄もあります。その場合、PERは低く見えても、実力ベースの収益力は低い可能性があります。
PBRで見る資本効率への市場評価
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍で評価されているかを示します。日本証券業協会は、純資産が解散価値とも呼ばれること、PBRが小さいほど株価が割安と見られやすいことを説明しています。一方で、低PBRがすべて割安ではなく、市場がその状態を本来の企業価値と見ている可能性にも触れています。
PBR1倍割れは、投資家が会社の純資産を十分に評価していない状態です。資産を多く持つ企業、現預金が厚い企業、土地や政策保有株式を抱える企業では、PBRの低さが再評価余地につながることがあります。自社株買い、増配、政策保有株式の縮減、事業ポートフォリオ見直しが出れば、株価の見直しにつながりやすくなります。
ただし、PBRの低さは資本効率の低さの裏返しでもあります。ROEが資本コストを下回る企業では、純資産を積み上げても株主価値の拡大につながりにくいと見られます。ROEは、会社が自己資本をどれだけ効率的に利益へ変えているかを示す指標です。低PBR株を選ぶなら、ROEの改善策があるかを必ず確認すべきです。
PER、PBR、ROEは互いに関係しています。単純化すれば、PBRはPERとROEの積として理解できます。つまり、PBRが低い銘柄は、利益期待を示すPERが低いか、資本効率を示すROEが低いか、またはその両方です。反騰を狙うなら、低PBRの理由が「市場の見落とし」なのか「構造的な低収益」なのかを切り分ける必要があります。
東証改革が生む再評価の土台
低PBR株への関心を支えているのは、東京証券取引所による資本コストや株価を意識した経営の要請です。東証は2023年3月からプライム市場とスタンダード市場の上場会社に対応を求め、2026年4月28日には経営資源の適切な配分を中心とした投資家の期待や取組みのポイントをアップデートしました。
また、東証は2024年1月から、資本コストや株価を意識した経営に関する開示企業一覧表を公表しています。2026年1月からは、コーポレート・ガバナンス報告書における各社の開示内容も一覧表に掲載する見直しが始まっています。投資家が企業の取り組みを横比較しやすくなった点は、低PBR株の再評価にとって重要です。
第一ライフ資産運用経済研究所の分析では、プライム市場企業をPBR1倍とROE8%を基準に4象限へ分けた場合、2023年2月末から2026年2月末にかけて、高PBR・高ROEの企業数が552社から780社へ増えたとされています。低PBR・低ROE企業は506社から312社へ、低PBR・高ROE企業は249社から93社へ減りました。
この変化は、低PBR株のすべてが放置され続ける相場ではなくなったことを示しています。ただし、再評価が進んだ企業ほど、すでに株価へ織り込まれている面もあります。これから狙うべきは、単にPBRが低い企業ではなく、資本政策や収益改革がこれから表面化し、なお株価に十分反映されていない企業です。
43社を読むための実践的な選別軸
戻りを狙いやすい三つの条件
RSI20以下、低PER、低PBRの三条件がそろった銘柄を読む際は、まず「下げ止まりの形」「業績の底堅さ」「資本政策の有無」の三つを確認します。この三つが同時にそろう銘柄は、短期反騰と中期再評価の両方を期待しやすくなります。
第一の下げ止まりの形では、直近安値を割り込まない動きが重要です。RSIが20以下から反発しても、株価が終値で安値を更新し続けるなら、まだ売りの勢いが勝っています。反対に、下ヒゲが続き、終値が徐々に切り上がるなら、売り圧力が弱まっている可能性があります。
第二の業績の底堅さでは、売上高よりも利益の質を見ます。売上が伸びていても、原材料高や人件費増で利益率が悪化している銘柄は注意が必要です。反対に、減収でも価格転嫁や固定費削減で利益率を守っている企業は、低PERの見直しが入りやすくなります。
第三の資本政策では、自社株買い、増配、政策保有株式の売却、ROE目標、ROIC管理の導入などを確認します。東証の要請後、投資家はPBR改善の言葉だけでなく、実行の進捗を見ています。抽象的な「企業価値向上」だけでは株価材料として弱く、数量目標や期限があるほど評価されやすい傾向があります。
見送りたいバリュートラップの特徴
低PER・低PBRでRSI20以下という組み合わせは、見た目には魅力的です。しかし、そこにはバリュートラップも多く含まれます。代表的なのは、主力事業の需要が構造的に減っている企業、赤字化が迫っている企業、資産の質に疑義がある企業、少数株主への還元姿勢が乏しい企業です。
特に注意したいのは、PBRが低い理由が資産の過大評価にある場合です。帳簿上の純資産が厚くても、実際には収益を生まない資産が多い、設備の減損リスクがある、在庫評価損が出やすいという企業では、PBR1倍割れだけを根拠に買うことはできません。
PERの低さにも同じ落とし穴があります。資源価格、為替、半導体市況、物流運賃などで一時的に利益が膨らんだ企業は、利益の山を過ぎるとPERが急に上がります。株価が下がらなくても、翌期利益予想が下がれば、見かけの割安感は消えます。
また、流動性の低い銘柄では、RSIが極端に振れやすくなります。出来高が少ないままRSI20以下になった銘柄は、需給が改善しても買いたい投資家が限られる場合があります。短期の戻りを取るなら、売買代金が増え始めているか、板の厚みが戻っているかを確認することが大切です。
決算期特有の需給と連休前ポジション
5月初旬は、3月期決算企業の本決算発表が本格化する時期です。好決算や自社株買いを発表した銘柄には資金が集中しやすい一方、決算前に不安が残る銘柄は見切り売りを受けやすくなります。5月1日に住友商事が株式分割や自己株取得・消却を材料に買われたように、資本政策は相場の物色軸になっています。
一方、日経平均は東京エレクトロンなど指数寄与度の大きい銘柄に支えられました。東京エレクトロンは4月30日に2026年3月期決算を発表しており、半導体関連への資金流入が指数を押し上げました。しかし、プライム全体では値下がり銘柄の方が多く、物色は選別色の強いものでした。
この環境で43社を点検するなら、決算発表日が近い銘柄と、すでに決算を通過した銘柄を分けるべきです。決算前のRSI20以下は、悪材料を警戒した売りが先行している場合があります。決算通過後のRSI20以下は、悪材料出尽くしで反転する余地がありますが、会社予想が弱ければ戻りは限定されます。
大型連休前は、海外市場や為替の変動を避けるために持ち高を落とす投資家も増えます。そのため、連休明けに外部環境が落ち着けば、需給だけで反発する銘柄も出ます。ただし、需給反発と業績再評価は別物です。短期狙いなら売買タイミングを重視し、中期保有なら資本効率と利益計画を重視する必要があります。
注意点・展望
RSI20以下の低PER・低PBR株で最も多い誤解は、「売られ過ぎだから安い」という単純化です。RSIは価格の勢いを測る指標であり、企業価値そのものを測る指標ではありません。PERとPBRは割安感を示す材料になりますが、将来利益や資産の質が悪化すれば、割安ではなく妥当な低評価になります。
今後の焦点は、決算発表を通じて低PERの前提が維持されるかどうかです。会社予想が市場の期待を下回れば、低PER銘柄は一段安となる可能性があります。反対に、保守的な予想でも株主還元や資本効率改善策が明確なら、低PBR株への再評価が続く可能性があります。
テクニカル面では、RSIが20以下から30台へ戻る過程で、株価が直近高値を抜けるかが確認点です。出来高を伴って戻る銘柄は買い戻しに加えて新規資金が入っている可能性があります。出来高が細いままの戻りは、上値で戻り売りを受けやすい点に注意が必要です。
まとめ
RSI20以下、低PER、低PBRの組み合わせは、短期の反騰候補を探すうえで有効な入口です。ただし、5月1日の相場が示したように、指数が上昇しても市場全体の広がりが弱い局面では、銘柄ごとの選別がより重要になります。
見るべき順番は、まずRSIで売られ過ぎを確認し、次に日足と出来高で下げ止まりを確認し、最後にPER、PBR、ROE、資本政策で再評価余地を検証することです。43社というスクリーニング結果は、買いリストではなく調査リストです。反騰を狙うなら、安さの理由を説明できる銘柄だけを残す姿勢が必要です。
参考資料:
- 日経平均サマリー(1日)
- マーケット情報 - 株式市場動向
- 大引け概況-日経平均は3日ぶり反発 住友商事がストップ高
- 2026年3月期 決算発表
- Relative Strength Index (RSI) - Fidelity
- Relative Strength Index (RSI) - Fidelity Viewpoints
- What Is the Relative Strength Index (RSI)?
- PER|投資の時間
- PBR|投資の時間
- ROE|投資の時間
- 規模別・業種別PER・PBR
- よくあるご質問(統計資料)
- 「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請のアップデートについて
- 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表の見直しについて
- 東証の「資本コストや株価を意識した経営」要請から3年
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