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低PER・低PBR36社を検証、上昇トレンド株の選別法と注意点

by 杉山 直樹
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日経平均急落日に浮かんだ個別物色の強さ

10月30日の東京市場では、日経平均株価が前日比1369円36銭安の6万3290円11銭と、4営業日ぶりに反落しました。下落率は2.12%に達しましたが、TOPIXの下落率は0.95%にとどまり、東証プライム市場では値上がり807銘柄、値下がり714銘柄、変わらず32銘柄でした。

米国市場でアマゾンとインテルの決算が嫌気され、東京市場でもAI・半導体関連の値がさ株に売りが集中しました。一方、内需株や中小型株には買いが残り、指数の急落ほど市場全体は弱くなかったと判断できます。

こうした相場では、株価の上昇基調と割安なバリュエーションを併せ持つ銘柄が有力な調査対象になります。低PER・低PBRの36社について、抽出条件の意味と業種別の特徴、決算で確認すべきリスクを整理します。

三本の移動平均線と割安指標による36社抽出

抽出条件が示す「強さ」と「安さ」の交点

10月30日終値を基準に、東証プライム市場で25日・75日・200日移動平均線がすべて上向いていた銘柄は152社でした。この中から、予想PERがプライム市場平均の16.30倍を下回り、PBRも同市場平均の1.70倍を下回る36社が抽出されています。

25日線は短期、75日線は中期、200日線は長期の投資家の平均的な取得価格を映します。三本が同時に上向いている状態は、短期的な材料だけでなく、より長い時間軸でも株価の基調が改善してきたことを意味します。

ただし、「三本が上向き」という条件は、株価がすべての移動平均線より上にあることや、25日線、75日線、200日線の順に並ぶパーフェクトオーダーを保証しません。現在値との乖離率、各線の並び、出来高の増減は別に確認する必要があります。

PERとPBRが示す異なる割安性

PERは株価を1株当たり利益で割った指標であり、利益に対して株価が何倍まで買われているかを表します。今回の予想PERは会社予想など将来の利益を基準とするため、業績修正や一時利益の発生によって大きく変化します。

PBRは株価を1株当たり純資産で割った指標です。1倍未満なら株価が帳簿上の純資産を下回りますが、それだけで買収価値や清算価値より安いとは断定できません。資産の収益力が低い企業や、成長投資の成果が見えにくい企業も低PBRになりやすいためです。

理論上、定義する期間をそろえれば「PBRはPERとROEの積」に近い関係になります。低PERと低PBRを同時に満たす企業では、株価の安さだけでなく、ROEが資本コストを上回る方向へ改善しているかが重要です。

低PER順に並ぶ36社の全体像

コード銘柄名予想PERPBR
1814大末建設8.3倍1.57倍
8154加賀電子8.6倍1.31倍
7613シークス9.3倍0.69倍
4611大日本塗料9.4倍0.82倍
8095アステナホールディングス9.6倍0.79倍
4631DIC9.6倍0.91倍
6638ミマキエンジニアリング10.5倍1.55倍
4633サカタインクス11.1倍1.04倍
8150三信電気11.2倍0.89倍
8057内田洋行11.4倍1.40倍
4118カネカ11.8倍0.74倍
3941レンゴー12.0倍0.74倍
1899福田組12.2倍0.84倍
7864フジシールインターナショナル12.3倍1.14倍
5195バンドー化学12.5倍1.07倍
2120LIFULL12.5倍1.11倍
2108日本甜菜製糖12.7倍0.80倍
3636三菱総合研究所12.7倍1.09倍
5186ニッタ12.8倍1.14倍
9729トーカイ12.9倍1.05倍
6457グローリー13.1倍1.21倍
4189KHネオケム13.2倍1.54倍
7459メディパルホールディングス13.3倍1.08倍
9075福山通運13.7倍0.82倍
3405クラレ13.9倍0.74倍
9621建設技術研究所13.9倍1.43倍
3201ニッケ14.2倍0.97倍
4206アイカ工業14.2倍1.43倍
6794フォスター電機14.7倍1.09倍
8159立花エレテック14.9倍0.95倍
6724セイコーエプソン14.9倍1.19倍
9678カナモト14.9倍1.25倍
9658ビジネスブレイン太田昭和15.0倍1.41倍
6859エスペック15.0倍1.47倍
4331テイクアンドギヴ・ニーズ15.4倍0.68倍
4612日本ペイントホールディングス15.7倍1.48倍

予想PERが10倍を下回るのは、大末建設、加賀電子、シークス、大日本塗料、アステナホールディングス、DICの6社です。利益が維持されるなら割安感は強い一方、建設採算や半導体需給、原材料価格など景気循環の影響も受けます。

PBRが1倍を下回る企業は14社あります。シークス、DIC、カネカ、レンゴー、クラレなど製造業が目立ちますが、福山通運やテイクアンドギヴ・ニーズも含まれ、低PBRの背景は業種によって大きく異なります。

36社は「買うべき銘柄」の順位ではなく、追加調査の対象を絞るスクリーニング結果です。同じPER10倍でも、利益成長が続く企業と景気循環の頂点にある企業では投資価値が異なります。

業種分散と決算材料で見極める上昇の質

化学・素材株に必要な利益の持続性検証

一覧では、大日本塗料、DIC、サカタインクス、カネカ、レンゴー、バンドー化学、ニッタ、KHネオケム、クラレ、アイカ工業、日本ペイントホールディングスなど、化学・素材関連の厚みが目立ちます。設備や運転資本が大きくなりやすく、好況期でもPBRが上がりにくい業種です。

DICは予想PER9.6倍、PBR0.91倍です。同社は2026年12月期の通期予想を売上高1兆1400億円、営業利益780億円、純利益480億円へ上方修正しました。中間期までの利益改善が評価材料ですが、下期には顧客の在庫積み増しの反動や原料高が表れる可能性も示しています。

カネカはPBR0.74倍で、素材だけでなく医療、医薬、食品分野も抱えます。2027年3月期計画ではヘルスケア部門の成長を見込む一方、素材部門では需要調整や製品スプレッドの変動が残ります。複数事業を持つ企業では、連結利益だけでなく、どの事業が利益を押し上げているかを確認することが大切です。

クラレもPBR0.74倍で、中期経営計画「PASSION 2026」の最終年度にあります。低PBRの改善には、増配や自己株式取得だけでなく、高付加価値品へのシフトによるROICの上昇が欠かせません。

電子部品・機器株で異なる上昇要因

加賀電子、シークス、ミマキエンジニアリング、三信電気、内田洋行、グローリー、フォスター電機、立花エレテック、セイコーエプソン、エスペックは、電子部品や機器、商社機能を持つ企業群です。AI・半導体関連株が売られた10月30日にも上昇トレンドを維持した点は注目できます。

加賀電子は予想PER8.6倍と36社中で2番目に低い水準です。8月時点の会社予想では、2027年3月期の売上高を6600億円、営業利益を300億円、純利益を220億円へ引き上げていました。半導体需要の回復は追い風ですが、スポット販売の反動や買収した新光商事の連結効果を分けて評価する必要があります。

セイコーエプソンは予想PER14.9倍、PBR1.19倍です。8月に2027年3月期予想を売上収益1兆5100億円、営業利益1010億円、純利益690億円へ修正しました。純利益の大幅増には前期の特殊費用がなくなる反動も含まれるため、事業利益やキャッシュフローを併せて見るべきです。

電子部品株は円安や需要回復で利益が膨らみやすい反面、顧客の在庫調整が始まると予想PERの分母である利益が急減します。受注、在庫、為替前提、営業利益率の四項目を継続的に追う必要があります。

内需・サービス株に期待される安定性

大末建設、福田組、建設技術研究所、メディパルホールディングス、福山通運、カナモト、三菱総合研究所、トーカイなども選出されています。建設、医薬品流通、物流、レンタル、ITサービスという異なる需要源があり、素材株だけに偏らない点が36社の特徴です。

LIFULLは2026年9月期の売上収益予想を297億円から293億円へ引き下げる一方、営業利益を30億円から39億円、純利益を19億円から25億円へ上方修正しました。売上高より利益率の改善が株価を支える例であり、低PER株でも事業の縮小だけが評価理由とは限りません。

一方、福山通運などの物流株では燃料費と人件費、カナモトでは建設投資と保有機械の稼働率、テイクアンドギヴ・ニーズでは婚礼需要と施設投資の回収が焦点です。同じ低PBRでも、確認すべき先行指標は企業ごとに異なります。

バリュートラップとトレンド反転の監視項目

最大の注意点は、PERとPBRが低い理由を「市場の見落とし」だけで説明しないことです。利益が景気循環のピークにある企業、資産効率が低い企業、構造的な需要減少に直面する企業は、株価が上昇しても低い評価が長期間続く可能性があります。

予想PERは業績修正のたびに変わります。一時的な投資有価証券売却益や負ののれん発生益が純利益を押し上げている場合、その利益を除いた実力ベースのPERは表面値より高くなります。

移動平均線も将来を予測する指標ではなく、過去の価格を平滑化した遅行指標です。25日線の傾きが鈍化し、株価が75日線を明確に割り込む場合は、中期トレンドの変化を疑う必要があります。決算発表をまたぐ際には、移動平均線を飛び越える窓開け下落も想定すべきです。

金利面では、日銀が10月30日に政策金利を1.25%程度で維持しました。政策変更への反応は限定的でしたが、金利上昇局面では借入依存度の高い企業の支払利息や、株式に求められる期待収益率が上がります。低PBR企業ほど、有利子負債と営業キャッシュフローの確認が重要です。

今後の焦点は、決算発表後も利益予想と移動平均線の上向きが両立するかです。上方修正後に株価が反応しない、好決算でも出来高を伴って下落するといった値動きは、材料出尽くしを示す場合があります。

投資判断に落とし込む三段階の確認手順

36社を調べる際は、次の順序で候補を絞ると効率的です。

  1. 直近決算で売上高、営業利益、営業キャッシュフローがそろって改善しているかを確認します。一時利益を除いたEPSと、ROE・ROICが資本コストを上回る道筋も点検します。
  2. 株価と25日・75日・200日線の位置関係、各線からの乖離率、上昇時の出来高を確認します。押し目とトレンド崩れを区別するため、直近安値も基準に加えます。
  3. 決算日、投入資金、撤退条件を事前に決めます。低PER・低PBRを理由に買い下がるのではなく、前提となる利益予想が崩れた時点で再評価します。

今回の36社は、指数主導の急落相場でも個別企業を選別する出発点になります。バリュエーション、利益の質、チャートの三つを重ね、数値が更新されるたびに判断を見直す姿勢が欠かせません。

参考資料:

杉
杉山 直樹

市況・テクニカル分析

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