ADプラズマなど3社決算に映る半導体回復と来期成長力を読み解く
3社同時好決算が示した需要回復の広がり
10月9日に発表されたADプラズマ、マルマエ、古野電気の決算は、単なる個別企業の好材料にとどまりません。ADプラズマとマルマエは半導体製造装置関連、古野電気は舶用電子機器を主力とし、事業領域は異なります。それでも共通しているのは、需要回復が売上だけでなく利益率、配当、来期予想にまで波及している点です。
特に注目すべきは、好決算の中身が「一時的な為替益」だけでは説明しにくいことです。AI投資の拡大、先端半導体・高性能メモリー向け設備投資、舶用機器の販売増、産業用機器の伸長が、それぞれの企業の収益構造を押し上げています。一方で、在庫増、生産能力、人件費、部品価格、為替前提といった確認すべき論点も残ります。ここでは3社の決算を横断し、次の株価評価につながる財務上の変化点を読み解きます。
半導体装置関連2社の受注回復と利益率改善
ADプラズマの過去最高益シナリオ
ADプラズマは、半導体製造装置などで使われるプラズマ用高周波電源や自動インピーダンス整合装置を手掛ける企業です。2026年8月期の連結売上高は138億8400万円で前期比9.5%増、営業利益は25億6200万円で41.7%増、経常利益は30億1000万円で58.6%増となりました。売上の伸びより利益の伸びが大きく、売上高営業利益率は18.5%まで改善しています。
決算短信で重要なのは、同社が受注環境の変化を明確に説明している点です。前期下半期には通商環境の変化などで受注環境が急速に悪化しましたが、その後は半導体業界の先行き不透明感が和らぎ、第2四半期以降に半導体製造装置メーカーの生産・調達活動が活発化しました。主力の半導体・液晶関連事業は売上高130億5900万円、営業利益24億3800万円となり、連結利益の大半を支えています。
さらに、2027年8月期の会社予想はかなり強気です。売上高215億円、営業利益53億円、経常利益50億円、親会社株主に帰属する当期純利益37億円を見込みます。経常利益は前期比66.1%増で、会社側はAI関連を中心とする投資継続、足元の受注増、生産能力の拡充を前提にしています。年間配当予想も前期の30円から50円へ引き上げられ、利益成長を株主還元に反映する姿勢が示されました。
ただし、ここで見るべきは「大幅増益予想」そのものより、どの程度の確度で売上計上できるかです。同社はベトナム子会社で人員・設備の増強を進めていますが、装置部品や電源関連の需要が急に増える局面では、品質管理、生産リードタイム、部材調達がボトルネックになりやすい構造があります。2026年8月期末には仕掛品が増加しており、受注増が売上とキャッシュに転換される速度が次の焦点になります。
マルマエの機能材料事業が変えた収益構造
マルマエは、半導体・FPD製造装置向けの真空チャンバー、シャワーヘッド、静電チャック、電極などを製造する精密部品メーカーです。2026年8月期の連結売上高は204億3400万円で前期比79.2%増、営業利益は41億3000万円で99.8%増、経常利益は39億400万円で105.5%増、親会社株主に帰属する当期純利益は34億6400万円で157.6%増となりました。営業利益率は20.2%、自己資本比率は53.5%まで改善しています。
伸びの背景は二つあります。第一に、精密部品事業ではAI用途の需要拡大を受け、ロジックファウンドリ、先端DRAM、NAND、CPU向けの設備投資が広がりました。半導体製造用消耗品の需要も高水準で、工場稼働に連動する繰り返し需要が業績を下支えしています。第二に、連結子会社化したKMACを中心とする機能材料事業の寄与です。同事業は売上高113億1600万円、セグメント利益18億4800万円となり、連結業績の成長ドライバーに変わりました。
特に半導体エッチング装置用の真空チャンバーでは、2026年2月に顧客側の在庫消化が進み、その後は急増産要請を受けたと説明されています。会社側は2027年に向け、増産要請が現状の2倍を超える規模になるとし、人員増強、外注確保、鋳造設備や熱処理設備の増強を始めています。これは単なる市況回復ではなく、顧客の中長期的な能力増強計画に組み込まれつつあることを示します。
2027年8月期の連結業績予想は、売上高280億円、営業利益65億円、経常利益63億円、純利益42億円です。営業利益は前期比57.4%増を見込み、配当予想は年間52円です。さらに同社は中期事業計画で2028年8月期に売上高320億円、営業利益82億円、ROIC25%を掲げています。半導体・FPD投資が続く限り、成長の見通しは明るいといえます。
一方、マルマエの決算では比較可能性に注意が必要です。機能材料事業は2025年4月に連結子会社化しており、前年同期比は5カ月分との比較を含みます。また、のれん等償却額388百万円が発生し、来期も同水準の償却を見込んでいます。営業キャッシュフローは29億2800万円の黒字ですが、棚卸資産増加や売上債権増加による資金負担もあります。増産投資とキャッシュ創出のバランスが、次の評価ポイントになります。
半導体装置市場の外部環境は、両社に追い風です。SEMIは2026年の半導体製造装置販売額を1659億ドル、前年比23.2%増と予想し、ウェーハファブ装置も1439億ドルへ伸びると見ています。日本製半導体製造装置についても、SEAJは2026年度に5.50兆円、前年度比12%増を予想しています。AIサーバー、HBM、先端ロジック投資が続く限り、ADプラズマとマルマエには受注拡大の余地があります。
古野電気の上方修正に見る舶用と産業用の底力
舶用事業と為替が押し上げた営業利益
古野電気は、世界で初めて魚群探知機を実用化した歴史を持つ船舶用電子機器メーカーです。現在は商船、漁船、プレジャーボート向けの舶用事業に加え、医療機器、GPS・GNSS、ETC、インフラ維持管理、無線LAN・ハンディターミナルなどを展開しています。
2027年2月期中間期の連結売上高は799億1700万円で前年同期比16.4%増、営業利益は128億6600万円で38.3%増、経常利益は137億8100万円で35.5%増でした。親会社株主に帰属する中間純利益は99億4800万円で2.4%減でしたが、営業段階では明確な増益です。売上総利益率は45.0%となり、前年同期の43.0%から改善しました。
決算説明資料では、舶用事業が中国市場を中心とした機器販売の拡大と為替影響で伸びたこと、産業用事業ではITS・GNSSと防衛装備品が拡大したこと、無線LAN・ハンディターミナル事業では文教市場向け案件が増えたことが示されています。売上高の増加額112.6億円のうち、舶用事業の寄与が大きく、為替も営業利益を押し上げました。
この結果、古野電気は通期業績予想を上方修正しました。2027年2月期の売上高予想は1580億円、営業利益は210億円、経常利益は220億円、純利益は170億円です。前回予想に対して売上高は95億円、営業利益は40億円、経常利益は50億円、純利益は40億円の上振れとなります。舶用事業で販売が想定を上回っていることが主因です。
増配と長期目標に表れた資本政策
古野電気の決算で目立つもう一つの点は、配当の引き上げです。中間配当は従来予想80円から115円に増額され、期末配当予想も80円から95円へ引き上げられました。年間配当予想は210円となり、前期の160円から大きく増えます。同社は中期経営計画で総還元性向40%相当を掲げており、業績上振れを株主還元に反映させた形です。
同時に公表された2030年に向けた成長ストーリーも、今回の決算を読むうえで重要です。古野電気は2031年2月期に連結売上高1800億円、営業利益率15%以上を目標に掲げました。2026年2月期の連結売上高は1406億1600万円で、営業利益率は11.6%です。ここから舶用サービス、産業用のITS・GNSS、防衛装備品、プレジャーボートなどを伸ばし、収益性を高める構想です。
古野電気の強みは、舶用電子機器というニッチ市場で高い技術信頼性を持ち、商船・漁船・プレジャーボート・官公庁向けまで顧客層が広いことです。加えて、GNSSや防衛装備品の伸びは、海だけでなく陸上インフラや安全保障分野にも収益源を広げる可能性があります。半導体関連2社とは異なる景気循環に属するため、ポートフォリオ上の分散効果も意識されやすい銘柄です。
ただし、上方修正後の予想には部品価格上昇の影響も織り込まれています。為替前提は米ドル159円、ユーロ184円に見直されました。円安は売上・利益にプラスですが、為替が反転した場合は利益押し上げ効果が薄れます。部品価格、人件費、研究開発投資、海外サービス体制の強化費用を吸収しながら、営業利益率を維持できるかが次の焦点です。
好決算でも残る在庫・為替・部品高リスク
3社の決算は前向きですが、投資判断では「良い数字の持続性」を分解する必要があります。ADプラズマは受注回復と来期予想が強い一方、仕掛品の増加や営業キャッシュフローの減少を確認する必要があります。生産能力の増強が進んでも、顧客の装置投資タイミングがずれれば、売上計上と在庫回転に影響が出ます。
マルマエは成長率が高い反面、KMAC連結による押し上げが大きく、前年比だけで実力値を判断しにくい面があります。真空チャンバーの増産要請は魅力的ですが、人員確保、外注先、鋳造・熱処理設備の立ち上げが予定通り進むかが重要です。のれん等償却も継続するため、営業利益だけでなく営業キャッシュフローとROICの推移を追うべきです。
古野電気は上方修正と増配が評価材料ですが、為替と部品価格の影響を受けます。円安前提が強いほど、為替反転時の利益感応度は無視できません。また、舶用事業の好調が中国市場や更新需要にどの程度依存しているかも確認点です。好決算後の株価上昇局面では、業績予想の上振れ余地と、すでに織り込まれた期待値を分けて見る必要があります。
投資家が次回決算まで確認したい判断軸
今回の3社決算は、AI関連投資と半導体製造装置市場の回復、舶用・産業用機器の需要拡大が、企業業績に具体的な数字として表れた事例です。ADプラズマは過去最高益更新シナリオ、マルマエはKMACを含む増産局面、古野電気は上方修正と増配が主な評価ポイントです。
次回決算までに確認したいのは、ADプラズマでは受注増が売上とキャッシュに変わる速度、マルマエでは機能材料事業の利益率と設備増強の進捗、古野電気では部品高を吸収した営業利益率とサービス収益の拡大です。好決算は投資判断の出発点であり、次の確認作業は「売上成長が資本効率を伴っているか」にあります。
参考資料:
- ADプラズマ 2026年8月期決算短信
- ADプラズマ 製品情報
- マルマエ 2026年8月期決算短信
- マルマエ 2026年8月期決算補足資料
- マルマエの特徴
- マルマエ 生産体制
- 古野電気 2027年2月期第2四半期決算短信
- 古野電気 2027年2月期第2四半期決算説明資料
- 古野電気 連結業績予想及び配当予想の修正
- 古野電気 2030年に向けた成長ストーリー
- 古野電気 会社概要
- SEMI 300mm Fab Equipment Spending Forecast
- SEMI Semiconductor Equipment Sales Forecast
- SEAJ Semiconductor and FPD Manufacturing Equipment Forecast
- WSTS News Press
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