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東京エレクトロン最高益予想、AI投資拡大で通期営業益1兆円超へ

by 前田 千尋
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東京エレクトロン最高益予想が示す転換点

東京エレクトロンが2026年10月30日に発表した2027年3月期中間決算は、AIサーバー向け設備投資の拡大を鮮明に映す内容となりました。上期の経常利益は前年同期比67.6%増の5144億円に達し、未定だった通期予想では1兆1790億円を見込みます。

通期の売上高と利益はそろって過去最高となる計画です。ただし、上期の好調だけで達成できる数字ではありません。下期には上期を上回る売上高と利益率が必要です。決算の強さ、配当の正しい比較方法、計画達成を左右する半導体投資の持続性を財務面から読み解きます。

上期の利益率急伸を支えた売上構成

従来予想を上回った四つの利益指標

2027年3月期上期の売上高は1兆6674億円、営業利益は5067億円、経常利益は5144億円、親会社株主に帰属する中間純利益は3769億円でした。すべての項目で前年同期を大幅に上回っただけでなく、7月30日に上方修正した会社予想も超過しています。

指標上期実績前年同期比7月予想からの上振れ
売上高1兆6674億円41.3%増2.9%
営業利益5067億円67.2%増10.6%
経常利益5144億円67.6%増10.9%
中間純利益3769億円56.0%増8.0%

売上高の上振れより利益の上振れが大きい点が重要です。売上総利益率は前年同期の45.7%から47.4%へ上昇しました。売上総利益が46.6%増えた一方、販売費及び一般管理費の増加は20.2%にとどまり、営業利益率は25.7%から30.4%へ4.7ポイント改善しています。

経常利益は直前のIFISコンセンサスを11.8%上回りました。単なる出荷時期の前倒しだけでは説明しにくく、高付加価値装置の販売増と固定費吸収の改善が同時に進んだ決算と評価できます。

四半期利益率に表れた装置ミックスの強さ

7~9月期だけを見ると、売上高は前年同期比48.4%増の9350億円、営業利益は86.4%増の2953億円でした。営業利益率は31.6%と、4~6月期の28.9%からさらに上昇しています。売上総利益率も47.8%に達しました。

半導体製造装置の新規装置売上高は7344億円となり、前四半期比38%増えました。用途別ではDRAM向けが45%増、ロジック・ファウンドリなどの非メモリ向けが36%増、不揮発性メモリ向けが27%増です。特定用途だけに依存せず、複数分野で出荷が伸びています。

パーツ、保守、中古装置、改造を含むフィールドソリューション売上高も1910億円でした。新規装置の成長に加えて、稼働装置の増加に連動するサービス収益が下支えしているため、利益率改善の質は比較的高いと判断できます。

AI投資拡大と下期計画の達成条件

WFE市場拡大を裏づける顧客投資

東京エレクトロンは、前工程製造装置を示すWFE市場について、2026年に約1600億ドル、2027年には2100億ドル以上へ拡大すると予測しています。生成AIに加えてエージェント型AIが普及し、GPUとHBMだけでなく、CPU、汎用DRAM、NANDまで需要が波及するとの見方です。

外部データも成長方向を裏づけます。SEMIは半導体製造装置全体の2026年売上高を前年比23.2%増の1659億ドルと予測しました。このうちファウンドリ・ロジック向けWFEは18.9%増の780億ドルを見込みます。市場定義が異なるため会社予想との単純比較はできませんが、先端ノードやAIアクセラレーターへの投資拡大という方向性は一致しています。

主要顧客であるTSMCも、2026年の設備投資計画を600億~640億ドルとしています。同社は複数年にわたる顧客需要の強さを背景に、高水準の投資を維持する方針です。装置メーカーの業績に先行する半導体メーカーの投資計画は、東京エレクトロンの強気予想を支える重要な材料です。

高い下期利益率を実現する製品構成

通期計画では売上高3兆7000億円、営業利益1兆1690億円、経常利益1兆1790億円、純利益8650億円を見込みます。経常利益予想は発表直前のIFISコンセンサスを13.7%上回る水準です。

指標上期実績下期予想通期予想
売上高1兆6674億円2兆325億円3兆7000億円
売上総利益率47.4%48.3%47.9%
営業利益5067億円6622億円1兆1690億円
営業利益率30.4%32.6%31.6%
純利益3769億円4880億円8650億円

上期の通期計画に対する進捗率は売上高45.1%、営業利益43.4%です。季節性を考えれば進捗率が50%未満であること自体は異常ではありませんが、下期には営業利益率32.6%が必要です。上期より2.2ポイント高い収益性が達成条件となります。

会社は下期の新規装置売上高を1兆5600億円と見込み、上期から約23%増やす計画です。用途別構成はロジック・ファウンドリなどが51%、DRAMが35%、不揮発性メモリが14%です。DRAMキャパシター工程、NAND向け極低温エッチング、先端パッケージング向け成膜装置など、高付加価値製品の量産拡大が利益率を左右します。

研究開発費も前期比20.6%増の3350億円を計画しています。足元の利益を確保しながら次世代装置への投資を増やせるかが、中期的な競争力を測る焦点です。

株式分割後の還元強化と業績変動リスク

年間配当を「523円」と単純合算すると、実態を誤解しやすくなります。中間配当415円は10月1日の株式5分割前、期末配当108円は分割後の金額だからです。分割後の基準にそろえると、中間83円と期末108円の合計191円となります。前期の分割調整後125.6円から約52%の増配で、分割前換算では955円です。

予想EPS381.69円に対する年間配当191円は、会社が基本方針とする連結配当性向50%とほぼ一致します。さらに、2500万株、1500億円を上限とする自己株式取得を11月1日から2027年3月31日まで実施します。上限株数は自己株式を除く発行済み株式の1.1%です。

一方、業績予想には高い成長の継続が織り込まれています。7~9月期の地域別売上構成では中国が36.4%を占め、4~6月期の30.4%から上昇しました。輸出規制や中国顧客の投資循環が変化した場合、業績への影響は小さくありません。

AIインフラ投資の採算性を巡る市場の警戒も残ります。顧客との商談では需要減速の兆候が見られないと会社側は説明していますが、下期の増収と利益率改善を同時に実現できるかは別の論点です。売上債権・契約資産が6190億円へ増えたことも踏まえ、売上成長が営業キャッシュフローに確実に転換されるかを確認する必要があります。

投資家が次回決算で確認すべき三指標

今回の決算は、AI需要が受注だけでなく売上高と利益率へ転化していることを示しました。最高益予想、分割調整後で約52%の増配、1500億円の自己株式取得は、利益成長と株主還元を両立する強い内容です。

次回の第3四半期決算は2027年2月5日に予定されています。投資家が確認すべき指標は、下期目標である営業利益率32.6%への接近度、新規装置売上に占めるDRAM・ロジック・NANDの構成、中国売上と売上債権の推移です。この三点が改善すれば最高益予想の確度は高まり、反対に崩れれば強気計画の見直しが必要になります。

参考資料:

前
前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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