AI時代の成長株、デジタルマーケティング精鋭7銘柄を徹底分析
ネット広告が総広告費の過半へ進む構造転換
日本のインターネット広告費は、2015年の1兆1594億円から2025年の4兆459億円へ拡大しました。10年間で約3.5倍となり、2025年には総広告費の50.2%を初めて占めています。媒体費だけでも3兆3093億円に達しました。
成長の中心は、前年比21.8%増の動画広告と同18.7%増のソーシャル広告です。2026年のネット広告媒体費も3兆5840億円への拡大が予測されています。一方、AI検索によるメディア流入の減少や広告制作の低価格化も始まり、市場拡大だけで全企業が潤う局面ではありません。
投資先を選ぶ際は、AIという看板よりも、顧客データ、継続課金、運用ノウハウ、利益率を確認する必要があります。ここでは直近の開示資料を基に、成長を利益へ転換しつつある7社を分析します。
高収益基盤を持つ運用広告・AI実装の3社
フィードフォース、利益率40%台の再成長モデル
フィードフォースグループ <7068> は、運用型広告、データフィード、ソーシャルログイン、Shopify支援を組み合わせる企業です。2026年5月期決算資料によると、売上高は前期比12.3%増の49億1200万円、営業利益は同24.4%増の19億8100万円でした。営業利益率は40.3%へ上昇しています。
2027年5月期は売上高57億4100万円、営業利益23億6200万円を見込みます。特にDX事業の利益を前期比94.4%増とする計画で、ECPowerの連結効果とShopify関連の拡大が焦点です。
強みは、広告運用だけでなく、商品データ、ID連携、CRM、EC構築まで顧客接点を横断できる点です。AIエージェントが商品を比較・推薦する時代には、機械が理解できるデータへ整える技術が重要になります。株価評価の改善には、SaaS事業の成長再加速とDX事業の計画達成が必要です。
Orchestra、AI検索対応で戻る広告事業の収益力
Orchestra Holdings <6533> の2026年12月期上期は、売上収益が前年同期比0.1%増の77億9800万円にとどまった一方、営業利益は同26.7%増の8億7300万円でした。決算短信では、デジタルマーケティング事業の売上収益が6.0%増、セグメント利益が12.1%増となっています。
運用型広告とSEOに加え、AI検索最適化やTikTok Shop運用へサービスを広げています。子会社のデジタルアイデンティティは、自社AI基盤による業務削減やLLMO分析ツールも展開しており、外販と社内効率化の両面を狙う構造です。
注意したいのは、全社増益の一部が広告以外の事業改善にも支えられている点です。上期末ののれんは68億8500万円まで増え、親会社所有者帰属持分比率は36.7%へ低下しました。広告事業の増益継続と買収先の収益貢献が、復調の持続性を決めます。
エフ・コード、M&AとAIを束ねる連邦型成長
エフ・コード <9211> は、CX改善、SNS運用、スクール、エンジニアリングを買収によって集積してきました。2026年12月期第2四半期資料では、上期売上収益が前年同期比57.3%増の82億円、営業利益が同41.6%増の16億4600万円です。
同社はAIを、新サービス、事業部門の付加価値向上、管理部門の効率化という三つの機会に整理しています。LLMO支援、生成AI横断ツール、資料作成、広告審査など、具体的な製品へ落とし込んでいる点が特徴です。
ただし、上期には4件、総額16億円以上のM&Aを実施しており、高成長には買収効果も含まれます。AI・テクノロジー領域の事業利益進捗率は35.0%と、全体より低い水準です。オーガニック成長率、借入金、のれん、買収後のクロスセルを分けて検証する必要があります。
PR・SaaS・データ活用で伸びる4社
マテリアルグループ、PR発想と広告運用の融合
マテリアルグループ <156A> は、PRコンサルティングを核にデジタル広告とPRプラットフォームを拡大しています。2026年8月期第3四半期資料では、売上高が前年同期比41.5%増の66億6200万円、営業利益が同55.9%増の10億3100万円でした。
デジタルマーケティング事業の粗利は同87.5%増です。顧客数は11.7%増の421社、顧客単価は115.5%増の250万5000円となり、Bridgeの買収と高単価な広告運用案件が寄与しました。PRの物語設計とSEO・LLMOを組み合わせられることが差別化要因です。
一方、成長率にはM&Aの影響が含まれ、PRプラットフォーム事業には計画比の遅れもあります。IFRS移行後はのれんが非償却となるため、営業利益の伸びだけでなく、のれん償却前利益や営業キャッシュフローも確認すべきです。
スターティアHD、MRRが支える中小企業DX
スターティアホールディングス <3393> は、ITインフラの顧客基盤に「Cloud CIRCUS」をクロスセルできる点が強みです。2027年3月期第1四半期資料では、全社売上高が前年同期比7.2%増の60億4100万円、営業利益が同18.9%増の7億500万円でした。
DXソリューション事業は売上高4.0%増に対して、セグメント利益が21.3%増となっています。ストック売上高は8.0%増え、Cloud CIRCUSのMRRは6.6%増の2億8900万円、過去12カ月平均解約率は1.5%から1.2%へ改善しました。
新規AIサービスの話題性以上に、既存顧客への複数商材導入と継続課金が評価軸です。MRR、顧客単価、解約率がそろって改善すれば、景気変動を受けにくいSaaS企業としての評価が強まりやすくなります。
オロ、データ統合から施策実行までの一気通貫
オロ <3983> の2026年12月期第2四半期資料では、売上収益が前年同期比17.0%増の45億5200万円、営業利益が同17.3%増の14億1000万円でした。マーケティングソリューション事業は、主要顧客からの案件回復で売上収益が26.7%増えています。
さらに、散在する広告、SNS、CRMなどのデータを統合し、AIが分析から施策実行まで支援するAIエージェンティックデータ基盤構築サービスを開始しました。従来のWeb制作や広告運用から、データ基盤の構築・保守へ契約範囲を広げる試みです。
収益化の確認には、導入社数、契約単価、継続収益の開示が必要です。大型案件に伴う四半期変動や海外拠点の採算も残るため、新サービスの発表件数ではなく、マーケティング事業の利益率で進捗を判断します。
インテージHD、調査データをAI価値へ変える再設計
インテージホールディングス <4326> は、市場調査データとNTTドコモの1億人超の会員基盤を利用できる独自性を持ちます。2026年6月期の業績は、売上高670億9000万円、営業利益57億5000万円でした。
第15次中期経営計画では、従来の調査事業を担うInsightと、マーケティングDXなどを担うData Techの二つへ事業を再編しました。蓄積データと生成AIを組み合わせ、調査結果の提示から企業の意思決定・販促実行まで関与する構想です。
ただし、2026年6月期のROEは5.1%にとどまります。会社は2031年6月期に向けROE12%を掲げ、DOE5%を下限とする累進配当も導入しました。Data Techの利益拡大と資本効率の改善がそろったとき、老舗調査会社からデータテクノロジー企業への評価転換が現実味を帯びます。
株価復調を左右する利益の質と四つのリスク
第一のリスクは、AI関連サービスが実証段階にとどまり、売上規模や継続率が開示されないことです。作業時間の削減は有望でも、人員削減や案件単価の上昇へ結びつかなければ利益率への効果は限定されます。
第二はM&A依存です。エフ・コード、マテリアルグループ、Orchestra Holdingsでは、買収が成長を加速させる半面、のれん、借入金、PMIの負担が増えます。IFRSへの移行でのれん償却がなくなる企業では、会計利益と現金創出力を分けて見る必要があります。
第三は海外プラットフォームへの依存です。広告主の予算が増えても、Google、Meta、TikTokなどへの媒体費が先に膨らめば、国内支援会社の利益が同じ割合で増えるとは限りません。AI検索による流入減少や媒体側の仕様変更も避けられないリスクです。
第四は顧客集中と案件変動です。少数の大型顧客や繁忙期へ依存する企業では、受注のずれだけで四半期業績が大きく動きます。今回の7社は一律の推奨順位ではなく、成長モデルが異なる比較対象として捉えるべきです。
次回決算で確認したい七銘柄共通の評価軸
次の決算では、売上成長率だけでなく、既存事業のオーガニック成長、セグメント利益率、MRR・解約率、AI関連の有料契約を確認することが重要です。M&A企業では、買収を除いた成長率、のれん、借入金、営業キャッシュフローも欠かせません。
短期的な安定性では、フィードフォースグループとスターティアHDの継続収益が注目点です。変化率ではエフ・コードとマテリアルグループ、AI検索対応ではOrchestra Holdingsとオロ、長期の事業転換ではインテージHDが焦点になります。
広告市場の拡大は7社共通の追い風ですが、株価復調を決めるのは市場規模ではありません。AIを顧客価値、利益率、キャッシュフローへ変換できた企業から、業績と評価の差が開く局面です。
参考資料:
- 2015年 日本の広告費|インターネット
- 2025年 日本の広告費|インターネット
- 2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析
- フィードフォースグループ 2026年5月期決算説明資料
- フィードフォースグループ 個人投資家向け事業情報
- Orchestra Holdings 2026年12月期第2四半期決算短信
- Orchestra Holdings 2026年ニュース一覧
- エフ・コード 2026年12月期第2四半期決算説明資料
- マテリアルグループ 2026年8月期第3四半期決算説明資料
- スターティアホールディングス 2027年3月期第1四半期決算補足資料
- オロ 2026年12月期第2四半期決算説明資料
- オロ AIエージェンティックデータ基盤構築サービス
- インテージホールディングス 事業・業績情報
- インテージホールディングス グループ経営戦略
- インテージホールディングス 株主還元方針
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