再燃するAI相場で狙う半導体株、IntelとTI好決算の示唆
Intel・TI好決算で広がるAI半導体相場
2026年4月下旬、米国株式市場に強烈なインパクトが走りました。IntelとTexas Instruments(TI)の2026年1〜3月期決算が市場予想を大幅に上回り、半導体セクター全体に買いが波及したのです。S&P500は4月に10%上昇、Nasdaqは15%上昇と、いずれも2020年以来の月間パフォーマンスを記録しました。
注目すべきは、今回のラリーの主役がNVIDIA一強ではなかった点です。AIワークロードの変質、とりわけ「エージェンティックAI」の台頭が、GPUだけでなくCPUや周辺半導体への需要を構造的に押し上げています。この記事では、IntelとTIの好決算が映し出すAI需要の新しい潮流を読み解き、これからAI相場に乗るための銘柄選定の視点を提示します。
IntelとTIの好決算が示すAI需要の広がり
Intel:データセンター売上22%増、CPU復活の狼煙
Intelの2026年1〜3月期決算は、売上高136億ドル(前年同期比7%増)、調整後EPS 0.29ドルと、市場予想のEPS 0.01ドルを大幅に上回る内容でした。株価は決算発表後に24%急騰し、1987年以来最大の1日上昇率を記録しています。
業績を牽引したのはデータセンター部門です。同部門の売上高は51億ドルで前年同期比22%増、AI関連ビジネスが全体売上の約60%を占め、前年同期比で40%の成長を遂げました。リップブー・タンCEOは、エージェンティックAIワークロードの急増がCPU需要を押し上げていると説明しています。
さらにGoogleがIntelのCPUを複数世代にわたってAIワークロードに採用すると表明。Amazon、Cisco、さらにはSpaceXやTeslaもIntelの先端パッケージング顧客に名を連ねており、顧客基盤の厚みが増しています。2026年4〜6月期のガイダンスも売上高138〜148億ドル、調整後EPS 0.20ドルと、市場予想(売上高130.7億ドル、EPS 0.09ドル)を大きく超える水準を示しました。
Texas Instruments:データセンター売上90%増の衝撃
TIの1〜3月期決算も市場を驚かせました。売上高は48.3億ドル(前年同期比19%増)、EPSは1.68ドルと、コンセンサス予想の売上高45億ドルを上回っています。純利益は前年同期比31%増の15.5億ドルでした。
特筆すべきはデータセンター部門の売上が前年同期比で約90%増加した点です。四半期ベースの前期比でも25%以上の成長を記録し、同部門の年間売上は10億ドル超の規模に到達しました。主力のアナログ半導体売上も39.2億ドル(前年同期比22%増)と堅調です。
TIの強さは、AIインフラに必要な電力管理やセンサーなどのアナログ半導体領域で圧倒的なシェアを持つ点にあります。GPUやCPUといったデジタル半導体が脚光を浴びがちですが、データセンターの実装にはアナログ部品が不可欠であり、AIインフラ投資の裾野の広さを示す好例です。
エージェンティックAIが変えるCPUとGPUの力学
CPU:GPU比率の構造的シフト
今回の決算シーズンで浮かび上がった最大のテーマが、エージェンティックAIによるCPU需要の急増です。エージェンティックAIとは、ユーザーに代わってタスクの計画、ツールの呼び出し、判断、行動を自律的に行うAIシステムを指します。
従来のAIワークロードでは、大規模モデルの学習にGPUが圧倒的に必要とされ、CPU:GPU比率は1:8程度でした。しかし推論フェーズでは1:4に縮まり、エージェンティックAIではさらにパリティ(1:1〜1:2)に近づくとTrendForceは分析しています。
その理由は明快です。サブタスクのスケジューリング、ツールコールのルーティング、サブエージェント間のデータ受け渡し、リクエスト完了の評価といった「調整レイヤー」の処理は、GPUではなくCPUが担います。エージェントが増殖するほど、CPUへの負荷は比例的に高まるのです。
供給制約と価格上昇の兆候
この需要シフトは供給面にも影響を及ぼしています。サーバーCPU価格は3月以降10〜20%上昇し、IntelとAMDの双方が値上げに動いています。Intel経営陣は「供給が完全に逼迫している」と認め、低価格帯のクライアント向け製品の優先度を下げ、データセンター向けに生産能力を振り向ける方針を示しました。
NVIDIAやArm、さらにはAWS、Google、Microsoftといったクラウド大手もサーバーCPU市場に参入しており、2026年3月にはNVIDIAがスタンドアロンのVera CPUラックを発表、ArmもAGI CPUを披露しました。CPUという「忘れられたチップ」が、エージェンティックAI時代の新たなボトルネックとして注目を集めています。
NVIDIAだけではない、注目のAI半導体銘柄
Arm Holdings:IPライセンサーからチップメーカーへの転換
Arm Holdingsは2026年の年初来で84%上昇と、AI半導体銘柄の中でも屈指のパフォーマンスを見せています。Q3 FY2026の売上高は12.4億ドル(前年同期比26%増)で、4四半期連続の10億ドル超を達成しました。
注目すべきは、35年間続けてきたIPライセンスモデルからの大転換です。2026年3月にArm初の自社生産シリコン「Arm AGI CPU」を発表し、エージェンティックAIに特化した高性能チップ市場に直接参入しました。経営陣は2031年にAGI CPU単体で150億ドルの売上を見込んでおり、ウォール街のアナリストも目標株価を相次いで引き上げています。
TSMC:AI半導体製造の要、先端パッケージングの覇者
TSMCは2026年通年で前年比30%超の売上成長を見込んでおり、AI半導体の製造で不可欠な存在です。AI向けの先端パッケージング技術「CoWoS」の月間生産能力を、2024年末の約3.5万枚から2026年末には約13万枚へと4倍近くに拡大する計画です。
ただしCoWoSの生産能力は2026年を通じて完売状態が続く見通しで、NVIDIAが全容量の60%超を確保しているとされます。需給の逼迫は続くものの、設備投資の10%以上を先端パッケージングに充てる方針は、AI需要の持続性に対する経営陣の自信を映しています。
AMD・Broadcom:競争と差別化の新局面
AMDはNVIDIAに次ぐGPUプレーヤーとしての地位を固めつつ、MI400シリーズやMetaとの大型契約(報道ベースで600億ドル規模)で存在感を高めています。GPU搭載AIサーバーのシェアは2026年に69.7%を占める一方、ASIC(カスタムチップ)搭載サーバーは27.8%まで拡大する見通しです。
Broadcomはこのカスタムチップ領域の雄で、Q4のAI半導体売上は65億ドル(前年同期比74%増)、Q1は82億ドル(同100%増)と急成長を遂げています。ハイパースケーラーの自社チップ需要を取り込む独自のポジションが強みです。
AI投資2000億ドルと銘柄分散の重要性
AI相場の再燃は確かですが、リスクも存在します。まず、4月のS&P500とNasdaqの急騰はかなりの楽観を織り込んでおり、短期的な利益確定売りには警戒が必要です。OpenAIが内部目標を下回ったとの報道で市場が一時下落した場面もあり、AI投資の回収期間を巡る懸念は完全には払拭されていません。
また、Microsoft、Amazon、Google、Metaの4社だけで2026年のAIインフラ投資額は2000億ドル超と見込まれています。この巨額投資が持続可能かどうかは、各社のAIサービスの収益化スピード次第です。中東情勢の不透明感や原油価格の高止まりも、マクロ環境のリスク要因として意識されます。
一方で、エージェンティックAIの普及はまだ初期段階にあり、CPU需要の拡大やサプライチェーン全体への波及効果は今後数年にわたって続くと見られます。銘柄選定においては、GPU一極集中の視点を脱し、CPU、アナログ半導体、先端パッケージング、ネットワーク機器といった周辺領域まで視野を広げることが重要です。
NVIDIA一強後のAIサプライチェーン投資
IntelとTexas Instrumentsの好決算は、AI相場が「NVIDIA一強」から「半導体セクター全体への波及」へと質的に変化していることを示しました。エージェンティックAIの台頭によるCPU需要の構造的増加は、Intel、ARM、AMDといったCPU関連銘柄に新たな投資機会をもたらしています。
これからAI相場に乗るためには、GPUだけでなくサプライチェーン全体を見渡す視点が不可欠です。先端パッケージングのTSMC、カスタムチップのBroadcom、アナログ半導体のTIなど、AIインフラを支える多様なプレーヤーに目を配ることが、次の投資機会をつかむ鍵となるでしょう。
参考資料:
- Intel (INTC) Q1 2026 earnings report - CNBC
- Texas Instruments stock soars on Q1 earnings as AI demand jumps - CNBC
- Texas Instruments Q1 2026 Earnings: Revenue $4.83B, EPS $1.68 - IndexBox
- Intel Q1 2026 Earnings: $13.6B Revenue, DCAI Up 22% - Tech Insider
- The Great Rebalance: How Agentic AI Is Reshaping the CPU:GPU Ratio - TrendForce
- ARM Stock Is Up 84% in 2026 - TIKR
- Intel’s stock more than doubles in April for best month in 55 years - CNBC
- S&P 500 posts best month since 2020 on AI earnings
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