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良品計画、経常益4期連続最高へ 増配後も38円維持を財務分析

by 前田 千尋
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過去最高益が示す無印良品の収益構造転換

良品計画の2026年8月期は、営業収益と各段階利益がそろって過去最高となりました。営業利益は初めて1,000億円を突破し、経常利益は前期比44.8%増の1,046億70百万円です。2027年8月期も1,110億円を見込み、4期連続で経常最高益を更新する計画です。

重要なのは、店舗増による売上拡大だけでなく、営業総利益率と販管費率が同時に改善したことです。東アジアを中心とする海外成長も加わり、営業収益の伸びを上回る利益成長を実現しました。

期末配当は従来予想から6円引き上げられました。ただし、これは前年度比の増配額ではありません。株式分割後の基準では実質13円の増配となるため、業績の持続性と還元余力を分けて確認する必要があります。

国内の粗利改善と東アジア成長の二本柱

売上以上に伸びた本業の利益力

2026年8月期の主要な連結業績は次の通りです。

指標2026年8月期実績前期比
営業収益9,235億92百万円17.7%増
営業利益1,034億36百万円40.1%増
経常利益1,046億70百万円44.8%増
親会社株主に帰属する当期純利益764億22百万円50.3%増

営業収益が17.7%増えたのに対し、営業利益は40.1%増えました。営業総利益率は前期から1.4ポイント上昇して52.8%、販管費率は0.3ポイント低下して41.6%となり、営業利益率は9.4%から11.2%へ改善しています。

粗利率の改善には、生産体制の内製化による原価低減と値下げの抑制が寄与しました。販管費は出店や人員増強で増えたものの、それを上回る増収によって費用率が低下しています。値上げだけに頼らず、商品原価と店舗運営の双方を改善した点が今回の増益の質を高めています。

7月時点の会社予想は、営業収益9,070億円、営業利益980億円、経常利益990億円、純利益670億円でした。最終実績はすべての項目で予想を上回り、とりわけ純利益は94億円以上の上振れです。本業の好調に加え、為替差益や政策保有株式の売却益、繰延税金資産の計上も最終利益を押し上げました。

国内と東アジアの異なる稼ぎ方

国内事業の営業収益は前期比8.7%増の5,109億93百万円、セグメント利益は21.6%増の633億90百万円でした。既存店とECを合わせた売上高は通期で前期比102.4%です。上期のシステム障害でECが前年を下回った一方、店舗売上と出店効果が補いました。

「無印良品週間」や「良いね祭」、ポイント施策の「GOOD POINT WEEK」も集客に寄与しています。国内事業の利益率は前期から1.3ポイント改善して12.4%となり、成熟市場でも粗利改善と店舗効率化によって利益を伸ばせることを示しました。

成長を強く牽引したのは東アジア事業です。営業収益は32.2%増の2,937億83百万円、セグメント利益は44.2%増の616億90百万円となり、利益率は21.0%に達しました。既存店とECを合わせた売上高は東アジア全体で前期比115.6%、中国大陸では116.3%です。

中国大陸では現地向けの商品構成、マーケティング、店舗の小規模改装が奏功しました。台湾ではヘルス&ビューティーや食品、韓国では客数増加、香港では倉庫移管による物流効率化が利益を支えています。単なる円換算効果ではなく、地域別の運営改善が伴った増益です。

東南アジア・オセアニア事業も営業収益が32.8%増、セグメント利益が64.1%増となりました。欧米事業は営業収益が24.1%増、セグメント利益が17.0%増です。パリ旗艦店に向けた先行費用を吸収しながら、全地域で増収増益を確保しました。

現金創出力の向上と在庫の増加

営業活動によるキャッシュ・フローは993億96百万円となり、前期の733億55百万円から増加しました。投資活動による支出は301億24百万円にとどまり、期末の現金及び現金同等物は1,691億88百万円です。自己資本比率も59.0%から61.1%へ上昇しました。

一方、商品在庫は前期末から355億69百万円増え、2,053億35百万円となりました。営業収益の伸び以上に在庫が増えており、出店準備や海外拡大のための戦略在庫だけで説明できるかが今後の確認点です。値下げ抑制による粗利改善を維持するには、在庫回転の悪化を防ぐ必要があります。

1兆円計画と年間38円配当の持続性

1兆円到達を支える出店と既存店

2027年8月期の会社計画では、営業収益が初めて1兆円を超える見通しです。

指標2027年8月期予想前期比
営業収益1兆140億円9.8%増
営業利益1,140億円10.2%増
経常利益1,110億円6.0%増
親会社株主に帰属する当期純利益730億円4.5%減

営業利益は二桁増益ですが、経常利益の伸びは6.0%にとどまります。前期は営業利益を経常利益が上回ったのに対し、今期予想では営業利益が経常利益を上回る設計です。為替差益など営業外の追い風を前期ほど見込まない、慎重な計画と読み取れます。

純利益が減るのも業績悪化が主因ではありません。前期に計上した為替差益、政策保有株式の売却益、税効果といった一過性利益の反動です。一過性要因を除いた基礎的な利益では増益を計画しています。

期末店舗数は、2026年8月期末の1,486店舗から1,584店舗へ増やす方針です。内訳は国内が723店舗から760店舗、海外が763店舗から824店舗となり、純増計画の6割以上を海外が占めます。

既存店とECを合わせた売上高の前期比計画は、国内104%、東アジア107%、東南アジア・オセアニア110%、欧米106%です。新規出店だけでなく、すべての地域で既存店成長を織り込んでいるため、未達時には固定費負担が利益率を圧迫します。

円安や原材料高、欧米での先行投資を見込む一方、生産内製化と海外売上比率の上昇で営業総利益率を改善する計画です。ただし、営業利益率は前期と同じ11.2%にとどまります。今期は利益率の急上昇よりも、成長投資を進めながら高い収益性を維持できるかが焦点です。

6円上積みと実質13円増配の整理

2026年8月期の年間配当は、中間16円、期末22円の計38円となる予定です。期末配当を従来予想の16円から22円へ引き上げたため、「6円増額」と表現されています。年間配当の従来予想は32円でした。

良品計画は2025年9月1日付で1株を2株にする株式分割を実施しました。2025年8月期の年間配当50円を分割後の基準に直すと25円です。このため、前年度の実質25円から2026年8月期の38円へ、年間では13円の増配となります。

2026年8月期の配当性向は26.4%です。会社が基準とする30%を下回っており、営業キャッシュ・フローも配当総額を十分に上回っています。利益成長と財務余力の両面から見て、今回の増配は無理のある還元ではありません。

2027年8月期は中間19円、期末19円の年間38円を予定し、配当性向は27.6%となる見込みです。純利益が一過性要因の反動で減る中でも減配を避ける計画であり、安定配当を重視する姿勢が表れています。ただし、欧米出店や物流、ITへの投資を優先するため、30%までの余地が直ちに追加増配へ回るとは限りません。

初月月次と中期目標への助走

今期初月に当たる2026年9月の国内既存店とECの売上高は前年同月比111.6%でした。衣服・雑貨と生活雑貨が二桁伸長し、食品も106.0%となっています。全店とECの合計では115.8%です。

もっとも、既存店とECの客数は101.8%、客単価は109.7%で、売上増の多くを客単価が担いました。前年より土日祝日が1日多く、会社は約2ポイントの押し上げ効果も示しています。好発進ではあるものの、客数の継続的な増加を確認するには数カ月分の月次データが必要です。

良品計画は更新後の中期計画で、2029年8月期に営業収益約1.3兆円、営業利益1,500億円超、営業利益率12%を目指しています。店舗数は1,850店舗を計画しており、2027年8月期の1兆円突破は中期目標への通過点という位置付けです。

円安と在庫拡大が試す利益率の耐久力

最大のリスクは、円安と原材料高が粗利改善を打ち消すことです。会社は生産内製化や値下げ抑制で吸収する方針ですが、価格転嫁が客数の減少につながれば、国内事業の既存店計画を下回る可能性があります。9月の月次が客単価主導だった点にも注意が必要です。

在庫の増加も見逃せません。出店数が増える局面では一定の積み増しが必要ですが、需要予測が外れれば値下げや廃棄によって営業総利益率が低下します。今後は商品在庫の増加率、在庫回転期間、値下げ率をセットで確認する必要があります。

海外では利益率21.0%の東アジア事業が全社利益への影響力を強めました。中国大陸の既存店成長が鈍化した場合、全社業績に与える影響は以前より大きくなります。一方、欧米では旗艦店や事業基盤への先行投資が続くため、売上成長と費用増加の時間差が利益の振れにつながります。

また、2026年8月期の純利益には一過性利益が含まれています。配当や株価評価を考える際は、764億円という最終利益だけでなく、本業の営業利益、営業キャッシュ・フロー、継続的な税負担を基準に収益力を判断することが重要です。

投資家が四半期ごとに確認すべき指標

今回の決算は、出店拡大、粗利改善、海外成長が同時に進んだことで実現した好決算です。今期も経常最高益を見込みますが、前期ほどの利益成長率ではなく、欧米への投資を進めながら11%台の営業利益率を維持する段階に入ります。

投資家が確認すべき項目は、国内既存店の客数、東アジアの既存店売上、営業総利益率、商品在庫、欧米事業の損益です。これらが計画通りなら、年間38円配当の継続性と2029年8月期目標の実現可能性が高まります。

反対に、客単価の上昇だけで売上を支える状態や、在庫増加と粗利率低下が同時に起きた場合は警戒が必要です。過去最高益という結果だけでなく、利益の再現性を四半期ごとに検証することが、良品計画の企業価値を見極める近道です。

参考資料:

前
前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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