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小型原子炉が再浮上、対米投資で読む日本関連株と供給網の本命候補

by 斎藤 裕也
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対米投資で再燃したSMR物色の背景

小型モジュール炉、いわゆるSMRへの関心が株式市場で再び強まっています。きっかけは、日米の5500億ドル規模の戦略的投融資枠を巡り、第3弾案件として次世代原発が有力視されているとの観測です。

SMRは1基当たりの出力を抑え、工場製作したモジュールを現地で組み立てる設計思想が特徴です。大型炉より建設単位を小さくできるため、AIデータセンターや半導体工場のような大口需要地に近い電源として期待されています。

ただし、株価材料としては「夢の技術」だけでは不十分です。投資家が見るべきは、政策資金がどの炉型に向かい、どの企業の部材・設計・建設サービスに発注として落ちるかです。本稿では、日米投資、米国の電力需要、日本企業の供給網をつないで、SMRテーマの持続性を読み解きます。

AI電力需要が押し上げる米国SMR計画

第2弾で示された最大400億ドル計画

日米投融資の第2弾では、米テネシー州とアラバマ州でのSMR建設が柱の一つになりました。米エネルギー省は、GE Vernova HitachiのBWRX-300を両州に展開する日米エネルギー協力について、最大400億ドル規模、3ギガワットのベースロード電源を目指す案件と説明しています。

この数字が市場に与える意味は大きいです。3ギガワットは、300メガワット級のBWRX-300なら単純計算で10基規模に相当します。報道でも、第2弾の時点で10基程度の設置が想定され、第3弾以降で拡大する可能性が指摘されています。テーマ株の物色が広がりやすいのは、単発の実証炉ではなく、複数基の量産案件として受け止められているためです。

第1弾と第2弾の発表済み案件は、合計で約1090億ドルと報じられています。5500億ドル枠全体から見れば、まだ一部にすぎません。第3弾でSMRや大型原子炉が再び採り上げられるなら、炉本体だけでなく、圧力容器、ポンプ、バルブ、制御機器、建設エンジニアリングまで裾野の広い投資テーマになります。

データセンター電源としての政策的な必然性

SMRが注目される背景には、米国の電力需要の構造変化があります。IEAは、米国の電力使用量が今後5年間で420テラワット時超増え、その増加分の約半分をデータセンター拡大が占めると見ています。米DOEも、AIとデータセンター、新たな製造業投資によって、米国が久しぶりの電力需要増加局面に入ったと説明しています。

データセンターは24時間稼働を前提とし、停止リスクを嫌います。太陽光や風力は重要な電源ですが、単独では常時供給を担いにくい場面があります。そこで、天然ガス火力と並び、安定的に出力できる原子力への関心が高まっています。

米DOEは2026年5月、先進軽水炉SMRの早期展開を支えるため、8社に総額9400万ドル超を配分しました。対象はサイト選定、原子炉圧力容器などの供給網、燃料製造能力の拡充などです。これは、米国がSMRを単なる研究開発ではなく、2030年代前半の実装に向けた産業政策として扱い始めたことを示します。

BWRX-300とNuScaleで異なる実装段階

現在のSMRテーマでは、炉型ごとの進捗差も重要です。GE Vernova HitachiのBWRX-300は、カナダ・オンタリオ州ダーリントンで初号機建設が進み、2030年の運転開始を目標にしています。米国ではテネシー川流域開発公社がクリンチリバーサイトで建設許可申請を出しており、日米案件との接続が注目されています。

一方、NuScale Powerは米原子力規制委員会から77メガワット級モジュールの設計承認を得ています。6基構成なら462メガワット、12基構成ならさらに大きな出力を狙える設計です。IHIや日揮ホールディングス、中部電力など日本勢はNuScale陣営との関係を持ち、製造・EPC・投資の各面で将来の事業機会を探っています。

投資テーマとしての違いは、BWRX-300が日米第2弾案件の中心に見えやすい一方、NuScaleは設計承認と国際展開の実績が市場の連想を支えている点です。どちらも「SMR」と一括りにされますが、関連銘柄を選ぶ際には、炉型、事業主体、サプライチェーン上の位置を分けて見る必要があります。

日本企業に広がる炉型別サプライチェーン

日立GEベルノバとIHIに集まる初期需要

日米案件でまず市場が連想しやすいのは、日立製作所系の原子力技術です。BWRX-300はGE Vernova Hitachi Nuclear Energyが展開する炉型であり、日立とGEの沸騰水型炉の知見が土台にあります。GE Vernova Hitachiは、SMRを分散型の安定電源として位置付け、カナダ、米国、欧州で商用化を進めています。

IHIは、NuScaleのSMR事業に参画している日本の代表格です。同社はNuScaleのVOYGR向けに、主要構成機器である格納容器の製造・検査技術や溶接技術の開発を進めています。SMRは量産化が前提となるため、溶接、検査、特殊材料の加工、モジュール製造の効率化が収益機会になりやすい領域です。

また、NuScaleのパートナー一覧には日揮ホールディングスも載っています。日揮はFluorとの関係を通じ、NuScale技術を使う発電所のEPCで役割を持つ可能性があります。炉本体メーカーだけでなく、設計、調達、建設管理を担う企業にも投資家の視線が向かうのは自然です。

三菱重工と国内革新炉に残る実装余地

三菱重工は、国内向けの革新軽水炉や小型軽水炉の開発で存在感があります。2026年8月には、経済産業省の次世代革新炉関連支援事業で、革新軽水炉、小型軽水炉、サプライチェーン高度化に関する提案が採択されました。同社は地震や津波など日本特有の条件に適合する国産小型軽水炉の開発を加速するとしています。

この点は、対米投資テーマとは別の時間軸です。米国案件は先行して資金と需要地が見えやすい一方、日本国内での新設や建て替えは地域理解、規制、バックエンド政策が不可欠です。それでも、国内の政策文書では原子力を脱炭素と安定供給の両面で活用する方針が強まっています。国内実装の芽が残ることは、三菱重工など重電・原子力企業の評価下支えにつながります。

素材・部材では、日本製鋼所のような大型鍛鋼品メーカーも市場の連想対象です。原子炉圧力容器や主要部材には高い品質、清浄度、加工精度が求められます。SMRは小型化されるとはいえ、原子力グレードの材料供給は参入障壁が高く、実績企業に関心が集まりやすい分野です。

中小部材企業まで広がるテーマの裾野

SMR関連株の特徴は、主役が一社に限られないことです。炉型が決まれば、圧力容器、格納容器、燃料、バルブ、配管、制御機器、センサー、耐震部材、非破壊検査、建設機械まで発注範囲が広がります。株式市場で「テーマ」が長持ちする時は、こうした二次、三次の受注候補に資金が循環しやすいです。

ただし、裾野が広いほど選別も必要です。原子力向け売上の比率が小さい企業では、材料が出ても業績への寄与は限定的です。逆に、原子力品質保証の認証、海外規格への対応、長納期部材の生産能力を持つ企業は、受注が一件でも中期業績の見通しを変える場合があります。

投資家目線では、IR資料で「原子力」「SMR」「次世代革新炉」「米国」「BWRX-300」「NuScale」といった語が出るだけでなく、具体的な製品名や顧客名、設備投資、認証取得があるかを確認したいところです。話題性と実需の差は、ここに表れます。

免責と採算性が左右する投資テーマの持続力

SMRテーマには強い追い風がありますが、リスクも明確です。金融専門紙は、第2弾の米国SMR建設を巡り、事故時の賠償責任が不透明なことなどから、メガバンクとJBICの投融資が難航していると報じています。共同通信系の記事でも、採算性や大事故時の免責確保が課題として挙げられました。

原子力案件は、建設費、許認可、工期、燃料供給、廃棄物管理、事故責任のすべてが投資判断に関わります。SMRは小型化とモジュール化でリスク低減を狙いますが、初号機や初期量産ではコストが読みにくいです。量産効果が出る前に資金調達コストが上がれば、計画の経済性は揺らぎます。

また、日米関係や関税交渉に連動する政策案件である以上、政権運営や議会、州政府、規制当局の判断も変数です。短期的には報道一つで関連株が動きやすい一方、最終投資決定、融資契約、許認可、着工、主要機器発注まで進まなければ、業績寄与は見えません。テーマ買いの熱量と、企業収益への反映時期には距離があります。

関連株を追う投資家が確認すべき発注条件

SMR関連株を見る際は、3つの条件を確認することが有効です。第一に、どの炉型が採用されるかです。BWRX-300、NuScale、国内小型軽水炉では、受注企業の顔ぶれが変わります。第二に、投融資の枠組みが融資契約や保証契約まで進むかです。政策合意だけでは売上になりません。

第三に、企業側の開示で製品、顧客、地域、金額のいずれかが具体化するかです。テーマ株は初動の速さが魅力ですが、長く持つには受注確度の見極めが欠かせません。IHI、日立系、三菱重工、日本製鋼所、日揮ホールディングスなどを見る場合も、単なる原子力関連ではなく、SMRの量産サプライチェーンにどの位置で入るかを追うべきです。

AI電力需要、日米投資、原子力供給網という3つの潮流が重なるSMRは、2026年後半も注目テーマであり続ける可能性があります。一方で、最終的に評価されるのは、思惑ではなく契約と利益率です。関連株を追う投資家ほど、ニュースの大きさより発注の近さを冷静に測る姿勢が重要です。

参考資料:

斎藤 裕也

テーマ株・材料分析

テーマ株・材料株の発掘と分析を得意とする。企業の IR 情報と業界動向を結びつけ、投資家目線で銘柄の「次の一手」を読む。

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