CO2回収関連株の本命候補とGX予算で広がるCCS需要最前線
GX予算が押し上げるCO2回収需要
CO2回収関連株への関心が再び強まっています。背景にあるのは、再生可能エネルギーだけでは脱炭素化しにくい鉄鋼、セメント、化学、発電、石油精製などで、排出したCO2を分離・回収し、利用または地下貯留するCCUSの必要性が高まっているためです。
2027年度の環境省概算要求では、エネルギー対策特別会計を活用した温室効果ガス削減施策として5,151億円が示され、うちGX推進対策費は2,750億円です。CCUS社会実装・基盤構築事業にも25.5億円が要求され、技術実証から事業モデル形成へ政策の焦点が移っています。
株式市場で重要なのは、CO2回収が単なる研究テーマから、設備投資、EPC、吸収液、液化・貯蔵、船舶輸送、モニタリングまでを含む産業チェーンに変わりつつある点です。関連銘柄を見る際は、技術名だけでなく、誰が費用を負担し、どの段階で売上に変わるのかを見極める必要があります。
CCS事業化で浮上する装置とEPC銘柄
政策支援が示す市場の時間軸
CCSは、CO2を排出源で回収し、圧縮・液化や輸送を経て地下に貯留する仕組みです。政府とJOGMECは、2030年までに年間600万〜1,200万トンのCO2貯留量を目指す方針を示してきました。2024年度の先進的CCS事業では9案件が候補に選定され、合計で年間約2,000万トンのCO2貯留を目標としています。
この数字が示すのは、CO2回収設備が小型の実証装置から、産業プラント級の案件に広がる可能性です。発電、石油精製、鉄鋼、化学、紙・パルプ、セメントなど、排出源の業種が広いため、単一技術の勝者総取りではなく、排ガス濃度や圧力、熱源、設置余地に応じて複数企業に商機が分散しやすい構図です。
一方で、株価材料としては時間軸の長さも意識されます。JOGMECは2026年度までに事業者による最終投資決定を予定するとしており、設計作業、貯留ポテンシャル評価、試掘、設備発注、建設という段階を踏みます。短期では採択や基本設計が材料になり、中期では実際のEPC受注や機器納入が業績寄与の確認点になります。
回収プロセスで先行する三菱重工と日揮
装置・プロセス側で筆頭候補となるのが三菱重工業です。同社は関西電力と1990年からCO2回収技術を共同開発し、アミン吸収液KS-1とKM CDR Processを展開してきました。公式資料では、対象ガス中のCO2を90%以上回収し、純度99.9vol%以上にできると説明されています。
三菱重工の強みは、発電や化学プラントだけでなく、製鉄、セメント、ごみ焼却、LNG液化、バイオマス発電など多様な排ガス源に対応できる点です。新型吸収液KS-21を使うAdvanced KM CDR Processも商用化済みで、英国Drax向けでは年間800万トン以上のCO2排出量削減を目指す案件に関わっています。CO2回収が世界的に設備投資テーマ化するほど、ライセンス、基本設計、機器、保守の広がりが注目されます。
日揮ホールディングスもEPCと分離回収技術の両面で存在感があります。同社は2004年にアルジェリアの天然ガス精製プラント向けCCS設備を完工し、豪州LNGプラント向けや北海道苫小牧の大規模CCS実証にも関わってきました。日本ガイシと共同開発するDDR型ゼオライト膜、BASFと共同開発した高圧再生型CO2回収プロセスHiPACTも材料です。
HiPACTは、天然ガスや合成ガス中のCO2を高圧で回収する技術です。日揮は、従来プロセスと比べてCO2回収・圧縮コストを約25〜35%削減する効果が期待できると説明しています。CCSの採算を左右するのは、まさに回収と圧縮に必要なエネルギー費です。コスト削減技術を持つ企業は、政策補助が縮小した後の自立化局面でも評価されやすくなります。
クラスター化で広がる排出源側の投資網
水島と松浦が映す大型排出源の厚み
2026年6月にJOGMECが公表した船舶輸送案件の排出事業者クラスターは、CO2回収関連株の見方を一段具体的にしました。選定された6クラスターは、川崎、堺泉北、水島、宇部、苅田、松浦です。出荷開始時の液化CO2想定出荷量は、川崎54万トン、堺泉北75万トン、水島343万トン、宇部55万トン、苅田60万トン、松浦200万トンです。
特に水島クラスターは、住友商事を幹事会社に、旭化成、ENEOS、JFEスチール、三菱ガス化学、三菱ケミカルが参画します。化学、石油精製、鉄鋼が集積する地域であり、複数排出源を束ねることで、液化設備や一時貯蔵設備の共用化を狙います。個別工場ごとの小さな投資ではなく、地域インフラとしてCCSを組み立てる動きです。
松浦クラスターでは電源開発と九州電力が参画し、200万トン規模の液化CO2出荷が想定されています。発電分野は排出量が大きいため、CCS導入時の設備規模も大きくなります。ただし、電力会社にとってCCSは収益源というよりコスト要因になりやすく、株式評価では規制対応力、電源ポートフォリオ、費用回収制度の設計を合わせて確認する必要があります。
川崎クラスターには三菱商事、太平洋セメント、レゾナック、JR東日本、住友林業、日本触媒が名を連ねています。セメントや化学の排出源に加え、都市インフラ企業も関わる点が特徴です。CCUSは排出削減だけでなく、CO2由来製品や建材、合成燃料、地域利用のモデルにもつながります。テーマ株としては、単に「CO2を埋める企業」ではなく、「CO2を集めて使う企業」まで裾野を広げる視点が有効です。
利用と貯留をつなぐIHIなどの周辺技術
IHIは、燃焼排ガスなどからCO2を回収する化学吸収法を持ち、独自吸収液でCO2分離に必要なエネルギーを約40%低減したと説明しています。さらに、回収したCO2と水素から合成メタンをつくるメタネーション技術や、SAFなどのカーボンリサイクルにも取り組んでいます。
このような企業は、CCSだけでなくCCU側の事業化にも関わります。環境省のCCUS社会実装・基盤構築事業では、地域でのCCU導入補助、清掃工場や発電所・工場を起点とする地域炭素循環モデル、浮体式洋上圧入CCS、海洋モニタリング技術などが掲げられました。つまり、回収、利用、貯留を別々に見るのではなく、排出源から最終用途までの設計力が問われます。
関連銘柄の整理では、三つの層に分けると分かりやすくなります。第一は、三菱重工、日揮HD、IHIのように回収プロセスやEPCで売上を得る企業です。第二は、INPEX、J-POWER、ENEOS、JFE、太平洋セメント、旭化成など、排出源または貯留・エネルギー事業として参画する企業です。第三は、吸収液、膜、圧縮機、熱交換器、タンク、計測機器、海運などの周辺企業です。
投資妙味が出やすいのは、第一層のように受注が売上へ直結しやすい企業です。第二層は政策対応や将来の競争力向上につながる一方、初期投資や操業費が重くなりやすい面があります。第三層は小型株を含む材料株の発掘余地がありますが、実際に案件へ組み込まれた証拠が乏しい段階では値動きが先行しやすくなります。
収益化までに残るコストと制度の壁
CCS最大の課題は、技術の有無ではなく採算です。JOGMECは2023年度調査で、CO2回収に必要な蒸気や電力などの用役コスト、船舶輸送に必要な貯蔵タンクや船舶の国内建造能力、地下貯留の評価データ取得を共通課題として整理しました。特に船舶輸送案件は、液化、一時貯蔵、輸送の工程が増えるため、パイプライン案件よりコスト低減の難度が高いとされています。
制度面では、2024年に二酸化炭素の貯留事業に関する法律が成立し、探査や貯留事業の許可制度などが整い始めました。ただし、長期責任、モニタリング、漏えい時の対応、費用回収、カーボンプライシングとの接続は、事業採算を左右します。企業が最終投資決定に踏み切るには、補助金だけでなく、操業期間を通じた収入見通しが必要です。
株式市場では、政策テーマ化した直後に関連銘柄が一斉に買われやすい反面、実需確認までに時間が空くと調整も起こります。CO2回収関連株を見る際は、採択済み案件への関与、技術の実証段階、ライセンス収入の有無、EPC受注の規模、海外展開力を分けて確認することが重要です。名前だけのテーマ性と、業績に届く材料は切り分けるべきです。
投資家が確認したい受注化の節目
CO2回収関連株の本格評価は、政府予算、JOGMEC支援、クラスター形成、企業の最終投資決定、EPC契約の順に進みます。足元では、環境省の2027年度概算要求とJOGMECのクラスター選定により、制度と案件の両輪がそろいつつあります。
投資家が次に見るべき指標は、6クラスターの契約進展、9件の先進的CCS事業の継続判断、国内パイプライン案件の試掘結果、そして三菱重工や日揮HDなどの受注開示です。テーマ株としては早く動きますが、長く評価されるのは、CO2回収を利益に変える技術、施工力、運用実績を持つ企業です。
参考資料:
- 令和9年度(2027年度)エネルギー対策特別会計概算要求 全体概要
- 令和9年度環境省予算概算要求事項別表
- 令和9年度(2027年度)概算要求額
- CCUS社会実装・基盤構築事業
- Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業
- 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)
- 先進的CCS支援
- CCS事業化に向けた先進的取り組み
- 先進的CCS事業 船舶輸送案件に係る排出事業者クラスターの選定
- 国内初のCCS事業化の取り組み
- CO2回収技術:CO2回収プロセス
- CCUS(CO2の回収・利用・貯留)
- 浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備向けCO2回収モジュールの初期検討を受注
- カーボンリサイクル技術によるCO2循環利用
- 脱炭素社会への移行を支えるCCS技術
- 高圧再生型CO2回収(HiPACT)プロセス
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