配当3%超と連続増配を両立する株、NISA投資の選別軸を解説
新NISAで高配当増配株を見る理由
配当利回りが3%を超え、なおかつ長く増配を続ける銘柄は、個人投資家の長期保有候補として関心を集めています。金融庁のNISA特設サイトによれば、2024年からのNISAは非課税保有期間が無期限となり、つみたて投資枠と成長投資枠の併用も可能になりました。年間投資枠は最大360万円、生涯の非課税保有限度額は最大1,800万円です。
この制度設計は、配当を受け取りながら時間をかけて資産を育てる投資と相性があります。通常、株式の配当には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で受け取る配当は所定の条件を満たせば非課税です。配当利回りと増配の両方を確認することは、目先の収入だけでなく、将来の受取額が増える可能性を見る作業でもあります。
ただし、高利回りは必ずしも優良さを意味しません。株価が大きく下がれば、配当予想が据え置かれている間だけ利回りは高く見えます。本稿では、配当利回り3%超を入り口に、連続増配株をNISAで選ぶ際の確認点を、公開情報に基づいて整理します。
利回り3%超を支える増配原資の見方
配当利回りは株価で動く指標
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合です。日本取引所グループの用語集でも、市場全体の利回りを測る単純平均利回りについて、平均配当金を単純株価平均で割る考え方が示されています。つまり、利回りは配当額だけでなく、株価の水準にも左右されます。
この点は、連続増配株を選ぶうえで非常に重要です。同じ年間配当100円でも、株価が2,500円なら利回りは4%、株価が4,000円なら2.5%です。企業価値への期待が高まり株価が上がると、増配していても利回りは低下します。反対に、業績不安や一時的な悪材料で株価が下がると、減配前の配当予想を使った利回りは高く見えます。
高配当株投資で避けたいのは、配当利回りだけを見て「割安」と判断することです。利回り3%超はスクリーニングの入口として有効ですが、投資判断の本体ではありません。見るべきなのは、配当を払う企業がその水準を維持し、さらに増やせるだけの利益、キャッシュフロー、財務余力を持つかどうかです。
増配の原資は、最終的には事業から生まれる利益と現金です。会計上の利益が伸びていても、設備投資や運転資金の増加で自由に使える現金が乏しければ、増配の継続力は弱まります。逆に、通信、金融、リース、保険のように継続収益や手数料収益を持つ業種では、景気変動を受けながらも配当方針を維持しやすい企業があります。
配当性向とDOEで見る余力
配当性向は、利益のうちどれだけを配当に回すかを示す指標です。たとえば三菱HCキャピタルは、個人投資家向けページで2026年3月期の純利益1,622億円、2027年3月期予想1,600億円を示し、配当については26期連続増配を継続し、27期連続増配を目指すと説明しています。同ページの配当性向は、2026年3月期40.7%、2027年3月期予想45.8%です。
配当性向が低すぎる企業は還元余地がある一方、配当への姿勢が弱い場合もあります。高すぎる企業は株主還元に積極的ですが、利益が落ち込んだときの耐久力に課題が出ます。連続増配株では、配当性向が上がり続けていないか、増配が利益成長で支えられているかを確認する必要があります。
近年は、DOEを配当方針に掲げる企業も増えています。DOEは株主資本に対する配当額の割合で、利益が一時的に振れた年でも配当を安定させやすい特徴があります。利益変動が大きい業種では、配当性向だけでなくDOEの採用有無も見ると、還元姿勢を把握しやすくなります。
一方で、DOEにも注意点があります。株主資本が積み上がるほど配当負担は増え、成長投資とのバランスが問われます。高配当と連続増配を評価する際は、配当性向、DOE、自己株式取得、設備投資、M&Aの優先順位をセットで読むことが重要です。
通信・リース・保険に広がる増配候補
通信株に見る安定収益と株価水準
通信株は、連続増配株の代表的な業種です。NTTは株主還元ページで、株主還元の充実を重要な経営課題と位置付け、2026年度の年間配当額を1株当たり5.4円とし、16期連続増配となる予定だと説明しています。Yahoo!ファイナンスの2026年7月24日15時30分時点では、同社の会社予想配当利回りは3.57%、1株配当予想は5.40円です。
通信事業は契約者基盤が大きく、利用料収入が継続しやすい点が強みです。景気後退局面でも、通信サービスの需要は急激には減りにくい性格があります。長期投資家が通信株に安定配当を期待するのは、この収益の継続性が背景にあります。
KDDIも長い増配実績を持ちます。同社は2002年度から24期連続の増配を実現し、2026年度は前年度比5.0%増の年間84円を目指すとしています。2025年度の年間配当は80円で、24期連続増配でした。Yahoo!ファイナンスの同時点の会社予想配当利回りは2.87%で、3%をわずかに下回っています。
ここに高配当株投資の難しさがあります。KDDIのように増配実績が長くても、株価が評価されれば利回りは低くなります。利回り3%超という条件だけで機械的に除外すると、増配の質が高い企業を見落とす可能性があります。逆に、利回りだけが高い銘柄を選ぶと、減配リスクを抱えた企業を拾う恐れがあります。
リース・金融株に見る資本政策
リース会社や金融会社にも、連続増配銘柄は多く見られます。三菱HCキャピタルは、2027年3月期の1株配当予想を51円とし、Yahoo!ファイナンスでは2026年7月24日15時30分時点の会社予想配当利回りが3.54%でした。同社はリース、航空、不動産、環境エネルギーなどに事業を広げ、アセットから収益を得る構造を持っています。
リコーリースは、配当の累進性と業界トップクラスの還元水準を意識すると説明しています。会社側の配当方針では、2026年3月期に配当性向40%以上、2030年3月期に50%を目安としています。Yahoo!ファイナンスでは、2027年3月期の1株配当予想が256円、2026年7月24日15時30分時点の会社予想配当利回りが3.83%でした。
リース会社を見る際は、利回りと同時に金利環境を確認する必要があります。調達金利が上がると、リース資産の利ざやや新規契約の採算に影響します。資産残高が伸びていても、信用コストや資金調達コストが増えれば、利益と配当余力は圧迫されます。高い配当利回りが魅力的に見えるときほど、自己資本比率、ROA、ROE、信用リスクの説明を確認すべきです。
保険株に見る利益成長連動の還元
保険株も、近年は株主還元の強化が目立つ分野です。東京海上ホールディングスは、配当を株主還元の基本と位置付け、利益成長に応じて持続的に高める方針を示しています。同社の普通配当は、2017年度の53円から2026年度予想の245円まで増加しています。Yahoo!ファイナンスでは、2026年7月24日15時30分時点の会社予想配当利回りが3.02%でした。
損害保険会社の場合、利益は自然災害、為替、海外保険事業、政策保有株式の売却などに左右されます。配当方針が明確でも、利益の変動要因を把握しないまま高利回りだけを見るのは危険です。東京海上は自己株式取得も含めた資本水準調整を開示しており、2026年度予想では4,000億円を示しています。配当と自社株買いを合わせた総還元の設計を見ることが、保険株分析では欠かせません。
オリックスは、事業活動で得た利益を成長投資に使いながら、業績を反映した安定的かつ継続的な配当を実施すると説明しています。2027年3月期の配当予想は、配当性向39%または1株当たり156.10円の高い方です。利回りの水準は株価次第で変わりますが、配当方針を読むうえでは参考になります。
このように、3%超の連続増配株は特定業種に偏りやすい傾向があります。通信、リース、金融、保険は安定収益や資本政策を背景に増配を続けやすい一方、金利、景気、信用リスク、規制の影響を受けます。個人投資家は、業種をまたいだ分散と、配当方針の継続性を同時に見なければなりません。
高利回り銘柄で見落としやすい減配リスク
配当利回り3%超の銘柄を選ぶとき、最初に疑うべきなのは「なぜ利回りが高いのか」です。事業が堅調で配当が増え、株価がまだ評価されていないなら魅力があります。一方で、業績不安、財務悪化、特殊要因による一時利益、資産売却益への依存で高配当になっている場合、将来の減配リスクは高まります。
連続増配の年数も万能ではありません。SPKは1999年3月期以降に連続増配を続け、2026年3月期に28期連続実質増配を達成したと説明しています。こうした長期実績は評価材料ですが、過去の記録は将来の保証ではありません。ビジネスモデルが変化し、競争環境や原材料価格が悪化すれば、連続記録の維持が難しくなることもあります。
もう一つの注意点は、特別配当や記念配当です。配当が増えていても、それが一時的な上乗せであれば、翌期以降の基準額にはなりません。リコーリースのように大幅増配を計画する企業では、増配の内訳が普通配当なのか、特別配当を含むのかを確認する必要があります。NISAで長期保有するなら、来期だけの利回りではなく、数年後の普通配当の水準を重視すべきです。
投資信託やETFと異なり、個別株は一社固有の減配リスクを直接受けます。資産形成の中核を一つの高配当株に偏らせると、減配と株価下落が同時に来た場合の影響が大きくなります。新NISAの成長投資枠を使う場合でも、投資信託や複数の個別株を組み合わせ、配当収入の源泉を分散する設計が現実的です。
長期保有で確認したい三つの投資手順
連続増配株をNISAで選ぶなら、第一に配当利回りを入口として使い、最終判断にはしないことです。3%超の銘柄を抽出した後、会社の配当方針、配当性向、DOE、自己株式取得、過去10年程度の配当推移を確認します。株価下落による見かけの高利回りか、増配による実力の利回りかを分ける作業が必要です。
第二に、増配原資を確認することです。売上や利益だけでなく、営業キャッシュフロー、借入、金利負担、資本投資の規模を見ます。通信株なら契約者基盤、リース株なら資産の質と調達コスト、保険株なら自然災害や海外事業の損益を確認します。配当は企業の「結果」であり、事業の耐久力が先にあります。
第三に、NISA枠の使い方を分散させることです。金融庁が示す成長投資枠は年間240万円、生涯では1,200万円までです。個別株を使う場合は、銘柄数、業種、購入時期を分け、配当再投資や投資信託との組み合わせも検討できます。配当3%超の連続増配株は魅力的な候補ですが、長期資産形成では「高い利回りを買う」より「増配を続けられる仕組みを買う」視点が重要です。
参考資料:
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