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低PER株の25日線上抜け24社、金利高局面の買い方と落とし穴

by 野村 康平
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金利3%台で再浮上した低PER株物色

9月28日の東京株式市場では、日経平均株価が6営業日ぶりに反落し、終値は前営業日比486円58銭安の6万5877円62銭でした。朝方には6万7034円74銭まで上昇しましたが、終値が安値となり、短期的な利益確定売りの強さが目立つ一日でした。

一方で、相場全体が弱い局面でも、株価が25日移動平均線を上抜いた低PER銘柄が24社浮上した点は見逃せません。日経平均のPERは9月28日時点で加重平均17.23倍、指数ベース21.88倍でした。市場平均より低い利益倍率に置かれた銘柄が、短期トレンドの節目を越えたことは、資金の向きが一部で変わり始めたサインと読めます。

ただし、今回の物色を単純な「割安株買い」と見るのは危険です。日本10年国債利回りは9月28日に終値3.088%、高値3.103%まで上昇しました。日銀は9月18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%へ引き上げており、株式市場ではPERの許容水準そのものが金利に左右されやすくなっています。本稿では、25日線上抜けと低PERを組み合わせたスクリーニングを、金利・為替・債券市場の変化と結びつけて読み解きます。

25日線上抜けが示す短期需給の転換点

25日移動平均線は、日足チャートで使われる代表的な中短期線です。SBI証券の解説でも、日足では5日、10日、20日、25日、90日、200日などが一般的な期間として挙げられています。25営業日はおおむね1カ月分の売買をならした線であり、短期筋と中期投資家の平均取得コストの境目として意識されやすい指標です。

グランビルの法則で見る買いシグナル

大和証券のテクニカル分析講座では、グランビルの法則について、横ばいまたは上向きに変わりつつある移動平均線を株価が下から上に抜く局面を重要な買いポイントと説明しています。今回のような25日線上抜けは、下落基調だった銘柄が底打ちし、短期的に買い戻される初動を示す場合があります。

ただし、25日線を一日だけ上回っただけでは不十分です。移動平均線がまだ明確に下向きであれば、単なる自律反発で終わる可能性があります。確認したいのは、終値で25日線を上回ったか、翌日以降も線の上を維持できるか、そして上抜け時に出来高が増えているかです。薄商いの上抜けは、売り物が少なかっただけのケースもあります。

出来高と終値位置で見る上抜けの質

9月28日の東証プライム市場では、売買代金が8兆2028億円規模に膨らむ一方、値上がり銘柄は468、値下がり銘柄は1039でした。全体としては売り優勢でしたが、その中で25日線を上抜けた銘柄は、相対的に買いの選別を受けたと見ることができます。

ここで重要なのは、指数主導の相場と個別株主導の相場を分けることです。日経平均は、技術セクターのウェートが大きく、アドバンテスト、東京エレクトロン、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループなど一部大型株の影響を強く受けます。指数が半導体株で振らされる一方、低PER銘柄の25日線上抜けは、より地味な内需株、金融株、資本財株に資金が回り始めた兆しとなる場合があります。

短期売買では、上抜け日の安値を割らないこと、25日線が支持線として機能すること、直近戻り高値を更新することが確認点です。中期投資では、月次売上、受注、会社計画の進捗、通期予想の修正余地を重ねて見る必要があります。チャートの形だけで買うのではなく、業績確認の入口として使うのが現実的です。

低PER銘柄を金利感応度で分ける視点

PERは株価収益率であり、株価が1株利益の何倍まで買われているかを示します。JPXの用語集でも、PERは株価収益率を指す指標として整理されています。一般にPERが低いほど利益に対して株価が安いとされますが、金利上昇局面では「なぜ低いのか」を分けて考える必要があります。

金融株と内需株で異なる金利の効き方

10年債利回りが3%台に乗る環境では、銀行や保険などの金融株は相対的に評価されやすくなります。貸出金利、債券利回り、運用収益の改善期待が働くためです。9月28日も、東証33業種では保険、銀行、電気・ガスなどが上昇した一方、医薬品、パルプ・紙、鉱業などは下落しました。

しかし、金融株の低PERは必ずしも安全圏を意味しません。金利上昇は保有債券の評価損、信用コストの上昇、住宅ローン需要の鈍化にもつながります。銀行株を見る場合は、預貸利ざやだけでなく、有価証券ポートフォリオ、外債含み損、与信費用、自己資本比率を確認する必要があります。保険株では、金利上昇による資産運用収益の改善と、株式市場下落時の含み益減少を同時に見るべきです。

内需株の場合は、金利上昇による借入コストの増加が重くなります。外食、小売、サービス、建設、不動産関連では、人件費、賃料、材料費、金融費用の上昇を価格転嫁できるかが焦点です。低PERでも、営業利益率が低く、借入依存度が高い企業は、金利上昇が利益を削りやすくなります。

割安に見える景気敏感株の利益前提

景気敏感株のPERは、業績ピークで低く見えることがあります。たとえば素材、商社、機械、海運、鉄鋼などは、利益が一時的に膨らんだ局面でPERが低下しやすい業種です。その後に市況が反転すると、株価が下がらなくてもEPSが落ち、PERは急上昇します。

今回の低PER・25日線上抜け候補を見る際も、直近の利益が持続可能かを確認することが欠かせません。為替が円安方向なら輸出企業には追い風となりますが、原材料輸入企業にはコスト増となります。原油や中東情勢の変動は、化学、運輸、電力、空運、食品に異なる影響を及ぼします。

日銀の追加利上げ後は、株式の期待収益率と債券利回りの比較がより厳しくなります。10年国債利回りが3%台にあるなら、株式投資家は配当利回り、利益成長率、自己株買い、ROE改善を合わせて評価します。単にPERが市場平均を下回るだけでは、金利上昇に見合うリスクプレミアムを確保できない場合があります。

配当落ち後に崩れやすい割安株の条件

9月28日は9月期末の権利付き最終日であり、翌29日は権利落ち日でした。配当取りや配当再投資を意識した需給が入りやすい時期で、25日線上抜けも一部は権利取り需要に支えられていた可能性があります。したがって、権利落ち後も株価が25日線を維持できるかが、買いシグナルの質を測る試金石となります。

注意したいのは、高配当・低PERに見えても、配当性向が高すぎる銘柄です。利益の大半を配当に回している企業は、減益局面で増配余地が乏しくなります。特別利益や資産売却益で一時的にEPSが膨らんでいる場合も、実力PERは見かけより高い可能性があります。

また、東証は2023年3月から、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社に対し、資本コストや株価を意識した経営への対応を要請しています。2026年4月には、経営資源の適切な配分を中心に要請内容を更新しました。この流れは低PBR株やバリュー株の再評価を支える一方、自社株買いや増配だけの一過性対応では評価が続きにくいことも示しています。

25日線上抜け後に崩れやすいのは、出来高が伴わない銘柄、信用買い残が急増している銘柄、決算発表前に思惑だけで買われた銘柄、会社計画の進捗が鈍い銘柄です。逆に、上抜け後に押し目で出来高が減り、25日線付近で下げ止まる銘柄は、売り圧力が一巡した可能性があります。

投資家が確認すべき三つの売買ルール

今回の24社を実際に検討する場合、第一に見るべきは「25日線を上抜けた理由」です。決算、上方修正、受注、月次、株主還元、政策テーマなど、買いの根拠が企業価値に結びつくかを確認します。理由が不明確な上抜けは、短期資金の回転で終わりやすくなります。

第二に、金利上昇への耐性を確認します。ネットキャッシュ企業、固定金利中心の企業、価格転嫁力のある企業、金融収益が改善する企業は、金利高でも評価されやすい傾向があります。一方、借入負担が重く、利益率が薄く、需要が金利に敏感な企業は、低PERでも慎重に見る必要があります。

第三に、損切りと利食いの基準を先に決めることです。短期なら25日線割れ、上抜け日の安値割れ、出来高急増後の陰線を警戒点にできます。中期なら、四半期決算で営業利益率や受注残が悪化した時点で前提を見直すべきです。

低PER株の25日線上抜けは、割安修正の初動を捉える有効な切り口です。ただし、2026年秋の市場では、金利、為替、配当落ち、半導体株主導の指数変動が複雑に絡みます。買い局面を探す投資家ほど、チャートのシグナルを入口にしながら、利益の持続性と金利耐性を最後まで確認する姿勢が求められます。

参考資料:

野
野村 康平

マクロ経済・為替・債券

為替・債券・コモディティ市場を横断的にウォッチし、マクロ経済の変動が株式市場に与えるインパクトを分析する。

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