VWAPとは?売買高加重平均価格の計算式・数値例、デイトレでの見方と限界
VWAP(ブイワップ)は「Volume Weighted Average Price」の略で、日本語では売買高加重平均価格といいます。その日に取引所で成立した価格を、価格ごとの出来高で重みづけして平均した値で、その日にその銘柄を売買した人の平均的な約定値段の目安になります。デイトレードでは、株価がVWAPより上にあるか下にあるかを当日の需給を見る材料の一つとして使いますが、それだけで売買のタイミングがわかる指標ではありません。
東証の定義:取引の実態に近い平均値段
東京証券取引所(東証)の用語集は、VWAPを「当日の東京証券取引所のオークション市場で成立した価格を価格毎の売買高で加重平均した価格」と説明しています。より取引実態に近い平均的な約定値段として、主に機関投資家の執行価格の目標値に使われているとも書かれています。
この定義から、VWAPには次の3つの性質があります。
- 対象は当日だけ:前日以前の約定は含まず、毎営業日、寄付きから計算し直す
- 出来高で重みづけする:たくさん売買された値段ほど、平均への影響が大きい
- 立会で成立した約定が対象:東証の定義では、オークション市場(立会)で成立した価格を使う
VWAPの計算式
VWAP = Σ(約定価格 × 出来高)÷ Σ 出来高
言い換えると「その時点までの売買代金の合計 ÷ その時点までの出来高の合計」です。新しい約定が起きるたびに分子と分母の両方に足し込まれ、値が更新されていきます。株価の単純平均と違い、1株しか売買されなかった値段と10万株売買された値段が同じ重さで扱われることはありません。
数値例:寄付きからのVWAPを計算する
以下は説明用の架空の銘柄と数値です。実際のVWAPは1件ごとの約定から計算しますが、ここでは時間帯ごとにまとめた約定で計算しています。
| 時刻 | 約定価格 | 出来高 | 価格×出来高 | 累計の売買代金 | 累計の出来高 | その時点のVWAP |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 9:00(寄付き) | 1,000円 | 30,000株 | 3,000万円 | 3,000万円 | 30,000株 | 1,000.00円 |
| 9:10 | 1,010円 | 10,000株 | 1,010万円 | 4,010万円 | 40,000株 | 1,002.50円 |
| 9:25 | 1,020円 | 5,000株 | 510万円 | 4,520万円 | 45,000株 | 1,004.44円 |
| 9:40 | 1,005円 | 15,000株 | 1,507.5万円 | 6,027.5万円 | 60,000株 | 1,004.58円 |
| 10:05 | 990円 | 20,000株 | 1,980万円 | 8,007.5万円 | 80,000株 | 1,000.94円 |
10時5分時点のVWAPは約1,000.94円です。5つの約定価格を単純に平均すると1,005円ですが、VWAPはそれより約4円低くなっています。出来高の多かった寄付き(1,000円・3万株)と10時5分(990円・2万株)の値段に、平均が引き寄せられているためです。
この時点の株価990円はVWAPより約11円低く、寄付きからこの時点までに買った人の平均的な値段を下回っています。つまり、この時点では当日の買い手は平均すると含み損の状態です。
デイトレードでのVWAPの見方
株価がVWAPの上か下か
その時点までの約定だけで見ると、株価がVWAPより上なら当日の平均的な買値を上回っており、下なら下回っています。このため、VWAPより上で推移する銘柄は当日の買いの勢いが強い、下で推移する銘柄は売りの勢いが強いと読む人が多くいます。ただし、上にあることは「その時点までの平均より高い」という事実を示すだけで、その後も上がることを意味しません。
VWAPに近づいたときの値動きを見る
株価がVWAPまで戻ったとき、そこで反発するのか、突き抜けるのかを見る使い方もあります。VWAPは当日の平均的な約定値段にあたるため、「平均の値段まで戻ったら売りたい」「平均より安ければ買いたい」と考える参加者の注文が出やすい、という見方があるためです。これは市場参加者の行動についての経験的な解釈で、毎回同じ動きになるわけではありません。
機関投資家の「執行の目標」としてのVWAP
東証の用語集にあるとおり、VWAPは機関投資家が大きな注文を執行するときの目標値として使われています。東証の立会外取引(ToSTNeT)には、VWAPに手数料相当額を加減した値段で取引する「VWAPギャランティー取引」や、VWAPを目標に立会で執行した結果の加重平均価格で取引する「VWAPターゲット取引」が用意されており、前日・前場・後場・1日全体(終日)といった区切りごとのVWAPが基準として使われます。
大口の注文を1日かけて少しずつ執行し、平均の約定値段をVWAPに近づけようとする売買が市場にあることになります。デイトレーダーにとっては、VWAPを意識した注文が出ている可能性を頭に置いて値動きを見る、というのがVWAPを確認する意味の一つです。
ToSTNeTでVWAPを使う取引の時間帯を見ると、VWAPがいつ確定するかもわかります。前場VWAPを使う取引は前場が終わった後の11時30分〜12時30分、後場VWAPと終日VWAPを使う取引は大引け後の15時30分〜18時に行われ、前日VWAPを使う取引は翌朝の8時20分〜9時です。なお、こうした立会外取引で成立した大口の売買は、東証の定義でいう「オークション市場で成立した価格」には当たらないため、定義に沿えばその日のVWAPの計算には含まれません。
寄付きと大引けの出来高がVWAPに与える影響
VWAPは出来高で重みづけするため、注文が集中する時間帯の値段が強く反映されます。東証では、前場・後場の寄付きや前引け・大引けなど、立会の開始時と終了時に、それまでに集まった注文をまとめて突き合わせる「板寄せ方式」で約定値段が決まります。上の数値例で寄付きの3万株がVWAPの出発点を決めたように、寄付きにまとまった出来高が出ると、その値段がしばらくVWAPを左右します。東証の用語集も、大引けには多くの注文が集まり、そこで形成された株価がその日の終値になると説明しています。
このため、デイトレードで見ている取引時間中のVWAPと、大引けの約定まで含めた終日のVWAPとでは、値が変わることがあります。大引けにまとまった出来高が出た日は、終日のVWAPが大引けの値段に引き寄せられます。大引けの板寄せは15時30分に行われていますが、東証は2027年10月12日から、15時29分30秒〜15時30分の間のランダムな時刻に行う方式に変える予定です。
VWAPと移動平均線の違い
| 項目 | VWAP | 移動平均線 |
|---|---|---|
| 計算に使う値 | 約定価格と出来高 | 一定期間の価格(一般的には終値) |
| 出来高の扱い | 出来高で重みづけする | 単純移動平均では考慮しない |
| 計算する期間 | 当日の寄付きから(毎日リセット) | 指定した本数・日数(日をまたいで計算) |
| わかること | 当日の平均的な約定値段 | 一定期間の価格の流れ |
分足チャートに移動平均線とVWAPを並べて表示する人も多いですが、両者は計算の前提が違います。同じ「平均」として扱わず、何を平均した線なのかを区別して読むことが欠かせません。
VWAPが判断材料になりにくい場面
- 寄付き直後は不安定:約定の件数が少ないうちは、1件ごとの約定で値が大きく動く
- 時間がたつほど動きにくくなる:累計が大きくなるほど、新しい約定の影響は小さくなる。上の数値例の銘柄で、その後13時に985円で1万株、14時30分に1,000円で5,000株の約定が加わっても、VWAPは約999.21円までしか動かない
- 出来高の少ない銘柄では意味が薄い:少ない約定で大きく変わるため、「平均的なコスト」とは言いにくくなる
- ストップ高・ストップ安の日は参考になりにくい:値段が制限値幅の上限・下限に張り付き、需給が一方向に偏ることがあるため(ストップ配分などで約定する場合もある)、株価とVWAPの位置関係だけで需給を読む使い方が成り立ちにくい(値幅制限のガイド)
- 前日以前の値動きは反映しない:毎日リセットされるため、数日単位の流れを見るには別の指標が必要になる
- ツールによって値がずれることがある:どの約定を計算に含めるか、足のデータから近似しているかなど、計算方法は証券会社やチャートツールで異なる場合がある
- 将来を予測するものではない:過去の約定から計算した結果で、この先の株価の方向を示すものではない
VWAPは「その日の平均的な約定値段」を知るための道具で、売買のサインではありません。この記事は指標の仕組みを説明するもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではなく、実際の売買はご自身の判断で行ってください。デイトレードの意味や損益の仕組みはデイトレードとは、取引の手順と1日の流れはデイトレードのやり方・始め方にまとめています。
よくある質問
Q. VWAPはいつリセットされますか?
A. 東証の定義では当日の約定が対象なので、VWAPは毎営業日、寄付きから計算し直されます。前日以前の約定は含みません。
Q. 株価がVWAPより上なら買いのサインですか?
A. サインとは言えません。VWAPより上という状態は、その日に買った人の平均的な値段より現在の株価が高いことを示すだけです。その後に下がることもあるため、板や出来高、ニュースなども合わせて判断する必要があります。
Q. VWAPと移動平均線の違いは何ですか?
A. 移動平均線は一定期間の価格(一般的には終値)の平均で、日をまたいで計算します。VWAPは当日の約定価格を出来高で重みづけした平均で、毎日リセットされます。何を平均しているかが違うため、目的に応じて使い分けます。
Q. VWAP取引とは何ですか?
A. 東証の立会外取引(ToSTNeT)で、VWAPを基準にした値段で売買する取引です。VWAPに手数料相当額を加減した値段で取引する「VWAPギャランティー取引」や、VWAPを目標に立会で執行した結果の加重平均価格で取引する「VWAPターゲット取引」などがあり、主に機関投資家の大口注文の執行に使われます。
出典・参考資料
- 売買高加重平均価格(VWAP)|用語集(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 取引の概要|ToSTNeT取引(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 売買成立の方法|内国株の売買制度(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 大引け|用語集(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 制限値幅|内国株の売買制度(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 現物市場の機能強化に向けた取組み(取引時間の延伸等)(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 現物市場の更なる機能強化に向けた売買制度の見直しに係る業務規程等の一部改正について(東京証券取引所、2026年8月6日)(www.jpx.co.jp)
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