半導体製造装置株に再評価、AI投資拡大とナスダック最高値更新
ナスダック最高値で戻る装置株物色
半導体製造装置が再び市場テーマとして注目されています。きっかけは、2026年9月21日に米ナスダック総合指数が最高値を更新し、AI関連株と半導体株が相場をけん引したことです。AP通信は同日のナスダック上昇率を2.3%、ロイターはフィラデルフィア半導体株指数の上昇率を4.3%と伝えています。
この動きは、単なる米ハイテク株高にとどまりません。AIサーバー、HBM、先端ロジック、先端パッケージングの投資が続くほど、製造装置メーカーの受注機会も広がります。テーマランキングで「半導体製造装置」が上位に浮上した背景には、株価が半導体そのものだけでなく、半導体を作る装置の供給制約と収益力を見直し始めた流れがあります。
AI投資が押し上げる装置需要の実像
装置市場予測の上方修正
半導体製造装置株を考えるうえで、まず見るべきは装置市場の予測です。SEMIは2026年7月、世界の半導体製造装置の新品販売額が2026年に1,659億ドルへ達し、前年比23.2%増になるとの見通しを示しました。さらに2028年には2,295億ドルへ伸びる見込みです。
内訳を見ると、最も大きいのはウェーハファブ装置です。SEMIは、ウェーハファブ装置が2026年に1,439億ドルへ拡大すると予測しています。これは半導体の前工程を担う装置群で、成膜、エッチング、洗浄、露光、検査、測定など幅広い工程を含みます。AI半導体の高度化は、単にチップの数量を増やすだけでなく、工程数、検査項目、歩留まり管理の難度を押し上げます。
300ミリウェーハ向け投資も重要です。SEMIは2026年の300ミリファブ装置投資を1,330億ドル、2027年を1,510億ドルと予測しています。大型ファブは建設から量産まで時間がかかるため、装置投資は景気敏感でありながら、数年単位の設備計画に支えられる面があります。株式市場が先回りして評価しやすいのは、この受注から売上計上までの時間差があるためです。
HBMと後工程への需要波及
今回の装置相場で見逃せないのは、需要が前工程だけに閉じていない点です。AIサーバーではGPUやカスタムASICだけでなく、HBM、DRAM、NAND、電源、ネットワーク、光通信部品まで多くの半導体が必要になります。SIAとDeloitteの調査では、AIサーバーラックのコンテンツ価値の95%超を半導体が占めるとされました。
この構造変化は、テスト装置やパッケージング装置の評価にもつながります。SEMIは2026年の半導体テスト装置市場を153億ドル、前年比31.0%増と見込んでいます。AI半導体は高価で複雑なため、出荷前の検査工程を削りにくく、むしろテスト時間やテスト内容が増えやすい特徴があります。
高帯域メモリであるHBMも、製造装置需要を押し上げる主役です。HBMは複数のDRAMダイを積層し、ロジックチップと近接して接続するため、前工程、後工程、検査、実装のすべてで高い精度が求められます。装置メーカーにとっては、単価の高い先端装置だけでなく、消耗品、保守、改造、サービス収入が伸びる余地もあります。
Gartnerは2026年の世界半導体売上高が1.3兆ドルを超えると予測し、AI半導体が総売上高のおよそ30%を占めるとしています。WSTSも2026年の半導体市場について、AIインフラ、HBM、アクセラレーテッドコンピューティングを成長要因に挙げています。製造装置株の再評価は、この半導体市場全体の拡大が設備投資へ転換する局面を映しています。
国内関連株を分ける受注と製品力
東京エレクトロンの工程支配力
国内の半導体製造装置株では、東京エレクトロンが中心銘柄の一つです。同社は成膜、エッチング、洗浄、コーターデベロッパ、ボンディング、プローバなど複数工程に関わります。先端ロジックとメモリの双方で工程が複雑化するほど、同社の製品ポートフォリオは評価されやすくなります。
東京エレクトロンの2026年7月30日の決算説明では、AIデータセンター向け需要がWFE市場を押し上げているとの見方が示されています。同説明では、2026年のWFE市場を1,500億ドル以上、2027年を1,900億ドル以上とする見通しにも言及されています。さらに、DRAM、NAND、ロジック、先端パッケージングの複数領域で投資拡大が進む構図が確認できます。
装置株を見る際には、売上高だけでなく製品ミックスが重要です。先端工程向け装置は技術難度が高く、採用が決まると次世代プロセスでも継続受注につながりやすい傾向があります。東京エレクトロンの場合、エッチングやコーターデベロッパ、先端パッケージング関連の伸びが、利益率改善の焦点になります。
ただし、装置産業は受注の山谷が大きい業界です。顧客の投資計画が前倒しされる局面では業績予想が上振れしやすい一方、輸出規制、顧客の投資延期、部材不足、為替変動で出荷時期がずれることもあります。好材料を読む際には、受注残、出荷、検収、サービス収入のどこが伸びているのかを分けて確認する必要があります。
テスト・洗浄・加工装置の利益感応度
アドバンテストは、AI半導体の複雑化で再評価されやすい代表例です。同社は2026年の年頭メッセージで、AI関連投資の減速懸念に触れつつも、先端AI半導体、カスタムASIC、高性能メモリ向け投資の継続を見込む姿勢を示しました。半導体テストは単なるコストではなく、歩留まりと品質を高める付加価値工程になっているとの見方も示されています。
SCREENホールディングスも、洗浄装置などで注目されます。同社資料では、2026年について先端ノードのファウンドリとメモリを中心に、AI関連需要が成長をけん引するとの見方が示されています。洗浄工程は微細化が進むほど重要性が増し、不良の低減と歩留まり改善に直結します。
ディスコは、切断、研削、研磨など精密加工装置と消耗品が強みです。同社の2025年度第4四半期資料では、生成AI関連需要の拡大が装置需要を支え、年間出荷額が過去最高になったと説明されています。1〜3月期の売上高は1,331億円、営業利益は588億円とされ、精密加工装置と消耗品の双方が高稼働の恩恵を受けたことが確認できます。
レーザーテックのような検査装置関連も、先端半導体投資の波及先です。EUVマスク検査や欠陥検査は、微細化と歩留まり改善のために欠かせません。AI向け先端チップでは設計も製造も複雑になるため、検査・測定・テストの価値は高まりやすいです。
国内関連株の選別では、単に「半導体関連」という括りでは足りません。前工程、後工程、テスト、検査、部材、消耗品のどこに収益機会があるかを見極める必要があります。特にAI向け需要は高性能品に偏るため、汎用品中心の企業より、先端工程に入り込んだ企業の方が利益感応度は高くなりやすいです。
中国投資鈍化と金利上昇の警戒線
半導体製造装置株のリスクは、好調な需要があるからこそ見えにくくなります。SEMIは装置投資の地域別見通しで、中国、台湾、韓国が上位市場であり続けるとしつつ、中国については近年の高水準投資の反動で2026年の成長が緩やかになるとしています。中国向け比率が高い企業では、輸出規制と投資鈍化の影響を慎重に見る必要があります。
金利も無視できません。AIデータセンター投資は巨額の資金調達を伴うため、長期金利が上がると投資採算への目線が厳しくなります。9月21日の米株高では米長期金利と原油価格の低下が支えになりましたが、これは逆に、金利やエネルギー価格が再上昇すれば半導体株の重しになることを示しています。
AI需要そのものの持続性も論点です。Deloitteは、半導体業界がAI需要に大きく依存する構造にはリスクがあると指摘しています。データセンターの投資回収が遅れる、電力確保が難航する、AIモデルの効率改善で必要な計算資源が変わる、といった要因が重なると、2027年以降の設備投資にブレーキがかかる可能性があります。
したがって、装置株の上昇局面では、PERや株価上昇率だけで割高・割安を判断しないことが重要です。受注の質、顧客の投資期間、サービス収入の厚み、粗利益率の改善余地を合わせて見ることで、テーマ株の一時的な人気と中期的な業績成長を切り分けられます。
装置株投資で確認すべき三つの軸
半導体製造装置株の再評価は、ナスダック最高値という市場心理の追い風だけでなく、AIインフラ投資が実際の装置需要へ波及している点に根拠があります。SEMI、Gartner、WSTS、主要企業の発表を照らすと、先端ロジック、HBM、テスト、パッケージングが同時に伸びる構図が見えます。
投資家が確認すべき軸は三つです。第一に、SEMIの装置市場予測と主要顧客の設備投資計画です。第二に、国内各社の受注、出荷、検収、利益率の変化です。第三に、中国投資、輸出規制、金利、電力制約というリスク要因です。テーマ人気に乗るだけでなく、どの工程に利益が残るのかを見極める姿勢が、装置株投資では特に重要です。
参考資料:
- Wall Street rallies within 0.4% of its record after oil prices and bond yields ease
- Nasdaq notches record-high close, AI optimism reignites and Treasury yields retreat
- Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028, SEMI Reports
- SEMI Projects Double-Digit Growth in Global 300mm Fab Equipment Spending for 2026 and 2027
- Global Semiconductor Market Surges Beyond $1.5T 2026
- Gartner Forecasts Worldwide Semiconductor Revenue to Exceed $1.3 Trillion in 2026
- New Report Finds Semiconductors Account for 95% of an AI Data Server Rack’s Value
- NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2027
- Taiwan’s TSMC pledges another $100 billion to expand its US chipmaking capacity
- Tokyo Electron Limited Earnings Call Transcript & Summary
- Group CEO Lefever 2026 New Year’s Address
- SCREEN Holdings Consolidated business results and forecasts FY2026/03 second quarter
- DISCO FY2025 Fourth Quarter Financial Results
- Applied Materials Announces Second Quarter 2026 Results
- ASML Q2 2026 financial results
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