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東証プライム騰落レシオで読む日経平均6万8千円台回復の相場温度

by 杉山 直樹
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騰落レシオ112台が示す買い優勢の持続力

東証プライム市場の25日騰落レシオは、相場全体の「値上がり銘柄数」と「値下がり銘柄数」の累積比率から、買いの広がりを測る代表的なテクニカル指標です。今回の対象データでは112.11と、100を上回る買い優勢を示しながらも、一般に買われ過ぎの目安とされる120台には届いていません。

日経平均株価は7月10日に6万8557円73銭で終え、前日比813円88銭高、上昇率は1.20%でした。指数が大きく上げる一方で、騰落レシオは過熱圏の手前に残っています。この組み合わせは、上昇の勢いが強いものの、プライム全体で極端な総買い状態には至っていない局面を示します。

投資家にとって重要なのは、指数の上昇幅だけで相場の強弱を判断しないことです。値がさ株やAI関連の寄与で日経平均が押し上げられている場合、騰落レシオは物色の広がりを補助的に確認できます。112台は「強いが熱すぎない」温度帯であり、短期の利益確定と押し目買いが交錯しやすい水準です。

日経平均6万8557円回復を支えた需給構造

大型値がさ株主導とプライム全体の違い

日経平均は東証プライム市場の225銘柄で構成される価格加重型の指数です。日経公式データでは、7月10日の終値は6万8557円73銭、日中高値は6万9374円86銭でした。価格加重型であるため、株価水準の高い銘柄や指数寄与度の大きい銘柄が動くと、指数全体の印象は実際の銘柄分布以上に強く見えます。

一方、騰落レシオは銘柄数ベースの指標です。25日騰落レシオは、25日間の値上がり銘柄数の合計を値下がり銘柄数の合計で割り、100を掛けて算出します。大型株が指数を押し上げる局面でも、中小型株や内需株が伸び悩めば、レシオの上昇は限定されます。

このため、日経平均が急伸しても騰落レシオが120を明確に超えない場合、上昇相場の中にまだ選別色が残っていると読めます。全面高ではなく、業績期待、政策期待、為替感応度、AI関連需要など、買われる理由が銘柄群ごとに分かれている状態です。

GPIF国内回帰観測が作る心理的下支え

7月10日の日本株には、国内資金回帰への思惑も重なりました。WSJは、片山さつき財務相がGPIFを含む年金基金に日本の金融資産への投資を促す施策を検討していると伝えました。同記事では、GPIFの運用資産規模を約1.8兆ドルとし、この発言を受けて円や日本国債が買われたことも報じています。

この材料は、株式需給にも二つの経路で効きます。第一に、年金資金の国内回帰が意識されることで、海外投資家が日本株の下値に対する安心感を持ちやすくなります。第二に、円安の行き過ぎを抑える政策シグナルと受け止められれば、輸入インフレや金利上昇への警戒がやや和らぎます。

もっとも、年金資金の基本ポートフォリオがすぐに変わるとは限りません。発言による心理改善と、実際の資金フローには時間差があります。騰落レシオが112台にとどまることは、市場が政策期待を買いながらも、まだ全セクターを一斉に買い上げているわけではないことを示します。

AI関連株と為替材料の同時進行

日経平均の上昇には、米国テクノロジー株高やAI関連需要への期待も影響しています。日経平均は5秒ごとに算出される代表的な日本株指数で、構成銘柄は流動性とセクターバランスを基準に選定されます。AI関連株や半導体株が上げると、海外投資家の先物買いを通じて指数全体が加速しやすい構造です。

ただし、AI関連の上昇が強いほど、騰落レシオとの温度差は重要になります。指数主導の上昇に遅れて、機械、電機、商社、金融、内需サービスへ買いが広がるなら、レシオは120に向けて上昇しやすくなります。逆に、指数だけが先行してレシオが伸びない場合は、日経平均の高値更新に対する持続力が低下します。

為替も同じです。円安は輸出株や海外売上比率の高い企業に追い風となりやすい半面、輸入コストと金利上昇を通じて内需株には逆風になります。円安メリット株だけが買われる局面では、騰落レシオの改善は限定的です。112台という水準は、まさに指数の強さと市場全体の広がりを分けて見る必要があることを教えています。

120%未満でも油断できない騰落レシオの読み方

25日平均が映す遅行性と逆張りの弱点

騰落レシオは便利な指標ですが、万能ではありません。25日平均は約1カ月分の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数を累計するため、直近数日の急変をすぐには完全に反映しません。相場が急騰した直後は、指数が先に高値を取り、レシオが遅れて追いかけることがあります。

一般に120以上は買われ過ぎ、80以下は売られ過ぎの目安として使われます。ただし、強い上昇相場では120を超えてからもしばらく株価が伸びることがあります。反対に、100を少し上回るだけでも、指数が短期間に急騰していれば、短期の利食い圧力はすでに高まっている場合があります。

今回の112台は、単純な逆張り売りを誘う水準ではありません。しかし、6万8000円台という高い指数水準、急伸後の達成感、オプションSQ通過後の需給変化を考えると、短期売買では値幅よりも銘柄分布を見る必要があります。レシオが上がり続けるなら押し目買い優勢、横ばいなら指数先行への警戒が必要です。

TOPIX型の広がりで見る持続性

TOPIXは浮動株時価総額加重型の指数で、日本株市場を広範に網羅するベンチマークです。JPXはTOPIXについて、1968年1月4日の時価総額を100として指数化し、ETFなどの金融商品のベンチマークとして利用される指標だと説明しています。

日経平均とTOPIXを並べると、今回の相場の性格がより明確になります。日経平均だけが強く、TOPIXやプライム全体の値上がり銘柄数がついてこない場合、値がさ株偏重の上昇です。TOPIXも同時に強く、騰落レシオが上向く場合は、機関投資家の現物買いが広がっている可能性が高まります。

JPXの上場銘柄一覧ページは、東証上場銘柄の月末データを掲載し、TOPIX構成銘柄についても上場市場や指数算出要領に基づく条件を示しています。こうした制度面を踏まえると、騰落レシオは単なる短期指標ではなく、プライム市場の幅広い銘柄参加を測る補助線として使えます。

出来高と新高値銘柄が補う過熱判定

騰落レシオの解釈では、出来高と新高値銘柄数も合わせて見る必要があります。値上がり銘柄数が多くても、売買代金が一部の大型株に集中していれば、相場の土台は細くなります。反対に、出来高を伴って業種横断的に新高値が増えるなら、112台から120台への上昇は自然な流れです。

特に高値圏では、前日の上昇銘柄が翌日に続伸できるかが重要です。強い相場では、押し目が浅く、下げた銘柄にもすぐ買いが入ります。弱い相場では、指数が高くても、個別株の上値が重くなり、騰落レシオは100近辺へ戻りやすくなります。

今回の局面では、112台という数字を「まだ過熱していない」とだけ読むのは危険です。むしろ、120に届かない理由を探ることが大切です。主力株だけが買われているのか、内需株や中小型株にも資金が回っているのか。その差が、次の一段高と短期調整の分岐点になります。

円安と金利上昇が崩す日本株の需給均衡

日本株の地合いを読むうえで、円相場と日本国債利回りは無視できません。APは6月16日、日銀が政策金利を0.75%から1%へ引き上げ、約30年ぶりの高水準にしたと報じました。背景には円安と物価上昇、中東情勢によるエネルギー価格上昇への警戒があります。

金利上昇は銀行株などには追い風となる一方、成長株や不動産株のバリュエーションには重しです。AI関連株が牽引する指数上昇と、国内金利上昇による割引率上昇は、相場の中で同時に進みます。このねじれが強まると、騰落レシオは指数ほど伸びにくくなります。

為替面では、MarketWatchが7月9日にドル円を162円40銭近辺と伝え、日本の投資家による外国株買いが円安圧力の一因だと指摘しました。Business Insiderも、円キャリートレードの巻き戻しリスクが米国市場に波及する可能性を取り上げています。

円安が続けば輸出株には追い風ですが、介入警戒や日銀の追加利上げ観測が強まれば、先物主導の日本株買いは急に巻き戻る可能性があります。騰落レシオ112台は、その点で過熱警戒よりも「外部ショック耐性」を確認する水準です。120未満だから安全ではなく、為替反転時に値下がり銘柄数がどれだけ増えるかを見極める必要があります。

週明け相場で確認すべき三つの温度差

週明け以降の日本株では、第一に日経平均と騰落レシオの温度差を確認したいところです。日経平均が6万9000円台に接近しても、騰落レシオが112台から伸びないなら、指数主導の上昇に偏りが残ります。反対に、レシオが120に近づくなら、買いの裾野が広がったと判断できます。

第二に、円相場と日本国債利回りの組み合わせです。円安と株高が同時に続く間は輸出株が支えますが、円高と金利上昇が同時に起きると、先物買いは不安定になります。第三に、AI関連株から内需、金融、素材へ物色が回るかです。

騰落レシオは相場の結論ではなく、温度計です。112台という中立上方の水準では、強気を維持しつつも、全面高を前提にしない姿勢が現実的です。個人投資家は、指数の節目だけでなく、値上がり銘柄数、出来高、為替、金利を並べて確認することで、高値圏でも過度な追随買いを避けやすくなります。

参考資料:

杉
杉山 直樹

市況・テクニカル分析

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