コールセンターAI関連株、人手不足が生む生成AI需要拡大の新潮流
人手不足が押し上げるコールセンターAI需要
コールセンターAIが投資テーマとして再浮上しています。背景にあるのは、生成AIの性能向上だけではありません。人材確保の難しさ、電話・チャット・SNSに広がる顧客接点、応対履歴を経営データに変えたい企業側の要請が重なっています。
国内では、コールセンターサービスそのものは成熟市場です。一方で、AIサービスやコンタクトセンター向けソリューションは伸びています。労働集約型の外注費を増やすのではなく、応対の自動化、後処理の短縮、ナレッジ整備に予算が向かう構図です。
関連株を見る際は、「AI」という言葉の強さだけで判断しないことが重要です。収益化しやすい領域は、音声認識、FAQ、CRM、BPO運用、AIエージェント基盤に分かれます。どの企業が顧客接点のどこを握っているかを見極める必要があります。
生成AIが変える問い合わせ対応の収益構造
定型応答からAIエージェントへの進化
従来のコールセンター自動化は、IVRやシナリオ型チャットボットが中心でした。決められた分岐に沿って案内し、解決できない問い合わせは人に引き継ぐ仕組みです。これでも呼量削減には効果がありましたが、複雑な用件や例外処理には弱さがありました。
生成AIの登場で変わったのは、顧客の発話意図を読み取り、FAQや社内文書を参照し、回答案や次の操作を提示できる点です。Amazon ConnectやGoogle CloudのCCAI Platformは、音声・チャット・メールなどを横断し、ルーティング、要約、エージェント支援、顧客インサイトまでを統合する方向へ進んでいます。
この流れは、単なる人員削減ではありません。問い合わせ対応を「コストセンター」から「顧客データの入口」に変える動きです。応対ログから解約兆候、不満の多い商品仕様、追加提案の機会を抽出できれば、サポート部門は営業・商品開発にも影響する部門になります。
市場データもこの変化を裏付けています。Grand View Researchは、世界のコールセンターAI市場を2024年に19億ドル、2026年に29億ドル、2030年に71億ドルと推計し、2025年から2030年の年平均成長率を23.8%としています。北米が先行する一方、アジア太平洋もデジタル変革を背景に高成長が見込まれています。
ACW削減とVOC活用の投資効果
企業が導入を急ぐ理由は、現場の負荷が明確だからです。Salesforceの調査では、AIを利用するサービス組織の専門職の93%が「時間を節約できている」と回答しています。また、サービス担当者が実際に顧客対応に使う時間は39%にとどまり、記録作成や社内確認に多くの時間が割かれています。
このため、投資対効果が見えやすいのはACW、つまり通話後処理の短縮です。音声認識で会話を文字起こしし、生成AIで要約し、CRMへ自動連携するだけでも、現場の負荷は下がります。熟練者に依存していた応対記録の品質も平準化できます。
国内市場では、矢野経済研究所がコールセンターサービス事業者提供のAIサービス市場を、2023年度に60億円、2024年度に90億円と推計しています。前年度比150.0%という伸びは、まだ市場規模が小さいからこその高成長でもありますが、AI導入が実証段階から実運用へ進み始めたことを示します。
同研究所は、2024年度の国内コールセンターサービス市場を1兆517億円、コンタクトセンターソリューション市場を4,190億円としています。前者は大型スポット案件の反動で縮小しましたが、後者は効率化ニーズを背景に拡大しました。投資家が注目すべきは、オペレーター数の増減よりも、運営効率を高めるソフトウェア投資の伸びです。
関連株を見極める事業ポジション別の銘柄群
AI SaaSと音声認識で先行する専門企業
AI SaaSでまず名前が挙がるのはPKSHA Technology(3993)です。同社は「PKSHA ChatAgent」「PKSHA VoiceAgent」「PKSHA FAQ」などを展開し、2026年2月には富士キメラ総研調査に基づき、2024年度実績でチャットボット、ボイスボット、FAQナレッジ管理の3部門シェア1位を発表しました。開示値では、チャットボット19.5%、ボイスボット24.7%、FAQナレッジ管理37.0%です。
PKSHAの強みは、顧客対応の入口からナレッジ管理までを押さえる点にあります。ボイスボット単体では価格競争に巻き込まれやすい一方、FAQ、応対ログ分析、有人支援まで組み合わせると、顧客企業の業務基盤に入り込みやすくなります。決算で確認したいのは、AI SaaSの継続率、単価上昇、大企業向け導入の進捗です。
音声認識ではアドバンスト・メディア(3773)が有力です。同社の「AmiVoice Communication Suite」は、2025年4月時点で導入実績550社、8万ライセンスを突破したと発表しています。全通話のリアルタイム文字起こし、応対品質評価、感情解析、要約生成を自動化する製品で、生成AIの入力データを整える役割を担います。
音声認識は、生成AI時代にむしろ価値が増しています。入力テキストが誤っていれば、後段の要約や回答支援の精度も落ちます。金融、自治体、医療、インフラのように誤案内が許されにくい領域では、日本語音声認識の精度、専門用語への対応、ローカル環境での運用が差別化要因になります。
小型株ではHmcomm(265A)も注目領域に入ります。同社はAI音声認識プラットフォーム「Voice Contact」を展開し、2026年5月には大手コンタクトセンター事業者向けOEM提供でライセンス増席を発表しました。2026年8月には「Voice AI Agent Platform」戦略も掲げ、音声認識製品からAIプラットフォーム企業への転換を打ち出しています。
モビルス(4370)は、チャット、ボイスボット、有人対応の接続に強みがあります。2026年8月には、有人チャット「MOBI AGENT」が富士キメラ総研のチャット管理部門で2025年度市場シェア1位を獲得したと発表しました。生成AIが一次対応を広げるほど、AIから人へ滑らかに引き継ぐ設計の重要性は増します。
BPOとCRM基盤を握る運営支援企業
BPO側ではベルシステム24ホールディングス(6183)が代表的です。同社は生成AI Co-Creation Lab.を通じ、コンタクトセンター自動化ソリューション「Hybrid Operation Loop」を進めています。2025年時点で音声基盤「BellCloud+」シリーズに約8,000席の導入実績があると説明しており、現場データを持つBPO企業ならではの優位性があります。
BPO企業にとってAIは二面性を持ちます。自動化が進めば、従来の席数連動型収入には逆風です。一方で、ナレッジ整備、AI運用、品質管理、有人対応とのハイブリッド運営を請け負えれば、単価の高いソリューション型収益へ移行できます。投資家は、人員規模よりも、AI関連サービスの売上比率と利益率を追うべきです。
トランスコスモス(9715)も同じ文脈です。同社はモビルスと合弁でvottiaを設立し、コンタクトセンター向けAIエージェントプラットフォームを提供する方針を示しました。BPO運用の知見とSaaS開発力を合わせる狙いで、AI導入後の業務設計まで担えるかが焦点です。
CRM基盤ではテクマトリックス(3762)の「FastHelp」があります。電話、メール、Webなどの顧客情報や応対履歴を一元管理するコンタクトセンターCRMで、同社サイトでは生成AI、音声認識、FAQ連携に関する機能強化やウェビナーが継続的に示されています。CRMはAIの出力先であり、顧客対応データの蓄積場所でもあります。
大手SIではNTTデータグループ(9613)とNEC(6701)が候補です。NTTデータは2025年11月、AIエージェントを活用した「LITRON Customer Engagement」を発表し、現行業務の生産性を最大3.5倍に高めると説明しました。NECは「NEC Communication Agent」で、LLM、電話、チャット、SNSを組み合わせた顧客対応支援を掲げています。
これら大手はテーマの純度では専門企業に劣りますが、金融・公共・通信など大規模顧客への導入力があります。AIコールセンターは、単品ツールの導入では終わりません。既存CRM、本人確認、決済、基幹システム、監査ログと接続するため、大規模案件ではSI力が収益を左右します。
導入拡大の裏側に残る精度と規制の壁
コールセンターAIの最大の壁は、精度よりも業務データの整備です。FAQが古く、応対ルールが属人化し、例外処理が文書化されていない現場では、生成AIを入れても回答品質は安定しません。RAGを使えば万能という見方は危険です。
もう一つの課題はガバナンスです。顧客との通話には、個人情報、決済情報、健康情報、クレーム内容が含まれます。クラウドLLMを使うのか、閉域環境やローカルLLMを使うのかは、業種によって判断が分かれます。ログ管理、権限設定、誤回答時の責任分界を明確にできる企業が選ばれます。
カスタマーハラスメント対策も重要な論点です。厚生労働省は、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策を事業主の義務とする制度を示しています。音声認識や感情解析で危険な応対を検知し、管理者へ通知する機能は、単なる効率化ではなく労務リスク対策にもなります。
株式市場では、テーマ化した直後に期待が先行しやすい点にも注意が必要です。AIモデルのコスト低下は追い風ですが、汎用モデルの普及は差別化を薄めます。強い企業は、モデルそのものではなく、現場データ、業務設計、継続運用、CRM連携を押さえる企業です。
投資家が追うべき受注開示と継続率指標
コールセンターAI関連株を追う際は、導入社数だけでなく、利用席数、ライセンス数、月間自動応答件数、ARR、解約率、顧客単価を確認したいところです。特にSaaS企業では、生成AI機能が既存顧客のアップセルにつながっているかが重要です。
BPO企業では、AI導入が売上を減らすのか、利益率を高めるのかを分けて見る必要があります。席数の減少だけならマイナスですが、AI運用、ナレッジ構築、品質管理まで請け負えば、労働集約から知識集約への転換になります。
当面の焦点は、実証実験から本番導入への移行です。ニュースリリースの数よりも、全席導入、複数拠点展開、OEM増席、大手金融・公共案件の横展開に注目できます。生成AI相場では派手な言葉が先に動きますが、決算に残る数字を積み上げる企業こそ、中長期のテーマ株として評価されやすくなります。
参考資料:
- Call Center AI Market Size And Share Report, 2025-2030
- コールセンターサービス事業者が提供するAIサービス市場の調査を実施(2025年)
- コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2025年)
- コールセンターオペレーター - 職業詳細
- 職場におけるハラスメントの防止のために
- Salesforce Report: Teams Tap AI and Data to Drive Revenue as Service Expectations Rise
- Zendesk 2025 CX Trends Report: Human-Centric AI Drives Loyalty
- CCaaS (CCAI Platform) | Google Cloud Documentation
- Use Connect Customer agentic assistance - Amazon Connect Customer
- PKSHA、富士キメラ総研調査にて、3部門で市場シェア1位を獲得
- 日本経済新聞に掲載されました | 生成AI Co-Creation Lab. | ベルシステム24
- モビルス、AIエージェントプラットフォームを提供するvottia株式会社をトランスコスモスと合弁で設立
- FastHelp | コンタクトセンターCRM | テクマトリックス株式会社
- AmiVoice Communication Suiteが導入実績550社・80,000ライセンスを突破
- AI音声認識プラットフォーム「Voice Contact」の利用拡大に伴うライセンス増席のお知らせ
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