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シーイーシーとオリコンHD上方修正、官公庁需要の持続力を検証

by 前田 千尋
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上方修正2社に共通する公共需要の追い風

8月21日に発表された業績修正で目立ったのは、シーイーシーとオリエンタルコンサルタンツホールディングス、通称オリコンHDの2社です。一見すると、前者は情報サービス、後者は建設コンサルタントで事業領域は異なります。しかし、今回の上方修正を読み解く鍵はいずれも公共セクター需要にあります。

シーイーシーは官公庁向けICT案件、オリコンHDは防災・減災や国土強靱化、海外インフラ案件が業績を押し上げました。短期の決算インパクトだけでなく、政策支出が企業収益にどう波及しているかを確認する材料です。本稿では、修正幅の大きさだけでなく、利益の質、受注環境、今後の確認点を整理します。

シーイーシーを押し上げた官公庁ICT案件

経常利益84.2億円への再修正

シーイーシーは2027年1月期通期の連結業績予想を上方修正しました。売上高は従来予想の680億円から705億円へ、営業利益は77億5,000万円から83億2,000万円へ、経常利益は78億円から84億2,000万円へ、親会社株主に帰属する当期純利益は56億円から59億円へ引き上げています。

増減率で見ると、売上高は3.7%、営業利益は7.4%、経常利益は7.9%、最終利益は5.4%の上方修正です。売上の修正率より利益の修正率が大きい点は、案件採算や固定費吸収の改善が効いている可能性を示します。会社側は、主に官公庁向け案件が好調に推移し、下期に計上される金額が前回予想を上回る見通しになったと説明しています。

この修正は、5月時点の中間期予想の上方修正に続くものです。5月には中間期の売上高を328億5,000万円から350億円へ、経常利益を38億2,000万円から41億3,000万円へ引き上げ、中間配当も35円から40円に増額しました。一方、今回の発表では中間期予想は据え置かれ、通期だけが引き上げられています。つまり、利益の追加分は主に下期に発現する案件計上を織り込んだ修正と読めます。

前期である2026年1月期の実績は、売上高658億8,200万円、営業利益73億3,800万円、経常利益74億3,500万円、最終利益52億100万円でした。今回の新予想はこれを上回る水準で、シーイーシーが進める中期経営計画の「事業変革を加速」する局面において、収益拡大の手応えが強まった形です。

セグメント別に見える利益率改善

シーイーシーの事業は、インテグレーション、コネクティッド、ソリューションの3セグメントで構成されています。第1四半期実績では、売上高167億9,400万円、営業利益23億1,500万円、経常利益23億3,600万円、最終利益15億9,100万円でした。前年同期比では売上高17.2%増、営業利益29.7%増、経常利益27.9%増、最終利益26.2%増と、売上成長を利益成長が上回っています。

特に大きいのがインテグレーションセグメントです。同セグメントは第1四半期に売上高113億7,800万円、前年同期比23.7%増、営業利益26億7,300万円、同26.1%増となりました。システム・インフラ構築では、ネットワーク機器を含む官公庁向け大型案件が牽引したと説明されています。今回の通期修正と整合的な動きです。

ソリューションセグメントでも、官公庁向けに自社製品が大幅に伸びたセキュリティサービスが好調でした。公共分野では情報漏洩、本人確認、クラウド移行、自治体システム標準化など、セキュリティを伴うシステム投資が継続しやすい構造があります。デジタル庁も国や地方公共団体の情報システムの標準化・統一化、ガバメントクラウド、政府情報システムの統括・監理を進めています。こうした制度面の流れは、官公庁向けICT案件を持つ企業にとって追い風です。

ただし、上方修正を評価する際には、売上総額だけでなく案件ミックスを見る必要があります。官公庁向け大型案件は規模が大きい一方、機器販売、構築、保守、セキュリティ、自社製品の比率によって利益率が変わります。第1四半期の増益率は高いものの、通期では下期案件の検収時期や外注費、人件費の影響を受けます。9月10日に予定される中間決算で、利益率がどのセグメントで維持されたかが重要です。

オリコンHDを支える国土強靱化と海外鉄道需要

売上高1,000億円予想への引き上げ

オリコンHDは2026年9月期通期の連結業績予想を上方修正しました。売上高は970億円から1,000億円へ、営業利益は58億円から60億円へ、経常利益は56億円から58億円へ、親会社株主に帰属する当期純利益は38億5,000万円から40億円へ引き上げられています。

前期の2025年9月期実績は、売上高953億6,500万円、営業利益56億2,200万円、経常利益57億7,700万円、最終利益38億1,900万円でした。新予想は、経常利益では前期比で小幅な増益、最終利益では40億円台を見込む水準です。売上高1,000億円という節目に届く見通しとなった点も、事業規模の拡大を示します。

第3四半期累計では、売上高737億700万円、営業利益56億9,400万円、経常利益63億2,200万円、最終利益43億1,900万円でした。営業利益は通期予想60億円に近く、経常利益と最終利益は第3四半期累計の時点で新通期予想を上回っています。一見すると保守的にも見えますが、同社は為替変動の影響や関係会社への貸倒引当金計上などを見込んでおり、通期では営業外損益の下振れを織り込む形です。

受注環境は国内外で性格が異なります。国内市場では、防災・減災関連のハード・ソフト対策、道路・河川・港湾などの維持管理業務が堅調です。政府は2025年度までの5か年加速化対策に続き、2026年度から第1次国土強靱化実施中期計画を開始しています。気象災害の激甚化、南海トラフ巨大地震などの大規模地震リスク、インフラ老朽化への対応が政策課題であり、建設コンサルタントへの需要は構造的に発生しやすい状況です。

海外市場では、開発途上国のインフラ整備需要が旺盛で、大型軌道案件の追加契約が受注を押し上げています。第3四半期累計の海外受注高は294億8,800万円、前年同期比9.2%増でした。国内受注高は前年の大型案件の反動で451億5,500万円、同12.9%減でしたが、国内外を合わせた売上と利益は堅調に推移しています。

配当130円に映る株主還元姿勢

オリコンHDは業績修正と同時に、期末一括配当予想を125円から130円へ引き上げました。同社は配当性向40%程度を目安にする方針を示しており、今回の増配は利益見通しの引き上げに沿った対応です。2025年10月1日付で1株を2株にする株式分割を実施しているため、前期配当240円との単純比較ではなく、分割調整後の水準で見る必要があります。

同社の第3四半期決算では、自己資本比率が前期末の36.4%から38.1%へ改善しました。一方で、短期借入金や長期借入金も増えています。建設コンサルタント業務は工期や検収時期の季節性があり、納品後の売上代金回収が4月、5月に集中しやすいと会社側は説明しています。資金繰りの波を前提に、コミットメントラインや当座借越で借入枠を確保する事業特性があります。

セグメントでは、インフラ・マネジメントサービス事業が売上高601億7,500万円、営業利益43億5,600万円でした。売上高は前年同期比1.4%減、営業利益は4.3%減ですが、主力として収益の中心です。環境マネジメント事業は売上高120億9,600万円、営業利益10億9,000万円で、営業利益は前年同期比164.5%増と大きく伸びました。大型案件の進捗が利益を押し上げた形です。

オリコンHDの強みは、道路、鉄道、河川、港湾、上下水道、空港、都市、環境、防災など幅広いインフラ領域を、企画・提案から計画・設計、建設・監理、運営・保全まで扱う点にあります。公共投資の増減に影響を受ける一方、老朽化インフラの維持管理や防災対策は単年度で終わりにくいテーマです。今回の上方修正は、政策テーマと受注能力がかみ合った結果といえます。

好決算でも残る下期偏重と外部環境リスク

今回の2社はいずれも上方修正ですが、投資家が同じ物差しで評価するのは危険です。シーイーシーは官公庁ICT案件の下期計上が主因であり、検収時期、機器調達、外注単価、人件費が利益率に影響します。第1四半期時点ではICT投資や生成AI、クラウド、セキュリティ需要が高いと説明されていますが、大型案件の反動が翌期に出る可能性もあります。

シーイーシーの場合、注目すべきは売上よりも営業利益率です。今回の修正後の売上高705億円に対する営業利益83億2,000万円は、営業利益率で約11.8%です。前期の営業利益率は約11.1%でした。収益性が改善する見通しですが、この水準を継続できるかは、自社製品やセキュリティなど高付加価値領域の構成比に左右されます。

オリコンHDでは、第3四半期累計の経常利益63億2,200万円に対して、通期予想が58億円にとどまる点が重要です。営業外で為替変動や貸倒引当金を織り込むため、見た目の進捗率だけで強気に読みすぎるべきではありません。海外案件は成長余地が大きい一方、為替、現地の契約変更、回収リスク、地政学リスクを伴います。

また、国内の国土強靱化需要は強いテーマですが、公共投資は予算執行の時期や資材価格、人手不足の制約を受けます。防災白書でも、気象災害の激甚化やインフラ老朽化への対応が重視されていますが、政策需要がすべて企業利益に直結するわけではありません。設計・調査・施工管理の採算、外注管理、受注単価の改善が利益の持続性を決めます。

投資家が次に確認すべき受注残と利益率

シーイーシーでは、9月10日予定の中間決算が次の確認点です。中間期予想は据え置かれているため、実績が予想をどの程度上回るか、下期案件の採算がどこまで見えるかが焦点になります。官公庁向け大型案件だけでなく、マイグレーション、セキュリティ、Microsoft関連、データ活用領域の伸びも確認したいところです。

オリコンHDでは、売上高1,000億円と配当130円の実現性に加え、第4四半期の営業外損益が焦点です。海外大型軌道案件の進捗、国内の国土強靱化関連受注、環境マネジメント事業の利益率が、来期以降の評価を左右します。

2社に共通する投資視点は、公共需要の「量」ではなく「利益に変わる質」です。上方修正の数字だけでなく、案件ミックス、受注残、キャッシュフロー、配当方針を合わせて確認することで、短期の決算好感にとどまらない企業価値の変化を読み取れます。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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