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ディスコ上期経常益44%増、AI半導体需要と増配の持続力を分析

by 前田 千尋
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経常44%増と15円増配が示す上期の変化

ディスコが発表した2027年3月期上期決算は、売上高が前年同期比32.1%増の2570億5800万円、経常利益が44.0%増の1144億3700万円となりました。親会社株主に帰属する中間純利益も43.7%増の803億6600万円へ伸び、増収率を利益の伸びが上回っています。

中間配当は7月時点の予想171円から15円引き上げて186円に決定しました。前年同期実績129円との比較では57円の増配です。重要なのは、好業績が生成AI向け装置の数量増だけでなく、粗利率の改善と消耗品の伸びを伴う点です。本稿では増益の質と下期の変動要因を財務諸表から読み解きます。

粗利率上昇と営業レバレッジの実像

売上32%増を上回る営業利益48%増

決算短信と第2四半期決算説明資料を前年同期と比べると、利益率改善が鮮明です。主要数値は次の通りです。

上期連結実績金額前年同期比利益率
出荷額2845億8400万円37.2%増―
売上高2570億5800万円32.1%増―
売上総利益1839億1700万円37.2%増71.5%
営業利益1166億3900万円47.9%増45.4%
経常利益1144億3700万円44.0%増44.5%
中間純利益803億6600万円43.7%増31.3%

売上総利益は前年同期から499億800万円増え、販売費及び一般管理費の増加額121億3900万円を大きく上回りました。人件費や研究開発費を積み増しながら、粗利率は68.9%から71.5%、営業利益率は40.5%から45.4%へ上昇しています。

7~9月期単独の売上高は1427億5000万円、営業利益は676億600万円でした。前年同期比はそれぞれ36.4%増、52.3%増で、営業利益率も47.4%に達しています。装置の検収進展と消耗品の堅調な出荷が、4~6月期より強い増益率につながりました。

高付加価値品と為替が押し上げた採算

会社は粗利率上昇の要因に、為替と高付加価値製品の増加を挙げています。先端ロジックやHBM向けは薄化・個片化の難度が高く、高精度装置・ツールの製品構成比上昇が数量増と重なりました。一方で31億100万円の為替差損を計上しており、経常44%増は営業外収益ではなく本業の採算改善が中心です。

中間配当には利益成長が機械的に反映されました。株主還元方針では、各半期の連結純利益の25%を業績連動配当に充てます。期末には余剰資金の一部を上乗せする制度もありますが、予想額は未定です。上期186円を単純に2倍せず、下期利益と設備資金を併せて見る必要があります。

財務面にも余力があります。営業キャッシュフロー1117億800万円に対し、投資キャッシュフローは548億1400万円の支出で、フリーキャッシュフローは568億9300万円の黒字でした。9月末の現金及び預金は3424億1100万円、自己資本比率は76.1%です。

AI半導体の複雑化が広げる加工需要

HBMと2.5D実装で増えるKKM工程

ディスコの主力は、ウェーハを切り分けるダイシングソー、薄く削るグラインダ、表面を磨くポリッシャと、装置に使うブレードやホイールです。会社はIRのFAQで、ダイシングソーとグラインダ・ポリッシャの世界シェアをいずれも7~8割と説明しています。

AIアクセラレーターでは、ロジックと複数のHBMを近接配置する2.5D実装が使われます。技術説明会資料は、シリコンインターポーザ、HBM、ロジックダイ、封止樹脂で薄化・研削・個片化が重なる構造を示しています。チップ数や材料が増え、パッケージが複雑になるほど、Kiru・Kezuru・Migakuの加工機会が広がります。

この構造は生産量の増加だけに頼らない成長経路です。1個のパッケージに必要な加工が増えれば、ウェーハ投入量が同じでも装置能力や消耗品の需要が高まる可能性があります。上期に会社が挙げた「加工量」「加工難度」「加工対象」の拡大は、中長期の需要を測る軸になります。

外部環境も追い風です。SEMIの予測では、世界の半導体製造装置販売額が2026年に23.2%増の1659億ドル、2028年に2295億ドルへ拡大する見通しです。別のメモリ設備予測も、HBM需要を背景に2026年のDRAM設備投資を29%増の370億ドルと見込みます。

さらに、TSMCの2026年7~9月期決算では、7ナノメートル以下の先端技術がウェーハ売上高の79%を占めました。これはディスコへの直接発注を示しませんが、先端ロジックとHBMを支える投資環境の強さを裏付けます。

装置と消耗品を併せ持つ収益構造

装置が設置され加工量が増えると、ブレードやホイールなどの消耗品需要が発生します。上期は装置と精密加工ツールの双方が伸び、設備投資の波と顧客工場の稼働率上昇を同時に取り込めました。ただし、PCやスマートフォン向けが弱ければ稼働率を通じてツールにも影響するため、消耗品だけで装置循環を完全には相殺できません。

成長投資も続きます。会社は2026年度に設備投資約330億円、研究開発費約380億円を計画しています。有価証券報告書では、精密加工ツールを生産する郷原工場第1期の建築費を330億円、竣工を2028年4月末としています。強い財務基盤が増産を支える一方、需要変調時の固定費と投資回収は注視が必要です。

10~12月計画に潜む為替と検収の変動リスク

会社は2026年4~12月期に売上高3895億円、営業利益1747億円、経常利益1734億円を予想しました。上期との差額でみる10~12月期は売上高約1324億円、営業利益約581億円、営業利益率約43.9%です。7~9月期の47.4%より低く、直近の高採算をそのまま延長していません。

一方、10~12月期の出荷額予想1496億円は7~9月期の1486億円を上回ります。出荷が強いのに売上計画が減るのは、装置の検収時期を慎重に見たためと考えられます。想定為替は1ドル151円、1ユーロ173円で、7~9月期の海外売上高比率は89.7%でした。円高に振れれば上期の採算改善が逆回転する可能性があります。

棚卸資産は3月末の1413億2500万円から1608億1800万円へ13.8%増えました。強い出荷への備えなら前向きですが、需要変調時には運転資金と評価損のリスクです。他方、契約負債は500億600万円から796億2300万円へ増え、自己資本比率も76.1%を維持しています。現時点で財務不安を示す状況ではありません。

投資家が次回決算まで追うべき四つの指標

今回の上期決算は、生成AI向けの数量増、高付加価値品による粗利率改善、消耗品の拡大、業績連動増配がそろった強い内容です。前年度上期の経常利益率40.8%から今上期は44.5%へ上昇し、成長が売上規模だけでなく収益性にも及びました。

次回までに追うべき指標は、①1496億円の10~12月期出荷計画、②検収と売上計上の差、③71%台の粗利率と精密加工ツールの伸び、④想定為替と期末追加配当の原資となる現預金・設備資金です。経常44%増と186円配当は重要な実績ですが、株価評価をさらに押し上げるには、高採算の持続とAI以外への需要拡大が次の確認点になります。

参考資料:

前
前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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