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星野リゾート・リート、経常利益上方修正と分配金減額の真相を解説

by 大野 真由
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経常利益上振れと分配金減額が併存する構図

星野リゾート・リート投資法人は、2026年10月期の経常利益予想を39億2600万円から39億7100万円へ1.1%引き上げました。一方、利益超過分配金を含まない1口当たり分配金は6700円から6341円へ359円減額されています。

ただし、投資主が受け取る総分配金は7197円で、従来予想を497円上回ります。「利益分配金の減額」と「総分配金の増額」が同時に生じる理由は、グランドプリンスホテル大阪ベイの除却損と、会計・税務上の計上時期のずれにあります。

359円減額の裏にある特別損失と税会不一致

上方修正された本業利益と落ち込む純利益

2026年10月期の修正予想では、営業収益から経常利益までが小幅に上振れる半面、当期純利益は大きく減少します。主な数値を整理すると、次の通りです。

指標従来予想修正予想増減率
営業収益94億2200万円94億8000万円0.6%増
営業利益48億4500万円48億7600万円0.6%増
経常利益39億2600万円39億7100万円1.1%増
当期純利益39億2100万円33億5300万円14.5%減
利益分配金6700円6341円5.4%減
総分配金6700円7197円7.4%増

本業の採算を表す経常利益は改善しているため、今回の純利益減少をホテル運営の急激な悪化と捉えるのは適切ではありません。純利益を押し下げる中心要因は、借地上のチャペル棟を除却することに伴う6億1200万円の特別損失です。

内訳は、建物などの帳簿価額1億1000万円、借地権の帳簿価額3億100万円、解体・撤去費用2億円です。経常利益の計算後に特別損失として反映されるため、「経常利益は上方修正、純利益は下方修正」という一見矛盾する結果になります。

2027年4月期については、営業収益が従来予想の95億6300万円から97億9600万円、経常利益が40億1300万円から42億2800万円へ引き上げられました。当期純利益も42億2300万円へ5.4%上方修正されており、本業面では改善を見込んでいます。

二種類の分配金が生む速報見出しとのずれ

J-REITの分配金を見る際は、利益から支払う通常の分配金と、会計上の利益を超えて支払う利益超過分配金を分ける必要があります。今回の6341円は前者だけを示した金額であり、投資主が受け取る総額ではありません。

除却関連費用のうち5億100万円は、会計上は2026年10月期の費用となる一方、税務上は実際の除却が行われる2027年4月期に損金算入される見込みです。この税会不一致による課税を抑えるため、2026年10月期に1口856円の一時差異等調整引当額を利益超過分配金として支払います。

さらに、内部留保していた圧縮積立金3億6100万円を全額取り崩し、通常の利益分配金に加えます。その結果、利益分配金6341円と利益超過分配金856円を合わせた総分配金は7197円となり、従来予想の6700円を497円上回ります。

翌2027年4月期には、除却の実施によって税会不一致が解消するため、5億100万円の調整引当額を全額戻し入れます。1口当たり当期純利益は7209円を見込むものの、戻し入れを差し引いた分配金は6355円となり、従来予想の6850円から495円減少します。

重要なのは、2026年10月期と2027年4月期を合計した総分配金です。従来予想の1万3550円に対し、修正後は1万3552円と2円増えており、2期通算ではほぼ変わりません。今回の修正は分配原資が失われたというより、会計処理によって期ごとの配分が動いた側面が強いといえます。

なお、856円の利益超過分配は一時差異等調整引当額によるもので、税法上の出資等減少分配ではありません。ただし、受取時の表示や税務上の扱いは口座の種類などでも異なり得るため、実際の取引報告書を確認することが大切です。

大阪ベイの運営一本化が描く中長期戦略

480室の一括運営と変動賃料の収益機会

グランドプリンスホテル大阪ベイでは現在、480室のうち48室などを星野リゾートグループが「リゾナーレ大阪」として運営し、残る客室や宴会、料飲部門を西武・プリンスホテルズワールドワイドが担当しています。リゾナーレ大阪は2026年11月23日に運営を終え、同年12月1日を目途に西武・プリンスホテルズが全480室を一括運営します。

賃借人であるホライズン・ホテルズとの賃貸借契約は維持され、賃料はホテルのEBITDAの95%に連動する仕組みです。そのため、一括販売や宴会・宿泊部門の連携によってホテルの利益が増えれば、投資法人の賃料収入にも直接反映されます。

新型コロナ禍でMICE需要が落ち込んだ局面では、リゾナーレ大阪がファミリー層などの新規需要を獲得し、収益を下支えしました。一方、今後は大型会議やイベント需要を取り込むため、二つのブランドと運営者を抱える体制より、単一運営者による全館販売の方が効率的だと判断されました。

対象物件の取得価格は160億円です。また、同投資法人が保有する大阪市内4物件は取得価格ベースでポートフォリオ全体の約22%を占めます。今回の再編は一施設の運営変更にとどまらず、大阪エリア全体の収益力を左右する施策です。

星野リゾートグループは、これまでリゾナーレ大阪とOMO7大阪の双方に振り向けていた経営資源をOMO7大阪へ集中します。グランドプリンスホテル大阪ベイはMICEやベイエリア需要、OMO7大阪は都市観光需要という役割分担を明確にする狙いがあります。

婚礼施設集約で生まれる固定費削減効果

借地上にあるチャペル棟「ル サロン ブラン」は2026年10月31日に営業を終え、2027年3月31日までに解体して大阪市へ土地を返還します。婚礼事業そのものは、ホテルの所有地内にある別の婚礼施設へ集約して継続します。

借地返還後の2027年10月期以降は、年間2400万円の借地料と約300万円の固定資産税などが不要になります。加えて、エンジニアリング・レポートで年平均約1200万円と試算された将来の修繕・更新費用も回避できます。

短期的には6億1200万円の損失が生じますが、重複施設を維持する固定費と将来負担を減らす効果があります。婚姻件数の減少で婚礼施設の受け入れ枠に余裕が生じていることも、二施設を維持する合理性が薄れた背景です。

リゾナーレ大阪の早期運営終了に伴い、投資法人は賃借人から2億6000万円の承諾料を受け取る見込みです。2027年4月期の営業収益上方修正には、この承諾料の計上が大きく寄与しますが、金額や計上時期は確定していません。

中長期の焦点は、2030年秋頃に予定される大阪IRの開業です。計画では年間約2000万人の来訪が見込まれ、宿泊や大型MICE需要の拡大が期待されています。ただし、開業時期や来訪者数は計画値であり、投資判断では確定収益として織り込まない慎重さも必要です。

金利上昇と観光需要に残る分配金リスク

同投資法人の有利子負債は1050億4800万円で、2026年10月期末のLTVは40.9%、翌期末は40.8%の見込みです。固定金利比率は90%超とされていますが、日銀は2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げました。2026年10月期に71億5000万円、翌期に78億9800万円の借り換えを想定しており、支払利息などは9億3300万円から10億円へ増える予想です。

宿泊需要にも濃淡があります。2026年8月のポートフォリオ全体は、客室稼働率が81.4%、ADRが2万5004円、RevPARが2万355円となり、RevPARは前年同月比6.8%減少しました。全国の延べ宿泊者数は6268万人泊、客室稼働率は64.4%でしたが、訪日外客数は309万8900人と前年同月比9.6%減っており、大阪では万博需要の反動にも注意が必要です。

東証REIT市場の2026年9月末時点の予想年間分配金利回りは5.41%です。星野リゾート・リートを比較する際は、7197円だけを年率換算せず、利益超過分配金や積立金取り崩しを除いた平常時の収益力を確認する必要があります。

投資家が次期決算まで確認すべき三指標

今回の「359円減額」は通常の利益分配金だけを捉えた数字であり、総分配金は7197円へ増額されます。ただし、その一部は税会不一致への一時的な対応であり、恒常的な増配ではありません。

投資家が確認したいのは、第一に大阪2物件の稼働率・ADR・RevPAR、第二に借り換え後の平均調達金利と支払利息、第三に利益超過分配や積立金を除いた実力ベースの分配金です。2028年10月期の1口7000円、その先の8000円という目標の達成度も、この三指標と併せて判断すると分配金の持続性を見極めやすくなります。

参考資料:

大
大野 真由

投資信託・資産運用

投資信託・ETF・NISA を中心に、個人の資産形成に役立つ情報を発信。難解な金融商品をわかりやすく解説する。

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