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インソース3Q増益と記念配当、DX研修成長を投資視点で今読む

by 前田 千尋
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インソース3Q決算が示す増収増益の焦点

インソースは2026年9月期第3四半期累計で、売上高115.8億円、経常利益45.0億円を計上しました。前年同期比では売上高が8.9%増、経常利益が4.6%増です。数字だけを見れば堅調な増収増益ですが、投資家が見るべき焦点は利益の伸びが売上の伸びを下回った理由です。

同時に、会社は東京証券取引所上場10周年の記念配当を発表し、期末配当予想を35円に引き上げました。成長投資、人員効率、DX研修需要、株主還元が同じ決算で交差した点に、今回の読みどころがあります。

売上成長を支えた研修需要と利益進捗

3Q累計115.8億円の増収構造

インソースの第3四半期累計売上高は115億8,267万円でした。事業別では、講師派遣型研修事業が55億7,674万円で前年同期比10.8%増、公開講座事業が28億1,299万円で8.4%増、ITサービス事業が15億1,956万円で4.8%増、その他事業が16億7,337万円で7.4%増です。

主力の講師派遣型研修が全体の増収をけん引しました。説明資料では、同事業の第3四半期累計の研修実施回数が1万8,954回となり、前年同期比5.1%増でした。平均単価も29.4万円台へ上がり、前年同期比5.4%増となっています。数量と単価の両方が伸びたことが、売上増の質を支えました。

一方、営業利益は44億4,852万円で前年同期比3.7%増、経常利益は45億289万円で4.6%増でした。売上高の伸び率より利益の伸び率が低いのは、上期に人件費などの固定費負担が重く出たためです。5月公表の業績予想修正でも、講師派遣型研修事業とITサービス事業が期初計画を下回る見込みとなり、通期売上高予想は168億円から160億円へ下方修正されています。

4-6月期で見えた利益改善の兆し

ただし、第3四半期単独では景色が変わります。第3四半期累計から中間期を差し引くと、4-6月期の売上高は約39億9,849万円、営業利益は約14億9,740万円、経常利益は約15億2,991万円です。前年同期の中間期と第3四半期累計の差分と比べると、4-6月期の経常利益は約13%増となります。

これは、上期に鈍かった利益成長が第3四半期で持ち直したことを示します。会社は第2四半期時点で、生成AI活用によって第3四半期以降の人件費増加を計画比で圧縮できると説明していました。第3四半期単独の増益は、その効果が一部表れ始めた可能性があります。

ただし、累計の営業利益率は38%台で、前年同期より低下しています。通期計画を達成するには、第4四半期にも利益率の改善を続ける必要があります。増収そのものよりも、売上増がどれだけ営業利益に落ちるかが、残り3カ月の最重要論点です。

DX研修と35円配当に表れた成長配分

講師派遣型研修の単価上昇

今回の決算で最も強い材料は、DX関連研修の伸びです。講師派遣型研修では、DX関連研修の実施回数が第3四半期累計で前年同期比16.7%増えました。4-6月期単独では22.7%増と、累計より高い伸びになっています。

人手不足、生成AIの実装、データ活用の広がりは、企業の教育投資を単発の研修から継続的な人材育成へ変えています。インソースは社会人教育の会社ですが、単なる講師派遣ではなく、AI・DX研修、コンサルティング、LMS、動画教材を組み合わせて売る企業へ変化しつつあります。

6月の月次KPIでも、その変化が確認できます。講師派遣型研修の実施回数は2,232回で前年比108.9%、そのうちDX関連研修は298回で前年比161.1%でした。月次数値は速報値であり決算値と完全に一致するとは限りませんが、足元の需要が通常研修よりDXテーマに強く出ていることは読み取れます。

価格面も重要です。講師派遣型研修の平均単価は第3四半期累計で前年同期比5.4%上昇しました。研修業は人件費に左右されやすいビジネスですが、高単価テーマの比率が上がれば、講師稼働の伸びを利益に転換しやすくなります。投資家は売上高だけでなく、実施回数、DX比率、平均単価の3点をセットで見る必要があります。

公開講座とITサービスの確認点

公開講座事業も売上は伸びました。第3四半期累計の受講者数は11万9,303人で前年同期比3.9%増、DX関連研修の受講者数は約25%増です。開催回数を増やし、平均単価も4%台上がりましたが、1開催あたり受講者数は前年同期から低下しました。

ここは評価が分かれる部分です。開催数を増やして顧客接点を広げることは、将来の研修需要を取り込むうえで有効です。一方で、1開催あたり受講者数が下がると、会場費や講師関連コストの吸収力が弱まります。売上総利益率が前年同期から低下しているため、講座数拡大と採算のバランスが次の確認点です。

ITサービス事業では、LMS「Leaf」のアクティブユーザー数が2026年6月末時点で546万人を超え、前年同期比19.3%増となりました。有料利用組織数も919組織へ増えています。ユーザー基盤の拡大は強い材料です。

一方で、Leafの年間経常収益は14億7,500万円で前年同期末比4.3%増にとどまりました。アクティブユーザー数の伸びに比べると、ARRの伸びは控えめです。これは契約単価、利用プラン、カスタマイズ案件の構成によって変わります。ITサービスを成長エンジンと見るなら、今後はユーザー数だけでなく、組織あたり収益と継続課金の伸びを確認する必要があります。

上場10周年配当の位置付け

インソースは2026年7月21日に東証上場10周年を迎えました。会社は同日、2026年9月30日を基準日として1株あたり5.5円の記念配当を実施する方針を発表しました。これにより、期末配当予想は普通配当29.5円に記念配当5.5円を加えた35円となります。

前期の年間配当は25円でした。今回の予想どおりなら、年間配当は前期比10円の増配です。普通配当そのものは5月時点の29.5円から変わらず、増額分は上場10周年の一時的な記念配当です。したがって、来期以降も35円がベースになると見るのは早計です。

それでも、今回の配当修正は資本政策上のメッセージを持ちます。会社は株主還元方針として、配当性向50%、株主資本配当率18%を目標に掲げています。成長投資を続けながら資本効率を意識する姿勢は、自己資本が厚い同社にとって重要な評価材料です。

強い財務基盤と還元余力

第3四半期末の総資産は166億687万円、純資産は135億563万円、自己資本比率は81.3%です。現金及び預金は82億1,835万円で、負債合計31億124万円を大きく上回ります。財務レバレッジに頼って成長している会社ではなく、手元資金と利益剰余金を背景に還元を決めやすい財務体質です。

この点は、配当の安全性を見るうえで重要です。研修会社は大型設備投資を必要としにくく、キャッシュを積み上げやすい一方、人材採用、教材開発、システム開発には継続的な投資が必要です。過度な配当で成長投資を削ると、将来の研修テーマやITサービスの競争力を失います。

今回の記念配当は、財務余力があるからこそ可能になった一時的な還元です。投資家は「増配」という見出しだけでなく、普通配当29.5円の持続性、配当性向、DOE目標、AI・DX関連投資とのバランスを分けて見るべきです。

通期据え置きで残る4Q利益率の課題

会社は第3四半期決算で、5月に修正した通期業績予想を据え置きました。通期予想は売上高160億円、営業利益63億8,000万円、経常利益64億3,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益44億円です。第3四半期累計の進捗率は、売上高が72%台、経常利益が70.0%です。

単純に残額を計算すると、第4四半期には売上高約44億1,732万円、営業利益約19億3,147万円、経常利益約19億2,710万円が必要です。営業利益率にすると約44%が求められます。第3四半期累計の営業利益率を上回る水準であり、4Qの採算改善が通期達成の前提になります。

リスクは主に3つです。第一に、公開講座の開催数拡大が利益率を押し下げる可能性です。第二に、Leafのユーザー増がARR拡大に直結しない場合、ITサービスの利益貢献が想定より鈍くなります。第三に、生成AI関連のサービス開発や広告宣伝を強めれば、短期的な費用が増えます。

一方で、6月の講師派遣型研修とDX関連研修のKPIは強く、需要面の失速はまだ見えません。問題は需要の有無ではなく、採算の高い案件をどれだけ積み上げられるかです。第4四半期は、売上の伸びよりも営業利益率と事業別粗利率が焦点になります。

投資家が次に確認すべき業績指標

今回のインソース決算は、成長鈍化ではなく、成長の中身を見極める局面を示しています。DX研修は強く、講師派遣型研修の単価も上がっています。財務基盤は厚く、記念配当を出せる余力もあります。

その一方で、公開講座の採算、LeafのARR成長、通期計画達成に必要な4Q利益率には確認すべき点が残ります。次の決算で見るべき指標は、DX関連研修の実施回数、公開講座の1開催あたり受講者数、LeafのARR、営業利益率です。

投資判断では、記念配当を一時要因として切り分け、普通配当と本業利益の持続性を見ることが重要です。インソースの評価は、人的資本投資と生成AI教育の需要を、どれだけ高採算の継続収益へ変えられるかにかかっています。

参考資料:

前田 千尋

企業決算・財務分析

企業決算を読み解き、業績の変化点をいち早く察知する。財務諸表の行間から企業の「次の一手」を導き出す決算分析の専門家。

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