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MERF増配、期末特別配当と銅相場高が映す業績回復の投資判断

by 大野 真由
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期末増配が示す株主還元の転換点

非鉄金属リサイクルを手がけるMERFが、2026年8月期の期末配当予想を1株10円から20円へ引き上げました。内訳は普通配当10円、特別配当10円です。すでに第2四半期末には普通配当10円に設立40周年記念配当10円を加えた20円を実施しており、年間配当は前回予想の30円から40円へ増える見通しです。

この増配は、単なる配当取り材料にとどまりません。2025年8月期は最終赤字だった同社が、銅相場高と採算改善を背景に利益水準を大きく切り上げ、その成果を株主へ追加配分する局面に入ったことを示しています。投資家にとって重要なのは、期末20円の受け取り可否だけではなく、今回の特別配当が一過性なのか、収益構造の改善を伴う還元強化なのかを見極めることです。

銅相場高と採算改善が生んだ利益急回復

第3四半期累計の黒字転換

MERFの2026年8月期第3四半期累計決算は、前年同期の赤字から大きく改善しました。売上高は734億9,100万円で前年同期比18.6%増、営業利益は34億100万円、経常利益は34億5,800万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は22億7,800万円です。前年同期は営業損失3億7,500万円、経常損失5億4,600万円、純損失3億8,800万円だったため、損益の振れ幅は大きいといえます。

特徴的なのは、販売数量が増えたから利益が伸びたわけではない点です。会社資料では、インゴット販売数量は前年同期比1.9%減、リサイクル原料は17.8%減、全体では12.3%減とされています。それでも売上高と利益が増えたのは、主力取扱商品である銅の円ベースCash価格が前年同期比34.7%高く推移し、販売価格への転嫁が進んだためです。

つまり今回の業績回復は、数量拡大型ではなく、価格上昇と採算管理の改善による収益回復です。資源関連企業では市況の追い風が利益を押し上げる一方、市況が反転すると利益率が急速に低下することがあります。MERFを見る際も、売上高の伸びだけでなく、売上総利益や運転資金の増減をあわせて確認する必要があります。

低採算取引の見直しと米国子会社の寄与

会社は2月と7月に通期業績予想を上方修正しています。7月13日の修正後予想では、売上高1,059億8,000万円、営業利益45億6,100万円、経常利益45億5,700万円、純利益28億1,400万円を見込みます。2月時点の予想から、売上高は18.8%、営業利益は65.5%、経常利益は74.8%、純利益は51.9%の上方修正です。

修正理由として示されたのは、銅価格高騰分を販売価格へ転嫁できたこと、低マージン販売先の見直し、米国子会社の年間連結化です。これは資源価格に依存する企業としては重要な変化です。相場上昇時に売上だけが増えても、仕入れ価格や在庫評価の影響で利益が残らないケースがあります。MERFの場合、採算性の低い取引を絞り込み、利益率とキャッシュフローを意識した運営に移した点が評価材料です。

事業構成を見ると、非鉄金属事業が大半を占め、美術工芸事業は規模としては小さいものの増収となっています。非鉄金属事業の第3四半期累計売上高は728億6,300万円で前年同期比18.4%増、美術工芸事業は6億2,800万円で40.9%増です。株価材料としては非鉄金属事業の寄与が中心ですが、全社の営業利益改善には複数事業の底上げも加わっています。

配当取りで確認すべき利回りと権利日

年間40円配当の実質利回り

8月17日の開示では、期末配当の基準日は2026年8月31日、効力発生日は2026年11月20日、配当金総額は2億8,200万円とされています。期末配当は11月19日開催予定の第41期定時株主総会に付議される予定です。

株価面では、Yahoo!ファイナンスが8月17日のMERF株価を1,570円、前日比70円高と表示しています。年間配当40円をこの株価で単純計算すると、予想配当利回りは約2.55%です。100株保有なら年間配当は税引き前で4,000円となります。従来予想の30円では3,000円だったため、今回の期末特別配当10円は100株あたり1,000円の上乗せです。

一方で、配当利回りだけで割安と判断するのは早計です。会社予想の1株当たり当期純利益198.99円を前提にすると、年間40円配当の配当性向は単純計算で約20.1%です。数字だけを見れば無理のある水準ではありません。ただし、今回の増配には記念配当と特別配当が含まれます。普通配当は年間20円であり、40円が来期以降も続くとは限らない点を押さえる必要があります。

8月末権利取得とNISA口座の条件

2026年8月末の権利付き最終日は8月27日、権利落ち日は8月28日、権利確定日は8月31日です。権利付き最終日の大引け時点で現物株式を保有していれば、配当の権利を取得できます。権利落ち日以降に売却しても、権利付き最終日に取得した権利は失われません。

ただし、短期の配当取りでは権利落ち日の株価変動に注意が必要です。理論上は配当分だけ株価が下がりやすく、実際の株価は需給、決算期待、銅相場、全体相場によって上下します。期末20円を受け取る目的で高値圏を買う場合、配当額以上の株価下落が起きる可能性もあります。

NISA口座で国内上場株式の配当を非課税で受け取るには、配当金受領方式を「株式数比例配分方式」にしておく必要があります。日本証券業協会は、この方式以外で受け取る場合、NISA口座内の上場株式配当でも20.315%が源泉徴収されると説明しています。MERFをNISAの成長投資枠で保有する場合でも、受取方式の確認は権利確定日前に済ませるべきです。

税引き後で考えると差は小さくありません。100株で年間4,000円の配当を受け取る場合、課税口座では20.315%が差し引かれ、手取りは約3,187円です。NISA口座で条件を満たせば、国内課税分はかからず4,000円を受け取れます。配当投資では銘柄選びだけでなく、口座設定もリターンに直結します。

市況反転と運転資金増が残す投資リスク

MERFの追い風は、銅相場の高止まりです。会社は第3四半期決算で、データセンター建設の増加、電力網増強、鉱山供給の逼迫懸念を背景に、銅の国際価格が歴史的高値圏で推移したと説明しています。住友商事グローバルリサーチも、銅価格が史上最高値を更新し、供給制約や価格の地域格差が市場の焦点になっていると分析しています。

この環境はMERFに有利ですが、同時にリスクでもあります。銅価格が上がれば販売単価は上がりますが、原材料の仕入れや在庫に必要な資金も膨らみます。実際、第3四半期末の総資産は358億300万円と前期末から100億9,800万円増え、流動資産の増加には売上債権、棚卸資産、前渡金の増加が含まれます。有利子負債も44億5,800万円増加しました。

資源商社・リサイクル企業を見る際は、損益計算書だけでなく貸借対照表も重要です。売上高と利益が伸びる局面では、在庫や売掛金も増えやすく、資金繰りの負担が先に大きくなることがあります。MERFは採算性の低い取引を見直しているものの、銅相場のボラティリティが高まれば、在庫評価やヘッジ、借入コストが利益を圧迫する可能性があります。

もう一つの論点は、特別配当の継続性です。2026年8月期の年間40円配当は、普通配当20円、記念配当10円、特別配当10円で構成されます。記念配当と特別配当は、通常の配当政策とは性格が異なります。来期も同水準の利益が見込めるか、普通配当の底上げがあるか、あるいは一時的な還元で終わるかは、10月14日に予定されている2026年8月期決算発表で確認すべき焦点です。

決算発表前に点検したい投資判断軸

MERFの期末増配は、業績回復を伴う前向きな株主還元です。第3四半期までの進捗、7月の通期上方修正、8月の特別配当を並べると、2026年8月期は同社にとって赤字から高収益へ戻る節目の年度になっています。配当性向も会社予想EPSベースでは過度に高くなく、短期的な財務負担だけで見れば無理のある増配ではありません。

ただし、投資判断では三つの確認が欠かせません。第一に、銅相場高がどこまで続くかです。第二に、低採算取引の見直しで利益率が来期も維持されるかです。第三に、年間40円のうち一時的配当を除いた普通配当20円を、会社がどのように位置づけるかです。

配当取りを狙う投資家は、8月27日の権利付き最終日、8月28日の権利落ち日、11月20日の支払予定日を確認したうえで、株価下落リスクも織り込む必要があります。中長期で見る投資家は、10月の本決算で営業利益率、在庫、借入金、来期配当予想を点検することが重要です。今回の増配は魅力的な材料ですが、本当に評価すべきなのは、特別配当そのものではなく、資源市況に左右されやすい事業で収益と還元をどこまで安定させられるかです。

参考資料:

大野 真由

投資信託・資産運用

投資信託・ETF・NISA を中心に、個人の資産形成に役立つ情報を発信。難解な金融商品をわかりやすく解説する。

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