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寄り付きとは?板寄せで始値が決まる仕組みと「寄り天」の意味

by デイトレ.jp 編集部

デイトレードは寄り付きから始まりますが、9時00分に付く値段は「誰かが最初に買った値段」ではありません。8時から溜まった注文をまとめて1つの値段に落とす計算の結果です。この記事では東証の売買制度の記載で仕組みを確認し、架空の板から始値を手で求めます。あわせて「寄り天」という言葉が何と何を比べているのかを整理します。

寄り付きと始値の定義

日本取引所グループの用語集は、寄り付きをこう説明しています。

取引所の売買は午前9時から始まりますが、最初の売買のことを「寄り付き」といい、その時の値段を「始値」と呼んでいます。また、昼休みをはさんで開始される後場の最初の取引を「後場寄り」と呼ぶこともあります。

野村證券の証券用語解説集も同じ内容です。

寄り付きとは売買立会いが開始され、最初の売買のこと。そのときについた値段を寄り付き(または寄り付き値、始値)という。

「寄り付き」は時点(最初の売買)を指し、「始値」はそのときの値段を指します。日足のローソク足の4本値のうち、1本目の数字がこれです(ローソク足の見方とパターン一覧)。

注文受付は8時から、立会は9時から

東証の売買立会時のページでは、時間がこう決められています。

売買立会は、午前立会(通称、前場(ぜんば))と午後立会(通称、後場(ごば))に分けられ、その売買立会時は、午前立会は9時から11時30分まで、午後立会は12時30分から15時30分までとなっています。また、午前立会は8時から、午後立会は12時5分から注文を受け付けています。

区分立会時間注文受付時間
午前立会(前場)9:00–11:308:00–11:30
午後立会(後場)12:30–15:3012:05–15:30

つまり9時00分の直前には、1時間ぶん溜まった注文が板に乗っています。この1時間は売買が成立しないので、板は「注文が増えるだけ」の状態です。

始値は「板寄せ方式」で決まる

東証の売買は個別競争売買で、その方法には板寄せ方式とザラバ方式の2つがあります。東証の説明を表にすると次のとおりです。

板寄せ方式ザラバ方式
実施時立会開始時/立会終了時/売買中断後の再開時/特別気配・連続約定気配の表示時左記以外(寄付と引けの間=ザラバ等)
約定価格売注文と買注文から、合致する値段を求め、その値段が単一の約定値段となる価格優先の原則、時間優先の原則に従い、合致したものから順に約定する

寄り付きは「立会開始時」なので板寄せです。ここで効いてくるのが、時間優先の原則の例外です。

時間優先の原則の例外として、午前立会と午後立会の取引開始時や売買停止後の最初の約定値段を決める約定については、それまでに出されたすべての注文が同時に発注されたものとみなします(中略)。この場合の約定は、「板寄せ方式」で行われます。

これが同時呼値です。8時00分に出した注文と8時59分に出した注文は、始値の決定では同じ時刻の注文として扱われます。「早く並んだ順」ではありません。

一方で、価格優先の原則は働きます。東証の説明では、

成行呼値は、いくらでもよいから売りたい又は買いたいというものですので、成行呼値は値段を指定した呼値(指値)に優先することになります。

とされています。寄り付きで確実に約定させたいなら成行、値段を決めたいなら指値という選択になり、両者の優先順位は値段のほうで決まります。

架空の板で始値を計算する

架空のA社株(売買単位100株・呼値の単位は1円)の、9時00分直前の板を置きます。数値モデルで、実在の銘柄ではありません。

売り数量値段買い数量
1,000株成行3,000株
2,000株1,005円2,000株
3,000株1,004円1,000株
2,000株1,003円2,000株
1,000株1,002円3,000株

各値段について、「その値段で買える注文の累計(成行買い+その値段以上の買い指値)」と「その値段で売れる注文の累計(成行売り+その値段以下の売り指値)」を出します。

値段買い累計売り累計約定可能数量
1,005円5,000株9,000株5,000株
1,004円6,000株7,000株6,000株
1,003円8,000株4,000株4,000株
1,002円11,000株2,000株2,000株

約定可能数量が最大になるのは1,004円の6,000株です。この値段で、板寄せが満たすべき条件を確かめます。

  • 成行注文はすべて約定するか:成行買い3,000株+成行売り1,000株=4,000株は、6,000株の約定のなかに収まる → 満たす
  • 約定値段より高い買い指値はすべて約定するか:1,005円の買い2,000株+成行買い3,000株=5,000株 ≤ 6,000株 → 満たす
  • 約定値段より安い売り指値はすべて約定するか:1,002円の売り1,000株+1,003円の売り2,000株+成行売り1,000株=4,000株 ≤ 6,000株 → 満たす
  • 片側が全量約定するか:買い側の累計6,000株が全量約定し、売り側は7,000株のうち6,000株が約定(1,004円の売り指値3,000株のうち2,000株が約定、1,000株が板に残る)→ 満たす

1,003円ではこうなりません。1,003円で売れる注文は累計4,000株しかないのに、1,003円より高い買い指値と成行買いの合計は6,000株あり、高い値段で買いたい注文が約定できないまま残るため、価格優先の原則に反します。1,005円では、1,005円より安い売り指値(累計7,000株)が約定しきれません。

したがってこの板の始値は1,004円、寄り付きの出来高は6,000株です。1,004円の売り指値に出していた人は、同じ値段・同じ条件でも3,000株のうち2,000株しか約定しません(残りはザラ場の注文として板に残ります)。

ここから分かること

  • 始値は、板にある注文の分布で決まります。自分の1,000株がどこに置かれているかで、約定するかどうかが変わります
  • 1,004円の指値に入れた売り手のうち約定したのは3分の2です。板寄せでは「同じ値段の注文が一部だけ約定する」ことが普通に起きます
  • 成行で出せば約定はしますが、約定値段は1,004円であって、自分が想定した値段とは限りません

寄り付き前の気配と、始値が飛ぶとき

寄り付き前の板は、売りと買いの数量が大きく偏ることがあります。前日終値から離れた値段でしか合致しない場合、東証は即時に約定させずに気配を表示します。

直前の価格から更新値幅を超えた水準で次の売買が成立するような場合には、即時に売買を成立させず、更新値幅の範囲内で「特別気配」を表示します。

更新値幅は気配値段の水準で決まっていて、表の一部を挙げると次のとおりです。

気配値段更新値幅
200円未満上下5円
500円未満8円
1,000円未満15円
1,500円未満30円
3,000円未満50円
5,000円未満70円

1,000円未満の銘柄なら15円刻みで気配が更新されていくので、前日終値から大きく離れた始値が付く日は、9時00分を過ぎても寄らずに気配だけが動くことがあります。好材料・悪材料が出た銘柄で「まだ寄っていない」のはこの状態です。値幅そのものの上限は制限値幅(ストップ高・ストップ安)で別に決まっています(ストップ高の値幅は?)。

寄り天とは

野村證券の用語集は、寄り天(よりてん)をこう説明しています。分類は「相場・格言・由来」です。

その日の株式取引が開始され最初についた寄り付きの値段(始値)が一番高値になること。

定義上、寄り天は結果の呼び名です。始値がその日の高値だったと言えるのは、大引けで高値が確定してからです。9時5分の時点で「今日は寄り天だ」と判定することは、定義のうえではできません。

ギャップアップとの違い

混ざりやすいのがギャップアップです。野村證券の用語集では、

英語表記はGap Up(GU)。前日の終値よりも当日の始値が高値で寄り付くこと。寄り付き前に売り注文を上回る買い注文があるとギャップアップする。株価チャートではローソク線が上に隙間を空けて線画されるため、「上に窓をあける」「上放れる」ともいう。

と説明されています。比べている対象が違います。

言葉比べているもの確定する時点
ギャップアップ前日終値 と 当日始値始値が付いた時点
寄り天当日始値 と 当日の高値大引け

ギャップアップで始まった日が寄り天になることもありますし、ギャップアップからさらに上げて高値を引けに付けることもあります。2つは独立した言い方です。

寄り天のとき、板では何が起きているか

上の板寄せの計算に戻ると、始値は「その瞬間に買いたい注文と売りたい注文が最も多く合致する値段」です。寄り付き前の1時間に買い注文が集まれば始値は上に寄り、その注文が始値で消費されたあと、9時以降に同じ勢いの買いが続かなければ、値段は下に向きます。始値は8時台の注文を全部使った水準なので、構造として「その日いちばん買いが集まった瞬間」になりやすい側面があります。

ただし、どのくらいの頻度で寄り天になるかは、この記事では数えていません(後述)。

寄り付きで使える注文条件

東証の売買制度では、執行条件を付けた注文が用意されています。

注文内容(東証の記載)
寄付条件付注文前場または後場の寄付きに執行されることを条件とした注文
引条件注文前引けまたは大引けに執行されることを条件とした注文
不成注文各立会終了時までは指値注文として有効な注文で、ザラバで売買が成立しなかった場合には、前引けまたは大引けの時点において、引け成行注文に変更して執行することを条件とする注文
IOC注文指定した値段かそれよりも有利な値段で、即時に一部あるいは全数量を約定させ、成立しなかった注文数量を失効させる条件付注文

寄り付きだけで売買を終えたいなら寄付条件付注文が該当しますが、実際に出せる条件は証券会社の取扱いによります。注文画面の「執行条件」の欄に何が並んでいるかを確認するのが早いです。

検証していないこと

  • 寄り天の頻度は数えていません。「寄り天が多い」といった傾向の話は、銘柄・期間・地合いを決めて始値と高値を突き合わせないと言えません
  • 「寄り付き直後は値動きが荒い」「寄り付きから30分は見送る」といった時間帯の目安も、この記事では検証していません
  • 上の始値1,004円・出来高6,000株は、架空の板1つぶんの計算結果です。実際の板寄せの正式な条件は東証の業務規程等に定められており、この記事では公開されている売買制度の説明の範囲で追っています

まとめ

  • 寄り付き=売買立会が始まって最初の売買、その値段が始値(日本取引所グループ・野村證券)。後場の最初の取引は「後場寄り」
  • 注文受付は前場8:00から・後場12:05から、立会は9:00–11:30と12:30–15:30
  • 始値は板寄せ方式で、売り注文と買い注文が合致する単一の値段として決まる
  • 始値の決定では同時呼値=8時に出した注文も8時59分の注文も同時発注扱い。ただし成行は指値に優先する
  • 架空の板では始値1,004円・出来高6,000株。1,004円の売り指値3,000株のうち約定は2,000株で、同じ値段でも一部しか約定しない
  • 前日終値から離れた水準でしか合致しないときは特別気配が表示され、9時を過ぎても寄らないことがある(更新値幅は1,000円未満で15円)
  • 寄り天=始値がその日の高値になること(野村證券)。確定するのは大引け。前日終値と始値を比べるギャップアップとは別の言葉

この記事は売買制度と相場用語の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。制度の内容は変更されることがあるため、取引の前に取引所と証券会社の最新の記載を確認してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. 寄り付きとは何ですか?

A. 日本取引所グループの用語集では「取引所の売買は午前9時から始まりますが、最初の売買のことを『寄り付き』といい、その時の値段を『始値』と呼んでいます」と説明されています。野村證券の用語集も「売買立会いが開始され、最初の売買のこと。そのときについた値段を寄り付き(または寄り付き値、始値)という」としています。昼休みを挟んで始まる後場の最初の取引は「後場寄り」と呼ばれます。

Q. 始値はどうやって決まるのですか?

A. 立会開始時の約定は「板寄せ方式」で行われます。東証の説明では、板寄せ方式は「売注文と買注文から、合致する値段を求め、その値段が単一の約定値段となる」方式です。ザラ場(寄り付きと引けの間)の「ザラバ方式」が価格優先・時間優先で合致したものから順に約定していくのに対し、板寄せでは同じ瞬間の注文がまとめて1つの値段で処理されます。

Q. 寄り付き前に出した注文は、早く出したほうが有利ですか?

A. 始値を決める約定については、時間優先の原則の例外が置かれています。東証の説明では「午前立会と午後立会の取引開始時や売買停止後の最初の約定値段を決める約定については、それまでに出されたすべての注文が同時に発注されたものとみなします」とされています(同時呼値)。8時に出した注文と8時59分に出した注文は、始値の決定では同じ扱いです。ただし値段の優先順位(価格優先の原則)は働くので、成行注文は指値注文に優先します。

Q. 寄り天とはどういう意味ですか?

A. 野村證券の用語集では「その日の株式取引が開始され最初についた寄り付きの値段(始値)が一番高値になること」と説明されています。分類は「相場・格言・由来」です。始値が日中の高値だったという結果の呼び名なので、その日が寄り天だったかどうかは大引けまで確定しません。

Q. 寄り天とギャップアップは違うものですか?

A. 別のことを指しています。野村證券の用語集ではギャップアップは「前日の終値よりも当日の始値が高値で寄り付くこと」で、比べているのは前日終値と始値です。寄り天は始値とその日の高値を比べた言い方です。ギャップアップで始まってそのまま上昇する日も、ギャップアップした始値が高値になって寄り天になる日もあります。

Q. 寄り付きで売買したいとき、どんな注文を出せますか?

A. 東証の売買制度では、一定の執行条件を付けた注文として「寄付条件付注文」(前場または後場の寄付きに執行されることを条件とした注文)が用意されています。このほか引条件注文・不成注文・IOC注文があります。実際にどの条件が使えるかは証券会社の取扱いによるため、注文画面の条件欄で確認することになります。

出典・参考資料

「板・注文の仕組み」のほかのガイド

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