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証券口座は複数持っていいのか|特定口座は1社1口座・NISAは1人1口座、損益通算は申告が条件

by デイトレ.jp 編集部

「証券口座は複数持っていいのか」は、制度の側では短く答えが出ます。課税口座は会社をまたいで何社でも開けて、NISAだけが1人1口座です。面倒なのはそのあとで、口座を分けると税金の計算が口座ごとに閉じてしまい、申告しないと払いすぎが残ります。この記事では一次情報で制限の所在を確認したうえで、口座を分けた場合の税額を数字で比べます。

制限は「1社につき1口座」

国税庁のタックスアンサー No.1476「特定口座制度」は、特定口座についてこう書いています。

居住者等が、金融商品取引業者等に特定口座を開設した場合(1金融商品取引業者等につき、1口座(ただし、課税未成年者口座として設けられた特定口座を除きます。)に限られます。)

制限がかかっているのは「1金融商品取引業者等につき」の部分です。同じ証券会社の中に特定口座を2つ作ることはできませんが、会社が違えばそれぞれに特定口座を開けます。つまり、

  • A証券に特定口座、B証券に特定口座、C証券に特定口座 … 制度上の上限は書かれていない
  • A証券に特定口座を2つ … できない

という形です。一般口座も同様に口座を開いた会社ごとに管理されます。

NISAだけが「1人1口座」

課税口座と違い、NISA口座は人に対して1つです。金融庁のNISA特設ウェブサイト「NISAを知る」は、利用するための条件としてこう書いています。

口座は1人につき1口座のみ開設可能です。 金融機関の変更は、年単位で可能です。ただし、2027年1月からの新制度では、0歳から17歳までの未成年者については、金融機関の変更ができません。

年単位の変更を何度か行えば、結果として複数の金融機関にNISA口座が残ることはありますが、その年に新規の買付けができるのは1口座だけです。

枠の大きさも口座数では動きません。国税庁 No.1535 によれば、年間投資上限額はつみたて投資枠が120万円・成長投資枠が240万円で、非課税保有限度額は1,800万円(内数として成長投資枠のみの上限が1,200万円)です。これは制度の枠なので、課税口座を10社に開いても非課税の枠は増えません。

口座の種類開ける数根拠
特定口座1金融商品取引業者等につき1口座(会社が違えば複数可)国税庁 No.1476
一般口座会社ごとに開設(会社が違えば複数可)同上の枠組み
NISA口座1人につき1口座(金融機関の変更は年単位)金融庁 NISA特設サイト

口座を分けると税金は口座ごとに閉じる

源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)は、譲渡益が出るたびに税金が引かれます。税率は国税庁 No.1476 のとおり所得税および復興特別所得税が15.315%、住民税が5%で、合計20.315%です。

問題は、この計算が口座の中だけで行われることです。No.1476 は注記でこう書いています。

源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡による所得について、他の口座の上場株式等の譲渡損益と相殺する場合や コード1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」 の適用を受ける場合には、確定申告をする必要があります。

A証券で30万円の利益、B証券で30万円の損失が同じ年に出た場合を計算します。年間の実質的な損益は0円ですが、A証券は自分の口座の中しか見ないので、利益30万円に対して源泉徴収を行います。

ケース課税対象税額(20.315%)差
A口座+30万円・B口座−30万円/申告しない30万円(A口座分のみ)60,945円—
同じ損益で確定申告して損益通算0円0円60,945円の還付

口座を1つにまとめていれば、同じ口座内の損益は源泉徴収の計算に織り込まれるので申告は不要でした。口座を分けたことで、同じ損益なのに申告という手続きが1つ増えた形です。

利益のほうが大きい場合も同じ構造です。

ケース源泉徴収された額通算後の税額還付される額
A口座+50万円・B口座−20万円101,575円60,945円(課税対象30万円)40,630円
A口座+30万円・B口座+20万円(どちらも利益)101,575円101,575円(課税対象50万円)0円

下の行がポイントです。両方が利益なら、通算してもしなくても税額は同じ(101,575円)なので、申告不要を選べます。No.1476 は源泉徴収口座の所得について「口座ごとに、申告するまたは申告不要とすることの選択をすることができます」と書いていて、この選択は口座単位です。

損失だけの年は、申告しないと翌年に使えない

その年に損失だけが出た口座を放置すると、損失は翌年以後に持ち越せません。国税庁 No.1474 は繰越控除について次の条件を挙げています。

上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税等につき、(中略)添付がある確定申告書を提出すること。 その後の年において連続して 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」 の添付のある確定申告書を提出すること。

繰越せる期間は「その年分の翌年以後3年間」で、しかも連続して申告している必要があります。No.1474 は「上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です」とも注記しています。

B口座で30万円の損失が出た年に申告しなかった場合、翌年にA口座で30万円の利益が出ても、その利益には60,945円の税金がかかります(デイトレードの税金)。

2027年1月以降、15.315%の内訳が変わる(合計は変わらない)

No.1476 は、源泉徴収の税率について次の注記も置いています。

令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されます。

復興特別所得税も防衛特別所得税も、所得税額に対して掛ける付加税です。所得税15%を基準に計算すると、

時期所得税復興特別所得税防衛特別所得税合計(国税)
現行15%15% × 2.1% = 0.315%—15.315%
令和9年1月1日以後15%15% × 1.1% = 0.165%15% × 1% = 0.150%15.315%

0.165% + 0.150% = 0.315% なので、国税の合計は15.315%のまま、住民税5%を足した20.315%も変わりません。変わるのは内訳です。複数口座の損益通算の計算をするとき、税率そのものは当面この数字で足ります。

会社ごとに分かれるのは税金だけではない

差金決済の判定は会社ごと

現物取引では差金決済が禁止されていて、同じ受渡日に同じ資金で同じ銘柄を売買すると注文が通りません(差金決済とは)。この禁止を定めている内閣府令第10条の主語は「金融商品取引業者」です。

金融商品取引業者は、顧客が信用取引を行うことを有価証券の売買の注文と同時に明示しない取引については、当該顧客が当該取引による買付け又は売付けに係る有価証券について、これと対当する有価証券の売付け又は買付けにより、これを決済する取引を行つてはならない。

義務を負っているのは業者側で、各社は自社で預かっている資金と受渡ししか見られません。したがって判定は口座を開いた会社ごとに行われます。ただし、口座が分かれていても資金そのものは分かれないので、A社からB社へ資金を回すには出金と入金が必要です。受渡日前の出金は不足金の原因になるため、回転数を増やす目的で口座を分けるなら、受渡日の管理が増える点は見ておく必要があります。

手数料コースと取引ツールは会社ごと

手数料の条件も会社ごとに適用されます。1日定額制の無料枠がある会社を複数使えば、枠は会社ごとに立ちますが、約定代金の合計で段階が変わるコースでは1社に集めたほうが有利になる場合もあります(デイトレの手数料無料を比較)。取引ツールも会社ごとなので、板発注の操作を覚え直すコストが増えます(デイトレアプリの比較)。

平均取得価額は口座ごとに計算される

同じ銘柄を2社で買うと、取得単価は口座ごとに計算されます。片方で売ったときの譲渡損益は、その口座の平均取得価額を基準に決まるため、同じ銘柄を同じ株数持っていても、どちらの口座で売るかで確定する損益額が変わります。

検証していないこと

  • どの証券会社を何社使うのが有利かは検証していません。この記事が計算しているのは「口座を分けると税金の手続きがどう変わるか」までです
  • 税額は2026年10月時点の税率(所得税および復興特別所得税15.315%・住民税5%)で計算した概算です。具体的な申告は国税庁の案内か税務署で確認してください
  • 源泉徴収なしの特定口座・一般口座を使う場合の申告手続きの違いは扱っていません
  • 会社ごとの手数料コースの有利不利は条件が多いため、金額の比較はしていません
  • 配当を口座に受け入れる選択(配当との損益通算)は、源泉徴収口座を使う場合の論点として No.1476 に記載がありますが、この記事では譲渡損益に絞っています

まとめ

  • 課税口座の制限は「1金融商品取引業者等につき、1口座」(国税庁 No.1476)=会社が違えば複数持てる
  • NISA口座だけは「口座は1人につき1口座のみ開設可能」(金融庁)。金融機関の変更は年単位
  • 口座を増やしても非課税枠は増えない。年間360万円・総枠1,800万円は制度の枠(国税庁 No.1535)
  • 源泉徴収口座を分けると税計算が口座の中で閉じる。+30万円と−30万円を別口座で出して申告しないと 60,945円が残る
  • +50万円と−20万円なら、申告で 40,630円が還付される。両方が利益なら申告しても税額は同じ(101,575円)=申告不要を選べる
  • 損失だけの年は申告しないと繰越控除が使えない。繰越は翌年以後3年で、連続した申告が条件(国税庁 No.1474)
  • 差金決済の判定は、条文の主語が「金融商品取引業者」である以上、口座を開いた会社ごとに行われる

この記事は制度と計算の説明で、特定の証券会社や売買手法を勧めるものではありません。税額の計算は概算で、実際の申告は国税庁の案内か税務署で確認してください。デイトレードを始める手順はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. 証券口座は複数持っていいのですか?

A. 課税口座(特定口座・一般口座)は、金融商品取引業者等をまたいで複数持てます。国税庁 No.1476 が定めているのは「1金融商品取引業者等につき、1口座」という制限で、同じ証券会社に特定口座を2つ作れないという意味です。会社が違えば、それぞれに特定口座を開けます。

Q. NISA口座も複数持てますか?

A. 持てません。金融庁のNISA特設ウェブサイトは「口座は1人につき1口座のみ開設可能です。金融機関の変更は、年単位で可能です」と説明しています。年単位の変更をすると結果的に複数の金融機関にNISA口座が残りますが、その年に買付けできるのは1口座だけです。

Q. 口座を増やすと非課税枠も増えますか?

A. 増えません。NISAの年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)と非課税保有限度額1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)は、国税庁 No.1535 のとおり制度の枠で、1人1口座なので口座数とは無関係です。課税口座を増やしても非課税の枠は1円も増えません。

Q. 複数の口座で利益と損失が出たらどうなりますか?

A. 自動では相殺されません。国税庁 No.1476 は、源泉徴収口座の譲渡所得について「他の口座の上場株式等の譲渡損益と相殺する場合」は確定申告をする必要があると注記しています。A口座で利益30万円・B口座で損失30万円という状態で申告しないと、A口座で源泉徴収された60,945円がそのまま残ります。

Q. 源泉徴収ありの口座が複数ある場合、どれを申告するか選べますか?

A. 選べます。国税庁 No.1476 は、源泉徴収口座内の譲渡所得について「口座ごとに、申告するまたは申告不要とすることの選択をすることができます」と説明しています。ただし損益通算や繰越控除を使うなら、その対象にする口座は申告する側に入れる必要があります。

Q. 口座を分けると差金決済の制約も分かれますか?

A. 制約の判定は口座を開いた会社ごとに行われます。差金決済を禁じている内閣府令第10条の主語は「金融商品取引業者」で、各社は自社で預かっている資金と受渡しだけを見ます。ただし会社をまたいで資金を動かすには出金と入金が必要で、受渡日前の出金は不足金の原因になります。

出典・参考資料

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