RSIとは?14日間の計算式を数値例で追い、計算方法の違いで値がずれる場面まで
RSIはチャートの下段に0〜100の1本の線で表示される指標で、ほとんどのツールに初期から入っています。ただ「70を超えたら買われすぎ」という一文だけが先に知られていて、その70が何を割った数字なのかは曖昧なまま使われがちです。この記事では証券会社の用語集で定義を確認し、架空の終値20日分から14日RSIを実際に手計算します。計算方法が2通りあることで値がどれだけずれるかも、同じ終値で並べて比べます。
RSIの定義
野村證券の証券用語解説集では、相対力指数(RSI)はこう説明されています。
アメリカのテクニカル・アナリストのJ.W.ワイルダーによって開発されたテクニカル指標であり、オシレーター(振幅を測るもの)分析の一種。相場が上昇、下落のどちらの勢いが強いかを計測する。
計算については同じページで、
具体的には、過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計(いずれも絶対値)を足した数値で割って、100を掛けたもので、0%から100%の範囲で推移する。上昇局面に入ると数値が50%以上で推移し、下降局面に入ると数値が50%以下で推移する。
とされ、水準の読み方は「短期的な相場分析では14日間のデータを使用し、RSIが70%以上であれば相場は買われすぎ、逆にRSIが30%以下であれば相場は売られ過ぎと判断される」と書かれています。
SMBC日興証券の用語集は、略称の意味と限界をより明示しています。
RSIとは、「Relative Strength Index」の略で、テクニカルチャートのひとつです。日本語に訳すと「相対力指数」になります。(中略)RSIは、過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計を足した数字で割って、100を掛けたものです。いくら値上がり、値下がりしたかはRSIでは判断できません。数値は0~100で表され、一般的に70~80%以上で買われすぎ、20~30%以下で売られすぎと判断されます。
買われすぎの水準が「70以上」(野村證券)と「70〜80%以上」(SMBC日興証券)で違う書き方になっているのは、この水準が定義ではなく慣習だからです。計算式は一致していますが、閾値は公式の文書でも幅があります。
期間の初期設定について、楽天証券のFXwebメンバーヘルプのRSIのページは「RSIは米国のチャート研究家W・ワイルダーによって考案されたモメンタム系オシレーター指標」としたうえで、初期設定の期間を「14」と明記しています(FX用ツールのヘルプですが、指標そのものの初期値の記載です)。
式に直すと
期間をN日、N日分の前日比のうちプラスだけを合計した値をU、マイナスだけを絶対値で合計した値をDとすると、
RSI = U ÷(U + D)× 100
です。分母が「上げ幅と下げ幅の合計」なので、RSIはその期間の値動きのうち、上げ方向が占めた割合を表します。値幅の大きさそのものは分母で割られて消えます。SMBC日興証券の用語集が「いくら値上がり、値下がりしたかはRSIでは判断できません」と書いているのは、この割り算のことです。
14日RSIを手で計算する
架空のA社株の終値20日分を使います(指標の挙動を見るための数値モデルで、実在の銘柄ではありません)。
| 日 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 1 | 1,000円 | — |
| 2 | 1,020円 | +20 |
| 3 | 1,012円 | −8 |
| 4 | 1,035円 | +23 |
| 5 | 1,048円 | +13 |
| 6 | 1,040円 | −8 |
| 7 | 1,062円 | +22 |
| 8 | 1,075円 | +13 |
| 9 | 1,068円 | −7 |
| 10 | 1,090円 | +22 |
| 11 | 1,084円 | −6 |
| 12 | 1,105円 | +21 |
| 13 | 1,120円 | +15 |
| 14 | 1,112円 | −8 |
| 15 | 1,138円 | +26 |
前日比は14本(2日目〜15日目)あります。これで1つ目のRSIが出ます。
- 上げ幅の合計 U = 20+23+13+22+13+22+21+15+26 = 175円
- 下げ幅の合計 D = 8+8+7+6+8 = 37円
- RSI = 175 ÷(175+37)× 100 = 175 ÷ 212 × 100 = 82.55
14日のうち9日が上昇で、しかも上げた日の1日あたりの値幅(175 ÷ 9 = 19.4円)が下げた日の値幅(37 ÷ 5 = 7.4円)より大きいため、RSIは70を大きく超えました。
ここで確認しておきたいのは、RSIは値段の水準をまったく見ていないことです。終値1,000円から1,138円へ13.8%上がっていますが、計算に入っているのは前日比の14個だけです。同じ前日比の並びであれば、株価が100円でも10,000円でもRSIは82.55になります。
計算方法が2通りあり、値がずれる
ここからが実際に使うときに引っかかる部分です。15日目のあとも計算を続けるとき、「U と D をどう更新するか」で2通りの流儀が広く使われています。
- 単純合計型:毎回、直近14本の前日比を取り直して、上げ幅合計と下げ幅合計をそのまま足し直す
- 平滑型:前日の平均上げ幅・平均下げ幅に当日ぶんを 1/14 の重みで混ぜて更新する(当日の値が入る重みが小さいぶん、古い値が尻尾のように残る)
同じ終値列を16日目から20日目まで延長して、両方で計算します。
| 日 | 終値 | 前日比 | 平滑型RSI | 単純合計型RSI | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 15 | 1,138円 | +26 | 82.55 | 82.55 | 0.00 |
| 16 | 1,150円 | +12 | 83.55 | 81.86 | 1.69 |
| 17 | 1,120円 | −30 | 72.36 | 73.89 | −1.53 |
| 18 | 1,096円 | −24 | 64.87 | 63.44 | 1.43 |
| 19 | 1,082円 | −14 | 60.91 | 57.46 | 3.45 |
| 20 | 1,070円 | −12 | 57.66 | 56.47 | 1.19 |
初日(15日目)は両者の出発点が同じなので一致しますが、そのあとは離れていき、19日目で3.45ポイントの差が付きました。終値は1円も違わず、期間設定も両方14です。
この例では「70を下回った日」はどちらも18日目で一致しました。差が出たのは水準の読みだけで、閾値を跨ぐ日はずれませんでした。ただしそれはこの数値列での結果で、差が1〜3ポイントある以上、閾値のすぐ近くを這っている局面では同じ日に片方だけが70を割ることは起こり得ます。ツールAとツールBで数値が合わないときは、銘柄や期間設定を疑う前に、計算方法の違いを確認するほうが早いことがあります。
平滑型のほうが反応が鈍いわけではない
16日目を見ると、平滑型が83.55で単純合計型が81.86です。平滑型のほうが高く出ています。一方で17日目は平滑型が低く出ています。どちらが「鈍い」かは一方向には決まりません。
単純合計型は、14本の窓から抜け落ちる1本の影響をそのまま受けます。16日目の計算では2日目の「+20」が窓から外れ(上げ幅合計が175→167)、17日目では3日目の「−8」が外れます(下げ幅合計が37→29に減ってから当日の−30が入って59)。下げ幅が外れた日はRSIを押し上げる向きに力が働くので、値段と無関係なところでギザギザが入ります。平滑型にはこの「窓から抜ける」段差がありません。代わりに、ずっと前の値が小さな重みで永久に残ります。
水準の読み方と、読めないこと
50が境目になる理由
野村證券の用語集は「上昇局面に入ると数値が50%以上で推移し、下降局面に入ると数値が50%以下で推移する」としています。式のうえでも、上げ幅合計と下げ幅合計が等しいときに RSI = U ÷(U+U)× 100 = 50 です。50は「上げ方向と下げ方向が同じだけあった」点で、期間中の値動きの向きが釣り合う水準です。
張り付きと、そこから分かること
期間中の前日比がすべてプラスなら D = 0 で、RSIは100になります。すべてマイナスならUが0で0です。実際には100や0のすぐ近くで何日も動かなくなることがあり、このとき指標は「強い」とは言っていても「どれだけ強いか」を区別できていません。上の例の82.55も、14日中9日上昇という内訳を1つの数字に潰したものです。
出来高は入っていない
RSIの計算に入っているのは終値の前日比だけです。日本取引所グループの用語集でいう出来高(売買高=成立した取引の片道数量)は、RSIにはまったく反映されません。わずかな売買で1円動いた日と、大量の売買を伴って1円動いた日を、RSIは同じ「+1」として扱います。売買の量を見たいなら別の系列が必要です(出来高とは)。
同じことは移動平均線やMACDにも言えます(ゴールデンクロス・MACD・ボリンジャーバンドの見方)。出来高で重みを付けた平均はVWAPのほうで、こちらは約定代金から作られます(VWAPとは)。
日足と分足で「14」の意味が変わる
デイトレードでは日足RSIをそのまま使えません。日足の前日比は、1日のなかの値動きをローソク足1本に畳んだあとの終値どうしの差です。野村證券の用語集はローソク足を「株価の値動きを時系列に表したチャート」として説明していますが、始値・高値・安値・終値のうちRSIが使うのは終値だけです。
分足・時間足に落とすと、期間14は「14本」になります。JPXの用語集では立会時間は「現物市場では9時から11時30分及び12時30分から15時30分」で合計330分なので、
| 足 | 1日の本数 | 期間14が指す時間 |
|---|---|---|
| 1分足 | 330本 | 14分 |
| 5分足 | 66本 | 70分 |
| 15分足 | 22本 | 210分 |
| 日足 | 1本 | 14営業日 |
5分足の14本は約70分です。「RSI14」という同じ表示が、見ている足によって14分から14営業日まで変わります。寄り付き直後は窓に入る本数そのものが足りず、1日の最初の数十分は指標が定まりません。
検証していないこと
「RSIが70を超えたら売り、30を割ったら買い」「ダイバージェンス(値段は高値を更新したのにRSIは更新しない)が出たら転換が近い」といった使い方は、指標の解説で一般的に紹介されている読み方です。特定の銘柄・期間でそのとおりになったかどうかは別の問題で、この記事では検証していません。
上の表の3.45ポイントという差も、この架空の数値列での計算結果です。実際の銘柄でどれだけずれるかは終値の並びによって変わります。
RSIが定義として言えるのは「期間中の値動きのうち上げ方向が占めた割合」までで、そこから先の売買判断は定義に含まれていません。
まとめ
- RSI = 上げ幅合計 U ÷(U + 下げ幅合計 D)× 100。0〜100で、期間中の値動きのうち上げ方向が占めた割合
- 野村證券の用語集では14日・70以上で買われすぎ・30以下で売られすぎ。SMBC日興証券は「70〜80%以上」「20〜30%以下」と幅のある書き方で、閾値は定義ではなく慣習
- 架空の14日分(上げ幅合計175円・下げ幅合計37円)でRSIは82.55。値段の水準は計算に入らない
- 単純合計型と平滑型の2通りがあり、同じ終値・同じ期間14でも最大3.45ポイントずれた(60.91 対 57.46)
- 値幅の大小も出来高も計算に入っていない。「いくら値上がりしたか」はRSIでは分からない
- 分足で見ると期間14は14本=5分足なら約70分。日足の14営業日とは別物
この記事は指標の定義と計算の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。RSIは過去の終値から作られる数字で、将来の値動きを示すものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。
よくある質問
Q. RSIとは何ですか?
A. 野村證券の用語集では、RSI(相対力指数)は「アメリカのテクニカル・アナリストのJ.W.ワイルダーによって開発されたテクニカル指標であり、オシレーター(振幅を測るもの)分析の一種。相場が上昇、下落のどちらの勢いが強いかを計測する」と説明されています。計算は「過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計(いずれも絶対値)を足した数値で割って、100を掛けたもの」で、0%から100%の範囲で推移します。
Q. RSIの計算式を教えてください。
A. 期間をN日とすると、N日分の前日比のうちプラスだけを合計した値をU、マイナスだけを絶対値で合計した値をDとして、RSI=U ÷(U+D)× 100 です。この記事の架空の例では、14日間の上げ幅合計が175円、下げ幅合計が37円だったので、175 ÷(175+37)× 100 = 82.55 となりました。
Q. RSIが70以上、30以下だと何が分かりますか?
A. 野村證券の用語集は「短期的な相場分析では14日間のデータを使用し、RSIが70%以上であれば相場は買われすぎ、逆にRSIが30%以下であれば相場は売られ過ぎと判断される」としています。SMBC日興証券の用語集では「一般的に70~80%以上で買われすぎ、20~30%以下で売られすぎ」と、やや幅のある書き方になっています。どちらも水準の読み方の紹介で、その水準になったあと値段がどう動くかは示していません。
Q. 同じ銘柄・同じ期間14なのに、ツールによってRSIの値が違うことがあるのはなぜですか?
A. RSIには上げ幅・下げ幅を単純に合計する計算と、平均を前日の平均に持ち越して平滑化する計算の2通りが広く使われていて、どちらを使うかで値が変わります。この記事の架空の20日分の終値では、初日こそ両方82.55で一致しましたが、その後は最大3.45ポイント(60.91 対 57.46)ずれました。自分のツールがどちらの定義かは、ヘルプで確認しておく部分です。
Q. RSIが100や0になることはありますか?
A. あります。期間中の前日比がすべてプラスなら下げ幅合計Dが0で、RSI=U ÷(U+0)× 100 = 100 になります。逆にすべてマイナスならUが0でRSIは0です。連騰・連敗が続くと指標が張り付いて動かなくなるため、水準そのものの情報量が落ちます。
Q. デイトレードでRSIを使うとき、日足のRSIをそのまま見ていいですか?
A. 日足のRSIは前日比(終値どうしの差)から作られるため、1日のなかの値動きは1本の足に畳まれます。ザラ場の判断に使うなら分足・時間足のRSIを見ることになりますが、そのとき「期間14」が指すのは14日ではなく14本です。東証の立会時間は9時から11時30分および12時30分から15時30分の合計330分なので、5分足なら66本が1日分で、14本は約70分ぶんにあたります。
出典・参考資料
- 相対力指数(RSI)|証券用語解説集(野村證券)(www.nomura.co.jp)
- RSI|初めてでもわかりやすい用語集(SMBC日興証券)(www.smbcnikko.co.jp)
- RSI|チャート|FXwebメンバーヘルプ(楽天証券)(www.rakuten-sec.co.jp)
- 移動平均|証券用語解説集(野村證券)(www.nomura.co.jp)
- ローソク足|証券用語解説集(野村證券)(www.nomura.co.jp)
- 立会時間|用語集(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 出来高|用語集(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
「テクニカル指標」のほかのガイド
- VWAPとは?売買高加重平均価格の計算式・数値例、デイトレでの見方と限界 VWAP(売買高加重平均価格)とは、その日に成立した約定価格を出来高で加重平均した値です。東証の定義と計算式、架空の数値を使った計算例、デイトレードでの見方、機関投資家の執行目標としての使われ方、限界を整理します。
- ゴールデンクロス・MACD・ボリンジャーバンドの見方|計算式と数値例 ゴールデンクロス(移動平均線)、MACD、ボリンジャーバンドの定義と計算式を一次情報で確認し、架空銘柄の5分足55本で実際に計算して見せます。3つが同じ終値から作られているために起きる遅れと、デイトレードで使えるようになる時刻までを整理します。
- 出来高とは?片道数量の意味と日中の偏り、売買代金との違いを数値例で 出来高(売買高)は売買が成立した株数で、東証では売り・買いを一つの取引として数える片道数量です。「出来高100万株」が何を意味するのかを一次情報で確認し、立会330分のうち寄り付き5分に18%が集中する日内分布のモデルで、場中に出来高倍率を見るときの按分計算を示します。売買代金との違いも数字で比べます。
- ローソク足の見方とパターン一覧|四本値の条件式と、足の長さで形が変わる例 ローソク足は1本で始値・高値・安値・終値の4つの値段(四本値)を表します。大陽線・十字線・カラカサ・包み足・はらみ足・窓などのパターンを「四本値のどんな関係か」という条件式で一覧にし、架空銘柄の5分足8本を実際に20分足・40分足へまとめて、同じ値動きが足の長さで別の形になることを数字で示します。
- 移動平均線のデイトレ設定|5分足の「25本」は日足25日の1650分の1 移動平均線の「よく使われる期間」として紹介される5日・25日・75日は、野村證券の用語集では日足の期間として並んでいます。5分足の1日は66本なので、25本の移動平均は125分ぶんで日足25日の1650分の1です。架空の5分足30本でSMA5・SMA20・EMA5を手計算し、当日データだけなら20本線が10時35分まで引けないこと、SMAとEMAが同じ期間5でも3.66円ずれることを数値で示します。