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空売りとは?仕組みと貸株料・逆日歩などのコスト、リスク、空売り規制

by デイトレ.jp 編集部

空売りとは、持っていない株を証券会社などから借りて売り、後で同じ株を買い戻して返す取引です。売った値段より安く買い戻せればその差が利益に、高く買い戻すことになれば損失になります。個人が行う場合は証券会社の信用取引口座を使う「信用売り」が一般的で、株価の上昇には上限がないため、損失も理論上は限りがありません。

空売りの仕組み

東京証券取引所(東証)の用語集では、空売りを、株式を所有せずに(または所有していてもそれを使わずに)、他人から借りてきた株券を使って売却することと説明しています。流れは次の4段階です。

  1. 証券会社から株を借りる
  2. 借りた株を市場で売る(新規の売り建て)
  3. 後で同じ銘柄・同じ株数を市場で買い戻す(返済の買い)
  4. 買い戻した株で、借りた株を返す

例:架空のB社株を2,000円で100株空売りしたとします(売却代金20万円)。

買い戻した値段損益(コスト控除前)
1,800円+20,000円
2,000円0円
2,300円−30,000円
3,000円−100,000円

空売りには、株価の下落から利益を狙う使い方のほか、持っている株の値下がりに備える「つなぎ売り」としての使い方もあります。

空売りに必要な口座と取引の種類

信用取引口座と委託保証金

信用売りをするには、通常の証券口座とは別に信用取引口座を開きます。東証の資料によると、開設には証券会社の審査があり、投資経験や預かり資産などをもとに各社が基準を設けています。

取引の際には、約定代金の30%以上、かつ最低30万円の委託保証金が必要です。上の例のように20万円分の空売りでも、保証金は30万円以上を差し入れなければなりません。保証金は現金のほか株式などの有価証券でも代用でき、株式は時価の80%以内で評価されます。

制度信用・一般信用・一日信用

信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」があり、注文のときにどちらかを選びます。途中で切り替えることはできません。

項目制度信用取引一般信用取引
取引できる銘柄取引所が選定(売りができるのは貸借銘柄)証券会社が選定(原則として全上場銘柄の中から)
返済期限最長6か月証券会社が決定
品貸料(逆日歩)取引所が発表証券会社が決定
配当金配当金相当額を売り方が買い方に支払う証券会社が定めたルールで処理
証券金融会社からの借入(貸借取引)利用できる利用できない

東証「信用取引制度の概要」(2026年9月)をもとに作成しています。

制度信用で空売りできるのは、制度信用銘柄のうち、証券金融会社から株を借りられる「貸借銘柄」に選ばれた銘柄です。一般信用は証券金融会社からの借入を使えないため、空売りできる銘柄や条件は、主に証券会社が自社で株を調達できるかどうかで決まり、会社ごとに違います。

証券会社によっては、一般信用取引のうち返済期限を新規に建てたその日に限ったものを「一日信用」などの名前で提供しています。デイトレード向けの仕組みで、当日中に返済しなかった場合の扱いや手数料は各社が定めています。こうした取扱いの違いは証券会社の比較で確認できます。

空売りにかかるコスト

コスト内容
委託手数料売り建てと買い戻しの売買にかかる手数料
貸株料借りた株に対する費用(売り方の金利にあたる)。料率は証券会社の説明で確認する
品貸料(逆日歩)株が不足したときに追加でかかる費用
配当金相当額制度信用で、配当の権利が確定する時期をまたいで売り建てていると支払う
その他口座管理や権利処理の手数料など

逆日歩(品貸料)が決まる仕組み

制度信用取引では、証券会社が自社で株を用意できないとき、証券金融会社(東証が指定しているのは日本証券金融)から借ります。この証券会社と証券金融会社の間の取引を「貸借取引」といいます。貸借取引で株の貸付け(貸株)の残高が資金の貸付け(融資)の残高を上回り、貸す株が足りなくなると、日本証券金融は不足分を証券会社や機関投資家などからの入札(品貸入札)で調達し、そこで決まった料率が品貸料、いわゆる逆日歩になります。品貸料がつくと、その銘柄を制度信用で売っているすべての人が支払い、買っているすべての人が受け取ります。

逆日歩には、デイトレードでも知っておきたい特徴があります。

  • 売った時点では金額がわからない:入札は約定日の翌営業日に行われるため、取引の時点ではまだ決まっていない
  • 日数は受渡日を基準に数える:品貸日数は通常1日だが、休日をはさむと増える。東証の資料には、翌日に返済しても土日をはさんで3日分になる例が載っている
  • 上限は株価と売買単位で決まり、時期によって引き上げられる:日本証券金融の早見表では、たとえば売買単位100株・貸借値段2,000円の銘柄の最高料率(上限)は1日1株あたり4.0円。配当などの権利落ち日の直前や、貸株の注意喚起・申込制限が出ている銘柄では上限が2倍〜8倍に引き上げられ、異常な株不足のときは臨時に4倍・10倍とされることもある

上限で計算すると、この銘柄を100株空売りして3日分の品貸料がつけば、通常時の上限でも最大1,200円(4.0円×3日×100株)です。2,000円で売って1,990円で買い戻した場合の値幅(100株で1,000円)より大きくなりえます。

なお、新規の売りと返済の買いを同じ日に済ませた場合は、受渡日が同じになるため逆日歩はかからないと説明している証券会社もあります。一般信用取引の売りは証券金融会社からの借入を使わないため、日本証券金融の入札で決まる逆日歩の対象外です。品貸料にあたる費用の扱いは証券会社が決めており、調達の難しい銘柄の売りに独自の料金を設けている会社もあります。

空売りのリスク

損失に上限がない

買いの取引では、株価が0円になったときの損失が最大です。空売りは株価が上がるほど損失が増え、株価に上限はないため、東証の資料でも「最大損失は無限大」と説明されています。上の例でB社株が3,000円まで上がれば、売却代金20万円に対して10万円の損失です。

踏み上げとストップ高

株価が上がって損失を抱えた売り方が買い戻すと、その買いがさらに株価を押し上げることがあります。これを「踏み上げ」といい、返済期限の到来による買い戻しが原因になることもあります。ストップ高に張り付いて売り注文がほとんどない状態では、買い戻しの注文を出しても約定しないことがあり、損失が翌日以降に広がるおそれもあります。値幅制限とストップ配分の仕組みはストップ高・値幅制限のガイドで確認できます。

追証と保証金の不足

株価が上がって評価損が膨らむと、計算上の保証金が減ります。東証の資料によると、当初の保証金から損失や費用を差し引いた額が売買代金の20%を下回ると、追加の保証金(追証)を差し入れる必要があります。証券会社によってはこれより厳しい基準を設けており、期限までに差し入れられない場合の扱い(建玉の決済など)も各社の規定で決まっています。

規制によって条件が変わる

信用取引が過熱した銘柄には、東証が委託保証金率の引き上げ(増担保規制)などの措置をとることがあります。東証の資料では、一次規制の例として「委託保証金率50%(うち現金20%)」が挙げられています。また日本証券金融は、株の調達が難しくなった銘柄について、証券会社からの新規の貸株申込みを制限・停止する措置をとることがあり、その場合は制度信用での新しい空売りができなくなることがあります。

法令で決められた空売り規制

空売りには、金融商品取引法の施行令と内閣府令にもとづく規制があります。個人がデイトレードで関係する主な内容は次のとおりです。

規制内容
明示・確認義務売り注文が空売りかどうかを明示する。注文を受けた証券会社は、それを取引所に明示する
価格規制(トリガー方式)基準価格(原則として前日終値)から10%以上低い値段で約定すると、その時点から翌営業日の取引終了まで(東証が主たる市場の銘柄の場合)、下落局面では直近の公表価格以下、上昇局面では直近の公表価格未満での空売りが禁止される
価格規制の適用除外個人などの信用取引による新規売りで、50売買単位以下の注文は価格規制の対象外(ただし、規制を避けるために同じ銘柄・同じ値段の注文を50売買単位以下へ分けても対象外にはならない)
株の手当てのない空売りの禁止売る時点で株を借りる手当てをしていない空売り(ネイキッド・ショート)は禁止。2013年11月施行の見直しで恒久的な措置になった
残高の報告・公表空売り残高が原則として発行済株式総数の0.2%以上、かつ空売り残高売買単位数が50超になると報告義務があり、0.5%以上など一定の条件を満たすものは取引所が公表する
公募増資に関する規制増資の公表から発行価格の決定までに空売りした場合、その増資で取得した株でその空売りを決済してはならない

たとえば仮に前日終値が1,000円の銘柄なら、900円以下で約定した時点から価格規制がかかります。規制がかかっている間は、直前の値段が上がって905円になった場面では905円以上、下がって905円になった場面では905円より高い値段でなければ、価格規制の対象となる空売りはできません。また、価格規制がかかる空売りは成行注文では出せず、トリガーに触れる前でも、トリガー値段以下の指値では注文できません。一度トリガーに触れると、その後に株価が戻っても少なくともその日は規制が続きます。東証は、その日にトリガーに触れた銘柄の一覧を毎営業日ウェブサイトで公表しています。

空売りは損失の上限がない取引です。この記事は仕組みと規制を説明するもので、特定の銘柄の空売りを勧めるものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。口座開設から1日の流れまでの手順はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. 空売りは信用取引口座がないとできませんか?

A. 個人が株式市場で空売りをする場合、通常は証券会社の信用取引口座を開いて「信用売り」を使います。信用取引口座は通常の証券口座とは別に申し込み、証券会社の審査を経て開設します。取引の際は約定代金の30%以上、最低30万円の委託保証金が必要です。

Q. 逆日歩はいつ、いくらかかるかわかりますか?

A. 逆日歩(品貸料)は、制度信用取引で株が不足した銘柄について、日本証券金融の入札で約定日の翌営業日に決まるため、売った時点では金額がわかりません。日数は受渡日を基準に数え、土日祝をはさむと複数日分になります。新規の売りと返済の買いを同じ日に済ませた場合は、受渡日が同じになるため逆日歩はかからないと説明している証券会社もあります。

Q. 空売りの損失はどこまで膨らみますか?

A. 株価には上限がないため、理論上は損失に上限がありません(東証の資料)。ストップ高で買い戻しの注文が約定しない日が続くと、損失が数日にわたって広がることもあります。

Q. 空売り規制で個人の取引は制限されますか?

A. 売り注文を出すときに空売りかどうかを明示する義務は、個人にもかかります。価格規制は、株価が基準価格から10%以上下がった値段で約定した銘柄に、その時点から適用されます(東証が主たる市場の銘柄なら翌営業日の立会終了まで)。個人などの信用取引による新規売りで50売買単位以下の注文は適用除外とされていますが、規制を避ける目的で同じ銘柄・同じ値段の注文を50売買単位以下に分けても、適用除外にはなりません。

Q. 一日信用とは何ですか?

A. 一般信用取引のうち、返済期限を新規に建てたその日に限ったものを、証券会社が「一日信用」などの名称で提供しています。当日中に返済しなかった場合の扱いや手数料、空売りできる銘柄は証券会社ごとに異なります。

出典・参考資料

「信用取引・空売り」のほかのガイド

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