コツコツドカンとは|1回の損失が利益何回分を消すかを、制限値幅から計算する
「コツコツドカン」は、小さな利益を積み上げたあとに1回の損失で全部失う状態を指す言い回しです。制度上の用語ではないので、何回で何円なら該当するという定義はありません。ただし「1回の損失が利益何回分に相当するか」は割り算で出ます。この記事では、1日に出る損失の上限を東証の制限値幅から取り、利確1回分との比を計算します。
用語集には項目がない
日本取引所グループの用語集の「か行」索引には、「こ」から始まる用語として公開買付け(TOB)・更新差金・後場などが並んでいますが、「コツコツドカン」はありません。野村證券の証券用語解説集にある損切りの定義も「ある銘柄に見切りをつけ、損を覚悟で売却すること」だけで、幅や回数には触れていません。
言葉のほうに定義がないので、以下は「金額の比を数えるとどうなるか」の計算です。どの売買が良いか悪いかを示すものではありません。
収支がゼロになる回数は L ÷ G
1回の利確額を G、1回の損失額を L とすると、利確を n 回積んだあとに1回の損失が出たときの合計は
合計 = n × G − L
です。これがゼロになる回数は
n = L ÷ G
です。比だけで決まるので、株数でも円でもティックでも同じ式が使えます。利確1回を1,000円として、損失額ごとに必要回数を並べます。
| 1回の損失額 | 利確1,000円の何回分 |
|---|---|
| 5,000円 | 5回 |
| 10,000円 | 10回 |
| 50,000円 | 50回 |
| 100,000円 | 100回 |
| 150,000円 | 150回 |
| 400,000円 | 400回 |
1日に10回利確しているなら、150,000円の損失は15営業日分です。回数を増やしても、損失1回あたりの金額が大きいままなら積み上がりません。
1日の損失の上限は制限値幅で決まる
1銘柄を1日持ち切る場合、値段が動ける範囲は制限値幅で決まっています。日本取引所グループの説明はこうです。
東京証券取引所では、一日の売買における値動きの幅を価格水準に応じて一定に制限しており、この値幅を制限値幅といいます。 制限値幅は、前日の終値又は最終気配値段など(これを「基準値段」と呼びます)を基準として、以下の表のとおりです。
基準値段ごとの値幅(抜粋)は次のとおりです。
| 基準値段 | 制限値幅(上下) |
|---|---|
| 100円未満 | 30円 |
| 200円未満 | 50円 |
| 500円未満 | 80円 |
| 700円未満 | 100円 |
| 1,000円未満 | 150円 |
| 1,500円未満 | 300円 |
| 2,000円未満 | 400円 |
| 3,000円未満 | 500円 |
| 5,000円未満 | 700円 |
東証の売買単位は100株なので、1,000株(10単元)を持っていた場合の「ストップ安まで動いたときの損失」を計算します。
| 基準値段 | 制限値幅 | 1,000株での損失 | 建玉金額に対する比率 |
|---|---|---|---|
| 450円 | 80円 | 80,000円 | 17.8% |
| 900円 | 150円 | 150,000円 | 16.7% |
| 1,800円 | 400円 | 400,000円 | 22.2% |
| 2,500円 | 500円 | 500,000円 | 20.0% |
| 4,000円 | 700円 | 700,000円 | 17.5% |
ここで「1回の利確」を1ティックに置くと、何回分が飛ぶかが出ます。東証の呼値の単位は銘柄区分で違うので、1ティックの金額も2通りになります。
| 基準値段 | 呼値(その他) | 1ティックの利確 | 消える回数 | 呼値(TOPIX500) | 1ティックの利確 | 消える回数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 450円 | 1円 | 1,000円 | 80回 | 0.1円 | 100円 | 800回 |
| 900円 | 1円 | 1,000円 | 150回 | 0.1円 | 100円 | 1,500回 |
| 1,800円 | 1円 | 1,000円 | 400回 | 0.5円 | 500円 | 800回 |
| 2,500円 | 1円 | 1,000円 | 500回 | 0.5円 | 500円 | 1,000回 |
| 4,000円 | 5円 | 5,000円 | 140回 | 1円 | 1,000円 | 700回 |
同じ株価900円でも、その他の銘柄なら150回分、TOPIX500構成銘柄なら1,500回分です。刻みが細かい銘柄は利確1回が小さくなるので、同じ値幅の損失がより多くの回数を消します。 「1ティック抜き」を繰り返す売買(スキャルピングとは)では、この比が効きます。
「ドカン」は1日で閉じないことがある
制限値幅は1日の上限ですが、翌日に持ち越されると上限は再設定されます。しかも日本取引所グループは、一定の条件に当てはまった銘柄の値幅を拡大するとしています。
例えば、内国株については、2営業日連続で (1) ストップ高(安)となり、かつ、ストップ配分も行われず売買高が0株 (2) 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)に買(売)呼値の残数あり のいずれかに該当した場合、その翌営業日から制限値幅を拡大することとしております。
つまり、売買高0株のストップ安が続いた銘柄では、翌営業日の上限そのものが広がります。「上限は150円だから最大でも150,000円」という読みは、1日で決済できた場合に限った話です。値幅制限の仕組みはストップ高の値幅は?東証の値幅制限一覧と計算方法で詳しく扱っています。
信用取引では保証金に対する比が大きくなる
信用取引では建玉が保証金より大きいため、同じ値動きでも保証金に対する目減りは大きくなります。日本取引所グループの「信用取引の目的・仕組み」はこう書いています。
委託保証金は、買付代金、売付代金の30%以上(レバレッジ型・ダブルインバース型ETF及びETNの場合、買付代金、売付代金の60%以上)と定められており、現金のほか有価証券でも代用できます。
当初の委託保証金から損失や費用を差し引いた金額が売買代金の20%を下回った際には、追加の保証金(追い証)を証券会社に差し入れることになります。
建玉200万円・委託保証金60万円(30.0%)の場合、
保証金60万円 − 評価損 ≧ 建玉200万円 × 20% = 40万円 ⇒ 許容される評価損は 20万円(建玉の 10%)
です。株価が10%下がった時点で維持率20%に届きます。利確1,000円を200回積んで20万円にしていても、1回の10%の下落で同じ額が消える計算です(追証とは)。
なお引用文の「損失や費用を差し引いた金額」は、金利・貸株料・逆日歩などのコストも含みます。保証金は値動き以外の理由でも減ります。
税金は「ドカン」の時期で効き方が変わる
同じ年の中で出た利益と損失は通算されます。年間で利益120万円・損失100万円なら課税対象は20万円で、税率20.315%(国税庁 No.1463)をかけて40,630円です。
ところが、損失が前年で利益が翌年だと自動では相殺されません。
| ケース | 課税対象 | 税額 |
|---|---|---|
| 同じ年に利益120万円・損失100万円 | 20万円 | 40,630円 |
| 前年に損失100万円・翌年に利益120万円(繰越控除の申告なし) | 120万円 | 243,780円 |
差は 203,150円です。国税庁 No.1474 の繰越控除は、損失が出た年に確定申告をして、その後も連続して申告していることが条件です。12月の損失と1月の損失では、使えるようになる年が変わります(デイトレードの税金)。
回数を増やしても比は変わらない
n = L ÷ G の式には取引回数が入っていません。回数を増やすと分子(1回の損失)も分母(1回の利確)も変わらないので、比はそのままです。比を動かす要素は3つだけです。
- 1回の利確額 G を大きくする(=同じ損失が消す回数が減る)
- 1回の損失額 L を小さくする(=値幅制限いっぱいまで持たない)
- 建玉の大きさを変える(G と L が同じ倍率で動くので比は不変=これでは変わらない)
3番目に注意が必要です。株数を2倍にすると利確も損失も2倍になるので、n は変わりません。「ロットを上げて早く取り戻す」は、この比の上では何も動かしていないことになります。往復コストを含めた必要勝率の計算は損切りルールの決め方にあります。
検証していないこと
- 実際にこの状態に陥る頻度は検証していません。この記事が計算しているのは「1回の損失が利益何回分に相当するか」までです
- どの利確幅・損切り幅が良いかは扱っていません。幅を決めたときの必要勝率は損切りルールの決め方で計算しています
- 制限値幅いっぱいまで動く確率や頻度は計算していません。表は上限の金額を示したものです
- 売買手数料・貸株料などのコストは0円として計算しています。実際の手数料は会社とコースで変わります(デイトレの手数料無料を比較)
- 税額は2026年10月時点の税率と制度で計算した概算です。具体的な申告は国税庁の案内か税務署で確認してください
まとめ
- 「コツコツドカン」は相場の言い回しで、日本取引所グループの用語集の索引に項目はない=制度上の定義がない
- 収支がゼロになる利確回数は n = L ÷ G。利確1,000円に対して損失150,000円なら 150回分
- 1日持ち切る場合の損失の上限は制限値幅で決まる。基準値段900円を1,000株なら 150,000円(建玉の16.7%)
- 同じ株価でも呼値の単位で1ティックの金額が変わる。株価900円・1,000株なら、その他の銘柄で150回分、TOPIX500構成銘柄で 1,500回分
- 売買高0株のストップが2営業日連続した銘柄は、翌営業日から制限値幅が拡大される=上限は1日で閉じないことがある
- 信用取引では建玉200万円・保証金60万円で評価損20万円(建玉の10%)で維持率20%に届く
- 株数を増やしても G と L が同じ倍率で動くので比(n)は変わらない
この記事は用語と計算の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。計算は過去や将来の成績を示すものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。
よくある質問
Q. コツコツドカンとは何ですか?
A. 小さな利益を何回も積み上げたあと、1回の大きな損失でそれまでの利益を失う状態を指す相場の言い回しです。日本取引所グループの用語集の「か行」索引(こ から始まる用語を含む)には項目がなく、制度上の用語ではありません。幅や回数の定義もないので、この記事では「1回の損失が利益何回分に相当するか」を割り算で扱います。
Q. 利益が消えるまでの回数はどう計算しますか?
A. 1回の利確額をG、1回の損失額をLとすると、収支がゼロになる利確回数は n = L ÷ G です。利確1,000円に対して損失が50,000円なら50回、150,000円なら150回分が消えます。金額の比だけで決まるので、株数や銘柄が変わっても式は同じです。
Q. 1日で出る損失の上限はいくらですか?
A. 1銘柄を1日持ち切る場合の上限は制限値幅で決まります。東証の制限値幅は基準値段1,000円未満で上下150円なので、株価900円を1,000株持っていてストップ安まで動くと150,000円です。ただし日本取引所グループは2営業日連続で一定の条件に当てはまった銘柄の制限値幅を拡大するとしているため、翌営業日以降は上限そのものが広がります。
Q. 利確1ティックだと何回分が飛びますか?
A. 株価900円・1,000株で計算すると、その他の銘柄(呼値の単位1円)の1ティックは1,000円なので、制限値幅いっぱいの150,000円は150回分です。同じ株価でもTOPIX500構成銘柄は呼値の単位が0.1円なので1ティックは100円で、1,500回分になります。同じ「1ティックの利確」が銘柄区分で10倍違う厚みになります。
Q. 信用取引だと損失はもっと大きくなりますか?
A. 建玉が保証金より大きいため、保証金に対する比率は大きくなります。日本取引所グループは委託保証金を買付代金・売付代金の30%以上と定めており、当初の委託保証金から損失や費用を差し引いた金額が売買代金の20%を下回ると追証になります。建玉200万円・保証金60万円なら、評価損20万円(建玉の10%)で維持率20%に届きます。
Q. 損失を税金で取り戻せますか?
A. 同じ年の中なら上場株式等の譲渡損益は通算されますが、年をまたぐと確定申告が必要です。利益120万円・損失100万円が同じ年なら課税対象は20万円で税額40,630円、損失が前年で繰越控除の申告をしていなければ利益120万円に243,780円かかります。差は203,150円です。
出典・参考資料
- 制限値幅|内国株の売買制度(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 呼値の単位|内国株の売買制度(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 売買単位|内国株の売買制度(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- 用語集(か行)|日本取引所グループ(www.jpx.co.jp)
- 損切り|証券用語解説集(野村證券)(www.nomura.co.jp)
- 信用取引の目的・仕組み|信用取引の概要(日本取引所グループ)(www.jpx.co.jp)
- No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(国税庁)(www.nta.go.jp)
- No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(国税庁)(www.nta.go.jp)
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