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押し目買いとは?用語集の定義と、「どこからが押し目か」を数字で決める

by デイトレ.jp 編集部

「押し目買い」は相場の説明でよく出てくる言葉ですが、実際に注文を出す段になると「どこまで下がったら押し目なのか」で止まります。この記事では証券会社の用語集で定義を確認したうえで、定義のどこに数字が書かれていないかを示し、架空の1日の値動きに2通りの閾値を当てて損益を計算します。

押し目買いの定義

野村證券の証券用語解説集は、押し目買い(おしめがい)をこう説明しています。

相場が上昇トレンドにあるときに、利益確定売りなどで一時的に相場が下がる調整局面をねらって、買いを入れること。逆張りの投資手法の1つ。

SMBC日興証券の用語集は、言葉の由来と適用範囲まで書いています。

株価が上昇している局面で、一時的に株価が下落したタイミングを見計らって買いを入れる手法です。株価が下落することを相場用語で「押す」と表現することからこう呼ばれます。広義では「逆張り」の投資手法に含まれますが、一定期間株価が継続的に上昇した後、利益確定の売りに押されて少し下落したタイミングで買いを入れるときにも「押し目買い」といいます。「押し目を拾う」といった用法も同義です。なお、株価だけでなく、債券相場や為替相場、商品相場等でも広く用いられる相場用語です

2社の定義に共通しているのは次の3点です。

  1. 前提として相場が上昇している
  2. その上昇のなかの一時的な下落である
  3. 下げている最中に買う(=逆張りの一種)

定義に書かれていないもの

上の引用には、下落率の数字がひとつも出てきません。「一時的な下落」の一時的がどれくらいか、何%下げたら押し目なのかは、どちらの用語集も書いていません。閾値は定義の外側にあり、使う人が決める部分です。

関連して、野村證券の用語集は「深押し」を押し目と区別しています。

株価などが下がることを「押す」と呼ぶことから、相場が下降基調にあるときに、さらに大きく(深く)下がる状況を「深押し」という。上昇基調で一時的に下落するのが「押し目」。

押し目と深押しの違いは、下落幅ではなく**相場の向き(上昇基調か下降基調か)**で分けられています。ただし、上昇基調の一時的な下落なのか、下降基調への転換なのかは、下がっている途中では確定しません。押し目という判定は、後から振り返って初めて確定する性質を持っています。

同じ値動きに2つの閾値を当てる

架空のA社株の1日を使います(指標と判定の挙動を見るための数値モデルで、実在の銘柄ではありません)。呼値の単位は「その他の銘柄」の1円刻み、売買単位は100株とします。

時刻株価その時点までの高値高値からの下落率
09:001,000円1,000円—
09:301,018円1,018円—
10:001,050円1,050円—
10:301,032円1,050円−1.71%
11:001,055円1,055円—
11:301,068円1,068円—
12:301,041円1,068円−2.53%
13:301,052円1,068円−1.50%
14:301,033円1,068円−3.28%
15:301,020円1,068円−4.49%

この日には下落局面が2回あります。1回目は1,050円から1,032円まで18円(−1.71%)、2回目は1,068円から1,041円まで27円(−2.53%)です。

ここに「直近高値から X% 下げたら100株買う」というルールを当てます。指値は呼値の単位(1円)に合わせて切り下げます。

ルール1回目(高値1,050円)2回目(高値1,068円)
1.0%指値1,039円 → 約定(安値1,032円)指値1,057円 → 約定
1.5%指値1,034円 → 約定(安値1,032円)指値1,051円 → 約定
2.0%指値1,029円 → 不発(安値1,032円)指値1,046円 → 約定(安値1,041円)
3.0%指値1,018円 → 不発指値1,035円 → 不発

閾値を0.5ポイント動かすだけで、1回目の押し目を拾えるかどうかが入れ替わります。1.5%なら1,034円で約定し、2.0%なら1回目は不発で、2回目に1,046円(計算上は1,046.64円なので1,046円の指値)で入ります。

損益はどうなったか

1回目に入った場合(1.5%ルール・1,034円で100株)と、2回目に入った場合(2.0%ルール・1,046円で100株)を、大引けの1,020円まで持ったものとして並べます。

ルール買値大引け1,020円での損益(100株)途中の戻り高値で売れた場合
1.5%ルール1,034円−1,400円1,068円で +3,400円
2.0%ルール1,046円−2,600円1,052円で +600円

同じ値動き・同じ100株で、大引けまで持った場合の差は1,200円です。この差を作ったのは「押し目買い」という考え方ではなく、閾値を1.5%にしたか2.0%にしたかという設定です。

さらに、この日は寄り付きの1,000円で買っていれば大引けで +2,000円でした。押し目を待った2つのルールは、どちらもそれを下回っています。

これが「押し目待ちに押し目なし」が指している状況のひとつです。野村證券の用語集では、この格言はこう説明されています。

押し目とは上昇局面にある相場や株価の一時的な下落を狙って買いを入れることだが、この押し目の機会を待つものの、強い地合いが続いて押し目のチャンスがないことや、結果として高値つかみしてしまうこと。

SMBC日興証券の用語集も「強い上昇相場入りした銘柄では、『押し目』を狙っていてもなかなかチャンスが来ないこともあります」と注記しています。待っているあいだに値段が離れていくぶんは、損益計算書に出てこない費用です。

閾値の決め方として実際に使われているもの

下落率を自分で決める以外に、別の系列を閾値の代わりに使う方法が解説でよく紹介されます。どれも「押し目の定義」ではなく、押し目を機械的に決めるための代理の線です。

  • 移動平均線まで下げたら:5分足や日足の移動平均線に触れた水準を買い場とする(ゴールデンクロス・MACD・ボリンジャーバンドの見方で計算式を扱っています)
  • 前日終値まで戻したら:ギャップアップで始まった日に、前日終値の水準を下限とみなす
  • VWAPまで下げたら:当日の売買高加重平均価格を基準にする(VWAPとは)

いずれを使っても、上の表と同じことが起きます。線の引き方が変われば、約定する日と約定しない日が入れ替わります。線を選んだ時点で結果の一部が決まっていて、「押し目買いをした/しなかった」という言い方はその選択を隠します。

下落率を測る母数が、足によって変わる

デイトレードで「直近高値から1.5%」と言うときの直近高値は、数十分前の高値です。日本取引所グループの用語集によれば、東証の現物市場の立会時間は「9時から11時30分及び12時30分から15時30分」で、合計330分です。5分足なら1日66本なので、「直近20本の高値」は約100分ぶんの高値になります。

足1日の本数直近20本が指す時間
1分足330本20分
5分足66本100分
15分足22本300分(ほぼ1日)
日足1本20営業日

同じ「−1.5%の押し目」が、1分足では20分前の高値から、日足では約1か月前の高値から測った数字になります。解説記事やSNSで見た閾値をそのまま使うと、母数の足が違っていることがあります。

コストを入れると必要な戻り幅が変わる

押し目買いは「下げたところで買って、戻ったら売る」ので、利益は戻り幅から手数料と税金を引いた残りです。

上の1.5%ルール(1,034円で100株=約定代金103,400円)が1,068円まで戻って売れた場合、値幅は34円で、100株なら3,400円です。ここから、

を引きます。手数料が0円でも、3,400円の利益に対する税は約690円です。値幅が小さい取引ほど、戻り幅の何割が手取りに残るかは下がります。

呼値の単位も効きます。日本取引所グループの呼値の単位の表では、1,000円以下の銘柄の刻みは、TOPIX500構成銘柄なら0.1円、その他の銘柄なら1円です。1,000円の株で「1円の戻り」を取ろうとすると、TOPIX500構成銘柄では10ティックぶんですが、その他の銘柄では1ティックで、同じ1円でも板の厚みが違います。

検証していないこと

  • 押し目買いが長期的に利益を生むかどうかは、この記事では検証していません。用語集の定義は「上昇局面の一時的な下落で買うこと」までで、その後の値動きには触れていません
  • 上の1,200円・2,000円という数字は、架空の値動き1日ぶんの計算です。実際の銘柄で閾値をどう置くとどうなるかは、銘柄と期間によって変わります
  • 「押し目」と「下降基調への転換」を事前に見分ける方法は、どの用語集にも書かれていません。野村證券が押し目と深押しを相場の向きで分けているとおり、向きが確定するのは後からです

まとめ

  • 押し目買いの定義は「上昇トレンドの一時的な下落をねらって買う」(野村證券)で、逆張りの一種に分類される
  • 定義には下落率の数字がない。何%で押し目とするかは使う人が決める部分
  • 架空の1日に1.5%ルールと2.0%ルールを当てると、約定する押し目が入れ替わり、大引けまで持った損益の差は100株で1,200円。同じ日に寄り付きで買っていれば +2,000円だった
  • 「押し目待ちに押し目なし」(野村證券)は、待つこと自体の機会費用を指した格言
  • 移動平均線・前日終値・VWAPなどを閾値の代わりに使う方法があるが、どれも定義ではなく代理の線で、線の選び方で結果が変わる
  • 「直近高値から何%」の母数は足によって変わる。5分足の20本は約100分、日足の20本は20営業日

この記事は相場用語の定義と計算の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。過去の値動きから作った数字は将来の値動きを示すものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. 押し目買いとは何ですか?

A. 野村證券の証券用語解説集では、押し目買いは「相場が上昇トレンドにあるときに、利益確定売りなどで一時的に相場が下がる調整局面をねらって、買いを入れること」と説明され、「逆張りの投資手法の1つ」と分類されています。SMBC日興証券の用語集も「株価が上昇している局面で、一時的に株価が下落したタイミングを見計らって買いを入れる手法」としています。

Q. 何%下がったら押し目ですか?

A. 証券会社の用語集の定義には、下落率の数字は書かれていません。野村證券は「一時的に相場が下がる調整局面」、SMBC日興証券は「一時的に株価が下落したタイミング」という書き方で、どちらも幅を示していません。つまり閾値は定義の外にあり、使う人が決める部分です。この記事では架空の値動きで1.5%と2%の2つの閾値を並べ、判定と損益がどれだけ変わるかを計算しています。

Q. 押し目と深押しはどう違いますか?

A. 野村證券の用語集では、上昇基調で一時的に下落するのが「押し目」、相場が下降基調にあるときにさらに大きく(深く)下がる状況が「深押し」と区別されています。どちらも「押す(下がる)」ことを指しますが、前提にしている相場の向きが逆です。ただし、上昇基調なのか下降基調なのかは、下がっている途中では確定しません。

Q. 「押し目待ちに押し目なし」とはどういう意味ですか?

A. 野村證券の用語集では「押し目の機会を待つものの、強い地合いが続いて押し目のチャンスがないことや、結果として高値つかみしてしまうこと」と説明されている相場の格言です。SMBC日興証券の用語集も「強い上昇相場入りした銘柄では、『押し目』を狙っていてもなかなかチャンスが来ないこともあります」と注記しています。待つこと自体に、買えなかったぶんの機会費用があるという指摘です。

Q. デイトレードの押し目は、日足の押し目と同じものですか?

A. 指している期間が違います。東証の立会時間は9時から11時30分および12時30分から15時30分の合計330分なので、5分足なら1日66本です。ザラ場で「直近高値から1.5%の押し目」と言うときの直近高値は数十分前の高値で、日足チャートの押し目が指す数日〜数週間前の高値とは別の数字です。同じ「押し目」という言葉で、母数になる高値が入れ替わります。

Q. 押し目買いは勝てる手法ですか?

A. この記事では検証していません。用語集が定義しているのは「上昇局面の一時的な下落で買うこと」までで、その後の値動きについては何も言っていません。記事中の架空の例では、深い押し目を待つルールのほうが浅いルールより損益が小さくなりましたが、これはこの数値列での計算結果であって、一般的な優劣ではありません。

出典・参考資料

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