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損切りルールの決め方|必要勝率の計算と、「1%」が10倍ずれる理由

by デイトレ.jp 編集部

「損切りルール」を決めようとすると、まず何%にするかで止まります。用語集を引いても幅の数字は出てきません。この記事では定義を確認したうえで、幅を決めると自動的に決まる数字(必要勝率)と、%という単位が銘柄によって別の厚みになることを計算で示します。

損切りの定義

野村證券の証券用語解説集は、損切り(そんぎり)をこう説明しています。分類は「取引(売買)」です。

ある銘柄に見切りをつけ、損を覚悟で売却すること。

一文です。含まれているのは「損を確定させて売る」という行為だけで、

  • いくら下がったら見切るのか
  • 建てる前に決めるのか、下がってから決めるのか

は書かれていません。幅は定義の外にあります。以下は「幅を決めると何が決まるか」の計算で、幅そのものを推奨するものではありません。

幅を決めると必要勝率が決まる

利確幅を G、損切り幅を L とすると、損益の期待値がゼロになる勝率 p は

p × G − (1 − p) × L = 0 ⇒ p = L ÷ (G + L)

です。比だけで決まるので、円でもティックでも%でも同じ式が使えます。

利確幅 : 損切り幅期待値がゼロになる勝率
1 : 375.0%
1 : 266.7%
2 : 360.0%
1 : 150.0%
2 : 133.3%
3 : 125.0%

損切りを浅くする(L を小さくする)と必要勝率は下がりますが、浅い損切りは当たりやすくなるので実際の勝率も下がります。表が示しているのは「この比なら勝率がいくら必要か」だけで、実際の勝率がいくらになるかは別の話です。

往復コストを入れると比が崩れる

売買手数料とスプレッドを合わせた往復コストを C とすると、期待値ゼロの勝率は

p = (L + C) ÷ (G + L)

になります。コストは勝った取引からも負けた取引からも引かれるので、分子だけが増えます。呼値の単位が1円の銘柄で往復コストを1ティック(1円)とすると、

利確 : 損切り(ティック)コスト0往復コスト1ティック
1 : 150.0%100.0%
2 : 133.3%66.7%
3 : 125.0%50.0%
5 : 228.6%42.9%

利確1ティック・損切り1ティックは、コストを1ティック入れると**必要勝率が100%**になります。全勝しても期待値がゼロという意味で、成立しません。利幅が小さい売買ほどコストの比重が上がる点はスキャルピングとはでも扱っています。

「1%」は銘柄によって別の厚みになる

%で損切り幅を決めると、同じ1%が板の上では別の厚みになります。東証の呼値の単位(日本取引所グループ・2026年8月6日更新)は次のとおりです。

値段の水準TOPIX500構成銘柄その他の銘柄
1,000円以下0.1円1円
3,000円以下0.5円1円
5,000円以下1円5円
10,000円以下1円10円
30,000円以下5円10円

この刻みで「1%の損切り」をティック数に直します。

株価1%の円額TOPIX500構成銘柄その他の銘柄
500円5.0円50.0ティック(刻み0.1円)5.0ティック(刻み1円)
1,000円10.0円100.0ティック(刻み0.1円)10.0ティック(刻み1円)
2,500円25.0円50.0ティック(刻み0.5円)25.0ティック(刻み1円)
4,000円40.0円40.0ティック(刻み1円)8.0ティック(刻み5円)
8,000円80.0円80.0ティック(刻み1円)8.0ティック(刻み10円)

株価1,000円で見ると、TOPIX500構成銘柄の1%は100ティック、その他の銘柄の1%は10ティックで、10倍違います。株価8,000円のその他の銘柄なら1%は8ティックしかありません。

逆に「10ティックの損切り」で揃えると、%のほうが動きます。

株価TOPIX500構成銘柄その他の銘柄
500円1.0円(0.20%)10.0円(2.00%)
1,000円1.0円(0.10%)10.0円(1.00%)
2,500円5.0円(0.20%)10.0円(0.40%)
4,000円10.0円(0.25%)50.0円(1.25%)
8,000円10.0円(0.12%)100.0円(1.25%)

「○%で損切り」と「○ティックで損切り」は、銘柄をまたぐと別のルールになります。どちらで決めても構いませんが、片方で決めたルールをもう片方の単位で語ると数字が合いません。

なお日本取引所グループは、2027年3月1日から呼値の単位をTOPIX500構成銘柄という指数区分ではなく銘柄ごとの流動性指標(STR)に基づいて決める制度へ変更すると告知しています。ティック数で決めたルールは、刻みが変わると意味が変わります。

逆指値は取引所の機能ではない

幅を決めたら注文で実行することになりますが、ここに制度上の注意点があります。日本取引所グループの用語集は逆指値注文を次のように説明しています。

株価が上昇し、自分の指値以上になったときに買付け、株価が下落し、自分の指値以下になったときに売付けるという注文形態のことです。(中略)一般的には、トレンドが変化した場合や損失を限定する場合に利用されることが多いようです。

そして最後にこう注記しています。

なお、逆指値注文は東証の機能ではなく各証券会社のサービスとなるため、一部の証券会社では利用できない場合もあります。

つまり「逆指値を置いておけば自動で損切りされる」は、口座が対応している場合に限った話です。対応していても、有効期限(当日限り・期間指定)や、ストップ高・ストップ安のように値段が飛ぶ場面での扱いは会社ごとに違います。

自分の損切りと強制決済は別のもの

信用取引では、自分が決めた損切り幅より先に制度上の決済が来る場合があります。東証の規則では委託保証金維持率は20%で、これを下回ると追証が必要になります(追証とは)。

建玉200万円・委託保証金60万円の例で計算すると、

保証金60万円 − 評価損 ≧ 建玉200万円 × 20% = 40万円 ⇒ 許容される評価損は 20万円=建玉の 10%

です。自分の損切りを「建玉の15%」に置いていても、10%の時点で維持率20%を割ります。「損切りルール」を決めるときは、口座側の強制決済ラインがどこにあるかを先に確認することになります。現物株にはこのラインがない代わりに、差金決済の禁止で回転数に制約が出ます。

税金は損切りを自動で相殺しない

同じ年のなかで利益と損失が出ているなら、上場株式等の譲渡損益は通算されます。利益20万円・損失15万円なら課税対象は5万円で、税率20.315%(国税庁 No.1463)をかけて 10,158円です。

ところが、年をまたぐと自動では相殺されません。前年に15万円の損失、翌年に20万円の利益が出た場合、

ケース課税対象税額
同じ年に利益20万円・損失15万円5万円10,158円
前年に損失15万円・翌年に利益20万円(繰越控除の申告なし)20万円40,630円

差は 30,472円です。国税庁 No.1474 の繰越控除は、損失が出た年に確定申告をして、その後も連続して申告していることが条件です。源泉徴収ありの特定口座でも、繰り越すには申告が必要になります(デイトレードの税金)。

損切りは「その場で損を確定する」行為ですが、確定した損をいつ使えるかは申告の手続きで決まります。12月に出した損失と1月に出した損失では、使えるようになる年が変わります。

検証していないこと

  • どの幅が利益につながるかは検証していません。この記事が計算しているのは「幅を決めたら必要勝率がいくらになるか」までです
  • 必要勝率の式は、勝ち負けの幅が毎回同じという前提です。実際には利確が計画どおりに約定しない場合や、損切りが滑って想定より広くなる場合があります
  • 浅い損切りと深い損切りで実際の勝率がどう変わるかは、銘柄と期間で変わるため扱っていません
  • 往復コスト1ティックは計算のための仮定です。実際の手数料は会社とコースで変わります(デイトレの手数料無料を比較)
  • 税額は2026年10月時点の税率と制度で計算した概算です。具体的な申告は国税庁の案内か税務署で確認してください

まとめ

  • 損切りの定義は「ある銘柄に見切りをつけ、損を覚悟で売却すること」(野村證券)。幅の数字は定義に含まれない
  • 利確幅と損切り幅の比を決めると、期待値がゼロになる勝率が決まる(p = L ÷ (G + L))。1対1で 50.0%、1対2で66.7%
  • 往復コストは分子に乗る。利確1ティック・損切り1ティックは往復1ティックのコストで必要勝率 100.0%=成立しない
  • 「1%」の厚みは呼値の単位で変わる。株価1,000円ならTOPIX500構成銘柄で100ティック、その他の銘柄で10ティックと 10倍違う。2027年3月1日からは呼値の単位の決め方自体が変わる
  • 逆指値注文は「東証の機能ではなく各証券会社のサービス」(日本取引所グループ)=使えない口座もある
  • 信用取引では維持率20%の強制決済が先に来る場合がある。建玉200万円・保証金60万円なら評価損 **20万円(建玉の10%)**で維持率20%を割る
  • 税金は年をまたぐと自動で相殺されない。利益20万円・損失15万円の例では、同一年なら税 10,158円、繰越控除の申告をしなければ 40,630円(差 30,472円)

この記事は用語の定義と計算の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。必要勝率の計算は過去や将来の成績を示すものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. 損切りとは何ですか?

A. 野村證券の証券用語解説集では、損切り(そんぎり)は「ある銘柄に見切りをつけ、損を覚悟で売却すること」と説明され、分類は「取引(売買)」です。定義に含まれているのは「損を確定させる売却」という行為で、何%下がったら売るかという幅は書かれていません。

Q. 損切りは何%が目安ですか?

A. 一次情報に目安の数字はありません。用語集の定義は幅に触れていないので、%の数字は使う人が決める部分です。この記事では目安を示す代わりに、利確幅と損切り幅の比から「期待値がゼロになる勝率」を計算する表を置いています。利確と損切りが同じ幅なら必要勝率は50%、利確が損切りの2倍なら33.3%です。

Q. 往復の手数料を入れると必要勝率はどうなりますか?

A. 利確1ティック・損切り1ティックで往復コストが1ティック分かかると、期待値がゼロになる勝率は100%になります。つまりコスト込みでは成立しません。利確2ティック・損切り1ティックなら66.7%、利確3ティック・損切り1ティックなら50%です。コストは利確幅が小さいほど重く効きます。

Q. 「1%の損切り」は何ティックですか?

A. 株価と銘柄区分で変わります。東証の呼値の単位では1,000円以下の銘柄の刻みはTOPIX500構成銘柄が0.1円、その他の銘柄が1円なので、株価1,000円の1%(10円)はTOPIX500構成銘柄で100ティック、その他の銘柄で10ティックです。同じ「1%」が10倍違う厚みになります。

Q. 逆指値注文を使えば自動で損切りできますか?

A. 日本取引所グループの用語集は逆指値注文を「株価が下落し、自分の指値以下になったときに売付けるという注文形態」と説明した上で、「逆指値注文は東証の機能ではなく各証券会社のサービスとなるため、一部の証券会社では利用できない場合もあります」と注記しています。使えるかどうかは口座ごとに確認する必要があります。

Q. 自分の損切りと、信用取引の強制決済は同じものですか?

A. 別です。信用取引では委託保証金維持率(東証の規則で20%)を下回ると追証が必要になり、差し入れられなければ証券会社が建玉を決済します。建玉200万円・保証金60万円なら、評価損が20万円(建玉の10%)に達した時点で維持率20%を割ります。自分で決めた損切り幅がこれより広いと、先に強制決済が来ます。

出典・参考資料

「手法・資金管理」のほかのガイド

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